2014年12月4日(木)
11月23・24日にかけて、東京ビッグサイトにて“Maker Faire 2014”が開催された。
“Maker”とは、アメリカ合衆国にて2005年に誕生したテクノロジー系DIY工作の専門雑誌『Make:』の読者、ひいてはテクノロジー系DIY工作を行う人を指す呼称。“Maker Faire”は、そのMakerたちによる展示発表&即売会だ。個人やサークル、スポンサー企業などが、電子工作を中心として多彩な品々を出展していた。
電子工作やテクノロジーの分野は、使用する技術や表現できるものなどの特性上、ゲームやアニメなどと親和性が高いところ。この記事では、会場で目を引いた出展物を紹介する。
▲大勢の人が“技術のおもしろさ”を味わいに足を運んだ。 |
▲スポンサーコーナー、ゲームになじみ深いNVIDIAのブース。高画質カメラを搭載した省電力ロボットの技術デモでは、コントローラにPS3用の『DUALSHOCK3』が用いられていた。 |
“ハードウェアとか研究所”さんが出展していたのは、スーパーファミコン用ソフト『風来のシレン』を機械学習のAIでクリアしてみようという試み。ゲーム画面からの画像認識で状況把握を行ってコントローラ入力でシレンを操作するという、フルデジタルながらアナログ的と言える実装が行われている。まだAIは賢くなく30階のうち4階まで到達するのが限界とのことだが、今後の成長が楽しみだ。
▲この“機械を用いた遊びを機械にプレイさせるという遊び”には妙に哲学的なものを感じる……。 |
人気タイトル『進撃の巨人』に登場する“立体機動装置”をフルメタルで再現しようとしているのが“らってん技研”さん。その第1弾として作られたのが、アルミニウムやステンレスで再現された“超硬質ブレード”だ。
金属ならではの重量感や光沢感は、間近で見るほど迫力を感じる見事な出来栄え。なお権利元のライセンスを得ていないため、何かしらへの利用はらってん技研さんの私用に限定される。しかし本品は量産を前提とした設計となっており、氏のブースにはイベントのオーガナイズを行う企業の人も訪れていたようなので、今後の動向にも期待したい。
▲重量感あふれるフルメタル製のブレード。刃は付いていないが、大根程度なら斬れる。 |
木工でアーケード風のゲーム筐体を作ってしまった上に、DJコントローラまで積んでみたのが“The-MenZ”さん。DJコントローラに搭載されているツマミやターンテーブルは、PCで動作しているDJソフト『Traktor』と連動している。アーケード風のゲーム筐体でDJをする意味はあるのか疑問に思わなくもないが、見た目がカッコいいのでそれ以上はとりあえず不要だろう。
▲“作りたいから作る”というMakerらしさをひしひし感じる手作り筐体。カッコいい。 |
丁半博打で明らかに出目がおかしい……サイコロを砕いてみたらオモリ入り! という光景は時代劇にありそうだが、“ヘンテコガング”のきりんさんが出展していた“必ず6が出るサイコロ”は、砕く必要もなくインチキ丸わかりのアイテムだ。
内蔵のセンサで上面と探知された側のLEDが6個光るので、必ず6が出る。何度投げても6が出る。電池が切れたりセンサが故障したりしない限り、6が出続ける。ボードゲームやTRPGで絶対に6を出したい時、GMや他参加者がジョークに寛容だったならば使いたいサイコロだ。
なお、本品はタイトーによるアミューズメント施設向け景品としての商品化が決定している。具体的な店舗への投入時期は不明だが、タイトーステーションなどに足を運んだ際はクレーンゲームなどを覗いてみよう。
▲必ず1が出るモードや、サイコロ本体の回転に関係なくランダムで出目が決定されるルーレットモード、普通のサイコロとして使える表示固定モードを搭載している。 |
明治より販売されている『きのこの山』と『たけのこの里』。チョコレートの付いたビスケット菓子という点は同様だが、異なる魅力を持っているためどちらも多くの人に愛されている。
もし、この2つが混ざってしまったら……? これは一大事だ。取り分けるのに多大な労力を払わなければならないだろう。さらに、もし室温がチョコレートの融点である30度前後(含有される油分によって異なる)だったら……? チョコレートが溶けて、きのこもたけのこもくっついて、山か里かもわからなくなってしまう。これはのっぴきならない事態だ。
それを解決してくれるのが、“必ず6が出るサイコロ”と同じくきりんさんの開発による“きのこたけのこ判別器”。この機械は、『きのこの山』と『たけのこの里』をカメラで認識し、自動で分別してくれる。前段のような前フリをしてしまったが、直接的な実用性はほぼ皆無だと考えられる。なお、筆者は『たけのこの里』派である。
▲山か里かに迷った時は手元にあってほしいアイテムだ。そんな時が来るかはともかく。 |
電通未踏組さんが出展していた“触感画面ヲ用ヰタ机上演習”は、“Microsoft PixelSense”搭載のテーブル型PCを使用したゲームコンテンツ。旧日本海軍艦船のミニチュアを画面上で動かして敵艦を捕捉・撃破し拠点を守るという、一種のタワーディフェンスとなっている。
このPCには、スクリーンへの接触を赤外線カメラで認識する機能が実装されており、通常のタッチスクリーンのように指での操作が可能な他、二次元コードの読み込みにも対応している。ミニチュアの動きがゲームに反映されるのは、ミニチュアの台座底面に二次元コードが張られているためだ。
“カードを動かしてキャラクターを操る”ゲームや“ICが内蔵されたフィギュアを使用する”ゲームはこれまでにも各社からリリースされてきたが、本品は“画面上へ直接フィギュアを設置してプレイする”という点において、それらの一歩先へ進んでいると言えるだろう。
現状“Microsoft PixelSense”搭載機器は高価なものの、マイクロソフトはコストダウンに努めているらしい。今後、この技術を採用したゲームをゲームセンターやその他のアミューズメント施設などで見かけることがあるかもしれない。
▲値は張るが、次世代のゲームを感じさせてくれる“Microsoft PixelSense”搭載PC。二次元コードを利用したシミュレーションゲームは、その魅力をもっとも引き出せるコンテンツの1つだろう。 | ▲ディスプレイの脇へ意味ありげに置かれていた某魔法少女。置いてみると……超強いショットを連射してくれた。底面コードでの認識なので、このようなお遊びも可能だ。 |
ディスプレイの豪華さで驚いた“触感画面ヲ用ヰタ机上演習”とは逆に、逆にディスプレイのタイニーさで驚いたのが“遊舎工房”さんの“TinyBoy”。指先サイズの基板に6個のタクトスイッチと8x8のLEDマトリクスが搭載されており、2000年ごろ流行したドットマトリクス・モノクロ液晶のLSIゲームよりも小さい。小さいながら、展示品ではしっかりと『テトリス』ルールのゲームが動いていた。
▲非常に小さい筐体がキュート。LEDが点灯する様もキュート。とにかくキュート。 |
非実用的なもの、まったく無意味なものでも、電子工作は“機能すること”自体がおもしろい……改めてそう思わせてくれるのが、“のらとりえ”さんの『のらぴか』シリーズ。スイッチを入れるとLEDが光る(だけ)、指で触れると音が鳴る(だけ)と、シンプルながら不思議と心が和むアイテムだ。小さい観葉植物のように、デスクのちょっとしたインテリアとして電子工作を置いてみるのもおもしろいかもしれない。
▲LEDで光る蝶や基板を使ったキーホールダーなどが並べられた、のらとりえさんのブース。きれいにまとまった基板デザインは何気にスゴいところ。 |
ワダタカヒコさんが出展していたのは、某アニメの飛行具をモチーフとしたOculus Rift用のVRコンテンツ。体重移動と手すりの操作で飛行具を操り、バーチャルの空を飛び回れる。また、飛行している際の風も扇風機が演出してくれる。
VRコンテンツは没入感やリアリティが特色として上げられがちだが、このような“現実に存在しないデバイスを表現する”という点でも秀でている。VRデバイスが一般的になれば、アニメやゲームならではの荒唐無稽な武器やビークルを気軽に体感できるようになるかもしれない。
▲VR空間で某谷の住人気分を味わえる。両足を水平にした“あのスタイル”で飛んでみたくなる? |
以上で紹介した以外にも、ニキシー管腕時計、LEDを仕込んだ手芸作品やアクセサリ、某SF映画っぽい音の出る光の剣、目玉焼きにしょう油をかけすぎる装置など、さほど実用性や商業的価値が求められないからこそ多種多様な作品が出展されるMaker Faire。興味を持った人は、次回の会期に会場を訪ねてみてほしい。