2014年12月12日(金)
こんにちは! TCG担当のファイです。『ヴァイスシュヴァルツ』のブンケイPこと、田中文啓さんと『ChaosTCG』のアソシエイトプロデューサーの是空とおるさんに、同時発売された2つの『アイドルマスター』ブースターへの思いを伺う連載企画の第3回をお届けします。
連載第2回では、『ヴァイスシュヴァルツ』のブースターパック『劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』』について熱く語ってもらいました。3回目となる今回は『ChaosTCG』の『アイドルマスター ワンフォーオール』について、両プロデューサーにいろいろと語ってもらいました。
前回と同じく、お聞きした質問は1つだけ。それでいてかなりのボリュームになっています。両名のとどまることを知らない『アイドルマスター』への愛を、今回も存分に味わってください。
――『ChaosTCG』の新ブースター『アイドルマスター ワンフォーオール』の見どころを教えてください。
是空とおるさん(以下、是空さん):『ChaosTCG』では今年発売されたPS3用ソフト『アイドルマスター ワンフォーオール』の世界観やイラストを使用したブースターパックを発売させていただきました。『ヴァイスシュヴァルツ』では、カードの種類数からアイドル1人あたり何枚のカードを収録するかを逆算するというお話でしたが、これは『ChaosTCG』でも同じです。
『ChaosTCG』には、キャラクター、エクストラ、イベントカード、セットの4種類のカードがあります。まず、それぞれの種類をどのくらいの割合で入れるかを決めて、そこからバランスよく配置すると、だいたいアイドル1人につき4種類のキャラクターカードになるかな、と。
その4種類の内訳も、各アイドルごとにバラバラではなく統一して、パッケージにもなっているステージ衣装の“チェックMYノート”、春服と秋服の私服、レッスン用のジャージにしました。これに玲音や小鳥さんを追加して今回のブースターを作っていきました。
で、カードの能力ですね。僕のポジションはフォローや意見を言わさせてもらう社外スタッフみたいなモノでして、それゆえにアソシエイトプロデューサーなのです。通例どおり、能力開発やチェックは全部Chaosチームに任せてました。
ある日、テストプレイが終わって「これで商品化します」というリスト見せてもらったら、現状のChaosTCGのプレイ環境などが色濃く出た感じの能力になっていて、アイドルたちの性格が見えてこなかったので「これじゃダメじゃね?」って意見させてもらいました。
今までアソシエイトプロデューサーとして『ChaosTCG』に5年間かかわらせてもらってますが、今回ほどカードの能力に対してガッツリと意見や調整をさせてもらったのは初めてで、実はちょっと異例です。
アイドル同士の関係性に手を加えていき、決定した能力のほとんどをひっくり返してしまいましたね。そのくらい、アイドルの性格とカードの能力にこだわっている点に注目してもらいたいです。もちろん、ブンケイさんの意見も大きく参考にさせていただきました。
田中文啓さん(以下、ブンケイP):ウチ(ブシロード)のスタッフの顔は、かなり引きつっていたよね……。
是空さん:社外の人間としてはかなり失礼なのですが、物作りの現場ですし、僕はそれに対しては「なにか?」って押し切りました。外堀を頑張って埋めつつ、ブンケイさんには「是空君の言うとおりだ」と言ってくださいと(笑)。
ブンケイP:そこで例えば、亜美と真美は2人でセットみたいな印象がある方もいるかと思います。それをカードの能力に反映すると、亜美と真美が相互にシナジーをしているのが自然ですよね。
しかし、『アイドルマスター ワンフォーオール』のゲーム中では仲は良いけど、お互いライバルとして張り合っているシナリオになっています。また、ゲーム中の能力も似ているけれど別の能力になっています。だから、『ChaosTCG』でもそれぞれ独立した能力になりました。
▲《双海姉妹のカワイイ系by「双海 亜美」》 | ▲《双海姉妹のカッコイイ系by「双海 真美」》 |
是空さん:他だと、真と雪歩はシナジーを持っていても自然だと思いますし、ゲームの『アイドルマスター ワンフォーオール』とは直接関係ないのですが、竜宮小町(アニメなどで亜美、伊織、あずさの3人が組んだユニット)で盤面をそろえてみると強かったりします。
▲《大きな成長「萩原 雪歩」》 | ▲《まもなくオーディション「菊地 真」》 |
ブンケイP:《世界に挑戦「天海 春香」》の能力についてモメましたね。ゲーム同様、『ChaosTCG』を始めたばかりの人が使いやすいように、春香はわかりやすい強さにしようと考えていました。
▲《世界に挑戦「天海 春香」》 |
是空さん:簡単に言うと、当初は1人で完結した能力を持っていました。
ブンケイP:そこで僕が言ったわけです。「ちゃうねん。千早や美希は1人で強くてもいいけど、春香はちゃうねん。春香はみんなと強くなったりとか、みんなが強くなったりとか、そういうのがええねん」って。
是空さん:ブンケイさんの意見を理解しつつ、開発スケジュールが迫っていて、修正能力でのテストプレイにどれだけ時間が取れるか不明でした。「まあこれでいいかって」言ってしまってもそれなりに良い商品にはなったのですが、やはり納得して開発した内容で皆さんに遊んでほしいと大きな調整をする英断をし、結果として印刷スケジュールをぶっちぎりました。
最終的にはChaosチームが一丸となって、多くの意見を取り込みながら完成に……いや、よくたどりつきましたよ。今回ほど、Chaosチームがブシロード全体に頼み込みながら連携して作った商品は無いんじゃないですかね。スケジュールぶっち以外は良い前例になりますよ(笑)。
そういえばギリギリスケジュールはもう1件ありまして……。各アイドルを4種類収録することになった後に、カードに使うゲーム中の場面を決めていたのですが、「せっかくだから、イラストレーターさんの描き下ろしが欲しいよね」って話題になったわけです。
それで、ブンケイさんに相談に行ったら「俺、もう水着の手配してるけど(※)」ってどや顔で言われました。その時は、穏やかな心を持つ僕でさえ、激しい怒りによって目覚めそうになりましたね。
※『ヴァイスシュヴァルツ』の『劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』』に収録された水着の描き下ろしイラストのこと。
是空さん:しかし、向こう(『ヴァイスシュヴァルツ』)がやっているなら、僕らもやろうということになり、作家さんに発注しました。締め切り1カ月前とかで。
ブンケイP:本来あり得ない納期ですよね。
是空さん:イラストレーターさんには、エクストラカードを描き下ろしてもらうことになったのですが、どの作家さんにどのアイドルを描いてもらうか、さらにどの衣装を着せるかを決めなければなりません。そこで、土日は休んでいるブンケイさんに、「休みなら働きなさいよ」って言って決めてもらいました。
ブンケイP:日本語としてそもそもおかしいけどね。
是空さん:平日は営業本部のお仕事も多いですからね。家にいる時くらいはすべてを忘れて『アイドルマスター』をやってもらおうという配慮です。
ブンケイP:結局やっちゃうんだけどね。是空君から、水着でやりたいという話を聞いていたので、“ビビッドビキニ”や“ビューティーミズギ”といった基本的な水着から、“アビサルマジェスティ”や“セーラーミズギ”まで、これをイラストにするのは大変だろうなぁと思いながらも容赦なくチョイスしました。
水着を着せては歌って踊らせてキャプチャーを繰り返し、かなりの量の資料を用意したわけですよ。しかし、商品をご覧になればわかりますが、エクストラカードは水着じゃないのです。
▲水着のシリーズは《ライブ直前「天海 春香」》をはじめ、PRカードで採用となった。 |
是空さん:そうなんですね。よく考えたら、『ヴァイスシュヴァルツ』はオフィシャル描き下ろしの水着なので、せっかくイラストレーターさんに描き下ろしてもらうんだったら、もっと多様性のあるイラストにしようと。
ゲームの『アイドルマスター ワンフォーオール』には、ダウンロードコンテンツも含めて非常に多くの衣装があります。これだ、と思ってブンケイさんには次の土日で改めて資料を用意してもらいました。
ブンケイP:「はいはいわかりましたー」って感じでやりましたね。『アイドルマスター』の商品がよくなるなら喜んでーって具合で。
是空さん:かなりいろいろな資料ができあがって、そこからの選定が大変でしたね。
ブンケイP:例えば《ラレーヌルージュ「水瀬 伊織」》とかいい感じだと思いませんか。赤系統の服ってぱっと考えると春香かなって思うところですが、伊織もいい具合になっているのではないかと。
あとはやはり律子ですよね。“レディグリザイユ”は9月末配信のダウンロードコンテンツの衣装なのですが、よく2カ月後に発売になる商品に間に合ったなと。奇跡を感じてほしいです。
▲《ラレーヌルージュ「水瀬 伊織」》 | ▲《レディグリザイユ「秋月 律子」》 |
是空さん:ただ、自分の春香はこういうイメージじゃない、自分ならこの服を着せるのにって気持ちもあると思いますが、逆にあっていいと思います。今回、イラストにするうえで『ChaosTCG』の正解というものを出しましたが、これはコーディネートの提案だと思ってください。
ブンケイP:《パンキッシュゴシック「天海 春香」》もいいし、《ビヨンドザスターズ「四条 貴音」》もいいし。まぁ全員いいので、今回のコーディネートでゲームも楽しんでもらえればと思います。
是空さん:イラストレーターさんでは、普段は男性キャラばかりを描いている松本テマリさん(『今日からマのつく自由業!』他)、メカ系のイラストが多い黒銀さん(『魔法戦記リリカルなのはForce』メカニックデザイン他)など、普段とテイストが違うイラストを描いてもらった方も多くいます。そして、描き下ろしと言えば《トップオブトップ「玲音」》です。こちらについてはぜひブンケイさんから語ってもらいたいですね。
▲《ビヨンドザスターズ「四条 貴音」》 | ▲《サマーブリーズカラーズ「星井 美希」》 |
ブンケイP:まず、パートナーカード向けのイラストは、ゲームのパッケージになっているものを使わせてもらいました。バンダイナムコスタジオの田宮清高さんが描いたものですね。一方、玲音はゲーム内でしか登場しないので、CGイラストでしか素材がなかったのです。そこで、ダメ元で田宮さんに「玲音を描いてみない?」って大人の言葉で言ってみたら「やってみます」ということになってしまいました。さすがにムリだろうなぁと思っていたのですが、本当にできあがってきてバンザーイって。
▲《トップオブトップ「玲音」》 |
是空さん:いや、ほんとにすごかったですよね。初めてイラストを見た瞬間の感動ときたらもうね。僕はこれを見た時に「あ、売れるな」と正直に思いましたね。
ブンケイP:田宮さんが手がけたオフィシャル描き下ろしの玲音のイラストは、今のところこの1点だけです。ぜひ手にとってもらって、どうせならデッキに入れて使ってもらいたいなと。やっぱり強いんですよね?
是空さん:強いですよ。各タイトルで同様の能力を持ったカードがありますが、いずれも結果を残しています。最終局面でバーンと、まさにトップオブトップが登場します。
ブンケイP:ゲームでもほんと強くてねぇ……。ちょっと話がそれますけども、ゲームで美希のEXエピソードに出てくる玲音の攻略方法を、どうかTwitter(@bunkeiP_bushi)で教えてください。
是空さん:話を戻しますね(笑)。今回の『ChaosTCG』ではカードの能力やイラストだけでなく、実は並び順にもこだわっています。まず765プロのアイドルが13人、その後で小鳥さん、玲音と続きます。そして玲音の描き下ろしからエクストラカードになって、こちらもイラストレーターさんの描き下ろしが13人と続くようになっています。
イベントも、まずはコミュニケーションとレッスンをしてからライブスタートです。楽曲がイベントカードになっていますが、この順番もまずは全員の曲、そしてソロ、玲音が乱入してきて《アクセルレーション》、最後に《Distiny》で締める、という流れです。
▲《パーフェクトコミュニケーション》 | ▲《The world is all one !!》 |
▲《I Want》 | ▲《ふるふるフューチャー☆》 |
▲《アクセルレーション》 | ▲《Destiny》 |
是空さん:バインダーにカードを順番に入れて、どんなライブだったのかなぁと想像してもらいたいですね。僕はトレーティングカードを作っている人間でもあるので、カードとして集めた時に見栄えも気にしています。かなりわがままを言ってカードの順番も変えてもらったりして。ほんとギリギリまで調整したので、「僕が輪転機を押さえている間に早く入稿を!!」みたいな状態でしたね。
実は、てんやわんやしていた夏に『アイドルマスター』の9thライブがあって、ブンケイさんと大阪へ行って見てきました。それで「やっぱりライブはいいなー」とテンションが上がってきて、この感動をもっと『ChaosTCG』に込めよう!ってことになったんです。
その結果、アイドルたちの能力とか、『アイドルマスター ワンフォーオール』という世界観をしっかりと見直して、いろいろな軸を提案することができたと思います。
ブンケイP:その結果、《いつも一生懸命「高槻 やよい」》は、かなりやりくり上手になっているよね。
▲《いつも一生懸命「高槻 やよい」》 | ▲《キラメキラリ》 |
是空さん:フレンドとしても有能ですし、パートナー時の能力で《キラメキラリ》や《Destiny》を特売ですーと使ってもらいたいですね。
ブンケイP:《月を臨み、愁ふ「四条 貴音」》は、上級者向けですか? 貴音って、アイドルとしてのスペックは高いけど、ミステリアスな部分があるじゃないですか。なので、性能は対あっけれども使いこなすのは難しくてもよい、みたいなイメージを提案したのですが。
是空さん:貴音は《ビヨンドザスターズ「四条 貴音」》にエクストラして、本領発揮するようになっています。このエクストラカードはフレンド時とパートナー時で効果が違うので、デッキによって使い方が異なるようになっています。
▲《月を臨み、愁ふ「四条 貴音」》 | ▲《アイドルとしての自分「秋月 律子」》 |
逆に、《アイドルとしての自分「秋月 律子」》は『ChaosTCG』のパートナーをよく引いてしまう人でも使いやすいカードにしました。当初はまったく違う能力だったのですが、プロデューサーをフォローするという意味では、765プロの面々では1番適任かなと思っています。
毎ターンデッキの上を確認できるので、ブンケイさんには「ふふふ。私は未来が見えているのだよ……」という感じでプレイしてもらえればいいなと思います。パートナーとしてこの律子は1枚で完結しているので、周りは自分の好きなアイドルを選べます。
ブンケイP:長くなってきたので最後に、《見つめる未来「如月 千早」》について聞きたい。
▲《見つめる未来「如月 千早」》 |
是空さん:それは能力を突き詰めていった結果、攻撃力と耐久力がそうなっただけです。世論は仕込んだといいますが、数字ありきで能力を作ったわけではないのです。まぁこの数字を見た時に、「うん、いいや」とスルー力が発揮されましたね。
ただ、勘違いしないでもらいたいのは、能力と数字のバランスはしっかり取っているということです。実際、一定数のプレイヤーがデッキに採用しているのではないでしょうか。カードプールが多い分、調整は慎重にやっているので、そこはご安心ください。
ブンケイP:なるほど。ではそろそろ、われわれが安心できない開発の裏話でもお話ししましょうかね。
第4回に続く
3回目は『ChaosTCG』の『アイドルマスター ワンフォーオール』について語ってもらいました。カードの能力だけでなく、カードの順番にもこだわりがあったとは驚きですね。改めて、“トレーディングカード”のゲームなのだなと思いました。
さて、このロングインタビューも次回でいよいよ最終回です。ブンケイPと是空さんのお気に入りのカードや、他では聞けないぶっちゃけ話が盛りだくさんです。ご期待ください。それではまた!
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