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2014年11月27日(木)

『ファンタシースター ノヴァ』レビュー。体験版からの変更点や“RPGの新星”としてのデキをレポート

文:ユート

 セガが11月27日に発売するPS Vita用ソフト『ファンタシースター ノヴァ』。『ファンタシースターオンライン』以降のほぼすべてのシリーズ作品をプレイしているライター・ユートが、本作のレビューをお届けします!

『ファンタシースター ノヴァ』

 『ファンタシースター』シリーズといえば、最近はオンライン専用タイトル『ファンタシースターオンライン2』の知名度がダンチだと思いますが、本作はオンライン機能を排除し、“アドホックプレイに特化した協力プレイ”と“スタンドアローンで遊ぶRPG”という点を重視して作られているのが特徴です。

 基本的なシステムは『PSO2』を踏襲しているものの、成長要素やカスタマイズ要素などは独自の方向へ進化。ストーリー性も高く、やり込み要素が豊富な1本のRPGを目指して生まれた作品といえるでしょう。シリーズプレイヤー的なノリでいうと、『ファンタシースターユニバース』からの『ファンシースターポータブル』シリーズ的な流れですね。

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
▲開発を手がけているのはトライエース。“NOVA=新星”と題された新たな『ファンタシースター』が、長い歴史に名を刻みます。

 なお、今回のレビューに使用しているのは発売前のサンプル版なので、一部製品版と異なる部分があったり、アップデートに対応していなかったりする部分があったりしますが、ご容赦ください。

⇒本作の用語集はコチラ!

■サバイバル生活以外のエピソードも個人的には注目どころ!

 まずはRPGのだいご味である物語について。本作の物語は、はるか彼方に存在する惑星の調査を目的としている艦隊の、1つの部隊を中心に描かれます。事前の観測では人類や文明の痕跡が確認できなかったはずの惑星から謎の攻撃を受け、不時着を余儀なくされた部隊“デルタ・ヴァリアント”。惑星ではなんらかの理由で戦闘や艦の動力として必要なエネルギーが使えず、他の部隊からの救援も望めないという絶望的な状況に立たされてしまいます。惑星に住まう原生獣や謎の武装を施された巨大生物が襲い来る中、彼らは生きてこの惑星を脱出できるのか? というのが物語の大筋になります。

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』

 辺境の惑星でのサバイバル生活が物語の大枠として用意されているものの、物語の展開は存外に早く、割と順調に問題が解決していくのが印象的。本作はクエストをクリアすることで物語が進んで行くのですが、戦闘に必要なエネルギーは冒頭のクエストですぐに代わりのエネルギーが見つかります。まあ、そうでないと戦闘が行えないので当然かも知れませんが(笑)。

 その後も「敵が大きすぎてまともに戦えない!」→「じゃあ新兵器を開発しましょう」という感じで対抗策がすぐにできあがるなど、結構テンポよく進んで行きます。もちろん、救援が望めない状況だからこそ起こってしまう悲劇があったり、脱出のキモとなる艦の修復と動力源についての問題も残り続けたりしますが、その他についてはわりとサクサクです。

 じゃあ他の見どころは? と聞かれると、個人的には“デルタ・ヴァリアント”のクルーたちの内面的な成長が描かれる点かな、と。主人公をはじめ、物語の中心となる3人の主要キャラは、戦闘経験が浅い新人隊員ばかり。自分の力は役にたつのか? 自分が本当にやりたいことは? など、それぞれが抱えている悩みと、それを乗り越える成長のエピソードが展開されていくのです。部隊の先輩たちに導かれ、不時着直後と比べると大きな内面的成長遂げる主要キャラたち。サバイバル生活ともに、この変化にも注目して物語を楽しむといいかな、と思います。

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
▲明るく元気なルティナ、熱血漢のセイル、引っ込み思案だけど射撃の腕はバツグンのイズナ。先輩であり部隊の隊長でもある姉御肌・フィルディアたちに導かれ、1人前の存在へと成長していきます。

■PS Vitaで最高峰のキャラクタークリエイト機能を搭載!

 『PSO2』のシステムの魅力の1つといえば、とことんこだわり抜けるキャラクタークリエイト要素。本作はその血を受け継ぎ、PS Vitaのタイトルでは最高峰といえるクリエイト機能を搭載しています。髪型や身長といった大まかな部分はもちろん、顔だと目の大きさや角度、鼻の高さや小鼻の大きさ、口の大きさや角度、まつげ、耳……。上半身は肩幅や腕の大きさ、長さ、下半身は足の長さやくるぶしの位置などなど……ほんっとに、膨大な部分を細かく調整できちゃうんです!

 こだわりだすと、余裕で半日から1日ぐらいかけられると言っても過言ではないぐらい。ちょっと文字だけだとピンとこないかもなので、写真でその一端をお見せします。

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』

 いかがでしょう。身体のほとんどの部位をバーの調整によって自由に設定できるんです。RPGやいわゆる狩りゲー的なジャンルでは自分のキャラをクリエイトできるものが最近多いですが、ここまで細かく調整できるタイトルは記憶にありません。こだわり抜いて、自分の美的感覚の中での最高のキャラを創り出す。はたまたユニークな外見にしてネタ的なキャラを生み出すなどなど、世界に1人しかいない存在を創り出せる。それだけの機能が、本作のクリエイト機能には搭載されていると思います。

■独自の成長要素とカスタマイズ要素がやり込みを加速させる!

 『PSO2』とほぼ同じテイストのキャラクタークリエイトシステムとは異なり、キャラの育成と装備品の強化システムは本作独自の方法に進化!

 キャラ育成に関してはクラスごとにレベルを上げる必要がある、という点は同じですが、スキルの習得と使い方に違いが存在。『PSO2』では、レベルが上がるごとに獲得できるSPを振り分けてスキルを習得し、クラスごとに固定のスキルを使用していきますが、本作ではクラスが一定レベルに達することでスキル自体を習得できます。さらに、習得したスキルは“スキルボード”と呼ばれるパネルにセットすることで効果を発揮するのですが、このスキルボードにセットしたスキルの効果は、現在のクラスに関係なく発動するんです!

 つまりどういうことかというと、例えば接近戦に特化したクラスだけど、スキルをセットすることで魔法や遠距離武器も充分に扱えるようになる、的な感じ。これは極端な例で本当はもっと細かいスキル構成が可能ですが、このように現在のクラスを自分の好きなようにアレンジできるようになるわけです。

『ファンタシースター ノヴァ』
▲ハンターでありながらフォースやレンジャーなどのスキルが使用できるなど、バリエーション豊かな戦闘が可能に!

 クラスは4つあり、自由にアレンジしようとすると4つともレベルを上げてスキルを習得する必要がありますが、クエストに同行させるNPCは、自分が育てている4つのクラスのなかでもっとも高いレベルに合わせてくれる。自身が装備する武具も、物語を進めていればレベル1でも強力な武具が装備できるので、育てていたクラス以外のレベル上げも割とラクです。「またレベル1でしかも弱い武器を使って育てなきゃ……」なんていうわずらわしさがなく、育成のモチベーションが保ちやすいシステムで個人的にはかなりマッチしていると感じました。

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』

 装備品の強化……というより武器の強化は、本作では“アタッチパーツ”と呼ばれるパーツを使って行います。方法は、打撃力が上がる、特定の属性の攻撃力を上げるなどさまざまな種類の特殊能力から1つを選び、パーツとして武器に装着していくという流れ。自由に4つの特殊能力をつけられると同時に、パーツごとにグラフィックが用意されているので、見た目にこだわるのも楽しかったりします。

 パーツは大きさと角度、つける位置を自由に決められるのが魅力。刃状のパーツを大きくして武器の見た目を巨大にする。武器から離れた位置につけてSF的な外見にしてみるなど、センス次第で元とはかなり雰囲気が異なる武器が作れちゃいます。

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
▲左が元で、右がカスタマイズ後。“パーツ移動小”でも移動量がやや大きいので、もう少し細かくできたらもっとよかったな、という部分も。

 なお、武具そのものがドロップするのではなく、素材を集めて武具を作るという形式は、シリーズファン的には好みがわかれるところではあると思います。が、これはたぶん雰囲気が似ている作品『PSO2』との棲み分けかと。なんとなくですが、本作の物語がサバイバル生活中心になっているのは、このシステムを組み込むためなのかな、とも思ったり(笑)。武具が敵からドロップする世界観のなかで、違和感なく素材から武具を作り出す形式にしようとすると、未開の地でのサバイバルっていうのはわかりやすい形ですしね。

■コールドスリープやカスタマイズなど拠点にも楽しさ満載!

 キャラクターの育成だけでなく、憩いの場である拠点にも楽しみが用意されているのもポイント。

 拠点に存在する機能の1つ“コールドスリープ”では、総勢300名以上ものNPCを仲間にすることができます。どんな能力を持つNPCが仲間になるかはランダムかつ起こした際にオートセーブが入るため、ここも好き嫌いがわかれるかもしれません。ですが、個人的にはガチャを引くようなドキドキ感を味わいつつ楽しんでいます。ぶっちゃけしまうと、基本的には外見重視なんですけど(笑)。カワイイ子が仲間になったら、能力に関係なく即レギュラー! ってなもんですよ。有用な能力を持つ仲間は、起こした際のカプセルの色が通常とは違うという演出があるんですけど、これが男キャラだった時には、うれしくもあり、悲しくもあり……。

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
▲仲間になったキャラはクエストに同行させられるほか、施設に配置することもできます。能力に応じて施設の効果を高めてくれたりもするので、能力を重視するか、それともお気に入りの子で固めるかは悩みどころです。

 拠点のもう1つの魅力は、施設の位置やオブジェクト、デザインを変えて自分だけの拠点が作り上げられる点。物語をある程度進める必要があるうえに、施設やオブジェクトの配置はグリッド形式なので完全に自由というわけではないのですが、工夫すればかなり凝った外観を作り上げられます。素早く各施設を回れる機能的な配置にするか、デザイン重視にするか……。プレイヤーのセンスでいろいろな拠点が生み出せる遊び要素がステキです。

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
▲いろいろな人の拠点に行くのが難しいので、スクリーンショットをネットにあげてくれる人が増えることを期待しています(笑)。

■アクション形式の戦闘はレベルと装備が整えばスムーズにプレイ可能

 アクション形式で展開する戦闘は、基本的に腕よりもレベルと装備が重要。出現しているクエストのなかから適正レベルのものに挑戦してSランク評価を取りつつ、装備をより高性能なものにアップグレードしていくだけで詰まることなく進めました。

 アクション自体もさほど難しい操作を要求されることもありませんが、超巨大エネミーのギガンテスとの戦いは、アクションが苦手な人の場合は最初は手こずるかもしれません。ただし本作はRPGなので、前述のとおりレベルさえ上げればほとんどの戦いはなんとかなると思います。純粋なアクションと比べると敷居は全然低いので、初めてシリーズに触れる人も安心ですよ!

『ファンタシースター ノヴァ』
▲ギガンテス戦では武器の1つ・ヘイロウを使って空中に足場を生成し、そこに乗って戦うのが重要。足下で戦おうとするとカメラが上に向きがちなので、見えないところからの攻撃を受けないように注意が必要です。

 あくまで個人的な感覚ですが、全体の挙動の中でジャンプが「フワァ~」という感じで、平均かそれよりもちょっと遅めぐらいかな、という感じです。敵の攻撃も割とのんびり目な傾向で、めまぐるしい場面が少なめなので遊びやすいと思います。

 最後にシリーズファン的に注目の新クラス“バスター”は、最初からすべての武器が装備可能というかなり贅沢なクラス。ステータスも平均的でどの武器も難なく扱える反面、突出したステータスがないのが欠点です。打撃武器使うならハンターでいいじゃん的な、ね。ただこの点はスキルによってステータスを上げるとある程度は解消できるので、状況に応じていろんな武器を使いこなす一段上の戦いをしたいぜ、なんて人にはもってこいのクラスだと思います。

 ちなみにバスター専用の新武器“パイル”は、ソードを越える重量感と攻撃力の高さにハマるかと! 攻撃速度が全体的に遅めなのでうまく扱うには慣れが必要ですが、他の打撃武器では味わえない使用感を得られるので、解放されたら使ってみるのをオススメします。武器自体で思いっきり殴りつける、杭を射出するといった、渋いというか無骨な感じのグランアーツも見ものですよ!

『ファンタシースター ノヴァ』 『ファンタシースター ノヴァ』
▲武器のでかさと重さを生かした攻撃の数々はかなり痛快。感覚的には昔のシリーズに存在したアックスと似ている部分もあるかも。▲ギガンテス戦では杭を射出後に“イグニッション”を発動することで、対象のギガンテスを捕獲可能。相手が弱っているときでないと成功しないので、残りHPを見極めるドキドキ感が味わえます。
『ファンタシースター ノヴァ』
▲“イグニッション”で捕らえたギガンテスは、“ギガンテスブラスト”によって1度だけ召喚できます! 攻撃発生まではやや間がありますが、巨体から放たれる一撃で敵を一掃するのは超爽快!!

 以上、本作ならではの要素を中心に、ここまで語らせていただきました。気になったところとしては、アイテムパックから倉庫に複数選択で送る機能がなく、1個ずつ送らなければいけないのが少し大変です。その弊害でアイテムパックをいっぱいにしてしまうと、武具を倉庫に作る→アイテムを倉庫に送ったのち、作った武具を倉庫から取り出して装備する、という手順を踏まなければいけません。倉庫に入れているアタッチパーツはカスタマイズに使えない、マイセット機能がないなど、ユーザーインターフェースに不便さを感じる部分少しあるのは残念ですね。これらのいくつかはアップデートで改善されたらな、と期待しています。

 総括としては、もちろん好みはあるものの、充実のシステムとやり込み要素で値段分以上は楽しめる作品に仕上がっていると思います。武具の入手方法に関しては『ポータブル』シリーズや『PSO2』とは違う形になりましたが、レアを求めてクエストを繰り返す中毒性は本作にも充分あり。また、もしシリーズに触れたことがない人でこのレビューを読んで気になった方は、『序盤体験版』をプレイして感触を確かめてみてください!

(C)SEGA

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