2015年2月24日(火)
おもしろいゲームが好きな電撃Appが注目するスマホアプリ。そのアプリがどのようにして生まれたのか、開発者に直接お話を聞きに行くインタビュー企画を連載中です。
今回はAimingが開発、マーベラスが配信しているオンラインRPG『剣と魔法のログレス いにしえの女神』をクローズアップ。開発陣のお2人に本作の誕生秘話やこれからの運営についてお聞きしました。
『ログレス』が生まれた経緯やこれまでの運営のエピソードなど、さまざまな初公開情報が盛りだくさん! すでに本作をプレイしている人はもちろん、RPGが好きな人が共感できる開発理念などもお聞きしたので、ぜひチェックしてみてください。
▲プロデューサーを務めるマーベラスの板倉基之氏(写真右)と、開発プロデューサーを担当するAimingの下川晶平氏(写真左)。 |
本作は冒険者となって、剣と魔法の世界を旅するファンタジーRPGです。さまざまなクエストをこなしながら、ログレス王国に迫る異変の謎を解き明かしていきます。
そして最大の特徴が、たくさんのプレイヤーと一緒に冒険ができること。それも1人や2人ではなく、数十人レベルのプレイヤーと同時に遊べて、バトルでも最大8人で同時に戦えます。リアルタイムでチャットをして、多くのプレイヤーとともに冒険を楽しむことができるのです!
▲これまで平穏だったログレス王国。しかし急にモンスターが暴れ出して……。先輩冒険者のジョーとともにその謎を追うことに! |
フィールドを自由に移動できる本作は、モンスターと重なるとバトルになるシンボルエンカウント式。バトルは攻撃したいモンスターをタッチするだけで、あとはオートで動くのでとっても簡単です!
また、装備している武器によって強力な攻撃“必殺スキル”を使えます。必殺スキルは敵を攻撃したり補助魔法を使ったりするとたまっていく“EP”を消費して使うことができます。
▲いろいろな武器を集めて、さまざまな必殺スキルで戦うという楽しみも。必殺スキルはエフェクトも派手で、使うとスカッとします! |
本作はジョブによって装備できる武器が異なります。ジョブは基本職が5種類(ファイター、マジシャン、プリースト、レンジャー、ナイト)、上位職が5種類(ビショップ、パラディン、ルーク、ウォーロック、マーセナリー)の他、期間限定職など合計10種類以上が存在します。
最初はファイターからスタートしますが、該当クエストをクリアすることで簡単に別のジョブになれます。なお、ジョブには“アビリティ”があり、ステータスの上昇などさまざまな恩恵を受けることができます。
▲スマホで遊べる本格的なオンラインRPG。それが『ログレス』です! |
――まずはお2人がどのような部分を担当しているのか教えてください。
板倉:『ログレス』はAimingさんと弊社の2社共同事業で進めており、開発、運営、パブリッシング、広報など、基本的に両社で協議しながら進めています。その中で私はマーベラス側のプロデューサーを担当しており、主に企画全体やマーケティングを見ています。
下川:私はAimingの開発プロデューサーとして、コンテンツ全体の監修や調整をしています。
――そもそも本作はどのような経緯で開発が始まったのでしょうか。
下川:それを語るにはPC版『ログレス』のスタートからお話することになります。PC版がスタートしたのは4年ほど前になるのですが、ブラウザゲームで本格的なオンラインRPGを作ったらおもしろそうだという話がありました。そこで弊社の椎葉(Aiming代表取締役社長の椎葉忠志氏)とマーベラスさんで話し合いがあったんです。
板倉:もともと弊社とAimingさんは『ブラウザ三国志』からお付き合いがあったんですよ。そんな流れもあって青木(マーベラス取締役副社長の青木利則氏)が企画を動かし始めた形です。
とはいえ、当時は反対意見も多かったようです。ブラウザゲームで本格的なオンラインRPGを作っても需要がないからヒットしないだろうなんて声もあったみたいですが、青木はとにかく「絶対にヒットします!」と企画を押し通したそうです。
下川:こうしてPC版『ログレス』が生まれて、皆さんの応援のおかげで4周年目を迎えさせていただきました。その運営を始めて1~2年くらいの時に、そろそろ『ログレス2』を作りたいなと思い始めました。
そこで椎葉に相談したところ、ブラウザゲームの市場が成熟してきたことに加えて、スマートフォンという新たなプラットフォームの規模が拡大してきた時期でもあったので、「スマホだったらいいよ」という話になったんです。
――なるほど。スマホ版は『ログレス2』として作り始めたんですね!
下川:ちょっと違いますね。プラットフォームが変わった状態でいきなり『2』と付けるのも変ですし、スマホ版はPC版をベースにして、まずは移植に近い形で進めることになりました。
また、うれしいことにPCブラウザ版の『ログレス』もそこからずっとサービスが続き、いろいろとアップデートをできましたので、そういう意味では今のPC版は実質的に『ログレス2』と呼べるものになっていますからね。
板倉:そういう流れで、当初はPC版をスマホで遊べるようにするだけという規模感で、手間や時間をかけずにさっくり移植をすることになりました。ところが……。
下川:なんだかんだ1年以上かかりましたね(苦笑)。移植ではなく、完全新作を作るような流れになっていきましたから。
やっぱりPCとスマホでは操作が異なるのでインターフェースが違いますし、そもそもプレイヤーのプレイスタイルもすべて違いますからね。大元となるシステムや世界観のベース、一部のグラフィックやデザインパーツなどは転用できましたが、ほとんど新規で作ることになりました。
――なんとなくPC版のベースがあるからスムーズに進みそうな気がしますが?
板倉:この規模のゲームを約1年で作れたのは、かなり早いほうだと思いますよ。そういう意味では、PC版から流用できたメリットは大きかったです。
――具体的には、どのような感じで開発が進んで行ったのでしょうか。
下川:まずデザインリソース自体は、PC版のものをある程度流用することができました。問題はキャラクターのモーションに関する部分でしたね。
PC版はFlashで動かしていたのですが、スマホ版はCocos2d-xというゲームエンジンを使うことになったので、ゼロからシステムを構築することになったので……。ここについては、とにかくエンジニアの方に負担をかけてしまいました。
板倉:スマホ用のアプリ開発において、今ではCocos2d-xの環境はかなり整備されてきましたが、我々が作り始めた当初はまだまだでしたからね。
下川:そういったゲームエンジンの研究から入って、PCのFlashでできていたことをスマホでもほぼ再現できる目処がついてきました。こうして技術的な問題がひと段落したところで、また次の問題にぶち当たりまして……。それが、画面のレイアウトやインターフェースに関する問題でした。
――確かにPC版は横画面ですが、スマホは縦画面ですね。
下川:最初はスマホ版も横画面にするつもりだったんですよ。敵味方の距離を取れるのでエフェクトの迫力を出しやすいし、PC版のノウハウを生かしやすいし。
でも、実際に自分がスマホで『ログレス』を遊ぶことをイメージした時、電車の中で吊り革を持って遊びたいなと思ったんです。そう考えると、縦持ち=縦画面にすることは譲れないなと。
板倉:持ち方もそうですが、スマホで遊ぶなら片手で操作できなきゃダメという意見も多かったです。
下川:そんなわけで、最初は“どっちも作ってしまえ!”という力技で、横画面と縦画面の両バージョンを並行して進めていたのですが、プロトタイプの段階で活路を見出せたので、思い切って縦画面だけに絞りました。
板倉:方向性を絞ったことで、より縦画面で遊ぶことに適した形で調整を進めることができました。横画面をあきらめて正解だったと思います。
――通信システムの構築はいかがでしたか? 常時接続をしてプレイするタイプなので、かなり重要な部分であると思うのですが。正直、電波局が変わった瞬間に切断されたりすると困りますからね。
下川:確かにバトル中に切断されると死活問題ですからね。電車での移動中は頻繁に電波局が切り替わることを意識して、そういった際にゲーム的に影響が出ないような仕組みを確立しておきました。
これについてはベースとしたPC版のシステムが優秀だったおかげで、本当にスムーズに進みました。当初はスマホ用に大幅にカスタマイズすることも覚悟していたのですが、あっさりとスマホ版に転用できました。
実はプロトタイプの段階で、新幹線での移動中でも切断されずにスムーズに遊ぶことができたんですよ。自分たちのことながら感動しましたし、「ああ、これならスマホでもオンラインRPGが成立する!」と確信した瞬間でしたね。
板倉:ただ、完全に通信が切れてしまった場合は、どうしてもリロードが入ってしまいます。ユーザーの皆さんには不便をかけてしまっていますが、オンラインゲームという仕組み上、なかなか改善が難しい部分です。
――では、UIに関してはいかがでしたか。PC版のUIを参考にスムーズに進んだのでしょうか。
板倉:UIは二転三転しましたよね。いつまでも調整が終わらなかった記憶があります(苦笑)。
下川:地獄でした(苦笑)。最初はオーソドックスなWebブラウザベースのソーシャルゲーム系を参考にしてみたのですが、オンラインゲームで必須となるチャットを組み込もうとするとうまくいかなくて……。
基本的にオンラインRPGは情報の密度が高いので、それらを盛り込むとキャラクターを動かすゲーム画面がどんどん狭くなりますし、ゲージや数値やアイコンだらけで、見た目的にもうんざりしてしまうほど情報過多になっていくんですよね。
だからもう、ユーザーが把握できない情報はむしろ意味がないだろうという判断で、優先度をつけて情報をばっさりとカットすることにしました。
板倉:その判断は苦労しましたし、勇気もいりましたが、結果的に遊びやすくなったと思います。特にスマホ版の『ログレス』は、初めてオンラインRPGを遊ぶような方も多いので、開発初期の数値だらけのゲーム画面を見たら、難しそうだと感じて遊ぶのをやめてしまったかもしれません。
下川:従来のオンラインRPGには必須と言われていたバトル中のログ表示機能なども、思い切ってオミットしちゃいましたからね。とにかく“なくても遊べるもの”を減らして、HPのように“ないと遊べないもの”だけを残していくようにしました。
――言われてみれば、バトル時のモンスターの名前についても、最初に出た後に消えてしまいますね。
板倉:そういった形でも画面がスッキリするような工夫をしています。一見するとスマホ版とPC版は似ているように感じるかもしれませんが、意外と違うところだらけなんですよ。
例えばバトル時の操作ですが、PC版では敵を選択してコマンドを選び、どのスキルを使うのかを選ぶ形で、攻撃まで3ステップほどかかります。これに対してはスマホ版は、基本的に敵をタップするだけの1ステップで済みます。
下川:スマホ版はタッチ操作が前提となるので、とにかくステップを減らすことを意識しました。また、意外と見落とされがちなのですが、タッチ操作を前提とするとアイコンの大きさやデザインも重要になるんですよ。似たデザインが多いと間違ったコマンドを選ぶ危険性が増えますし、アイコンが小さいとタッチミスも増えますからね。
そういった部分も含めて、スマホ版『ログレス』は完全新作に近い流れで作られていきました。
――ここからは少し、お2人のクリエイター個人に関する話をお聞きしたいと思います。そもそもどのようなきっかけでゲーム業界に入ったのでしょうか。
板倉:自分の場合はちょっと特殊で、声優を目指していたことが縁でゲーム雑誌の編集者となり、その流れでゲーム会社に入社した形ですね。
――なんだか波乱万丈な感じでビックリしました(笑)。もう少し詳しくお聞きしてもよろしいですか?
板倉:順を追って話すと、かつて声優を目指していて、それを断念した時に、何か関連した仕事ということで声優雑誌で仕事をしたいと思ったんです。そこで声優雑誌を作っていた徳間書店に入ったのですが、実際に配属されたのは『ファミマガ(ファミリーコンピュータマガジン)』というゲーム雑誌でした。
その後、ゲーム会社に入ってコンシューマゲームをメインに作っていましたが、実はオンラインゲームには昔から縁があって、『ドラゴンクルセイド』や『まじかるブラゲ学院』といったブラウザ型のオンラインゲームの立ち上げに携わってきました。
――『ログレス』以前からオンラインゲームと縁があったなんて不思議ですね。下川さんはいかがですか。
下川:実は自分もオンラインゲーム、特にMMORPGとは縁があって、『ファイナルファンタジーXI』にハマったことで今の仕事をやっているようなものなんですよね。
◆MMORPGとは?
Massively Multiplayer Online Role Playing Gameの略で、大規模な多人数同時参加型のオンラインRPGのこと。タイトルによっては数百人以上のプレイヤーが同時に遊ぶことになります。
――なんと! ぜひ詳しく聞きたいです!
下川:そもそも自分はけっこうミーハーなゲーム好きで、小さいころからゲームが大好きだったんです。ファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ、PS2など、いわゆるゲーム機はほぼほぼプレイしていましたね。それで「ゲームが作りたいなぁ」と漠然と思っていた時に、ゲームセンターのゲーム、いわゆるアーケード作品にハマったんです。
衝撃を受けた作品はたくさんあるのですが、中でもセガさんの『犬のおさんぽ』は非常に革命的なゲームで、「ゲームセンターのゲームを作りたい!」とアーケードゲームの開発会社で働き始めました。その後に『ファイナルファンタジーXI』で初めてMMORPGに出会い、ここでも大きな衝撃を受けました。
最初は「なんで『FF』なのにポーションがこんなに高いの!?」とか、「敵が本気で倒しにくるバランスで難易度が高すぎない!?」なんて感想だったのですが、遊んでいくと今までスタンドアローンで遊んできたゲームとはまったく違う魅力にあふれていて、どんどん引き込まれていきました。
――例えば、どういったどころに新鮮さを感じましたか?
下川: 今まではゲーム中の街の人に話しかけて情報を得ていたのが、別のプレイヤー、本当のリアルな人に話しかけて情報を得るという感覚は新鮮で衝撃的でした。それに、こちらが敵と戦っていて負けそうな時に通りすがりの人が回復魔法をかけてくれた時も驚きました。いわゆる“辻ケアル”というやつですが、これを初めて味わった時には「えっ。なんで回復してくれるの!?」と驚きと楽しさが混じり合って、本当に新鮮でしたね。
オンラインゲームという意味ではドリームキャストの『ファンタシースターオンライン』などがありましたが、『FFXI』で感じたMMORPGのプレイ感覚はすべてが刺激的で、あの体験は私がオンラインゲームを作るきっかけになりましたね。
そうして趣味でプレイしているうちにオンラインゲームのセオリーがわかるようになって、その奥深さにひかれていき、実際にオンラインゲームの開発会社に入社することになったんです。
――なるほど。1人のユーザーとしてもオンラインRPGを遊んできたからこそ、『ログレス』はおもしろいゲームになっているんですね。
下川:自分としてはオンラインゲームの体験だけではなく、アーケードゲームを作った経験も大きかったですね。コンシューマゲームと比べて、アーケードゲームはロケテストでユーザーさんが遊んでいるところを見ながら作っていたので、その経験はオンラインゲームの運営に大いに役立っていると感じています。
――お2人ともかなりのゲーム好きだとわかりましたが、最近はどんなゲームを遊んでいますか?
板倉:『アイドルマスター』はアーケード版からのプレイヤーで、もう10年近く遊んでいます。アーケードゲームだと『三国志大戦』もかなりプレイしていて、階級的には“丞相”までいきましたね。
下川:私も『三国志大戦』をプレイしていましたが、“丞相”ってかなりガチじゃないですか(笑)。私は対人戦よりも、NPCに圧勝するほうが楽しかったですね。アクション系があまり得意ではないので、対人戦だとなかなか勝てなくて……。
私は本当にミーハーで人気があるものを遊んでみたくなるタイプなので、『パズドラ』『モンスト』『ツムツム』と話題になっているゲームはひと通りプレイしています。『白猫プロジェクト』も楽しく遊んでいます。
――少し概念的なお話になりますが、お2人が考えるゲームのおもしろさとはなんだと思いますか?
板倉:一概に“こう”とは言えないと思いますね。逆に言えば、おもしろければなんでもいいとも思っていて、そういう瞬間ってけっこういろいろなところにあるような気がするんですよね。
企画の話をしていて、「このゲームのおもしろさはなんなの?」と問われた時も、「おもしろさなんて、いくらでも作っていけばいいじゃない」という気がしますし。
下川:私的におもしろく作るために心がけているのは、ユーザーが行った行動に対して、ちゃんとレスポンスを返してあげることですね。
例えば、思いっきり殴ったという行動であれば、それがちゃんと大ダメージを与える強力な技だと演出してあげる感じですね。ユーザーさんには“こうなったら、こうでしょう”みたいな何かしらのイメージやお約束、セオリー的なものがあると思うのですが、そこをちゃんと誇張表現して、脚色して、そのイメージを演出することは重要だと思っています。
『ログレス』を例にすると、クエストを繰り返し遊ぶことですごいアイテムを入手できるという一連の流れも、ユーザーさんが行動した結果に対するレスポンスだと思っています。そういう部分を1つ1つちゃんと作っていくことが、トータルとしておもしろいゲームになるような気がします。
――ゲーム業界を目指している方に向けて、何かアドバイスをいただけますか?
板倉:毎年、新卒の面接官をしているんですけれど、意外とゲームを遊ばない人も多いんですよね。個人的にはちゃんとゲームをプレイして、自分が好きなゲームくらいは語れるような人がいいかなと思います。
あと、企画職を目指すのなら、自分の考えをアウトプットができるようになることが大事です。さっきの好きなゲームの魅力を伝えるというのもよい訓練だと思いますし、なんでもいいから企画書を書きましょう。
企画職になったから企画書を書くという姿勢よりも、企画書をたくさん書きたいから企画職を目指すという順番なのかなと思いますね。
それと、これは自分の経験上の話ですが、その業界を目指すなら、とりあえずその業界に入ったほうがいいと感じますね。中途採用を考える時、例えバイトでも“ゲーム会社でデバッカーを1年間やっていました”というタイプのほうが採用しやすいこともありますので。
下川:ゲーム開発の現場を目指すのなら、ゲームをプレイすることは絶対的に必要だと思います。また、開発者は会社員であってアーティストではないことを意識することも大事だと思います。自分の尖がったセンスをアウトプットするというよりも、やっぱりユーザーさんありきの仕事だと思うんですよね。
若いころはどうしてもセンスに走ってしまうのですが、“これを表現した場合、相手がどう思うのか”をイメージすることはとても大事です。そういう感覚は、ゲームを遊んでいる時に養われていく部分もあるので、そこで感じたことを作る時にも大事にしていくと、いろいろな意味でクリエイターとしての幅が広がるんじゃないかと思います。
――本作は昨年末に1周年を迎えましたが、印象に残っているイベントや出来事などはありますか?
板倉:個人的には、最初に行った“属性の試練”が一番印象に残っていますね。こう言うのもなんですが、初めて“オンラインRPGっぽい!”って思いましたからね(笑)。
◆属性の試練とは?
強大なボスと戦える時間限定のイベントバトルのこと。ボスを討伐すると、武器や防具、魔晶石などを報酬としてもらえます。
複数のプレイヤーが同じフィールド内で戦うことになり、基本的に1時間限定となるので、普段よりも協力プレイが重要となるイベントと言えます。
初期の『ログレス』は、本作を普通の1人用RPGだと思って遊ぶ方が多くて、他の方とパーティを組まずにソロで一生懸命敵を倒していき、1人でボスに挑んで勝てなくて「このゲーム、なんだかおかしい!」みたいなところがありました。
でも、“属性の試練”が実装されたことで、否応なしにみんなが同じモンスターと戦う形になり、新たなコミュニケーションが生まれた感じがしました。敵と出会って、レアな敵がいたらチャットで“レア”と書き込んで仲間を呼ぶという一連の流れが自然とできあがり、オンラインRPGっぽさが生まれたんですよね。
下川:当時は本当にオンラインRPGを知らない方が多くて、周りにいるプレイヤーキャラクターをNPCだと思って「よく動くNPCだな」と思っていた方もいたようです。そんな状態だったのが、板倉さんのおっしゃるように“属性の試練”というイベントでコミュニケーションが活性化しました。
その時に生まれた“レア”という言葉は、今でも続く『ログレス』の歴史に残る偉大な言葉だと思います。
――“属性の試練”は時間限定で多数のユーザーが同じフィールドに集まる仕様ですが、システム的にはかなり大変なのでは?
下川:はい、サーバーエンジニアにはけっこうな無茶をしてもらっています。
板倉:普通のオンラインRPGでは、システムやサーバーの負荷的に開発スタッフからイヤがられますからね。どうしてもシステムトラブルなどにつながりやすいですし。
下川:それでもやっぱり、たくさんの人が一緒に遊んでこそのオンラインRPGというところで頑張りました。ただ、最初は1回きりの特別なイベントとして試してみたはずが、いつの間にかレギュラーに近いものとなって、1年間も続いていますけどね(笑)。
――『ログレス』については、イベント追加だけでなくシステム的なアップデートが頻繁にあるところもすごいと思います。
下川:スマホアプリは次々とイベントを開催するものが多いですからね。『ログレス』がオンラインRPGだからといって、半年間ペースでじっくりと腰をすえてアップデートを練るという運営スタイルにするわけにもいかないと判断しました。
そんなわけで“2週間に1回、何かしらアップデートを行う”というスタンスで運営をしたので、本当にまたたく間に1年が過ぎ去った感覚です。
板倉:オンラインRPGという特性もあるかと思いますが、1年間をかけてやっとゲームが完成してきた感じですね。サービス開始当初から“こういう機能も入れたいね”という話はたくさんあって、それを実装していったら1年が経過していました。
下川:だから、「1周年に向けて何をしましょうか?」というよりも、「うわ、もう1年だ! 1周年記念で何かしないと!」という感じでした(笑)。
――先日、ダウンロード数が500万を突破しましたが、それも気がついたらという感じでしたか?
板倉:そうですね。現場的には200万まではなだらかに上がっていった感じで、そこから先は“あれよあれよ”という間に500万を突破した気がします。
むしろ印象に残っているのは、30万突破くらいのタイミングでしたね。最初はゆっくりとしたスタートで、広告などでブーストをかけ始めた時に数十万DLくらいにボンっと上がったタイミングがあったんですよ。
正直なところ、オンラインRPGは少し敷居が高く見えるので、人が入ってもすぐに出ていってしまうかもというイメージがあったのですが、実際はかなりの方が遊び続けてくださいました。そういう意味では、スマホでのオンラインRPGは珍しいかもしれませんが、打てばちゃんと響くという実感を持てましたね。
下川:爆発的な伸びというよりも、本当に積み重ねだった気がします。ただエイリムさんの『ブレイブ フロンティア』とのコラボはかなり影響が大きかったですね。『ブレブロ』というゲーム性と『ログレス』というゲーム性に何かしら親和性があり、そこでけっこう新規ユーザーが増えて、今に至るトリガーになった気がします。
――配信開始から1年がたち、スマホでのオンラインRPGも増えてきた印象がありますが、その中で『ログレス』の強みや魅力はなんだと思いますか?
板倉:本格的なオンラインRPGというくくりで言えば、2Dでの見下ろしタイプって本作が唯一だと思います。3Dのオンラインゲームは増えてきていますが、『ログレス』のように2Dの温かみのあるルックスでしっかりとオンラインRPGを遊べるというタイトルは、まだまだオンリーワンなのかなと感じています。
下川:そもそものところ、我々としては特にオンラインRPGというジャンルを強調しているわけではありません。しっかりとしたRPGとして作った結果、RPGが好きな方が『ログレス』を遊び始めてくださり、そのプレイの延長として人とのコミュニケーションが自然に発生して、より楽しく『ログレス』を遊んでくださっている気がします。
板倉:ソーシャルゲームの流れもあって、一時期はアプリのRPGって、RPGじゃなかった時代があったと思うんですよ。RPGとついているけれども、実質的にはカードゲームやタワーディフェンス的な部分がメインだという。
我々が作りたかったRPGは、いわゆる『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』のようなコンシューマの流れをくむ“普通のRPG”で、そういう意味ではユーザーの皆さんが遊びたかったRPGとマッチしたような気がします。
――『ログレス』の魅力の1つとして、親しみやすい王道ファンタジーの世界観もあるかと思います。どのような流れで世界観を決めていったのでしょうか。
下川:そもそもオンラインRPGはゲーム自体のストーリーというよりも、プレイヤー1人1人にストーリーが生まれるゲームだと思っています。なので、世界観はきっちりと構築したほうがいいと思うのですが、逆にストーリーはわかりやすく、味付け程度に抑えています。
板倉:自分はストーリーの需要も高いと思っています。だからこそ定期的に新章を配信していますが、プレイが早いユーザーさんは数時間でさくっとクリアしちゃいますからね。あまり一気にストーリーを追加するわけにもいかないので、なかなかバランスが難しいところです。
――具体的にはどんな流れでストーリーを考えているのでしょうか。
下川:あまりガチガチの世界観を作って発信してしまうと、その設定にとらわれてシステムやイベントで自由な発想がしにくくなることがあります。オンラインRPGは特に足回りをよくしておかないと動きにくいので、その点は注意しています。
板倉:逆にオンラインRPGならではの部分として、ユーザーさんのプレイ傾向やジョブのトレンドなどを意識することもあります。それらを踏まえてストーリーやイベントを考えることもありますし、内容を調整することもあります。
――キャラクターについてはPC版とスマホ版で、見た目は同じでも役割や設定が違うという不思議な感じになっていますが、何か理由があるのでしょうか。もしかして、実は2つの世界がつながっているという伏線なのでは!?
板倉:それについては肯定も否定もしませんが、そういう気配はあえて少しだけ残しています。
下川:あえてPC版とスマホ版はデザインを流用しているのですが、これはスケジュール的な理由がありました。さすがにすべてのグラフィックを作り直していると労力がかかりすぎてしまいますので。
とはいえ、PC版とスマホ版がまったく同じ物語になるわけではないので、いわゆるスターシステム的な考え方で、キャストは同じでも役を変えようという流れで進めていきました。
――スキル名などはどうやって決めているのでしょうか?
下川:基本的に私が考えており、オリジナルの造語として考えています。自分はバトル系のマンガが好きなので、そういったところからちょっとリスペクトさせていただくこともありますね。
――名称と効果はどちらを先に決めますか?
下川:本作のスキルは必殺技で、必殺技って名前を言って発動するのがカッコいいじゃないですか。だから、まずはカッコいい名前を決めて、その後にスキル内容を決める流れにしています。
例えば、まずは語感などから“サウザンドエクスペリエンス”という言葉を考えます。これを直訳すると“千の経験値”となるので、「そんなにたくさんの経験があるなら、たぶん敵の攻撃とか避けまくるんじゃない?」的な(笑)。そんな感じで、なんとなく筋を通して考えていくと、ユーザー的にも人気のあるスキルになる傾向がありますね。
――確かに、スキルなどの名前になんとなく説得力を感じると印象に残りますね。続いてジョブに関する話題ですが、なぜ現状の10種類にしたのでしょうか。
▲公式サイトに掲載されている10種類のジョブのグラフィック。 |
板倉:かなりギリギリまで二転三転しました。最初はもっと職業が多くて、後に期間限定イベントで登場させたネクロマンサーとかロードとかが存在して、10数種類くらいあったんですよ。
でも、かなりリリースが近づいた時期に職業を絞ることになり、バランスなどを考えて今の10職になりました。
下川:考え方として、本作には武器の種類が大剣、突剣、弓や杖など10種類あります。それを2つずつ並べると5個になるわけで、それらをまんべんなく散らせたのが5種類の基本職ですね。
そもそもの期間段階から、武器の組み合わせによって無限に職業を作れることを考えていたので、とにかく職業を増やすことも考えたのですが、ちょっと敷居が高く見えてしまうかもしれないなと。
ユーザーさんが遊びやすいように基本職は5つに絞って様子を見たのですが、バランスがちょうどよかったので、あえて増やさずに今にいたっています。
板倉:これまでネクロマンサー、ロード、ウォリアーのように期間限定での特殊なジョブは登場させてきました。そういった特殊な形での追加は今後もありうると思いますが、基本となる10種類の職業については、あまり数をいじる予定はありません。
――『ログレス』をこれから遊び始めるユーザーに攻略アドバイスをいただけますか?
下川:これについては、実際に遊び始めてみて、知り合いになったユーザーさんと話をして学んでいくのがよいかと思います。初心者の方をフォローしてくれるプレイヤーさんも多いので、いろいろと聞いてみるといいと思いますよ。
もちろん、ある程度は自分で調べる努力も必要ですが、『ログレス』にはたくさんのコミュニティがあるので、気が合う仲間と出会えるはずです。
板倉:そういった前提で初心者の方へのアドバイスですが、職業選びはやっぱり大事ですね。特に上位職は音の響きからして基本職より強くなりそうな感じがしますが、実は『ログレス』ではちょっと違います。
どちらかというと、上位職はより玄人向けの職業というバランスなので、無理をして上位職になると、逆に苦労することもあります。なので、ちゃんと基本職を極めてから上位職になるほうがおすすめですね。
――基本職の選び方はいかがですか?
板倉:基本職はどれもオンラインRPGの定番職なので、自分が何をやりたいのかを考えて選ぶことが大事です。前衛の物理攻撃アタッカーならファイター、後衛の物理攻撃アタッカーならレンジャー、魔法攻撃アタッカーならマジシャン、回復をするヒーラーならプリースト、盾やオトリ役のタンクならナイトですね。
すべての役割を1人でやろうとせず、周りのプレイヤーさんとの役割分担を考えて、自分の役割に特化させて育成していくことが基本になるはずです。
下川:選ぶことに悩んだ時は、最初からついているジョブのファイターで遊んでいくのがよいと思います。大剣と斧に加えて弓も使えるので、けっこうオールマイティなアタッカーとして役立ちます。少なくとも序盤の間はガンガン武器をぶん回して進んでいけ、かなりサクサクと遊べるようなバランスになっていると思います。
――アドバイス、ありがとうございます! ちなみに今後の『ログレス』で挑戦してみたい夢や野望はありますか?
板倉:現実的にどうこうではなく、あくまでも個人的な目標ですが、同じ戦闘に100人以上参加させられると楽しそうだと思いますね。
――同じフィールドで100人以上が同時にプレイするということですか?
板倉:いえ、100人パーティでバカバカと敵を殴りまくるイメージです。まあ、本当に単なる願望ですけど(笑)。
下川:さすがに実現するのは難しそうですね(苦笑)。
板倉:比較的現実味があるレベルでは、プレイヤー同士が対戦するGvGなんかもやってみたいですね。もちろん、まだ具体的に何か企画を動かしているわけではありませんが。
◆GvGとは?
“Guild vs Guild”の略称で、プレイヤーが所属するギルド=集団同士で戦う団体戦のこと。同じような用語でPvP(Player vs Player)というものもあり、こちらはプレイヤー同士の個人戦や、少人数でのパーティ戦などを指します。
似て非なる言葉がPK(Player Killing)で、プレイヤーキルとも呼ばれるもの。主にそのアイテムを奪うために、他のプレイヤーを攻撃して倒す行為を示します。
――下川さん的にはGvGはどう思われますか?
下川:アーケードなどでは対戦モードは普通にありますし、ユーザー同士が力を競い合ったり、力を披露できたりする場があることは、ゲームとしては悪いことではないと思います。
板倉:ただ、PvPをやりたいとは思うけど、いわゆるPKはやりたくないですね。
下川:そうですね。もし『ログレス』でプレイヤー同士の対戦を実装するとしたら、試合形式で正々堂々と戦いましょうというスタンスになるでしょうね。
――そう考えると試合形式の対戦も楽しそうですね。下川さんの野望はいかがですか?
下川:ちょっと『ログレス』とは関係がない野望なのですが、長いことスチームパンクのすごいロボットもののゲームを遊びたいと考えていまして。でも、意外とどこも作ってくれないので、機会があればぜひ自分で作りたいという野望があります(笑)。
――なんと! スチームパンクの新作も楽しみにしています!! さて、いろいろと今後のアップデートも予定していると思いますが、例えば武器の種類などは増えたりするのでしょうか。
下川:いろいろと考えているところはあって、できれば武器の種類を増やしていきたいとは思っています。ただ、問題はモーションなんですよね。例えば、鎌のように振って使う武器なら剣を振るモーションを使うなど、いろいろとリソースを共有化して作っていけます。
でも、これが銃であったり、クローや格闘などになると、新規でモーションを作る必要があるので、相当な時間がかかっちゃうんですよね。
板倉:銃は難しそうですけど、格闘系ならなんとかなりそうな気がしますけどね。とはいえ、基本のモーションが少ないと、今度はスキルごとにバリエーションを出す時に苦労するかもしれませんね。
下川:そんなわけで、ジョブと同じように武器種も拡張自体は可能ですが、安易に追加してしまうとバランスを崩す危険性がありますので、じっくりと調整しながら、ユーザーさんの動向も含めて考えていこうと思います。
――わかりました! ちなみに余談ですが、ネットで話題になっている超危険種は実際にいるのでしょうか?
下川:超危険種? 危険種なら実装されていますけど。
◆危険種とは?
期間限定イベントで登場することがある、非常に強力なモンスター。イベント中は8人まで戦闘に参加可能で、クエストの難易度が高いほど豪華な報酬がもらえるチャンスがあります。
板倉:危険種を倒すと低確率で超危険種が登場するというウワサがあるんですよ。確か、すべての危険種を5回ずつ倒すと登場条件を満たして、超危険種を討伐するとメインの装備枠が1つ増えるという。
下川:へぇー! そうなんですか。知りませんでした(笑)。
――自分が聞いたのは危険種を倒すターン数が関係するという条件でした。一定ターン以内に倒すと条件を満たすとか。
板倉:まさに都市伝説化していますね(笑)。
下川:この超危険種のアイデアはおもしろいですね! スタッフと相談して、実装することも含めて検討させていただきます(笑)。
――都市伝説から新要素が生まれるかもしれないという流れは、オンラインRPGならではでユニークですね! それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。
板倉:オンラインRPGと言いつつ、本当に普通のRPGとして遊べるように考えています。『DQ』や『FF』といったRPGが好きで、スマホでも楽しいRPGを遊びたいなと思っている方には、ぜひ遊んでもらいたいですね。
遊び始めてみると、1人で遊ぶことも楽しいのですが、意外と友だちや知らない人と一緒に遊ぶRPGもおもしろいことに気付いてもらえるはずです。
下川:まだまだ運営が始まって約1年なので、今後もどんどん変わり続けていきますし、いろいろな遊びを提供したいと考えています。すでに遊んでいただいている皆さんを飽きさせないように頑張りますので、ぜひご期待ください。
そして、これから遊び始めるユーザーさんに向けては、リアルタイムコミュニケーションをしながらゲームを遊ぶ楽しさをぜひ知ってほしいと思います。たくさんのプレイヤーさんと一緒に遊ぶ感覚を味わうと、本当に世界が変わりますよ!
(C)Marvelous Inc. Aiming Inc.
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