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2014年10月27日(月)

ファミコン『悪魔城伝説』25周年記念。芸術的な横スクロールアクションを振り返る【周年連載】

文:城 イドム

 あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として連載中の“周年連載”。第7回は、1989年12月22日にコナミから発売されたファミコン用の横スクロールアクション『悪魔城伝説』の25周年を記念して、思い出コラムをお届けします。

『悪魔城伝説』
▲レトロな作風の中にも、しっかりとしたゲーム性が息づいている『悪魔城伝説』。その伝説級のスゴさを振り返ってみましょう。

■『悪魔城伝説』はもはや芸術の域!?

 “横スクロールアクションとは、位置関係が織り成す遊びの芸術である”というのが、筆者の持論です。1980年代に黄金期を迎えた2Dタイプの横スクロールアクションは、そんな芸術性をこれでもかといわんばかりに極め、ともすれば部分的には近代ゲームさえも凌駕する魅力にあふれていたのです。

 もっとも、読者の皆さんの中には「間合いのどこに芸術性を感じるの?」と疑問に思った人もいることでしょう。そこで今回は名作『悪魔城伝説』を紹介しながら、横スクロールアクションの魅力とは何かを見つめ直す“冒険旅行”に皆さんをご案内いたしましょう。

『悪魔城伝説』

 さて、それに先立ち、『悪魔城伝説』にまつわる3つのクイズを出題してみたいと思います。さぁ、あなたはいくつ答えられるでしょうか? 気になる正解は、本稿で順を追って解説していきます。


●クイズ1

 このシリーズを遊んだことがない人でも、物語のキーワードである“ヴァンパイアハンター”と“ヴァンパイアキラー”については耳にしたことがあると思います。ところで、この2つの言葉が指す意味の違いをご存知でしょうか?

『悪魔城伝説』
▲『悪魔城伝説』のオープニングをはじめ、この言葉はシリーズ中で幾度となく登場します。ファンならその意味もすぐわかるはず!

●クイズ2

 後年のシリーズで人気キャラへと躍進していったアルカード。彼がシリーズ初登場を飾ったのが、『悪魔城伝説』でした。さて、実はこの“アルカード”という名前には、ドラキュラと縁浅からぬことを示す一種の暗号が隠されています。その暗号とはなんなのか、あなたは解き明かせますか?

『悪魔城伝説』
▲アルカードは『悪魔城伝説』で、隠しのプレイヤーキャラの1人として登場し、主人公ラルフとともに物語をつむいでいきます。

●クイズ3

 『悪魔城伝説』のような1980年代のゲームを語る時、当時のゲーム専門誌の記事にはよく“スプライト”というゲーム用語が見受けられたものでした。では、スプライトとはなんでしょうか。

『悪魔城伝説』
▲スプライトは当時のゲーム画面を描写するうえで欠かせない要素で、昔のゲーム好きなら誰でも知っている言葉でした。

■『悪魔城伝説』誕生の時代背景を紐解く

 『悪魔城伝説』は、『悪魔城ドラキュラ』シリーズと呼ばれる一連の作品群の中でも、往年のファンから特に高く評価されている名作です。本作がどんなゲームなのか知らない人も少なくないと思いますので、まず最初にシリーズの歴史を振り返っておきましょう。

『悪魔城伝説』
▲当時を知らない人には想像しにくいと思いますが、『悪魔城伝説』は強烈なインパクトをもたらす作品として話題をさらったのでした。

 1986年9月26日、シリーズの初作となる『悪魔城ドラキュラ』がファミコン(ディスクシステム)で発売されました。このゲームは、魔物たちを配下に従えた闇の王・ドラキュラと、主人公シモン・ベルモンドとの戦いを描いた横スクロールアクションです。1980年代は横スクロールアクションが高い人気を誇っており、当時としては圧倒的に美しいグラフィックやその完成度の高さと相まって、この作品は大好評を博しました。

 作中の世界では、魔物を倒せるような強い力を持つ人々は総じて、民衆からヴァンパイアハンターと呼ばれていました。そんな一握りのヴァンパイアハンターの中でも、最強の一族と目されていたのがベルモンド家です。ベルモンド家を名門たらしめたのは、優れた血筋に加えて、一族に代々伝わってきた伝説の武器(ムチ)の存在にほかなりません。この世に2つとない伝説のムチに捧げられた呼び名が、皆さんもご存知のヴァンパイアキラーだったのです。

 この名作に続いて、『悪魔城ドラキュラ』シリーズは続々とリリースされていくことになりますが、基本システムをはじめ、とりわけ世界設定はほとんどの作品で初作のものが脈々と受け継がれていました。しかし、シリーズは2010年に大きな転換期を迎えます。この年に発表された『キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ』はスペインのスタジオ・Mercury Steamが開発を担当し、世界設定をゼロからリ・イマジネーション(再構築)した新規シリーズとしてお披露目されました。この新規シリーズは、これまでとはまったく異なる魅力を持ったアクションアドベンチャーとして、2014年9月発売の最新作にまで続いています。

 さて、時代を少し戻して1989年、横スクロールアクションがまだ根強い人気を誇っていたゲーム界に登場したのが、今回紹介する『悪魔城伝説』です。主人公のラルフ・C・ベルモンドは15世紀のベルモンド家から輩出されたヴァンパイアハンターで、初作の主人公シモンの祖先に当たる人物です。基本システムも初作にかなり近いテイストに仕上がっており、生粋のアクションファンから拍手喝采で迎えられました。

『悪魔城伝説』
▲ゲーム終盤には、『悪魔城ドラキュラ』をモチーフにしたステージも登場。開発陣が初作をリスペクトしていた姿勢が伺えます。

 そして、ゲーム内容とともに当時大きな話題をさらったのが、グラフィックと音楽でした。本作のファミコンソフトには、コナミが独自に開発したLSI“VRC6”(※LSI=集積回路)が搭載されており、当時のファンに「これがファミコンなの? 信じられない!」と叫ばせるぐらいのクオリティを持った、美麗な絵と重厚な音が次々と展開していったのです。

 ただ、現在のグラフィックレベルに見慣れた若い読者の皆さんには、当時の感動や衝撃が想像しにくいかもしれません。筆者としては至極残念なのですが、これは時代の必然ゆえにいたし方ないでしょう。

『悪魔城伝説』
▲時計塔内部を思わせるステージでは、背景の歯車が回転しています。これは当時のファミコンでは考えらない画面処理でした。

■基本システムを駆け足で紹介!!

 1980年代、横スクロールアクションはゲーム界の主役の1つとして君臨していました。ポリゴンはまだ実験段階の域で、この時代のゲームは2Dをベースにデザインされていたのです。横スクロールアクションのシステムや魅力は年々洗練されていって、1989年ごろにはほぼ絶頂期を迎えていました。その時期に人気シリーズの最新作として登場したのですから、『悪魔城伝説』がおもしろくないはずはありません!

 ラルフは大きく分けて2タイプの武器を与えられており、それを駆使して敵と戦っていくことになります。1つ目がメイン武器のムチ(ヴァンパイアキラー)で、この武器はラルフの真正面にしか振ることができないところが大きな特徴でした。

 そして2つ目が攻撃アイテムで、これらは補助的な攻撃手段に位置づけられています。使うためには特定のアイテムを拾って各種武器を装備しておく必要があり、かつ使用時にはハートゲージを消費するという制約も設けられていました(ハートゲージは特定のアイテムで回復可能)。なお、武器アイテムには短剣・オノ・聖水・十字架・懐中時計の5種類があります。

●ムチ

『悪魔城伝説』
▲ムチ(ヴァンパイアキラー)は、まさにこのシリーズを象徴する武器。これを使いこなすことが、攻略の第一歩なのです。

●短剣

『悪魔城伝説』
▲短刀は、正面にまっすぐ飛んでいく飛び道具です。威力は弱いものの、遠距離の敵にも攻撃できる点が最大の強みでした。

●オノ

『悪魔城伝説』
▲オノは、放物線上に放たれる飛び道具です。頭上に攻撃できるところが強みで、上空から敵が迫る場所では重宝されました。

●聖水

『悪魔城伝説』
▲聖水を前方に放ると、地面に接触後に火柱が上がります。攻撃範囲は狭いのですが、攻撃力は高いという、クセのある武器でした。

●十字架

『悪魔城伝説』
▲十字架は、前方に投げるタイプの飛び道具です。軌道が独特で長く空中にとどまりやすく、敵に当てやすい利点があります。

●懐中時計

『悪魔城伝説』
▲懐中時計は、約3秒間、敵の動きを静止させられるという特殊な道具です。うまく使えば、危険地帯を簡単に突破できることも……。

 続いて、基本システムの中でも特に当時のファンから高い注目度を誇ったポイントを3つピックアップ。それらのシステムがなぜ好評を博したのか、チェックしていきましょう。

●練られた攻撃パターン

 ボスキャラたちの攻撃パターンは実によく練り込まれており、プレイヤーを熱中させてやみませんでした。今のゲームと比べると、当時のプログラムで実現可能な思考ルーチンはシンプルこのうえありません。それでいて奥深さ、すなわち攻略パターンを練るおもしろさや、操作テクニックを研く追求度は、現在のゲームにも劣らないレベルで表現されていたのです。

『悪魔城伝説』
▲ラルフが戦いやすい足場に登ると、このボスはすぐに逃げてしまいます。こういった思考ルーチンが奥深さを生み出していました。

●運命の分かれ道(?)のルート分岐

 本作では特定のステージを攻略すると、分岐ポイントが発生するシステムが採用されていました。ここでどの道を選ぶかによって、次に進むステージが変わってくる訳です。その選択によって今後の難易度が変わるのはもちろん、ルートによっては後述する仲間と出会えるかどうかが左右されることもありました。

 現在では、ルート分岐はありふれたシステムですが、当時のゲームはプログラム容量が限られていたこともあって、実装が難しいシステムといえました。しかも、ゲーム全体のバランスも崩れないように細かく配慮してあり、今見直しても(当時の開発環境の中で)よく作れたものだと感心させられます。

『悪魔城伝説』
▲ステージ3-01をクリアした後に発生する、ルート分岐。上のルートと下のルート、どちらに進むかはプレイヤーしだいです。
『悪魔城伝説』
▲上の写真のルート分岐で上側の道を進むと、不気味な森にたどり着きます。カラスやクモなどの襲撃を受けることに!
『悪魔城伝説』
▲上で紹介しているルート分岐で下側の道を選ぶと、沼地に到着。沼地は油断すると地面に沈み込んでしまう危険な場所でした。

●仲間とともにドラキュラに立ち向かおう!

 もう1つ、本作で傑出していたのが、仲間との共闘システムでした。特定のステージを攻略するとイベントが発生し、ドラキュラに囚われていたり、ある理由からその土地にとどまっていたりした、正義の心を持つ人物と出会えることに! そんな隠しキャラは、全部で3人用意されていました。

『悪魔城伝説』
▲隠しキャラの1人、サイファとの出会いを果たしたラルフ。彼らを探すのも、冒険中の大きな楽しみでした。

 正義の心を持つ人物との出会いを果たしたラルフは、その隠しキャラを冒険に同行させるかどうか決めることになります。もし、すでに別の誰かを同行させていた場合には、どちらをパートナーにするか選ばなければなりません。こうして冒険をともにする同行者ができると、SELECTボタンを押すことで、操作するプレイヤーキャラをいつでもチェンジできるようになります。

 キャラによって攻撃能力、体の当たり判定の大きさ、移動能力などは千差万別なので、同じステージでもキャラごとに異なる攻略法を編み出すことができました。このようなシステムの元祖はどの作品かを語りだすと、仕様の解釈も絡んで諸説紛々なのですが“いつでもキャラチェンジできて、かつその使い分けによって攻略に“色”が出せるゲーム”の最初期の成功例の1つ筆者は考えています。では、3人の隠しキャラそれぞれの特性も見ていくことにいたしましょう。

†グラント・ダナスティ

 ドラキュラに恨みを抱く男性。仲間をドラキュラに殺され、戦いを挑むも、魔物に姿を変えられ配下として使役されてしまうのでした。ラルフに倒された際、人間の姿と心を取り戻します。

『悪魔城伝説』
▲身軽で使い勝手がよく、場合によってはラルフをしのぐ強さを発揮します。壁や天井に張り付いて移動できるというスキルも持っています。

†サイファ・ヴェルナンデス

 魔法を操るヴァンパイアハンター。ドラキュラに立ち向かったものの、石像に封じ込められてしまいました。その地に生息するボスが倒されたことで封印が解け、自由の身になります。

『悪魔城伝説』
▲防御力は低いが、魔法による攻撃力は最強クラス。例えば冷気でザコ敵を凍らせれば、無防備な相手を一撃で粉々に粉砕できます。

†アルカード

 ドラキュラの息子。父であるドラキュラへの反逆を決意し、協力者を探すべく、城内でそれに見合う力を持つ人間が現われるのを待ち続けていました。ラルフたちを試すため、最初は襲いかかってきますが、返り討ちにするとその実力を認めて、共闘の誘いを持ちかけてきます。

 なお、“アルカード”の名前をアルファベトで表記すると“ALUCARD”となります。そして、このスペルを逆に読むと“DRACULA”、すなわち“ドラキュラ”となり、闇の王の血筋の者であることが暗に示されているのです。

『悪魔城伝説』
▲アルカード自身がコウモリに変身すれば、飛行して移動できます。ショートカットや落下ミスの回避などに活用できるでしょう。

■確かな手ごたえを感じさせる骨太なゲーム内容

 本作が発売されたのは25年前なので、レトロ感が香るのは確かですし、今の基準からすると荒い部分も見受けられます。しかし、本作の特定の要素には、近代のゲームにはない魅力が表現されており、今遊んでも「スゴい!」と思わせられる深みを体験させてくれるのです。それが当時のファン(筆者)の思い込みか否かは、以下の紹介がおのずと明らかにしてくれることでしょう。

●1発ごとの動作を正確に決めていく快感

 メイン武器のムチには、攻略上重要な2つの“制約”が課されています。1つは攻撃範囲で、上で述べたようにラルフの正面にしか振ることができません。そして、もう1つは時間的な制約です。攻撃ボタン(Bボタン)を押せばムチは即座に振られる訳ではないのです。厳密にはわずかながら振りかぶりモーションが入ったのち、ムチが前方に伸びて、初めて攻撃判定が発生する仕様になっています。

『悪魔城伝説』
▲攻撃ボタンを押すと、一瞬ですが振りかぶりモーションが入ります。この段階では、まだムチの攻撃判定は発生しません。

 最初こそこの制約に戸惑いますが、しばらく遊んでいると、これがおもしろさの源泉であることに気づかされるでしょう。なぜなら、その制約があるからこそ、ムチによる攻撃は1発1発を狙って確実に当てていくことが重要になっているからです。それがテクニカルな魅力を生み、近年の“手数勝負”に傾倒しがちなアクションとは一線を画する、玄人好みの戦略性を体験させてくれるのです。

『悪魔城伝説』
▲アクティブな動きを見せる敵に対しては、狙ってムチを当てるのにテクニックを要します。それだけにピタリと決まれば超快感!

●微妙なポジショニングが勝負の分かれ目に!

 下の写真の敵はオノを投げつけてくるのですが、胸の高さで投げてくるのか、地表に沿うような低い弾道で投げてくるかはランダムです。ラルフがこの敵と正面切って戦う場合、胸の高さのオノは立ったままムチを振れば叩き落とせますが、低い弾道のオノはしゃがんでムチを振らないと防げません。

 敵の攻撃の構成はいたってシンプルですが、実際に戦うと、絶妙なバランス調整に裏打ちされた難敵であることを思い知らされるでしょう。距離を取っている時には、敵が投じてくる上下のオノは難なくさばけるはずです。

 しかし、そこからではラルフのムチが届きませんし、だからといって距離を詰めると必然的にオノへの対処がしにくくなります。ムチの射程距離内で、敵のオノに対処するのは“不可能ではありませんが、かなりシビア”です。シンプルな構成だからこそ、フレーム(コマ)単位の対処できるかできないかギリギリのタイミングで急接近しつつ、けっして理不尽にはならないように配慮されており、芸術的な緊迫感に触れられるのです。

『悪魔城伝説』
▲この敵は2つの弾道で、オノを投げ分けてきます。瞬時の反応ができなければ、至近距離でこの攻撃をさばくことはできません。

 2Dのゲームは、3Dのゲームより地味とはいえ、同時に“位置関係がわかりやすい”というメリットがあるのです。3Dのゲームでは、緊迫感と理不尽の狭間(はざま)をここまで徹底的に極めることは困難でしょう。そして、ラルフと敵の位置関係がわかりやすいだけに、下の写真のように、微妙なポジショニングによる攻略法を編み出すこともできます。これが“2Dならではの魅力”なのです。

『悪魔城伝説』
▲この位置でジャンプして、ラルフの武器アイテムのオノを使えば、ギリギリで敵に攻撃が届きます。相手の死角から攻められるのです。
『悪魔城伝説』
▲階段から絶妙なポジショニングを考えて、敵を攻撃するラルフ。この位置なら、低い弾道のオノしか、ラルフには届きません。

●楽な攻略法こそ成功させにくい(?)不思議

 ステージ中のトラップからボス戦にいたるまで、本作では同じ場所で異なる攻略法を編み出せる例がいくつも見い出せますが、そんな中で興味をそそられるのが、「楽な攻略法こそ成功させにくい」というシチュエーションです。若い皆さんは「矛盾してませんか?」と思ったことでしょう。では、その具体例を1つ紹介しながら、この摩訶不思議な仕様の秘密に迫ってみたいと思います。

 下の写真の敵は、最終ボスのドラキュラよりも強いと言われている、ステージ8-03のボス(第1形態)です。フラフラと空中を浮遊しつつ、空中に無数のカマを発生させ、それをラルフに投げつけてきます。その回避は容易ではなく、武器アイテムのクロスなどを使い、いかに効率よく攻めるかが“正攻法”といえるでしょう。

『悪魔城伝説』
▲ステージ8-03のボス(第1形態)と戦うラルフ。空中に次々と現われたカマは、一定時間後にラルフ目がけて飛んできます。

 さて、では上で解説した正攻法とは異なる、取っておきの攻略法をお教えしましょう。本作にはレアアイテムとして“2連射”または“3連射”と呼ばれるアイテムが存在します。これを入手すると、その時に装備している武器アイテムを、2個(もしくは3個)同時に使うことができるのです(通常、武器アイテムは1個使うと、それが消えるまで、次の武器アイテムを発射することはできません)。

 武器アイテムの聖水から生じた火柱には、触れた敵を(ほんの一瞬ですが)硬直させる特殊効果があります。ただ、火柱はすぐに消滅してしまうため、実戦でそれを実感する機会はほとんどないでしょう。しかし、聖水+3連射の装備を整えると、火柱を連続的に発生させるという、通常なら不可能な“離れ業”を実行できます。この“離れ業”をうまく使えば、ボスの動きを止めたまま一方的にダメージを与え、一気に葬り去ることができるのです!

『悪魔城伝説』
▲最強のステージ8-03のボス(第1形態)も、聖水の連続攻撃にはなす術がなく、ラルフの一方的な攻撃ですぐに勝負を決められます。

 「じゃあ、最初からこの方法で倒せばいいじゃないか」と皆さんは思ったことでしょうが、これがそう簡単にはいかないのです。まず、2連射や3連射がレアアイテムだということを思い出してください。

 ステージ探索を極めた熟練者なら、以下の写真の場所でこれらのアイテムをゲットできることを知っているかもしれません。しかし、この入手経路はボス戦前の一定区間をノーミスで進むことが前提になっており、それ自体、かなり難易度の高い課題といえます。

『悪魔城伝説』
▲ボス戦の1つ前のエリア・ステージ8-02。写真の敵は、聖水で倒した場合のみ、2連射をドロップします。
『悪魔城伝説』
▲終盤にボスが待ち受けるステージ8-03。2連射をすでに持っている場合のみ、正面の壁を破壊すると3連射が出現します。

 そもそも、3連射+聖水の装備さえあれば、簡単にボスをハメ殺せるものでしょうか? 実はそんなに甘くありません! 開戦直後、絶妙なタイミングでボスの背後を取らないと、聖水を浴びせるチャンスは(原則的に)めぐってきません。しかも、ボス戦で一度力尽きると、(残り人数がいれば)ステージ8-03の冒頭からリトライできますが、ここからでは3連射をゲットしてボス戦に臨むことができません。

 結論として、倒しにくい正攻法のほうが、よほど簡単なのです。これこそ、1980年代の名物“楽な攻略法こそ成功させにくい”という仕様の正体といえます。ゲームに慣れてきた熟練者は、ある時「そろそろ“3連射+聖水”作戦を試す技量が整ったかな」と思い始め、チャレンジすることでしょう。

 失敗に失敗を重ね、ついに成功させると、これまで息も絶え絶えにどうにか仕留めていたボスを、いとも簡単に倒せてしまいます。この苦労と圧勝のギャップ、それが突風のような快感となって胸中を吹き抜け、衝撃的な感動となって心を満たしてくれるのです。

 このようなゲームデザインは明らかに開発者が意図して仕込んだものであり、同時期のアクションでは(コナミ以外の作品も含めて)ポピュラーな仕様として広く知られていました。昔のゲームはプログラム容量の制約から、各ステージのサイズをコンパクトにせざるを得ませんでしたが、だからこそ、このようなアイデアが表現しやすく、かつプレイヤーも自然とその存在に気づき、ゲーム文化に根づいていったのでした。

 近年のゲームは大容量化の一途をたどり、“楽な攻略法こそ成功させにくい”という手法との相性がはなはだ悪く、(皆無とは言いませんが)事実上、その仕様は滅び去ってしまいました。昔のゲームを知らない皆さんに、ぜひ伝えたいことがあります。レトロゲームはただの古いゲームではなく、“今日のゲーム界が忘れてしまった、近代ゲームにないスゴさ”も秘められているのです。

■今でも遊べる『悪魔城伝説』

 2014年4月16日、伝説が現世によみがえりました。あの『悪魔城伝説』が、Wii Uのバーチャルコンソールにて、514円(税込)で配信が始まったのです。当時をなつかしむ往年のファンはもちろん、本稿を読んで『悪魔城伝説』に興味を持ってくれたアクションファンの皆さんにも、ぜひオススメしたい1本です。名作として、そして“ゲーム史を学ぶ高品質な資料”としてぜひ、手に取ってみましょう!

『悪魔城伝説』
▲『悪魔城伝説』は2014年10月現在も絶賛配信中。ファミコンを知らない世代の人でも、この名作を遊ぶ機会がめぐってきた訳です。

 ただ、レトロゲームゆえの高いハードルがあるのは否めませんので、最後に『悪魔城伝説』を初めて手に取る人へのガイダンスをお届けしましょう。本作の真価に触れる指針として役立てていただければ、コナミを愛し、『悪魔城ドラキュラ』シリーズを終生の友と公言してはばからない筆者にとって、こんなにうれしいことはありません。

●難易度

 1980年代のアクションは総じて難易度が高く、『悪魔城伝説』はその中でもトップクラスに属しています。ミスすることが、同じステージを繰り返し遊んでパターンを覚え込む機会を呼び込み、それが上達する快感へとつながるようにゲームデザインされているのです。高難度も作風と理解したうえで、何度でもチャレンジしてみてくださいね。

『悪魔城伝説』
▲コンティニュー回数は無制限です。なお、パスワードを使って、特定のステージをやり直すシステムも用意されています。

●動作の制約

 ラルフたちの動きには、近年のゲームでは考えられないような制約がいくつか課されています。例えば、階段は昇り口(降り口)で十字ボタンの上(または下)を押すことで昇り降りできますが、階段上ではゆっくりとしか移動できないうえ、ジャンプすらままなりません。

 これは当時のプログラム技術その他の限界ゆえの仕様として、受け入れるしかないでしょう。なお、ゲーム全体としては、階段による動きの制約を計算したうえでバランス調整されており、工夫すればちゃんと対処できるはずです。中には下の写真のように、階段の制約を利用してデザインされた難所もあるので、仕様の範囲で上手な攻略法を考えてみましょう!

『悪魔城伝説』
▲終盤には、長い階段を昇るステージも登場。最初は戸惑いますが、この制約下で回避するのが、だんだんと快感に変わっていくのです。

●グラフィックが欠ける現象

 ファミコンをはじめ、この時代のゲーム機のグラフィックは、大きく分けて2つの要素で描かれていました。1つは“背景”で、その背景に“キャラクター”や“動く足場”といったパーツを配置して、ゲーム画面が構成されていた訳です。そのパーツはゲーム専門用語で“スプライト”と呼ばれており、今現在の“ポリゴン”と同じく、当時のゲーム好きなら誰でも知っている言葉の1つでした。

 ちなみに、ファミコンの機能上、スプライトの表示には厳しい制約が課されており、最大同時表示数はもちろん、横方向に並べて表示できる数も限られていました。それを超える場合は、一時的に一部のスプライトの表示を消すしか手がなかったのです。『悪魔城伝説』をプレイしていると、時々グラフィックが欠けることがありますが、それはファミコンの性能限界の名残りといえます。

『悪魔城伝説』
▲当時のファミコンは、スプライトが横にたくさん並ぶと、表示が欠けてしまいがちでした。これもまた、ゲーム史の一部なのです。

 この時代は、“わずかでも絵が欠けることを恐れる”といった考え方は皆無に等しく、むしろクリエイターたちはプレイに支障を来たさない範囲で、どこまでハードの限界を越えて遊びを表現できるかに、果敢に挑戦していたのです。“スプライト欠け”は決して“ミス”ではありません。当時のクリエイターたちの努力の結晶であり、“ゲーム史を飾る美しい足跡”の1つなのです。

(C)Konami Digital Entertainment

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