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2015年1月14日(水)

絶好調の『乖離性』から『実在性』まで! 『ミリオンアーサー』の1年を岩野Pと振り返る

文:マスクド・イマイチ

 スクウェア・エニックスのiOS/Android用アプリ『乖離性ミリオンアーサー』。『拡散性ミリオンアーサー』の正統後継作となる本作は、2014年11月19日の配信開始から破竹の勢いでユーザー数を伸ばし続け、大人気タイトルとして成長を続けている。

 今回は『ミリオンアーサー』シリーズのプロデューサーを務める岩野弘明氏にインタビューを敢行。サービス開始から間もない『乖離性ミリオンアーサー』を中心に、シリーズの今後について伺ったので、全国約900万人のアーサーのみなさんはじっくり読んでいただきたい。

『乖離性ミリオンアーサー』
▲『ミリオンアーサー』シリーズのプロデューサーであるスクウェア・エニックスの岩野弘明氏。

■『乖離性』のスタートダッシュを振り返る

――現在『乖離性』のユーザー数はどのくらいですか?

 ダウンロード数で言うと、正確に計測できないぐらいのスピードで増えていっていて。850万人を突破しているのは確実なのですが、今は正確な数字を出すための作業をしている段階です。こちらもわけがわからないくらいで、「こんなに伸びるんだ」と驚かされています。

――事前登録の段階でも結構な人数が集まっていたのでしょうか?

 いや、全然ですよ(苦笑)。事前登録だと10万人くらいでした。正直、このくらいいけばいいなと思っていたラインは、今の10分の1ぐらいでした。ただ、“マルチプレイ”を入れていた目論見として、それ自体おもしろい他にも思わず人を誘いたくなるような雰囲気作りのつもりもありましたので、そこがよかったのかな、と思います。開発中もスタッフたちが「おもしろいおもしろい」って言いながら遊んでいたので。作っている人間がつまらないと思っていたら当然伸びないでしょうし、今回は作っているスタッフも楽しめたので、うまくいく予感はありました。

――これだけの人数になると、ランキングイベントなどがあった場合、大変になるのでは?

 今回はランキングイベントは基本的に入れないようにしようと思っています。もし入れるとしてもフレンド内ランキングのような、「自分はこれだけ頑張ったぜ!」とお披露目するようなものですね。全ユーザー間でやって、上位に報酬をあげるというようなイベントはやりません。あまりに母数が巨大なランキングってモチベーションがわきませんし、ランキングでしか得られない報酬などがあると殺伐とします。そういったことにならないようにしたいと思います。

――サービス開始からしばらく経ちましたが、具体的にどのような反応が返ってきていますか?

 とにかく「マルチプレイが楽しい」という意見が多いですね。最初は「テンポが遅い」とか、「3Dの演出が少ない」という意見もチラホラあったんですが、マルチプレイを遊んでくれた方が「これはおもしろい」と口コミで広げてくれたおかげで、そういったマイナス意見を持っていた方がプレイし直してくれた声も見られました。そういう反応はうれしかったです。

――想定していたターゲット層は獲得できましたか?

 はい、遊んでいただけていると思っています。完全にライトノベル発といったテイストなので、ラノベ好き・アニメ好きの方々がターゲットの中心だったのですが、普段ラノベもアニメも見なさそうな方も遊んでくれていたりして驚きました。もしかするとラノベやアニメを楽しむ層自体が広がっていているのかもしれないですね。あとは、やはりマルチプレイによる効果もあるのかもしれません。

――やはりマルチプレイの楽しさが大きいですね。

 「今日学校で8人誘って遊んだ!」という声も聞きまして。そういうマルチプレイの楽しさがちゃんと届いているのは、本当にうれしく思っています。僕自身がそうなんですけど、ネットを介してのマルチプレイって得意じゃないんですよ。コミュニケーションが苦手だったり、迷惑かけるかもっていう気があったり。ただマルチプレイって本当におもしろくって、一回体験するとその楽しさから抜けられないんですよね。そのうちマルチプレイやりたさに人を誘ったり。そういう広がりから一度マルチプレイを体験してみたり、やった人から「楽しい」っていう評判を聞いたりすることで、「気心の知れた仲間内でなら……」と手を伸ばしていただいて、そこからの広がりもあったのかも、とも思います。「ネットゲームに興味があるけど、手を出すのがちょっと恐い」という人が日本人には多いかなと思っていて、僕も含めそういった人に向けてのチャレンジがこのゲームにはあります。

『乖離性ミリオンアーサー』

■スタートダッシュは成功! 『乖離性』の遊びやすさに迫る

――サービス開始当初からクリスタルの配布が多かったりと、無課金でも遊びやすい印象がありました。

 クリスタルの配布は『拡散性』の時もそうだったんですが、まずは課金要素も含めてゲームの楽しさを味わってもらいたいという思いから、わりと多めに配布することを意識しています。そこがわからないと課金しても良いものやら不安になりますからね。また、そうすることでキャラが強くなるとモチベーションも上がりますし、キャラへの愛着も深まるので、結果的に長く続けていただけたり、課金をしていただけたりするかもしれない。もしかすると、逆にクリスタルの配布を抑えていた方がセールスのランキングが上がるのかもしれませんが、今はそういうところより、ちゃんとゲームを楽しんでもらいたいという思いの方が強いですね。

――クエストのボスである“妖精”や“騎士”のカードドロップ率も、『拡散性』と比べて高めに設定されているのかなと思いました。

 そうですね。そこに関しては「ちょっとやりすぎちゃったかな」という思いはあります(苦笑)。あまりポンポン出てしまっても達成感がなくなって、物足りなく感じてしまうので……。そういう意味での“やり応え”のバランスは、今後調整していく必要があると思っています。取れすぎないのもおもしろくないと思うので、そのバランスは難しいですね。

――部位破壊から手に入ることもあり、非常に驚きました。

 むしろ部位破壊はどんどんやってほしいんですよ。報酬もそうですが、部位破壊をしないとこちらがやられてしまうような相手もいるので。それに加えて、初級・中級・上級・超級・超弩級とバランスを取っていくのが今の課題ですね。

『乖離性ミリオンアーサー』

――クエストのボスについては、サービス直後と比較して、その後かなり強化されているように感じました。

 それは単純にボスカードのドロップを絞ろうというわけではなくて。もう結構レベルが上の方にいっているユーザーさんからすると、やり応えがない、と。そういう雰囲気が伝わってきたので、運営からの挑戦状じゃないですけど、強めにしてみました。ただ、それでも数時間後にはノーコンティニュークリアの動画がアップされていたりして、こちらの想像をはるかに越えていますね。

 最近のゲームの定番として、“級”で分けるようにしているので『拡散性』の時よりは格段にバランスは取りやすいんですけど……上級者の方たちの強さがどれぐらいかというこちらの読みを上回っているユーザーさんが多くて(苦笑)。

――上級のクエストでもボスのドロップがあるのはうれしかったです。

 非常に強い敵を出して、その代わりノーコンティニュークリアで報酬が必ずもらえる超弩級は、天上人の戦いになっていると思っていて。そこにはほとんどのプレイヤーがいけないんですよ。だからといって上級でポンポン落ちるのも、「超弩級や超級がある意味はなんなの?」ということになるので、課題はそこのバランスですね。

『乖離性ミリオンアーサー』

――今話していたことに加え、クエストポイントの回復が早めということもあったり、全体的に遊びやすい、とっつきやすいバランスになっているなと思いました。

 それはクリスタルを配布するのと同じ意味合いですね。ある程度楽にミドル層に行ってもらって、ゲームに対する愛着や理解を深めてもらいたいという狙いがあったので。だからデッキランクも早々にSSに届く人も多くて。そこは軽めにしていたものの「SSの人が多すぎるんじゃない?」という話は開発から出ています。

――SSでもデッキの強さに差があるのは感じますね。

 SSが最上級ではないんです。その上も用意しているんですが、じゃあそこに到達したら終わりなの?というとそうではなくて。これはまだ構想中なのですが、特定の騎士たちをデッキに入れることで“ハーレム状態”という冠が付いたり。デッキに対するキャラクター性みたいなものを入れたいと思っています。どういう組み合わせでどんな効果が発揮されるのかを探す楽しみも出てくると思うので、今後のアップデートで入れていきたいな、と。

『乖離性ミリオンアーサー』

――デッキについては“おすすめデッキ”で選んでも、かなり戦えるバランスになっていますね。騎士とアーサータイプを合わせるのが重要なのかなと思いました。

 ところがですね、必ずしもそうじゃないんです。例えば、盗賊は基本HPが低くて、超級クエストに挑むにはHPが20,000ぐらいないとダメというのもあるし、かつデバフや弱点属性のカードも入れなきゃいけない。そのために別アーサーのタンクカードを入れたり、弱点属性のカードを入れたりとデッキを考えていく必要があるんです。これは上の階級にいけばいくほどそうなっていきますね。クエストの上級まではおすすめデッキ、オート戦闘で大丈夫だと思うんです。でも、さらなる強い敵にはデッキ構成を考えるのが大事になってくると思います。だから上級者の遊びは、そういう敵に対してどういうデッキで挑むかになっていくかと。

――まさに“神々の遊び”ですね(笑)。

 妖精の“シルキー”を実装した時に、「シルキーが強ぇ!」って話題になって。Twitterを見たらトレンドワードランキングの1位に“シルキー”が入っていたんですよ。それと同時に、「全アーサーに“バーナード”を入れろ」という声が上がって。バーナードって物理攻撃を軽減するスキルを持っているんですね。だから1ターン目はとにかくバーナード、みたいな。そういう戦法やデッキ構成が、そのときどきの高難度ボスによって変わってくるので、それが1つおもしろいポイントなのかなと。

『乖離性ミリオンアーサー』

――部位破壊するにしても、どこから壊すかなど悩みますよね。

 これまでも共闘プレイができるアプリはあったと思うんですけど、よりリアルタイムで、より戦略性の高いゲームとして届けられたというのが、ユーザーさんの中で新鮮に感じてもらえたのかなと思います。MMO的な感じが深まったけれどスマホゲームとしての手軽さは持ちつつ、という感じでしょうか。この新鮮さがなかったら、ここまでの爆発力はなかっただろうなと思います。

――ユーザーはマルチプレイを主にやっているのでしょうか?

 結構多いんじゃないかと思います。でも「迷惑かけるんじゃないかな」とか「いきなりは恐いなぁ」と思っている人も多いと思います。僕の印象としては、元々マルチプレイを楽しむ人って少なかったと思うんです。ただ、コンシューマゲームの『モンスターハンター』や『コール オブ デューティ』なんかでマルチプレイをしたり、MMORPGでパーティプレイを楽しんだり、スマホのゲームでもサクッとライトにマルチプレイを遊ぶということが増えてきていて。今回の『乖離性』のマルチもそれに近いので、すんなりと受け入れてもらえたのかなと。

――でもHP20,000が最低条件という話題を見ると、「ええっ!?」って思ったりもします(笑)。

 1つのデッキの目標にはなっていますね。あとデッキ構築の定義のようなものが、ゲームの理解が深まっていくと変わってくるんですよ。最初はおまかせでなんとなく遊んでいる人が、アーサータイプの一致が重要だと気づいて、さらに弱点属性を突くこともバカにならない、HPがないとお話にもならないぞ、と学習していくことでデッキ構築がすごく楽しくなっていきますね。

――毎日のチアリー(強化素材)獲得クエストをこなして、レベル上げをすることも重要そうですよね。

 それもあります。ガチャから出てくるカードやクエストでドロップするカードは、その時期のメインボスに相性がよいものを出していこうと思っています。イベントごとにお題のようなものを設けて、それに対するアンチカードをガチャや直前、同時クエストの別のボスから得られるようにしていけたらなと思っています。

『乖離性ミリオンアーサー』

――『拡散性』の特効カードのようなものでしょうか?

 特効ってインフレでしかなくて、終わったら価値がなくなってしまう。でも『乖離性』のようにスキルの相性で戦いやすくなるカードを組み込むことは、インフレになりづらく、別の敵を相手にする際にまた使えるようになると思っています。僕はトレーディングカードゲームの『WIXOSS(ウィクロス)』を遊んでいるんですが、「相手を凍結させて1ターン行動を封じる」カードがあるんです。それが第2弾のパックになったら、「凍結した相手を一撃で倒せる」カードが登場して、カードの価値がグンと上がったんですね。だから、古いカードでもカードの価値が上がったりするのが、トレーディングカードゲームのいいところだなと思っています。そういった展開を『乖離性』でもしていきたいと思っています。ある程度は直感的に遊べるし、しっかり触りだしたら奥深い。それってトレーディングカードゲームの魅力そのものなので、それを実現しようという狙いがありました。

――やはり1人のアーサータイプを集中して育てているユーザーが多いのでしょうか?

 そうですね。というのも、カードの種類がまだ少ないというのがあります。当然SSランクにしたら別のアーサーも……という方もいらっしゃいますし、今後カードが増えてきた時にデッキのそろい具合が早まると思うんです。そうなると複数のアーサータイプで遊んでもらえるんじゃないかと。あとは、アーサーの“ジョブチェンジ”や“クラスアップ”のようなものを導入しようと思っているので、そういった意味では1人のアーサーの深堀りができると思うんです。そうなれば、全アーサーを育てきるのもなかなか難しくなって、楽しさの幅も広がっていくのかなと。

 すごくやりたいことの1つとして、“アバターの着替え”があるんです。せっかく3Dモデルで作っているので。でもそれを実装するなら、並行して開発するぐらいの体制じゃないと追いつかないんですよ。日々の運営で一苦労なところはあります。でも、今回はうまくスタートダッシュを決めることができたので、社内でも「もう1つ開発ラインを増やそうか」という動きはあります。

――作る側のスピードがまだ追いついていないんですね。

 『拡散性』では「ここまでにやります」と宣言したことが達成できなくて、ユーザーさんからお叱りいただいたことがありました。その時は開発体制を1ラインで頑張っていたんですが、やはり無理がありまして……。その反省を踏まえて、日々の運営と合わせてアップデート組のような部隊を設けて、並行して次のアップデートを準備しているので、“やるやる詐欺”は減るんじゃないかと思っています。運営にも開発にもお金がかかるんですが、それは皆さんに課金していただいた売り上げからフィードバックできればと。

■デッキ構築やマルチプレイなど今後のアップデートについて

――個人的にマルチプレイをしていて思ったのが、定型文――例えば「回復して!」とか「左を狙おう」とか細かいものが増えるとうれしいなと思っています。

 それはもちろん思っていて。そこも含めて、まだまだできていない部分は多いと思います。というのも、このゲームって昨年の8月中頃まで全然おもしろくなくて、仕組みをガラッと変えたんですよ。そこからちゃんとおもしろくなってくれて今があるんですが、そんな急な開発をしたものだから、その仕様変更についていけてないユーザーインターフェイスが多くて……。

 今の定型文の話もそうですし、そもそもデッキ構築の画面も、今のデッキ構成にまだまだマッチしていないんです。ソートが充実していなかったり表示するステータスが足りないとか。そこはもう言われてしまうだろうと思いつつ、アップデートでなんとかしようと考えていました。

『乖離性ミリオンアーサー』

――アップデートについて、どれぐらいの規模と期間を考えていますか?

 今、ちょうど開発ラインを増やしているので、この半年ぐらいを目処にユーザーインターフェイスの改善はもちろん、先ほどのアバターの話など構想していることの6~7割はやっていきたいと思っています。そこにはコミュニティの充実という意味で、簡単なギルド――『拡散性』の“騎士団”のようなものではなく、簡単なグループを作ってグループ内ランキングを作るとか、そこでの掲示板やチャットで意見交換した上でボス戦に挑むとか、そういったものを構想しています。少なくとも『拡散性』の時のような開発スピードの遅さにはならないと思っています。

 あとは対人戦のようなものも入れたいですね。ただ、対戦もギルドもランキングもユーザーインターフェイスも……となると、半年で一気にやるのは難しいので、じゃあどれを優先度上げてやろうかっていうことを考えています。おそらく2~3カ月ごとに比較的大きめのアップデートをしていく感じになるかと思います。

――逆に「これはやらない」と決めていることはありますか?

 『拡散性』で不評だったものは、もう全部やりません。特攻、ランキングイベント、限界突破ですね。限界突破に代わるだぶりカードの対処については、カードは基本1枚あれば十分で、たくさんダブってしまっても“名声”を上げておいしい報酬を得ることができるぐらいにしました。あとは長く続ければ続けるほど、名声が高くなり「この人すごい!」って周りに思われるんじゃないかと思います。

――名声を90や100まで上げている人たちも多いですね。

 ミリオンレアの妖精や騎士は100まで名声を上げられるので。

――他にも進化カードのキラリーがカード倉庫を圧迫するので、別倉庫にしてほしいという意見も見かけました。

 それもやりたいことの1つですね。まだ「ここまでに」と明言はできないのですが、現状300までしか増やせないので、早々に対応したいです。そもそも倉庫の数を増やすことを最優先にやりたいとは思っています。今言われていることは、サービス開始前からわかっていたことも多いのですが、やりきれていないことですね……。

――マルチプレイではなく、NPCとクエストに挑むことも多いのですが、NPCの行動についてはどうお考えですか?

 NPCの行動は、開発から「ちょっと間に合わず、少しおバカになってしまうかもしれません……」と言われていたんですが、ある程度はちゃんと行動してくれるようになっています。ただ、とはいえやはりおバカな行動も多く、そこは早急に改善していきたいと思っています。

――その他にユーザーからはどのような意見が挙がっていますか?

 とにかく「カードの種類が少ない」ですね。あとはアーサーごとの優遇され具合も。歌姫と富豪は超重要な立ち位置で、ファインプレーすると崇められもするし、逆にちゃんと役割をこなさないと地雷認定されたりもします。傭兵なんかはアタッカーとして使いやすいので、重宝されるし万人向けです。盗賊が……明確な役割がなくどっちづかずな立ち位置になっています。そのため立ち回りが難しく、非常に玄人向けなアーサーです。うまく立ち回れないと単純に戦力として弱く、ボス戦の開幕で歌姫からリジェネ(ターン始めにHP回復)効果のあるカードを使われたりするのですが、それには「死ぬなよ!」というメッセージも込められているという(苦笑)。どのジョブにもちゃんとバランスよく役割を持たせなければならないので、追加されるカードのスキルも考えていかないといけないですね。

 そういったバランスの他には、やり応えの部分――ボスの強さのバランスやエンドコンテンツの充実化ですね。今は難易度の高いマルチプレイがエンドコンテンツとしてあるように見えますが、それは「マルチプレイをまだ楽しんでもらえている」という一点のみで機能していて、それに飽きられてしまったら、やることがなくなってしまう。だからギルドだったり、さっき話していたようなギルド内ランキングや対人戦のようなものをやっていかないと、すぐに飽きがきてしまいます。ですのでそこは優先度を高くして開発を進めています。

――ちなみに、岩野さんのお気に入りのキャラクターは?

 さっき弱いと言ってしまいましたが、“盗賊アーサー”が好きですね。騎士カードで言うと、見た目なら“ニムエ”や“トール”に“エターナルフレイム”、あとは“蹴球型パーシヴァル”です。本当は昨年6月の世界的なサッカー大会に合わせて出そうとしていたんですが、ものの見事に遅れてしまって……。蹴球型については、異物感があっておもしろいなと思って事前登録ガチャに入れたのですが、「もうロシアの話かよ!」というようなツッコミもいただきました。

『乖離性ミリオンアーサー』
『乖離性ミリオンアーサー』

 あとボイスで言うと“第二型タークィン”ですかね。攻撃時に「有料だよ」って言うんですが、初めて聞いた時に「牛乳だよ」って聞き間違えてしまってなんかずっと耳に残ってしまっています(笑)。

『乖離性ミリオンアーサー』

――『拡散性』から引き続き出ているキャラクターも多いですよね。

 まだ出していないんですけど、前作の人気キャラの1人なので“ガレス”もお気に入りです。『拡散性』の流れで女性キャラが多いんですけど、男性キャラも増やしていこうとは思っています。あとは、現在放送中の『実在性ミリオンアーサー』から入ってきてくれた人もいるので、あのキャラクターたちの中からも出したいですね。

■課題が多い……? 『拡散性』についても聞いてみる

――スマホ版のサービス終了が発表された『拡散性』についても伺いたいのですが、2014年を振り返ってみて印象に残っていることはありますか?

 うーん……。印象に残っているというよりは、運営がほとんどできていなかったので、申し訳なかったなという一点に尽きますね。印象に残ることが何もできなかったなと。その問題は元々のプログラムの問題でもあって、それが厄介だから新しいプログラムを作ったんですけど、それもあまりよくなくて……。それでも遊んでくれているユーザーさんも多く、そういった人たちにも『乖離性』で鬱憤を晴らしてもらいたいので、移行キャンペーンをご用意します。

――でもPS Vita版では多彩なコラボを展開されていましたね。

 スマホ版は不甲斐ない感じだったんですけど、PS Vita版は好調でした。PS Vitaだけに対応すればよいので、開発もしやすかったんです。スマホはAndroid端末の機種が多数あり、iOSのバージョンも複雑で。だからPS Vitaでは、ぷるぷる機能とかコラボの実施とかいろいろと実現できました。PS Vitaはタイトル数的にもまだまだこれからのハードだと思っていて、会社間の結びつきも強く、「コラボをやろうよ」とお誘いすると「いいよいいよ」って言っていただけて本当にありがたいです。お互いにPS Vitaの市場を盛り上げていこうという空気がありますね。

――3DS版のサービス開始には驚きました。

 もうとにかく「やってみよう」から始まりました。どんな結果になるかわからないけど、挑戦してみました。結論から言うと、可能性があるプラットフォームでしたね。ユーザーさんの数も、PS Vita版が1年ちょっとかけて増やしてきた人数に、ものの1カ月ほどで並ぶ勢いでした。ただ、ユーザー特性がまったく違っていて。PS Vita版はコアゲーマーがやっているので、深夜帯にプレイしている人が多いんです。でも3DSは21時ぐらいなので、わりとライトな若い子が遊んでいる印象ですね。そういった若い子にも『ミリオンアーサー』というものがあるよというのが伝わっているのであれば、今後も展開していきたいですね。

 一昨年から去年にかけては、横にタイトルを広げてきたんです。「『拡散性』とか『乖離性』とか『実在性』とかいっぱいあるけどなんなのコレ!?」というところまでは来たと思っています。これからは『ミリオンアーサー』というものがより確固たるものになっていくための、次のステージへと『乖離性』を中心にやっていきたいなと思っています。

――2014年は、ネイティブアプリのゲームが多数リリースされた年でもありましたね。

 いろいろ環境が変わっていきましたよね。売り上げの面でいくと、『拡散性』の時に1位になれていたような売り上げ以上のものを『乖離性』で出しているんですが、それでもトップ10に入るのが精一杯で。それだけ市場が大きくなっていて、タイトル数も増えていて……その中で目立つのが困難になっています。だから、当然何かのマネばかりではもう通用しませんし、本質的なおもしろさと新鮮な体験を提供していく必要があります。かといって、挑戦的過ぎてもダメ。ストレスなくプレイできるベースを作った上で、そこに乗っかるゲーム性についてどの程度チャレンジするのか、そのバランスが問われる時代になっているのではないでしょうか。

■UTSUWAでブレイク!? 『実在性ミリオンアーサー』の盛り上がりについて

――『実在性ミリオンアーサー』の盛り上がりがすごいですね。

 正直な話、僕は『実在性』についてはほぼ何もやっていないです(笑)。企画立ち上げ当初に、どういう番組にするのかの企画固めまで参加して、あとは別のプロデューサーにすべてやってもらいました。僕は3次元コンテンツにあまり興味がなく、プロデュースに不安がありましたので……。そんな僕が見ても爆笑してしまうくらい、すごくいいものに仕上げてもらったなぁと思っています。そういうパワーを持っていたために、ネット流行語に「UTSUWA」が入ってきたんだろうなと。予想外のものを打ち込んでくるあの感じは、2次元、3次元問わずウケるんですよね。『拡散性』でいうところの、ちょぼらうにょぽみ先生の4コママンガ『弱酸性ミリオンアーサー』みたいなものなのかなと思っています。そのナナメ上に行くような勢いが『実在性』にもあったのかなと。

――個人的に、歌のコーナー“Britain Music”が好きなのですが(笑)。

 歌のクオリティは毎回本当にすごくて。ちゃんと歌詞も物語を理解した上で、それをボケようみたいな感じになっているのが、歌を作ってくださったみなさんの真剣さというか理解度の高さを感じます。とにかく「すごいな」とリスペクトするばかりで。あれはプロの仕事ですね。あと、意図してかはわからないんですけど、ガウェインなんかは普段は「ウォー」って男っぽい声で戦っているのに、歌のコーナーになると可憐な感じで「ファッ!?」ってなりました。あらゆる面でギャップがすごいコンテンツだな、と。そのギャップに驚かされて、心に火が灯る……そんなコンテンツが『実在性』なのかなと思います。

 実はTwitterでおもしろいつぶやきを見かけたんですよ。『実在性』で『ミリオンアーサー』が気になって『拡散性』を始めようと思ったけど、容量多すぎだわ更新すくないわで心が折れる。しかしそんな『ミリアサ』難民の受け皿になったのがタイミングよくサービスインした『乖離性』、という内容のものでした。先にお伝えした通り『乖離性』は当初予定よりも遅れてのリリースだったのですが、あのタイミングで出したのは逆によかったのかもしれません。運がよかったです(苦笑)。

――『実在性』はどなたがメインでかかわっていらっしゃったんですか?

 広野(スクウェア・エニックス 広野啓氏)というプロデューサーです。言い出したのは安藤(スクウェア・エニックス 安藤武博氏)ですが。安藤に呼ばれて参加した打合せに広野やILCAさんもいらっしゃったのですが、安藤から「実写作って」と言われて、僕たち全員頭に「?」が浮かんで。ILCAさんも「えっ!?」って(笑)。僕があまり口出しせずに、番組制作スタッフにお任せしたのが逆によかったのかなと思います。

 もういろんなことが混ざり合って、予想外の展開になったんですけど、それをあたかも「仕掛けた」という風にみられてなんだか複雑な気持ちです(苦笑)。2014年は運によって支えられた『ミリオンアーサー』でした。『実在性』については、ニコニコ動画でコメント付きで見るのをオススメします!

『乖離性ミリオンアーサー』

■リアルイベント『御祭性』の第2弾の可能性は……?

――今年初めに『御祭性ミリオンアーサー』というイベントも実施されましたが、『乖離性』でもそういったイベントを開催する予定はありますか?

 『乖離性』がちゃんと売れてくれたので、やりたいとは思っています。

――『乖離性』ならタイムアタックとかも楽しそうですよね。

 あとは会場に来てくれたお客さんのランダムマッチングとか。『拡散性』に比べて格段にそういうことがやりやすくなっていますし、今後対人戦が実装されたらより燃える感じになるかなと。

――2015年の『ミリオンアーサー』の目標は?

 2015年はとにかく『乖離性』をちゃんと盛り上げたいなと思っています。盛り上げるという意味では、さきほどの『御祭性』のようなリアルイベントもやりたいです。リアルイベントって、ユーザーさんの熱を灯し続けるのに重要なことで、弊社の『ロード・オブ・ヴァーミリオン』がそのすごくいい例なんですよね。トレーディングカードゲームって、全国のカードショップで大会が行われていて、リアルの熱があるんですよ。だから公式オフ会やキャラバンのようなものをやっていきたいなと思って、いろいろと練っている最中です。最終的には湯布院(大分県)での温泉オフイベント開催を目指したいです!(←温泉に行きたいだけ)

 だから変に儲けに走らずに、ユーザーのみなさんが喜んでくれる方向をベースに考えた運営をしていきたいなと。それをすることで、長く続くコンテンツにしていきたいです。少なくとも2015年は、さきほどお話したようなエンドコンテンツの拡充などのバージョンアップを実現して、湯布院につなげたいなと!

 スマホ版『拡散性』の運営で得た反省を、PS Vita版、3DS版の『拡散性』や『乖離性』の運営では見直して、みなさんの期待を裏切らないよう続けていきたいと思っております。リアルイベントをやりたいと思っている中で、そういう盛り上がりにも目を向けてもらえたら、次の『ミリオンアーサー』につながっていくと思うので、2015年もぜひ遊んでもらえるとうれしいです。

『乖離性ミリオンアーサー』
▲インタビュー終了後、岩野氏とマルチプレイで一緒に戦っていただきました。

(C)2014 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

データ

▼『乖離性ミリオンアーサー』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:iOS
■ジャンル:RPG
■配信日:2014年11月19日
■価格:基本無料/アイテム課金
 
iOS版『乖離性ミリオンアーサー』のダウンロードはこちら
▼『乖離性ミリオンアーサー』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:Android
■ジャンル:RPG
■配信日:2014年11月19日
■価格:基本無料/アイテム課金
 
Android版『乖離性ミリオンアーサー』のダウンロードはこちら

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