2015年2月9日(月)
水瀬葉月先生が執筆する、電撃文庫『課外活動サバイバルメソッド』の紹介記事をお届けします。
▲悠久ポン酢先生が描く本作の表紙イラスト。 |
保健室のベッドに入り浸る無気力系女の夜子、甲斐甲斐しくて面倒見のいい幼なじみの優理。彼女たちと過ごす石堂幸也のいつもの日常は、ある日を境に一変した。
突如として宣告された“課外活動”――。全校生徒の4分の3ほどは理不尽な死を迎え、生存者約千数百人はこの巨大学園に閉じ込められて生活することを強制された。脱出するための条件は、死んだら出現する《魂のかたち》を500個集めること。それぞれオリジナルの異能力を与えられた生徒たちは、生存をかけた極限のサバイバルに放り込まれた――。
一発逆転を狙うギャンブラー、欲望のままにすべてを奪う武装集団、安息地に引き込もる姉弟、秩序を訴える優等生、心の壊れた少女、保健室暮らしの3人組、そして彼らの前に現れた連続殺人能力者――。それぞれの想いを胸に、それぞれの運命が動き出す。
ある日突然、学園の周囲が硬度を持った霧におおわれ、外に出られなくなってしまったら? 数千人の生徒が閉じ込められた巨大な学園で、“首割れ”と呼ばれる死体が動き回り、殺人を楽しむ生徒に命を狙われたら――?
電撃文庫『課外活動サバイバルメソッド』は、そんな恐怖が支配する学園を舞台に、生き残りをかけた“課外活動”を強要された生徒たちのバトルロイヤルが展開します。物語は保健室に入り浸っている3人――保健委員の石堂幸也とその幼なじみ・薬園地優理、オカルト研究会の才連夜子――を中心に、多数の生徒たちの視線から描かれるという構成。
それぞれの立場で描かれたエピソードを読むことで、この事件の全容が明らかになってきます。ここから完全に脱出する方法は、《魂のかたち》と呼ばれる黒玉を500個集めること。しかし、この玉は生徒が死亡しなければ入手できないという条件が……。そのことを考えると殺人が横行するのは想像に難くありません。
しかし、脱出を望むでもなく、ただ純粋に殺人を楽しむ少女が現れたことで物語は大きく動き出します。首謀者は校長とみられますが、その目的は謎に満ちていて、読み進めるごとに不気味さを増していきます。はたして保健室常連の3人組は、最凶無比の殺人能力者から逃げ切ることはできるのか? 過酷な現実に立ち向かう青春物語は、実に読み応えがあります。
いつ命を狙われるともわからない、サバイバルな学園生活。そういう時こそ、仲間のあたたかな絆にホッとします。特に主人公の3人組――石堂幸也、薬園地優理、才連夜子の友情には、心動かされるものが……。
幸也は面倒見がよく、保健委員という立場から、負傷した生徒たちを往診してわずかな報酬をもらいながら日々を過ごしています。彼の幼なじみの優理は、明るいムードメーカーで過酷な状況下でも笑顔を忘れません。一方、夜子はインドア派で魔女のような美貌を持つ、口数の少ない少女。それでいて、公然と幸也のことが好きだとアピールしている積極的な一面も。3人がお互いを想い、知恵を絞って殺人鬼に立ち向かうのですが、その結末には予想外の真実が隠されていて、驚かされることでしょう。
連続殺人犯に変貌した少女のエピソードでは、彼女の闇に堕ちていく心理状態がしっかりと描かれていて、目をそむけたくなる反面、その罪悪感のない獣のような強い精神に惹かれる気持ちも?
殺して、守って、愛して、泣いて、奪って、奪われて……。明日の見えない学園でなにを想い、なにを希望に生き延びればいいのか。迷う少年少女たちの行く末を見守ってください。
(C)水瀬葉月/KADOKAWA CORPORATION 2014
イラスト:悠久ポン酢
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