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2015年3月11日(水)

黒川塾(二十四)をレポート! 2014年度に大きな注目を集めたコンテンツは!?【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 2015年3月9日、東京のデジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパスにて、エンタテインメントの未来を考える会(黒川塾)が開催された。

『黒川塾』

 第24回を迎えた本講演のテーマは、“ゲーム・エンタメ系メディア有識者による『2014年 エンタテインメントの未来を考える大賞』選定”だ。2014年に登場した様々なコンテンツのなかから、特に大きな注目を集めた作品を選出することを目的とした本講演では、ゲーム・エンタメ系メディアの有識者として、電撃PlayStation編集長の西岡美道、週刊ファミ通編集長の林克彦氏、そして株式会社 CNET Japanの編集記者である佐藤和也氏がゲストとして登場。本講演の主催者であり司会を務めた黒川文雄氏とともに、2014年のエンタメ業界を振り返った。


◆◇◆◇◆黒川塾(二十四)登壇メンバー◆◇◆◇◆

『黒川塾』

黒川文雄氏

 あらゆるエンタメコンテンツに精通したメディアコンテンツ研究家。直近では“東京ワンピースタワー”の宣伝にも携わっているとのこと。


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林克彦氏

 週刊ファミ通編集長。最近ではファミ通の表紙を飾った『EVOLVE』を推しているようで「すごく面白い」とセッション冒頭で話していた。


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佐藤和也氏

 株式会社CNET Japanの編集記者。最近は『Wake Up,Girls!』にハマっているとのこと。ちなみに“片山実波”のファンのようだ。


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西岡美道

 電撃PlayStation編集長。『モンスターハンター』シリーズや『Destiny』など、マルチプレイタイトルや海外タイトルを好んでプレイしている。


■2014年に大きな注目を集めたのは、やはりVR

 まずはじめに話題にあがったのは、2015年3月2日から6日にかけてアメリカ・サンフランシスコにて開催されたゲーム開発者向けカンファレンス“GDC(Game Developer’s Conference) 2015”で大きな注目を集めた“Virtual Reality(以下、VR)”について。

 “GDC 2015”では、前年、2014年のGDCで発表されたPlayStation 4専用バーチャルリアリティシステム“Project Morpheus”の発売時期が2016年上半期予定と発表されたこともあり、世界の注目がどんどんVRに集まっている、VRの未来は必ず来る流れになっていると、ゲスト全員が共通意見として挙げていた。

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▲“GDC 2015”で発表になった新型の“Project Morpheus”。

 GDC関連では、林氏の「日本人クリエイターの登壇が少なかったのは残念」というコメントを受けて、「日本のコンテンツ自体の注目度はどうなのか」という質問を黒川氏が投げかけていた。それに対して西岡、林氏はともに「メーカーというよりは開発スタジオやクリエイター個人に対しての注目が大きい」と答えている。

 例を挙げると『METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN』を手掛ける小島秀夫監督や『Bloodborne』のディレクターである宮崎英高氏、SCEワールドワイドスタジオのプレジデントである吉田修平氏などは海外でも注目を集めているという。彼らは檀上にあがるだけでスタンディングオベーションを受けるというように、期待感をもたせられる存在がいるというのは大きい、と語っていた。

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▲国内発売が9月2日に決定し、さらに盛り上がりを見せる『MGSV:TPP』と、3月26日に発売が迫る『Bloodborne』。

 次に大きな話題として挙がったのは、日本国内ではスマホなどのアプリゲームが充実しているのに比べて、コンシューマが沈静化している印象を受けるという点についてだ。林氏は「今はコンシューマメーカーもアプリゲームに開発ラインを割いている。市場規模で考えても、今ビジネスとして大きいのはアプリゲームなので、現状は仕方のない部分がある」と指摘。

 また「ゲーム業界がアプリゲームに傾倒している現在、コンシューマにリソースを割いているメーカーがどれだけあるのか」という黒川氏の疑問に対しては、林氏はメーカーによってスタンスが異なると述べている。「アプリゲームも上位タイトルが動かないなど、1つのコンテンツをどれだけ長く遊ばせるかというのが勝負になっており、新規が上位に入るのが難しい状況になっている。メーカーによってはコンシューマでいった方が手堅く勝負できると考えているところもある。だからスマホ一択ではないと思う」と語る。

 日本国内ではまだ物足りなさを感じるPS4に関しても「今国内ではPS3がまだ元気だから縦のマルチプラットフォームは仕方がない」と述べる林氏。その意見については西岡も「PS4は高価なハードなので仕方ない部分もあるが、どれだけPS4に魅力を感じられるようにするかが重要だと思う。3月にはPS4専用で『ファイナルファンタジー零式HD』や『Bloodborne』が登場する。こういったユーザーが買いたくなるような仕掛けを積み重ねていくことが大事。2月には『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』も発売されてタイトルも豪華になっているし、2月、3月と経過してPS4本体がどれだけ売れるかは気になっている」と述べていた。

 PS4の話題を受けて、議題は再度VRへ。黒川氏はVRによってゲームの遊びの幅が広がりそうだ、と考えているようだ。これに対し西岡は「現状VRは、ゲームというよりはVRそのものに興味を持っている開発者が多い。だから『鉄拳』シリーズの原田勝弘さんが『サマーレッスン』を作っているというのは、ゲーム業界にすごく大きな影響を与えている。VRを開発しているゲームメーカーがあるということと、“GDC 2015”でMorpheusの発売時期がアナウンスされたことで、各メーカーも動きやすくなるのではないか。ビジネスになるかどうかもキー」と意見を述べ、加えて「『サマーレッスン』では、今感じられる興奮や感動とはまったく別の体験ができた。今のゲームでできないことがVRではできる」と語った。

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▲“VR”をテーマに講演した黒川塾(二十壱)の様子。実際に会場で体験することもできた。

 佐藤氏も「VRはそれをイメージできるかどうかの話。体験していないとどうすごいのか分からないけれど、体験すればVRスゴイ! となる。これが一般化するにはアニメなど身近なものがつながりやすい」とし、林氏も「最初のとっかかりはアニメかもしれない。『アナと雪の女王』の世界を360度体験できるとか。それで十分に宣伝になる」と続いていた。

■2014年のエンタメコンテンツを振り返って

 続いて2014年に注目されたコンテンツについての話題に。佐藤氏は位置情報サービスを利用したスマホゲーム『Ingress』が革新的だったと話す。「『Ingress』は純粋にゲーム、と言っていいのかというのはあるが、世界中で受け入れられており、日本でも愛好家が増えつつある。一般メディアでも取り扱っている。ゲーマーが思うゲームとしては寂しいかもしれないが、こういったコンテンツが出たというのはトピックとして大きいし、1つのムーブメントになるのでは」と述べた。

 林氏と西岡は『妖怪ウォッチ』、『Destiny』といったタイトルを挙げつつも、共通して『P.T.』が衝撃的だったと話す。『P.T.』はホラーゲーム『サイレントヒルズ』のティザーゲームという位置づけでPS4にて無料配信されたタイトルだ。

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▲配信されるやいなや世界で話題を呼んだ『P.T.』。

 林氏は「『P.T.』で面白かったのは、KONAMIの名前を出さずに架空のスタジオ名で出したということ。さらにプロモーションもなく突然配信するなど、バズマーケティングを起こすところからちゃんと考えられている」と語り、西岡も「解き方が難解であるうえ、最初にクリアした人がエンディングを見たら“小島秀夫”と書かれている。そこまでの持っていきかたが見事だった。『サイレントヒルズ』はまだ発売が先だと思うが、『P.T.』の恐怖は刷り込まれているので、発売前に思い出すと思う。プロモーションとして凄かった」と続いた。

 また、アプリゲームについても林氏、佐藤氏は『パズル&ドラゴンズ』のチャレンジ精神を高く評価しているようだ。本作は子どもが喜べる状況を上手く作っており、遊びとして急に衰退するビジョンが見えないという点が秀逸だと述べている。

 ほかにも、坂口博信氏が手がけた『テラバトル』や岡本吉起氏も開発に携わった『モンスターストライク』など、ゲーム業界の発展に大きく貢献してきたクリエイターがアプリでヒット作を手掛けていることが嬉しいと登壇者全員が語っていた。

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 セッションも終盤となり、いよいよ受賞コンテンツを絞り込む段階に。まずはハードウェアだが、これはVRヘッドマウントディスプレイの“Oculus Rift”と“Project Morpheus”の2つが満場一致で受賞。市販化はまだされていないので期待を込めてというのもあるが、VR以外の選択肢は難しいというのも理由の1つとして挙げられた。

 ソフトウェアについては、『P.T.』、『Ingress』、そして『テラバトル』の3タイトルが受賞。『テラバトル』については、単純な数字だけ見れば『妖怪ウォッチ』や『白猫プロジェクト』なのかもしれないが、ダウンロード数に応じて著名なアーティストが参戦していく、という試みや話題性が大きく評価されたようだ。坂口氏が「このタイトルについてはそんなに儲けなくてもいい。ほどほどでいい」と公言しているのも含めて、ユニークであるとして選出された。

【エンタテインメントの未来を考える大賞 受賞タイトル】

―ハードウェア部門―

“Oculus Rift”
“Project Morpheus”

―ソフトウェア部門―

『P.T.』
『Ingress』
『テラバトル』

 全部で5つのコンテンツが受賞した2014年度の“エンタテインメントの未来を考える大賞”。セッション前に登壇者全員が、2014年のベストは人によって違う、と話していたという点からもこの受賞作品の多さは2014年のエンタメ業界を象徴しているのではないだろうか。2015年はどのようなコンテンツが登場し、私たちを驚かせてくれるのか――日進月歩の勢いで次々と新しいコンテンツが誕生しているエンタメの未来に、興味は尽きない。

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