『アイマス』最新TCG2種同日発売記念。ブンケイ・是空両プロデューサーにロングインタビュー【第1回】

文：ファイ

　こんにちは！　TCG担当のファイです。ブシロードが展開するトレーディングカードゲーム『ヴァイスシュヴァルツ』と『ChaosTCG』の両方で、『アイドルマスター』の新ブースターが11月28日に同時発売となります。

　『ヴァイスシュヴァルツ』は『劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ！』』、『ChaosTCG』は『アイドルマスター ワンフォーオール』と、厳密には別作品ですが、いずれも『アイドルマスター』のアイドルたちが登場し、活躍します。

　この発売を前に、『ヴァイスシュヴァルツ』元プロデューサーのブンケイPこと、田中文啓さんと『ChaosTCG』アソシエイトプロデューサーの是空とおるさんに、2つの作品が同時に発売となった経緯やカード化への思い、そして開発秘話をインタビューしてきました。

　それではたっぷりとご覧ください！　……というところなのですが、本当にたっぷりすぎて一気に読むにはあまりに長い内容になってしまいました。しかも、そのほとんどが濃い内容なのでカットしてしまうのはもったいない。そこで、全4回の短期連載としてお届けします！

　まず1回目となる今回は、“2作品を同日に発売することになった経緯”と“発売を前にした現環境についての考え”など、作品内容そのものというよりは、まず前提として話しておきたいことが中心の内容となっています。

■同時発売になった経緯について聞く

――ではまず始めに、2作品が同時に発売されることになった経緯について教えてください。

田中文啓さん（以下、ブンケイP）：経緯をお話する前に、まず僕の今作での立場について話しておきますね。今回はディレクターやプロデューサーではなく、もちろんファン代表Pというわけでもなく、強いて言うならアドバイザーというようなことをやりました。

是空とおるさん（以下、是空さん）：ブンケイさんの立ち位置は『ヴァイスシュヴァルツ』だけでなく、『ChaosTCG』でも同様です。僕のイメージだと総合アドバイザーという立場で、両作品を見てもらった感じです。

ブンケイP：カードの能力とキャラクターの性格が、あまりにかけ離れないようにアドバイスしたり、逆にキャラクターの特長を生かしたカードになるように、そのキャラクターのことについて話をしたりしました。

是空さん：僕の立ち位置はいつも通りですので、発売日とは別の話題ですが、『ChaosTCG』で『アイドルマスター』が発売されることになった経緯も話しておこうと思います。『ChaosTCG』が立ち上がって5年経ちますが、5年前からずっと『ChaosTCG』で『アイドルマスター』を出したいと思っていました。『ヴァイスシュヴァルツ』で最初の『アイドルマスター』ブースターが出る前からですね。

　ブシロードさんが、版元のバンダイナムコゲームス様に版権の交渉に行ってくれたのですが、帰ってきて「版権とれたよ。ヴァイスで！」と言われた時の心の折れようは今でも忘れません。忘れようがありません（笑）。

ブンケイP：そんなことがあったの!?

是空さん：『ヴァイスシュヴァルツ』の規模感で考えると当然なんですが、悔しかったですね。うまくいけば『ストライクウィッチーズ』の次くらいに出したかったですね。当時から「このタイトルは行ける！」と思っていたので。それから4年をかけて『ぷちます！-プチ・アイドルマスター-』を経て、今回ようやく発売することができました。

ブンケイP：ブースターパック『劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ！』』の企画時点では知らなかったのですが、来年の1月からアニメの新作（『アイドルマスター シンデレラガールズ』）が放送になる直前のタイミングで発売となることがわかったので、『アイドルマスター』というコンテンツをカードゲームでも盛り上げていこうと思っていました。

　それで、『ChaosTCG』の企画の進行具合なども確認したところ、同時発売できそうだなと。2カ月連続発売でもいいけども、いっそ同発でいこう、という経緯になりました。

是空さん：いっそ同発って（笑）。ただ、同時発売となることで、『OS：ダ・カーポ 1.00』発売の際に行われた“風見学園レセプションキャンペーン”と同じようなクロスキャンペーンの展開ができました。

ブンケイP：このキャンペーンをきっかけに『ヴァイスシュヴァルツ』だけでなく『ChaosTCG』でも遊んでもらいたいですね。

是空さん：『ヴァイスシュヴァルツ』のプレイヤーの方が『ChaosTCG』よりも多いのは明らかですので、我々は“乗っからせてもらおう”という気持ちもありました。その上で、『ChaosTCG』にしかない魅力に注目してもらうきっかけになればいいなと。お客様にしてみれば金銭的な負担が大変だと思うのですが、お祭りとして考えてもらえればうれしいかな。

ブンケイP：直前にPS3の『アイドルマスター ワンフォーオール』でも新しいカタログが配信されるのですが、プロデューサー各位はこの日のために副業で稼いでいるはずですから大丈夫でしょう、きっと。よろしくお願いします。

是空さん：あくまでも、本業がプロデューサー、社会的立場が副業ということですね……（笑）。

――クロスキャンペーンでは、ブースターにもう片方のタイトルのPRカードが封入されていますが、これらのカードはどういう理由で決めたのでしょうか。

▲『ヴァイスシュヴァルツ』のボックスには《ライブ直前「天海 春香」》が封入。		▲『ChaosTCG』のボックスには《“映画『眠り姫』” 春香＆美希＆千早》が封入。

ブンケイP：『ヴァイスシュヴァルツ』の《“映画『眠り姫』” 春香＆美希＆千早》は劇場版の冒頭部分ですし、『ChaosTCG』の《ライブ直前「天海 春香」》はそれこそ「これから始まるぞ！」というタイミングです。新しいものを始めるにはちょうどいいかなと思いまして。

是空さん：にしても、この《ライブ直前「天海 春香」》はすごい格好していますよね。

ブンケイP：PS3の『アイドルマスター ワンフォーオール』をやっているとわかると思うのですが、みんな水着を着せてライブをやるでしょ？

是空さん：きっとこの先《ライブ直前○○》ってカードは、全部水着でいくと思ってください。逆にブースターパックで水着のカードを収録しなかったという点もポイントで、これは後でお話しする内容の伏線にしておきます。

　そうそう、『ChaosTCG』のボックスには描き下ろしの《トップオブトップ 「玲音」》のイラストを使ったスリーブも5枚封入されています。銀券2枚でも交換できるようになっていますので、『ヴァイスシュヴァルツ』にも玲音を参戦させたい時には、ぜひ使ってみてください。

――今回、パラレルカードが非常に多く設定されていますが、具体的にどういう内容でしょうか？

ブンケイP：『ヴァイスシュヴァルツ』では《“今を大切に”○○》に声優さんのサインが、《輝きの向こう側へ！○○》にアイドルのサインが箔押しで入っているものを用意しました。

▲“今を大切に”シリーズには担当声優さんの箔押しサインが入るパラレルを設定。		▲輝きの向こう側へ！シリーズにはアイドルの箔押しサインが入るパラレルを設定。

是空さん：『ChaosTCG』は、パートナー候補となるカードに声優さんのサインを、そして特殊パラレルにアイドルたちのサインを箔押しで入れてあります。

▲パートナー向けのキャラクターカードには担当声優さんの箔押しサインが入るパラレルを設定。		▲イラストレーター描き下ろしのエクストラカードにはアイドルの箔押しサインが入るパラレルを設定。

　先に27種類のパラレルを決めたのは『ヴァイスシュヴァルツ』なのですが、『ヴァイスシュヴァルツ』がバンダイナムコゲームス様に通してくれたおかげで、『ChaosTCG』はそのすぐ後ろにくっつけば、スリップストリーム状態で、空気抵抗がまったくなく企画が進んだわけです（笑）。

　イラストレーター陣による素晴らしい描き下ろしカードもあるので、これにアイドルのサインを入れて、特殊パラレルにしようということになりました。玲音にはサインがないのですが、描き下ろしカードと同様の光り方をした特殊パラレルです。

ブンケイP：当然ですけど、これだけやると監修とかも大変なわけで……。バンダイナムコゲームス様にも大変な苦労をしてもらって生み出されたということを、ユーザーの皆さんもどうか知っておいてください。

是空さん：これだけ種類があると、全部を集めたいという人には明確に金銭的な負荷がかかります。でもね、誰しも譲れないことってあると思います。僕らにとって、今回がそうだったわけです。身勝手な言い分かもしれませんが、まず好きなアイドルから集めていってください。

■欲しい商品は事前に予約をしてほしい

▲このブースターのために描き下ろされた玲音。

――じっくり集めようと思っている人もいると思いますが、すでに商品はメーカー完売しているとのことですが？

ブンケイP：せっかくですから、ここでメーカー完売がなぜ起きるのか、というものを説明しておきたいと思います。まず、皆さんに商品が出ますよって発表しますよね。そしてお店に発注の案内を出すわけです。

　皆さんはお店で予約すると思いますが、“生産数限定商品”でない限り、発注締め切りまでにお店から発注いただいた数は必ず生産します。

　ところが、この締め切りを過ぎてから、もうちょっと欲しいという旨をいただくわけです。余裕を持って作ってはいますので、そこから出すのですが、余裕分も超えてしまうと完売ということになってしまいます。だから、早め早めに予約をしてほしいのです。締め切り前に予約してくれれば確実に手に入るので。

是空さん：『ヴァイスシュヴァルツ』もそうですし、『ChaosTCG』も何タイトルか連続で完売してしまっているので、自分の欲しいタイトルはどうか予約をして、きっちりと手に入れてもらいたいです。

ブンケイP：もちろん、すぐ再販してくれればいいのにという声も届いています。しかし、例えば1ボックス分だけを再販とかはできないわけですね。ある程度の数が集まらないと。なので、もし再販を強く希望されるというのであれば、同じ意見を持つ仲間をたくさん集めてください。そういった声が多く集まれば、再販することも可能になります。

是空さん：『ChaosTCG』では、あまり振るわないタイトルもあったというのも事実ですので、お店さんに余剰で仕入れてもらうのはなかなか難しい状況だと思っています。今は、『ご注文はうさぎですか？』や、今回の『アイドルマスター ワンフォーオール』のように、しっかりとしたタイトルを出して信頼を回復していかなければと思います。

ブンケイP：もちろん、どれもいい商品を目指して作っていますが、買ってみて期待外れだと言われてしまったら頭を下げるしかありません。そうならないように、好きなタイトルを選んで買ってもらいながら、確かにかわいかった、面白かった言ってもらえるようにちゃんと中身を作っていきます。

是空さん：『ヴァイスシュヴァルツ』も『ChaosTCG』もキャラクターカードゲームなので、好きな作品を使って勝ちたいという思いは非常に大事な部分ですからね。

　もちろん、強さも重要ですが、前回のインタビューでもお話しした通り、カードゲームってじゃんけんみたいなものだと思っています。今、“グーのデッキ”が強ければ、“パーのデッキ”を提供していくというような感じです。

ブンケイP：あまりに新機軸を試しすぎて、使い勝手が難しすぎたということもありましたし、逆に開発の想定外の使い方や強さを発揮してしまうカードもありました。ときおり制限カードを出さざるを得ない状況になりますが、もちろん出したくて出しているわけではありません。

　制限カードが出ることは、開発のミス、力不足と言うことです。誰も喜ばないですからね。だから、自分のお気に入りのカードが制限になってしまった方には、本当にごめんなさいと言いたい。

▲本来は自分が好きなキャラクターを活躍させてあげたい。

是空さん：制限になるようなカードをそのままにしておくことも、選択肢としてあるのかもしれません。もっと強いカードを作るとか。でも、それはプレイヤーからすればつらい状況になってしまうだけかなと思います。

　僕も、各地で開催されているイベントに参加していますが、プレイヤーの皆さんに捕まって怒られました。『東方混沌符』での《奇跡を起こす人間「東風谷 早苗」》とかですね。今後の環境のためにも、こういった制限カードを作り出さないように気をつけていきます。

　だから、イベント会場で僕に対してはどんどん意見を言ってもらいたいです。「なんとなく全体的に弱い」とかではなく「このカードのシナジーはこのくらいあってもいいと思う」みたいな具体的な話だとうれしいです。この先の開発に皆さんの意見が入ってくることもあるかもしれません。

　ただ、今回の『アイドルマスター』は、「なんでこんなに強いんですか!?」って言われても「アイドルマスターだからな」って返しちゃうかもしれません（笑）。

第2回に続く

■次回はいよいよ具体的なカードの話へ

　1回目のインタビューはいかがだったでしょうか。2つの『アイドルマスター』が2つのTCGで同時発売になった経緯はおわかりいただけたかなと思います。同時発売ありきで進行していたわけではなかったという裏側を知ることができたのではないでしょうか。

　後半部分は、予約の大切さや制限カードなどデリケートな問題だったので、ちょっと全体的にはおとなしめな内容になっていたかと思います。ご安心ください。次回以降はブンケイPも是空さんも全力で『アイドルマスター』への愛を語ってくれています。どうぞお楽しみに。それではまた！

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