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2014年12月10日(水)

『乖離性ミリオンアーサー』鎌池和馬先生×開発者対談! 物語&キャラ作りのポイントは?

文:マスクド・イマイチ

 スクウェア・エニックスがサービス展開するスマートフォン用アプリ『乖離性ミリオンアーサー』の対談企画をお届けする。

『乖離性ミリオンアーサー』対談

 配信開始から2週間で500万ダウンロードを突破した『乖離性ミリオンアーサー』。同社の人気ゲーム『拡散性ミリオンアーサー』の“正統進化タイトル”と銘打たれたこのタイトル、すでに遊んでいるユーザーも多いのではないだろうか。

 今回は、『ミリオンアーサー』シリーズのプロデューサーである岩野弘明氏と、シナリオを手掛けた小説家・鎌池和馬先生を迎えた対談をお届け。『乖離性』の概要説明から、どのようにして鎌池さんがシナリオを組み上げていったかまで、さまざまなことを語っていただいた。『乖離性』をまだプレイしていない人だけでなく、すでにやり込んでいる人も注目の内容となっているので、ぜひチェックしてほしい。

 なお、この記事の内容は、本日12月10日発売の『電撃文庫MAGAZINE』に掲載されている対談の完全版となる。

岩野弘明氏……『拡散性』や『乖離性』など、各種『ミリオンアーサー』関連タイトルを手掛けてきたスクウェア・エニックスのプロデューサー。

鎌池和馬先生……『とある魔術の禁書目録(インデックス)』など数々の人気作品を執筆する小説家。著書『ヘヴィーオブジェクト』のTVアニメ化も決定している。

■『乖離性』ってどんな意味……?

――いよいよサービスがスタートした『乖離性』ですが、制作期間はどのくらいだったのでしょうか?

岩野:本当は今年の春ぐらいに出したかったんですが……(苦笑)。1年半ぐらいはかかっているかと思います。最初に鎌池さんに相談させてもらった時から考えると、2年弱ぐらいかかっているかもしれません。

鎌池:『唯一性ミリオンアーサー』と同時に企画を進めましょう、って話していましたね。

岩野:『乖離性』は、『拡散性』はもちろんのこと、『唯一性』とか『デッキメイクミリオンアーサー』とかも発表されていて同時展開したので、それぞれが全然別軸の話になってしまうと世界観の理解がお客さん的にもしづらいだろうということで。時系列は一緒なんだけど、アーサーは100万人いるので、“別々の土地土地で活躍している”という共通性を持たせようと話していましたね。

――『乖離性』というタイトル、聞きなれない単語ですよね。

岩野:元々「タイトルどうしよう……」と思って、鎌池さんに相談させてもらったんです。

鎌池:最初は『拡散性ミリオンアーサー2』だったんですけど、他のシリーズと並行して派生していくなかで1つだけ『2』はないだろうということで。やっぱり前に何かつけようと思っていくつか……5個か10個ぐらい単語を投げて決めていただきました。続きものよりは、別の線というイメージで考えていきましたね。

岩野:最初の『拡散性』という言葉も聞き慣れない感じじゃないですか。そういうフックになるような言葉はないかなということで、いただいたなかで『乖離性』がバーンッと目に入って。お話も続きものというよりか、同時並行モノということで。

――“『拡散性』の正統進化タイトル”と銘打った理由は?

岩野:『拡散性』のアーサーをいないことにしたくないっていうのが僕のなかにあって。そういう意味でも『拡散性』ありきの話ですし、ゲーム性もキャラクターカードゲームの魅力は大事にしたい。今回はキャラクターをコマンド的に使っていくというものに進化させたので、“正統進化”と銘打った感じです。

『乖離性ミリオンアーサー』対談
▲『乖離性ミリオンアーサー』のプロデューサー・岩野氏。

■前作超えを目指した鎌池先生のストーリー作りの努力と苦労

――『乖離性』の物語ができた過程を教えてください。

岩野:ブリテンという国にも南部と北部があります。南に『拡散性』の舞台となった“キャメロット”があって、北に『乖離性』の“訓練城ヘヴリディーズ”という場所があるんです。今回のアーサー4人も『拡散性』の3人のアーサーたちと同じく、エクスカリバーを抜いてしまって、その流れでキャメロット近郊で初陣を飾るんですが……力及ばず「外敵との戦いについてこられるのか!?」と力不足を指摘されてしまいます。その新米4人を鍛えるために訓練城ヘヴリディーズで4人を鍛えようということになり、女教官“スカアハ”のもとで鍛えられることになります。その他にも“コノハト”という軍勢が攻めてきたりと、いろいろな事件があって解決していくというのがざっくりとした話です。それに『拡散性』のアーサーと交わる、ストーリーがクロスするところもあったりします。

――今回の4人のアーサーは“落ちこぼれ集団”みたいな感じですか?

鎌池:ぶっちゃけた話「温存して育ててやろう」と思われているだけ、前回のアーサーよりはマシなのかなと思います。前回は「初陣で生き残ったやつだけ使おう」と言われていたので。岩野さんも話していましたが、前作の3人のアーサーをなかったことにはしたくなくて。ただ、彼らを圧倒的に上回るアーサーが出てきても、今まで頑張っていたのに……と思われてしまう。だから、3人を一度あがめつつ、そこについていく、追いかけていく新しいアーサーでやったほうがすんなり入ってこられるのかなと思ったんです。ただ、あんまり神格化しすぎると面倒なことになるので、その温度感とかは大事にしていました。

岩野:例えば“傭兵アーサー”なんかは、このお話に入る前の“黒い3週間”という外枠にそれた話があるんですが、そこで活躍をしていたりするということで、本当の落ちこぼれというよりは力はあるけどワケありって感じですね。今回は“訓練城”で訓練するというていもあるので、クエストをこなして訓練を重ねることでシナリオが進んでいきます。その辺は『拡散性』と同じですね。

『乖離性ミリオンアーサー』対談
『乖離性ミリオンアーサー』対談
『乖離性ミリオンアーサー』対談

――鎌池さんは、そのプロローグから先、本編のシナリオをどのように考えていきましたか?

鎌池:私はまず「どこからやるんだろう」と思ったんです。“聖杯”も取ってしまったし、“モードレッド”も倒してしまったし、どうするんだろうというのがあって(苦笑)。あと残っているものといえば、“エスカリボール”とか”カリブルヌス”とか“エクスカリバー”の別名の伝承があちこちに残っているので、それぞれの“エクスカリバー”をかち合わせるような話にしようかなとか、いろいろ考えたんです。でも、結局アーサー王の神話ってケルト神話からキリスト教の流入によっていろいろアレンジされて、同じアーサー王の伝承でも、時代時代でニュアンスが違うんですよね。“聖杯”とか“モードレッドの裏切り”って、どちらかというとキリスト教寄りのものだったので、ここをいじるのはもうやり切ってしまったので、じゃあ原点回帰しようということで、ケルト側に寄せて組み始めたんです。そうしたら『唯一性』のほうとネタがかぶってしまって「うおー!」となりました(苦笑)。

 ケルト神話では神様と呼ばれていた者たちが、キリスト教の流入によって妖精と名前を変えられるんです。で、そいつらが軍神だった頃の話を書けば、狂ってしまう前の妖精もいっぱい出せて楽しいかなと思ったら、「お、かぶってるぞ」と(苦笑)。それで、神様ではなくアルスターっていうケルトの騎士団の話を混ぜてみようと試みたのが今回のお話です。

岩野:『乖離性』のほうが『唯一性』より開発は早かったんですよね。途中で『唯一性』のシナリオがポンと来て……(笑)。

鎌池:結局使える資料が限られているからってのはありますよね。

――シナリオを作る際に、やはり相当な数の資料を読まれるんでしょうか?

鎌池:それなりに目は通しますが、アーサー王の話ってその時代時代で書いていることがだいぶ異なるので、あれもこれもと集めすぎるとわけがわからなくなってしまうんです。ものによっては“エクスカリバー”より強い剣が登場して、“エクスカリバー”を投げてしまう話もあったり(笑)。だから基本的なものをなぞりつつ、それの元になったケルトなりキリスト教なりの資料を読むという、広く浅くを意識して書きました。

――今回4人のアーサーがいますけど、それぞれにストーリーはありますか?

岩野:いや、今回は1つです。実はコレも最初に鎌池さんにお願いさせてもらったことで。『拡散性』の時、1人を選んでしまうと残りの2人のシナリオが楽しめないという意見があって。「そっちも読みたいのにー」というユーザーさんの声も大きかったんです。

――複数人のシナリオに分けて書くのと、1つにシナリオをまとめることの違いや苦労は?

鎌池:結局それって、一人称か三人称かの違いだと思うんですよ。3本ルートを作る時はそれぞれのアーサーの視点から描く一人称になるので、比較的ゲーム寄りなんですよね。今回は4人のアーサーで1つの話を描くので、誰に視点が寄っているか伝えづらい、強いていうなら神様視点で物語を見ているという話なんです。それを小説や漫画にするのは簡単なんですけど、ゲームだと主人公、視点がはっきりしないというのは、慣れるまで難しかったですね。

 これはゲームのシナリオなので、キャラのセリフだけで進めるしかないじゃないですか。例えば”傭兵アーサー”目線だけなら、彼のセリフと彼に向かってくるセリフだけでいいんです。でも今回は4人いるので、あっちこっちとセリフが飛び交って、それが大変でしたね。

岩野:小説のいわゆる地の文、状況説明などができない状態ですもんね。

鎌池:『ヘヴィーオブジェクト』じゃないですけど、主人公たちを1枠にして、ポジティブな意見を言うキャラとネガティブな意見を言うキャラみたいに分けたりはしましたね。だから“歌姫アーサー”なんかは強敵を前にすると「逃げよう」ってすぐ言い出したり(笑)。

岩野:最初の訓練城でも、間違って味方のアーサーを攻撃しちゃったり(笑)。「ドンマイドンマイ」って自分で言ってツッコまれたり。

――少し話に出ましたが『拡散性』と時間軸は同じですか?

鎌池:ちょっと『拡散性』のほうが早い、でも終わっていない。そんな重なり方です。前作のアーサーが先輩として出てくるぐらいの時間軸ですね。

岩野:おなじみの魔女たちも出てきます。

――他に苦労した点はありますか?

鎌池:そうですね……今回のお仕事ってゲームとしては異質で、例えば「負けパターンの会話を用意してください」とか「ここでルートが切り替わるので、2パターン書いてください」とかはないじゃないですか。比較的小説向きのフォーマットを整えて発注してくれている印象が強かったですね。

 その上で一番大変だったのは、やはりセリフでしか進められないということで。あとは画面を揺らしたり、キャラを出したり消したりといった演出はできると思うんですけど、それを頭のなかでイメージできるかはまた別の話で(苦笑)。だから「剣がぶつかる音を2、3回足しておいてください」とか注釈を入れたりしたんですが、実際どうなっているかはわからずじまいだけど、何も言われないからOKなのかなって。あとは「うめき声をあげて担架で運ばれている演出で」と書いたりもしましたね。むしろ大変なのは、小説とゲームの間に挟まれている「これをどう表現するねん!」ってやっている人が苦労したんじゃないかと。

岩野:僕は『とある魔術の禁書目録(インデックス)』のファンで、すごい設定がゲームにもマッチするんじゃないかと思って『拡散性』の時にお声掛けしたんですよね。なので、むしろそこを100%出してもらえるような、一番書きやすいフォーマットでやってもらったほうが鎌池さんの味が出るだろうし、それを読むであろうファンの方にとってもよいだろうなと思ってそうしました。

 ゲームとしての必要最低限の文法をお伝えして、あとはお任せでしたね。『拡散性』の時からそうだったんですけど、元々こちらがリクエストさせていただいた上で、想像を超える展開をしてもらえているので、そのまま出してもいいぐらいのクオリティです。ここから先は欲ばり病なんですけど、ギャグパートもあるとうれしいとか。ゲームのお客さんとしてはAVGパートでキャラがぽこぽこ出たりするなかで、アニメと比べてしまうと動きが少ないので、どうキャラの深堀りをしていくのかとなると、それなりのエピソードが必要だったりするので、そこをもう少しお手伝いしていただいたりしました。

鎌池:設定周りの話ですが、いかにあのアーサー王の話を“オーバーテクノロジー”で表現しようか、みたいなのがゲーム的というか、ファンタジー的な見せ場じゃないですか。そこには今回も気を配っていて。前作の“アヴァロン”なり、“ドラグーンファング”なりと比べて「今回しょぼいよね」って言われてしまったら終わりなので、いかにオーバーなテクノロジーを持ってきてゲームっぽい絵面にならないかなとやったのが努力した点ですね。今回も出てくる魔法の道具みたいなのは、誰しも聞いたことがあるようなものだと思うんですけど、それをとにかくオーバーテクノロジーで表現しようと努力しましたね。

――例えば“クーホリン”の持っている槍なんて有名ですよね。

岩野:それも皆さんの想像することの2歩3歩上をいくような武器になっていますよ。あとはオープニングムービーでも出てくるんですけど、変身するんです。真っ赤な鎧になってヘルメットがにゅいーんって出てきて仮面ライダーよろしくみたいになるんです。アニメ制作スタッフのこだわりが垣間見えるのですが、ここの変身ギミックは特に凝っているんですよ。

鎌池:一応それも元の伝説だと、クーホリンは髪の色が3色あるとか目が7つあるとか元々派手で、さらに怒ると鬼のように凄まじい顔に変化するとあるんですよ。それをオーバーテクノロジーで表現すると、変身しかないだろうと(笑)。それを開発さんに送ったら、すごいことになっていたという。

――今回も騎士同士の細かなサブシナリオは用意されていますか?

岩野:鎌池さんにいただいたベースとなる設定を元に、開発のシナリオライターが広げてサブシナリオを用意しています。これは僕からの質問なんですが、『拡散性』と『乖離性』といろいろなアーサーが出ていますが、100万人のアーサーがいるなかでそれぞれの強さはどれぐらいを想定していますか? 次回作のヒントになるかなと思って。

鎌池:『乖離性』のシナリオを書いていた時は、『拡散性』の3人のアーサーは“モードレッド”をクリアしている、ほぼ最強段階に位置していました。『乖離性』の4人は、その最強ランクのアーサー3人がいるなかで入ってきたルーキー。彼らがどこまで這い上がれるかというのが、このシナリオの中盤以降に覆される部分で。最初はもう、前作の3人は英雄になっていてもよかったかなと思いました。

■“富豪”に“歌姫”に新たな妖精、キャラクター作りに迫る

――キャラの話が少し出ましたが、今回のアーサー4人について教えてください。“傭兵”、“盗賊”、“富豪”、“歌姫”と王道のジョブからは少し外れているイメージがありますが、その狙いは?

『乖離性ミリオンアーサー』対談

岩野:元々「アーサーは4人で」という話はこちらからのオーダーで、“傭兵”などの4人のネーミングは鎌池さんに考えてもらいました。

鎌池:『拡散性』が“剣術”、“技巧”、“魔法”とストレートなところをとっているので、まずはそことかぶらない感じで。騎士に対して“傭兵”が生まれて、“盗賊”、“富豪”は戦争が起きている国で台頭して来そうなやつを想定して。戦争をやっているから警察いないよねっていう“盗賊”と、戦争特需で儲かっている“富豪”。残る“歌姫”については「旬だよね!」っていうことで入れました(笑)。自分はアイドルとか詳しくないんですけど、詳しくないからこそ変な憧れがあって。「ぶっこんでおけば安泰だろう!」みたいな(苦笑)。あとは遊び人みたいなジョブが出てきてもいいですよね(笑)。

岩野:ピーキーなジョブも欲しいし、王道のジョブも欲しいと思っています。鎌池さんに最初に4人を考えてもらったんですが、アーサー1人に対して1ジョブみたいな担当があるので、さらにジョブをクラスチェンジしたり増やしたりしたいとユーザーさんから要望が高まってくるのかなと思います。それを見越して展開できればいいなって。今、完全に魔法キャラ……賢者とか黒魔道士みたいなキャラがパッといないので、そういうのが増えていくと。あとは、ゲーム的にはアーサーの衣装替えとかもしたいんですけど、ただ作っているうちにあれもしたいこれもしたいっていう風に出てきたアイデアなので、大型アップデートなどで“着せ替えシステム”は入れたいですね。

『乖離性ミリオンアーサー』対談

――鎌池さんがイラストを見るのは本日が初めてとのことですが、いかがですか?

鎌池:そうですね……やっぱりカラーリングのせいか“歌姫”が超目立ちますよね。他が黒系で統一されているなかで。

岩野:イラストについては、基本鎌池さんの設定ありきで作っていただいていて、あまりこちらから細かいことを言わずに、そのテキストで出てくるイマジネーションで描いてくださいとオーダーしています。それで出てきたものに対して注文し、細かな部分を作りこんでもらいました。『拡散性』のアーサーも三者三様でしたし、たくさんの騎士をたくさんのイラストレーターさんに描いてもらいました。もっとバラつくかなと思ったんですが、意外とまとまったなと最終的には思っています。だから『乖離性』も4人別々の方にお願いしました。そっちのほうがいろいろな色が出ておもしろいなと。

鎌池:そういえば、“傭兵アーサー”がエクスカリバーを抜く時に台座ごと抜いて、引きずっているという設定は生きているんですか?

岩野:生きています。剣の先に……岩が(笑)。3Dの戦闘画面を見るとわかるんですが、子どもの頃にあった「ねるねるねるね」っていうお菓子みたいになっています。

――鎌池さんはキャラ1人に対してどれぐらいの設定を書かれるんですか?

鎌池:アーサーも騎士もそんなに変わらず、A4の紙1枚ほどですかね。“エクスカリバー”がどんな形状で、どこからやってきたかとかぐらいですかね。細かな容姿などは設定していない気がします。髪の色とか、半身に鎧着ていますとか、それぐらいですかね。イラストは基本的に絵描きさんにお任せです。

岩野:盗賊アーサーは牛木義隆さんにお願いしたんですけど、ラフの段階で「これはかわいい!」って思いましたね。盗賊だからこそ衣服などは黒系がよかったんですけど、女の子のキャッチーさも併せ持ちたいということで、差し色にピンクを入れていただいたり、髪色とかは明るい色にしてもらいました。あと、最初はこの尻尾なかったんですよ。それでも十分キャッチーだったんですけど、キャラ的に、よりキャッチーにしようと思って付けてもらったパーツですね。

鎌池:歌姫はスカートの前がパカッって開いているのがすごいですよね。

岩野:これ、ギリギリを攻めています。下に着ている服の角度がもっと鋭角だったりもしたんですけど、社内のしかるべき部署に審査してもらって、今の角度に落ち着きました(笑)。

鎌池:“スカアハ”と“ウアサハ”は、史実だと姉妹か娘なので名前もちょっと似ているんです。あんまり“ウアサハ”は伝承上だと目立ってはいないですね。

岩野:さっき教官って言っていたのが“スカアハ”。主人公たちに指令を下したりしてストーリーを引っ張っていく役割ですね。で、日常的な生活とかのサポートをしてくれるのが“ウアサハ”さんですね。妖精さんとしての高度な技術は使えないんですが、“スカアハ”のできない家事全般などをやってくれます(笑)。

『乖離性ミリオンアーサー』対談
『乖離性ミリオンアーサー』対談

鎌池:前作の3人の妖精がスタンダードになんでもナビしてくれるやつだったので、新しく「さあやるぞ」となった時に、あれと同じような子を作ってもしかたがない、と。じゃあ逆に振って、あまり妖精としてのナビはできない子にしたんです。“スカアハ”は『拡散性』の“マーリン”の代わりで魔法使いキャラ、参謀として置いておけばうまく回るんじゃないかなって。

岩野:その話だけ聞くと、“スカアハ”がしっかりしていて、“ウアサハ”がおっちょこちょいみたいな感じですけど、お話を進めていくとそれが真逆になったりして、ギャップ萌えみたいなところもあります。食事、つまり胃袋を握っているのが“ウアサハ”なので(笑)。あとは敵として出てきて、倒した後に仲間になるというキャラも多いですね。“オイフェ”は、いわゆる作品のなかのヒロインとしてリクエストしたキャラです。最初は仲間としてではなく、アーサーたちにいちゃもんをつけてきたりするんですよね。“オイフェ”自身が強いので、戦うヒロイン的なかっこよさもあります。

――鎌池さんお気に入りのキャラはいますか?

鎌池:妖精“フェデルマ”ですかね。関西弁だけどずっとダウナーでしゃべっているんです。わりと使ったことのないキャラクターだったので、書いていて印象に強く残っていますね。この辺のキャラクターは、前作の「11人の支配者」みたいな感じで、最初からウェルカムというわけではないんです。戦って倒すと、こっちの宮殿にも顔を出すみたいな。

――ロゴに乗っているキャラは?

岩野:妖精“ファルサリア”ですね。重要なキャラです。絵的にも大きく変わったりするので、注目してほしいですね。

鎌池:“ファルサリア”周りの伝承は、神様をまとめようという内容の本なんですが、外から来た、ローマの人たちの価値観でまとめられた資料なんですよ。その辺をうまく組み込んで書きました。

岩野:僕、個人的に好きなシーンがあって。この妖精“フェデルマ”と『拡散性』の青い妖精がネトゲをやっているシーンがあるんですよ。ネトゲやりながら牽制し合ったり。ほのぼのしつつ、腹の探り合いをしたり。

岩野:本筋はまじめに強敵と戦ったりしているんですけど、『拡散性』の時にもあったようないわゆるドタバタギャグパートみたいなのもお願いしておりまして、さっき話したようなシーンも盛り込まれています。結構“ウアサハ”がギャグパートで活躍してくれますね。

鎌池:“ウアサハ”って、いわゆる「妖精だから感情がないって言っているけど、どう見てもあるよね」っていう典型的なキャラクター。いじるのは簡単なんですけど、主人公が4人いるため誰かにほだされてついていくというのができないので、そこはちょっと難しかったですね。

『乖離性ミリオンアーサー』対談

■シンプルだけど奥が深い、TCGとしてパワーアップしたシステム

――まだ『乖離性』をプレイしていない人に、簡単にゲームシステムの特徴を教えてください。

岩野:基本的にはクエストをガンガンやっていくゲーム。1人でもできるし、みんなでワイワイもできる。ゲームの概要なのですが、アーサーは4人いて、それぞれに特徴があります。例えば“傭兵アーサー”なら物理攻撃が強い、“富豪アーサー”ならカードを引く時に山札から追加ドローできる。“盗賊”は敵を妨害したり引っ掻き回したり魔法攻撃をしたりします。で、“歌姫”は完全な回復役ですね。4人でやる時はMMORPGみたいに役割を決めて、「タンク役だから盾になるね」とかコミュニケーションもとれますね。

 バトルは10枚のカードを各アーサーがデッキに入れて挑むことになります。バトル開始時にデッキに入れていたカードがランダムで5枚配られてスタート。特徴的なのは画面下部にある3つの球、これが出撃コストです。出撃コスト内のカードを選んで敵を選択して攻撃、となります。他のアーサーも同じ属性だとコンボが発生したり。他のアーサーの手札を見ながら自分が出すカードを決めるというような。

『乖離性ミリオンアーサー』対談
『乖離性ミリオンアーサー』対談

 次のターンに行くと、出撃コストが増えます。なのでターンが進むごとに、より戦略性が高くなっていくんです。例えば出撃コストが7になったら、2+2+3の3枚を出すこともできます。でも、次のターンには1枚しか補充されません。なので、1ターンにカードを使いすぎると、次ターンにカードが十分補充されず困ってしまうことも。ターンが経過するごとに選ぶカードの枚数は考えていく必要がありますね。これらは、いわゆるトレーディングカードゲームをベースにしたゲーム性になっています。

 『拡散性』の時も“カードゲーム”とバーンッと売り出していたのですが、『拡散性』はキャラの絵だったり世界観がすごく深かったので、『乖離性』はあくまでカードゲームとしての進化を目指そうということで戦略性を高める今の形になりました。初めてさわるユーザーさんは「敷居が高いな」と思われるかもしれません。なので、「コストの概念が理解できない」という人のために、「オート戦闘」も用意しています。でもAIなのでそんなに賢くはないので、やっぱり4人のプレイヤーで脳みそ付け合わせて、マルチプレイをしたほうが進めやすくはなっています。

『乖離性ミリオンアーサー』対談
『乖離性ミリオンアーサー』対談

 今、ザコバトルは2Dですが、ここぞというボスの時は3Dになります。2Dにしている理由は、スマートフォンは進化しているといえど3Dだとめちゃくちゃ容量を食うんですよね。それでもたついたものをユーザーさんに提供するなら、2Dでしっかり作ろうと。あとコラボなどをする時に3Dで作ってしまうと時間もかかってしまうので。お客さんは早く欲しいだろうということで2Dになりました。実は“対戦モード”の追加なども考えています。

 マルチプレイだと顔のアイコン付きの簡易チャットボタンが出ます。これで意思表示して他のユーザーと役割を分けながら戦うことになります。部位破壊をすると怒って強くなったり、部位破壊ボーナスがあります。強いカードを使うとカットインなども入ります。1人でやるのも楽しいけど、みんなでワイワイやるのが楽しいゲームになっていますね。

『乖離性ミリオンアーサー』対談
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――今回は騎士の進化の絵柄も派手になりましたね。

岩野:これまでは差分だったんですね。やっぱりカードゲームとしての“正統進化”をうたうのなら、もう差分じゃなくて見栄えの進化をさせないといけないなと。ほとんどのキャラそんな感じでやっています。

『乖離性ミリオンアーサー』対談
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『乖離性ミリオンアーサー』対談
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――その他、システム面のウリはありますか?

岩野:トレーディングカードゲーム的な部分ですが、カードのスキル効果の幅がめちゃくちゃ増えていますね。キャラを進化させる時に、スキルの振り幅もあったほうがグッとくるよねってあったので。絵的にもスキル的にも進化を感じてもらえるかと。あとはアーサーと騎士ごとにマークがついていて、アーサーと同じマークの騎士カードを入れると、覚醒スキルというのが使えるようになります。なので、アーサーと同じマークの騎士カードでデッキを染めてしまうのがシンプルに強いですね。もちろん他のマークのカードを組み込むのもありなので、デッキを考え出すと夢中になってしまうと思います。

――1人で遊ぶ場合は、残りはNPCがデッキを持って参戦することに?

岩野:参戦が2人の場合とかは、残り2人分も自分のデッキで戦ってくれるように……したいんですが、そこは現在開発中でNPCが参戦します。自分のデッキを連れていければ、強くても弱くても納得感が出ますしね。

――それでは最後に、『乖離性』を楽しんでいるユーザー、そしてこれから遊ぶ人に向けてメッセージをお願いします。

岩野:『乖離性』をやる前に『拡散性』をやっている方も楽しめるし、『乖離性』からやり始める方もすんなり入っていけると思っています。どんなユーザーさんでも分け隔てなく遊べるものに仕上がっているというのが1つ。あとはこのトレーディングカードゲーム的な遊びをスマートフォンに向けて簡易的に落とし込んでいるゲームって、ありそうでなかったと思うんです。今ってトレーディングカードゲーム熱に高まりを感じているのですが、そういったユーザーさんにも楽しんでもらいたいです。ただ、ゴチャゴチャしたゲームにはなってなくて、遊びやすくは仕上がっていると思うので、その辺をひっくるめていろいろなユーザーさんに遊んでもらいたいです。

鎌池:さっきも言ったんですが、前作と比べてインパクト的に衰えてしまっては意味がないと思って、とにかく盛っているのでド派手なシナリオにはなったかなと思っています。シナリオ面を期待している人には申し分ないものができたと思いますので、ぜひ楽しんでください。

『乖離性ミリオンアーサー』対談

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データ

▼『乖離性ミリオンアーサー』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:iOS
■ジャンル:RPG
■配信日:2014年11月19日
■価格:基本無料/アイテム課金
 
iOS版『乖離性ミリオンアーサー』のダウンロードはこちら
▼『乖離性ミリオンアーサー』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:Android
■ジャンル:RPG
■配信日:2014年11月19日
■価格:基本無料/アイテム課金
 
Android版『乖離性ミリオンアーサー』のダウンロードはこちら

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