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2014年9月19日(金)

「現状を受け止め、年末商戦に向けてPS4を盛り上げていく」SCEJAプレジデントとなった盛田厚氏が語るPlayStationの未来【TGS2014】

文:電撃オンライン

 9月に河野弘氏からソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(以下、SCEJA)のプレジデントを引き継ぎ、“SCEJA Press Conference 2014”でPlayStationのこれからの展望を熱く語った盛田厚氏。

 その盛田氏に、これからの日本・アジア地域におけるPlayStationの戦略、ゲーム市場の今後の展望について話を聞くことができた。PlayStation 4の登場で激動するゲーム市場に、盛田氏はどのように挑もうとしているのだろうか?

“SCE 盛田氏インタビュー”

■PlayStation 4が日本市場で盛り上がるための環境は整った

――まずはじめに、SCEJAのプレジデントとして、現在の日本とアジアにおけるPlayStation市場の現状をどのように考えていますか?

 まず日本についてですが、2014年2月22日に日本国内でPlayStation 4(PS4)を発売した当初はすごく大きな盛り上がりを見せましたよね。それからおよそ7カ月で、国内の盛り上がりはひと段落してしまったかなという印象です。

 日本での売り上げも含みますが、欧米では発売直後の勢いが持続して、我々が想定していた以上に早い段階でPS4累計販売台数1,000万台を達成しました。それと比較すると、国内では我々の期待していたレベルに到達していない、というのは事実です。

 ただ、9月1日に行った“SCEJA Press Conference 2014”では数多くのタイトルを発表させていただき、「PS4ではこれからどれくらいタイトルが出てくるんだろう?」と不安と期待を感じているユーザー様に対しての答えを出すことができたように思います。

 ですので、年末商戦に向けてもう一度、どういった形でPS4を盛り上げていけるか、というのが我々のミッションとなっています。今の日本市場の流れに対して、想定通り、大丈夫と言うのは間違っていますが、日本市場で盛り上がるためのポテンシャルは十分にあると考えています。

――日本の市場に関しては年末商戦がポイントになりそうですが、具体的にどんなことをされる予定ですか?

 先ほどの話になりますが、カンファレンスで年末から来年度にかけて、日本のユーザー様が待ち望んだタイトルをそれなりに揃えられる、という1つの答えを提示することができました。

 PS4にとってタイトルは本当に重要だと思っています。それがなければいくらハードウェアで何かをやってもユーザー様の心には響かない。ですので、タイトルが揃ったということを押し出しつつ、それにハードを含めてプラットフォームとしての施策を打っていきたいと思います。

“SCE 盛田氏インタビュー”

――PS4に対する国内のパブリッシャーの機運や、SCEJAからの働きかけについてはいかがですか?

 PS4が国内で発売された当初は、日本のパブリッシャー様も「どうなるかわからないから、ちょっと様子を見よう」という時期があったと思います。それが日本と欧米の差になって表れたかと思うのですが、ここに来て日本のパブリッシャー様からの「そろそろPS4をやらなきゃね」という雰囲気を強く感じられるようになってきました。

 PS4については開発段階から要所要所でライセンシー様と議論、説明をしてきましたし、そういったコミュニケーションが段々実りつつあるのかなと、あるように思います。また、タイトルはすぐに出せるものではないので、継続的なコミュニケーションが大事だと考えています。

 PS4に対する我々の本気度や、フォーマットとしてのサポートにはみなさん、すごく期待されていますので、こちらからお願いするだけでなく、一緒にどうやって盛り上げていくかをちゃんと議論していくことが大切だと思いますね。

――アジア地域についてはいかがでしょうか?

 アジアの市場は元気ですよね。市場を開拓してから18年くらい経つのですが、PS3、PS Vita、PS4と世代を重ねることで、ソフトウェアが売れる土壌もできてきた。実際にソフトウェアは売れているし、ローカライズしたコンテンツを出すと響くということもわかっている。

 地道に努力し続けてきたおかげで、より市場を拡大できるタイミングを作れていると思います。ただ、アジアは広大なので国ごとの特性を見極めつつ、それぞれの市場性やユーザーの嗜好を考慮しながら頑張っていきたいですね。

――アジア市場拡大について、具体的にはどういった施策を?

 これまでは欧米や日本で発売されたタイトルをアジアに持っていくというパターンが多かったので、ローカライズのソフトウェアをできるだけ早い段階で出していく、ということがまず挙げられます。そのためのサポートも強化していますし、9月17日にアジアのメディア向けに実施した“アジアプレスカンファレンス”でローカライズタイトルを発表したことも大きな反響があったと考えています。

 また、アジア地域の体制も整備しています。必要な地域には拠点を作り、そこにPlayStationをよく知った人間を置く。ハードとソフトを一緒に売る、というやり方を理解している人間がプロモートしていくことが重要であると考えています。そのあたりは、SCEJAでアジア地域を統括している織田(アジア地域を統括するデピュティプレジデントの織田博之氏)を中心に整いつつあると思いますね。

――日本では日本発のタイトルが望まれる傾向にありますが、アジア地域でもその国発のタイトルが望まれているのでしょうか?

 はい。ローカルのタイトルはすごく重要です。日本ももちろんそうですが、インディーのデベロッパー様をいかに刺激するかが、その地域発のタイトルが出ることに重要なことだと思いますね。

 インディーについては、そういった自国発のムーブメントが起こるよう我々も全力でサポートします。今回の東京ゲームショウ(以下、TGS)でもインディーコーナーは全面的にサポートしていますよ。

――インディーのブースは、PlayStationブースの一角かと思いました。

 ありがとうございます。インディーについてはアジアでも活性化させていきたいですね。

“SCE 盛田氏インタビュー”

■アジアがゲームエンターテイメントをリードしていく状況を作りたい

――9月1日のプレスカンファレンスについても詳しくお聞きしていきたいと思います。非常に好評だったと思うのですが、ユーザーの反応を盛田さんはどのようにとらえましたか?

 カンファレンスでは、非常に大きな反響をいただきました。PS4を取り巻く状況が変わってくる気配を感じましたね。

――PS4が今後どんどん盛り上がっていく、というのがよく分かるカンファレンスでしたよね。年末商戦に向けて勢いを増していきそうだと感じました。

 そうですね。そういう意味では9月11日に発売された『Destiny』ですが、欧米のタイトルってなかなか日本のユーザー様の好みと合わないなどと言われがちですが、とても受け入れられていて嬉しく思います。日本でも大型タイトルが動くようになってきたのを実感しました。さらに嬉しいことには、『Destiny』はハードも牽引してくれているということです。

 本作を同梱したPS4だけでなく、ハード単体としても売れている。本作の魅力ももちろん大きいのですが、ユーザー様が「そろそろPS4来るかも!」と思ってくれているのが要因の1つだと思いますね。

――たしかに9月の第2週はPS4が前週より10,000台以上販売台数を伸ばしていました。さてカンファレンスではPS4がメインだったと思いますが、PS Vitaの今後についてはいかがですか?

 カンファレンスでPS4を押しだした理由ですが、「タイトルがまだ出てこないんじゃないの?」とか「日本向けのタイトルは?」という声に対して、こちらからのメッセージを伝えたかったということが挙げられます。

 PS4中心に見えたかもしれませんが、PS Vitaももちろん継続して力を入れていきます。とくに2000シリーズを発売してからはハードの売上も加速しましたし、ソフトも着実に売れるようになってきた。それはパブリッシャー様も感じておられると思います。あと、PS Vitaは日本市場では非常にいい流れを作れているので、そこは大事にしていきたいですね。

 「携帯ハードで遊びたい」という声は、日本では確実にありますから。ホームコンソールのPS4、ポータブルのPS Vitaということだけでなく、PS4があってPS Vitaもあるとより楽しめるというような、PS4フォーマットというくくりのなかでPS Vita市場も拡大できると思いますので、力を入れていきたいです。

――タイトルが充実しているだけでなく、PS4は“Live from PlayStation”など、幅広い層にアピールできる仕組みを持ったハードだと思います。今はPS4をどんなユーザー層に向けてアピールしている段階でしょうか?

 やはりゲームが好きで、ゲームを今も継続して遊んでいる方、あるいはこれまですごくゲームを遊んでいたのに今は休んでいる方、そういったゲーム好きの方にまずはちゃんと説明していくのが重要だと思っています。

 ただ、今は“Live from PlayStation”やシェア機能など、ゲームの楽しみ方も変化し、広がりを見せていますよね。こうした全体的な広がりのなかでゲームが好きな方々にアピールしていきたいです。

――CEDECの豊氏の講演では、カメラやPSAppの具体的な使い方の提案もされていました。プラットフォームホルダーとして、そういったユニークな機能を生かした遊びやタイトルに期待してしまいます。

 ゲームの世界の広がりというものは、常に我々の方で考えていかねばならないことです。ユーザー様にはそれを提供し夢を与え、さらにそこからフィードバックをいただいてどんどん開発を進めていく、というのがいい循環なのではないかと思います。

 そういう意味では“Project Morpheus”などはまだ開発段階ですが、ユーザー様にお見せすることで“ゲームにどこまで没入できるかのひとつの到達点”を提示することができていると思います。ユーザー様に「将来こういう姿ってあるよね」というのを見せたうえでフィードバックをいただき、最終形に近づけていく。

 我々としてもいろいろな可能性を考えて提供していくよう努力しますが、できるだけ多くのフィードバックをいただいて、ユーザー様にフィットするような形で作っていくことも大事だと思いますね。

――カンファレンス当日の9月1日には“プレコミュ”の公式ブログの方にご挨拶のコメントを載せられていましたよね。ああいったユーザーとのコミュニケーションは、今後も引き続き行っていく?

 ぜひやっていきたいと個人的には考えています。ただ、少々教科書的な発言になってしまいますが、ユーザー様が望んでくださるのならぜひにと思いますし、違った形の発信の仕方の方がいいのであればそちらも検討していきたいと思います。ユーザー様が望む形、というのが第一ですので。

――TGSについてもお伺いします。今回のTGSでは非常に多くのタイトルが出展されますが、盛田さんが注目しているのはどのタイトルでしょう?

 今回のTGSのポイントなのですが、いろんな嗜好を持ったユーザー様にマッチするバラエティに富んだタイトルを揃えられたと思っています。ですから、私の方からオススメを提示するのではなく、みなさまがそれぞれが考える注目タイトルのところへ足を運んでいただき、体験していただきたいですね。

――現在のゲーム業界についてもご意見をお聞かせください。日本においては、PS4が普及しないと家庭用ゲーム機という文化が世界に対して後れをとってしまうのでは、という危惧すらあるように思います。

 今の日本の状況が問題ない、と思ってはいけないです。ただ、日本のゲーム市場として見ると、すごくポテンシャルのある市場だと思うんですね。ゲームで遊んでいる人がまったくいなくなってしまったら危機だと思うのですが、通勤時間など、みんなスマートフォンなどでゲームを遊んでいる。

 日本の方はゲームをいろいろな形で楽しんでいると思います。そこが今は分散しているかもしれませんが、その点と点をつなげれば線になるし、さらにつなげていけば面になる。そういった意味ではポテンシャルは高いのではないかと考えています。それをいかにつなげてその中心にPlayStationを置けるか、ということがポイントなのではないかと感じています。

――盛田さんご自身がPlayStationというイメージというところで、新しくこうしていきたいというのはありますか?

 前プレジデントの河野弘から役職は引き継ぎましたが、彼がやってきたことを引き継ぐというよりは我々SCEがスタートさせたPlayStationというビジネス、それ全体を引き継いでやっていきたいという思いがあります。

 PlayStationはタイトルとともに成長してきたハードです。ハードとコンテンツ、どちらかだけが走るのではなくて、それが両輪になって拡大していかなくてはならない。長いPlayStationの歴史のなかで引き継いできたバトンだと思っているので、それをちゃんとつないでいきたいです。

 また、PlayStationというプラットフォームをいかに拡大していくかが次のポイントだと思っています。ネットワーク、PlayStation Plusも含めた全体的なPlayStationフォーマットを拡大することで、ゲーム業界全体がより拡大していくという状況を作り上げていきたい。

 日本含めたアジアで、アジアがゲームエンターテイメントをリードしていく、そのことの実現を目標にして、今後のPlayStationを展開させていきたいですね。

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