2015年4月15日(水)
セガゲームスが運営するiOS/Android向けサービス『ファンタシースターオンライン2 es』を手掛ける開発者へのインタビューを掲載する。
『ファンタシースターオンライン2 es』は、オンラインRPG『ファンタシースターオンライン2』の世界を手元で気軽にプレイできるアプリ。『PSO2』をプレイしているSEGA IDで本作『PSO2es』をプレイすると、キャラクターが連動して同じコスチュームや装備を使える。相互にプレイすることで、“境界を超えるRPG”を体感できるのが特徴だ。
今回お話を伺ったのは、『PSO2』シリーズプロデューサーの酒井智史さんと『PSO2es』ディレクターの陳智政さん。サービス開始から1年を迎えたアプリについて振り返りつつ、先日のファン感謝祭“アークスキャラバン仙台スペシャル”で公開された新機能などについて聞いているのでご覧いただきたい。なお、インタビュー中は敬称略。
▲酒井さん(左)と陳さん(右)。 |
――陳さんにお聞きします。アプリ配信から1年を迎えました。怒涛のような1年だったと思いますが、振りかえられていかがですか?
陳:本当にいろいろなことがあった1年でした。他のプラットフォームとの連動という、セガでもこれまでに挑戦してきていないプロジェクトで、チャレンジしてきた1年でした。ファン感謝祭“アークスキャラバン仙台スペシャル”でも、ユーザーからたくさんの声援をいただき、多くの方に支えられてここまでこれたことを実感いたしました。
一方で、2014年6月にあったDDoS攻撃(ディードス)やサーバー負荷の問題など、ご迷惑をおかけしてしまった事実は課題として外せない出来事です。現在、負荷については改善し、かなり遊びやすくなっていると思いますが、改めてお詫びさせていただきます。その際は申し訳ございませんでした。
――1年間の中で、印象的だったことはなんでしょうか?
陳:いい印象も悪い印象もDDoSの前後ですね。あの時は1カ月間もサービスが止まってしまいました。復帰したとしてもどれくらいのユーザーが遊んでいただけるのか、不安ばかりだったんですが、温かい声をいただき、再び軌道に乗ったのは印象的ですね。普通のアプリであれば、そのままサービスが終わってしまうと思います。そこでユーザーの皆様に支えられていることを再度認識しました。
▲放送局にも出演されている陳ディレクター。後から番組を見直して反省することもあるようだ。 |
――大変という意味では、サービスインまでの期間も大変だったのでは?
酒井:“境界を超えるRPG”の1つであることを最初から想定していたのですが、アルファテストの結果を受けて大幅に改修することになり、サービスインまでに時間がかかりました。サービスインしてからも、DDoS攻撃がありサービス停止があり、通信負荷の問題もあり、紆余曲折ありつつも、ようやく波に乗りつつある今日のココまで来られました。
陳:サービスインを何度も延期し、ユーザーさんだけでなく社内からも「いつ出せるんだ!?」と怒られっぱなしでした。クローズドベータテストを行わせていただいたのですが、「キャラクターの体型が変わらないのはないだろう!」と突っ込みがありました。我々は「スペックを考えるとこれくらいが落とし所かな」と思っていたのですが、そこから作り直しました。その後で社内テストした際にも課題が上がり、それらに対応しているうちに遅くなってしまいました。
あとはセキュリティを考えて、ワンタイムパスワード(OTP)仕様で毎回パスを入力していただいたんですが、ユーザーの皆様の意見を受ける形で改修などもさせていただきました。
――そう考えると、サービス開始直後と現在では、かなり変化、進化して遊びやすくなっているのがわかりますね。
陳:そうですね。ゲーム開始時のダウンロード時間についても、当初は10分前後かかっていたんですが、現在では1~2分で落とせるようになっています。通信周りについても何度も手を入れています。先日のアップデートで毎回マス目に止まっていたのをすっと通るようにしたり、コンテナを開ける動作をカットしたりと、細かく地味にいろいろと手を加えています。まだ直せるところもたくさんあるんですが……少しずつ改修していきたいですね。
――システムの改修はユーザーからの声を拾って、優先度を付けて対処していっているのでしょうか? それとも、開発内部で当初から予定しているスケジュールに沿って進行しているのでしょうか?
陳:ケースバイケースです。実際に遊んでいる人からの意見を受けて改修しているものもありますし、開発として直すべきものをピックアップしてブラッシュアップしているものもあります。
――遊ばれている方は、『PSO2』のアークスが多いのでしょうか?
酒井:そうですね。想定していたよりも連動ユーザーが多いです。もう少し『PSO2es』だけを遊ばれているユーザーを増やしたいと考えています。
陳:ユーザー全体から見ると、1~2割が『PSO2es』のみを遊んでいるという状況です。
酒井:アプリはたくさんダウンロードして、ほとんどを遊ばなくなるというサイクルにあると思うんですが、『PSO2』連動ユーザーが多いという意味でアプリの底支えになっています。長くしっかり遊ばれているのはありがたい限りです。ベースにある『PSO2』自体が継続率の高いタイトルなので、そこは強みですね。
――例えばソールレセプターのように、『PSO2』を楽しむために『PSO2es』をやるというユーザーも多いと思います。ただ、緊急クエストをレイドクエストのような形で実装したのはなぜだったのでしょうか?
陳:『PSO2』とは少し違った形でリリースしたいという気持ちがありました。『PSO2』はリアルタイムでのフレンドとの協力が大事なんですが、アプリは顔を知らない人だけど協力しているものにしたいと考え、あの形になりました。
――反響はいかがでしょうか?
陳:オペレーションポイント(OP)に切り替えた直後は、賛否両論あったんですが、その後さまざまな調整をおこなったことで、現在はだいぶ遊びやすくなり、参加ユーザーの数も大幅に増えました。緊急クエストを開催している期間はログイン数が多くて、盛り上がっている状態です。緊急クエストが始まると一気にユーザーがアクセスされるので、瞬間風速があがりました。緊急クエストの予告に踏み切れなかったのは、サーバー負荷を考慮していたためです。
――昨年末からOPという行動力とは別の要素を入れた理由についてお話いただけますか?
陳:それまでは行動力のみだったのですが、緊急クエスト期間中は通常クエストに行けないという問題がありました。『PSO2』の連動クエストもそうですが、緊急クエストの最中でもちゃんと遊んでいただきたいということで緊急クエスト用のOPを実装させていただきました。
あとはもう1つ理由があります。レベルアップすることで行動力が回復しますが、そうなるとプレイを重ねているユーザーと初心者の方でプレイできる回数に差がついてしまう。そこをそろえたいということで、OPを導入しました。
――低レベルのクラスでクリアして、レベルアップを狙うという手段がありましたね。逆にレベルがあがりきっているユーザーはそれを使えないわけですからね。
陳:実はレベルが上がりきってしまったユーザーが徐々にですが増えてきています。
――緊急クエストでは特別な変異体エネミーが登場しますが、こちらを入れた理由は?
陳:アクションゲームなので強いエネミー、戦い応えのあるエネミーを出したかったんです。なるべく早く提供できる方法を考えて、『PSO2』と見た目は近しいけど、動きが違ったり、状態異常が付いていたりという変化をつけて実装しました。何度もプレイするので、変化をつけつつもアクションを楽しめる形にしようと心がけました。
実はエネミーの色を変化させてしまってもいいのか不安だったのですが、『PSO2』チームに尋ねたところ、あっさりと「いいよ」という回答が戻ってきました。
――緊急クエストについて攻略のコツはありますか?
陳:12月末に変異体エネミーが登場し、ボスエネミーが強くなったのにあわせて、チップの組み合わせによって強さを発揮できるものを用意しました。状態異常を起こすチップをサガと組み合わせたり、特定の武器カテゴリーを強くする激化チップを組みあわさせたりすると、火力を上げていくことが可能ですね。
あとは属性も大事です。エネミーの属性値がどれくらい違うかにもよって与えるダメージが変わってくるので、攻撃する際にはエネミーの弱点の属性値を上げてください。150と250だと2倍近く変わってきますよ。
――『PSO2』連動“マイショップ機能”が4月22日より実装されますが、こちらについてご説明いただけますか?
陳:『PSO2es』の“マイショップ”では、『PSO2』と同じことという意味で、検索、購入、出品、売上回収が可能です。オリジナル要素として、簡易検索と検索履歴が追加されています。購入と出品は有料サービスとなっていて、非プレミアムユーザーさんにかんしては、後日購入のみ開放する予定です。
――“アークスキャラバン仙台スペシャル”にて発表して、反響はいかがでしたか?
陳:「待っていた!」という声と、「これを機に『PSO2es』を始めよう」という声が多かったのはうれしかったです。
――課金制にしたわけは?
陳:『PSO2』のマイショップを拡張した独自サービスです。今回に向けてサーバーも新たに用意しているので、有料サービスとなっています。『PSO2』の負荷をかけないように、むしろ分散させる形でできればということで、このような形になっています。
有料サービスとなっていますが、ラッピーメダルも使えます。プレミアムユーザーは毎日ログイン時に手に入り、緊急クエストでもしっかり遊ぶとかなり手に入ります。メダルを使えば、無料でも活用できるサービスです。
――ショップという観点だと、PS Vitaが同様の役割を担えると思うのですが、住み分けについてはどう考えていますか?
陳:利用シーンに応じて使い分けていただけると考えています。PS Vitaは電波がある環境でしかプレイできないですし、立ち上げにも時間がかかります。さっと確認したい時は『PSO2es』で、時間がある時はPS Vitaを使っていただければと。
――マイショップ実装によって、当初発表されたPC、PS Vita、アプリが揃うわけですが、今の気持ちはいかがですか?
酒井:長い道のりでしたね……。
(一同笑)
酒井:約3年かかっているので悲願ですね。そもそも『PSO2es』を発表した時点からマイショップの連動を掲げていたので、時間はかかりましたが、やっとサービスできるのはよかったです。
▲2012年3月26日に東京都内の秋葉原UDX“UDXシアター”で行われた『PSO2』メディアブリーフィング2ndの模様。 |
陳:マイショップをただ実装するだけでなく、アプリならではの操作性も検討しました。あとは負荷も見ています。昨年は負荷の問題が多かったので、それもあわせて解決する必要があったため、時間がかかりました。
――お互い、4月に追加されるマップが“地下坑道”で示し合わせているのかと思ったのですが、いかがでしょうか?
陳:そこは……意識していませんでした。
酒井:リンクしていればカッコよかったんですが……偶然です(苦笑)。
陳:ただ、今回の物語は『PSO2』との繋がりが少し描かれるのでそこはぜひチェックしてください。
――現在のストーリーは起承転結でいうとどこに当たりますか?
陳:そろそろ“結”に差しかかりそうですね。ただ、現在の物語が終わったらストーリーが出ないというふうには考えていません。どんな話になるかはまだ未定ですが、セラフィ編はもう少しで完結を迎えます。
――ユーザーとして気になるのは、時間軸だと思います。現在、コラボでロビーにセラフィさんがいますが、本アプリは『PSO2』の時間軸だといつごろの話なるのでしょうか?
陳:世界感は同じものですが、現在の『PSO2』とは別の時間軸です。『PSO2』自体がさまざまな時間軸があるので、その中の1つととらえています。
――これまでに配信された強いチップについて再販の予定は?
陳:そうですね、属性がかみあわないということもありますので、今後も提供できるように検討しています。
――昨年、セガキャラクターがコラボで登場しましたが、そちらの反響はいかがでしたか?
陳:開放前後で見た目が変わるものもあり、かなり反響がありました。最終的にはチップの性能に影響するのですが『龍が如く 維新!』の坂本龍馬、『セブンスドラゴン2020』のサムライは人気でした。今年のお正月にリバイバルを出したのですが、こちらも好評でした。
――ゴールデンウィークに『PSO2』の方ではアクセサリーが再販されますが、『PSO2es』では何か予定されていませんか?
酒井:再販ではないのですが、4月22日からチップ総選挙イベントを実施します。アークス関連のチップで、人気投票して上位になったチップをスクラッチで特集します。
――こちらはどういう経緯で行われることになったのでしょうか?
陳:チップは我々の運営から用意するのがつねですが、ユーザーさんの方がどういうチップが欲しいのかをリサーチしてラインナップする流れを作りたかったんです。
――『PSO2』との人気との差が気になりますね。
陳:強さだとサガ、種類の多さでクーナなどが来るのかなと。サガは強いんですが、持っていない人からすると強さを体感できずに、もっと入手しやすいチップになるかもしれませんね。ちなみに僕もサガを持っていないので、フレンドから借りています。『PSO2』の総選挙とは違った視点で、注目しています。……一時期は人気だったマールーは何位になっているんでしょうね。
――以前はマールー、オーザ、リサが人気でしたからね。
――変異体エネミーが『PSO2』に登場する予定は?
酒井:今はありませんね。現状は本編のアップデートを優先しているので。
――陳さんが『PSO2』から『PSO2es』に入れたいと思っている要素はありますか?
陳:まだエネミーやマップで出せていないものが多いので、時間がかかるかもしれませんが追加したいと思っています。今回、セラフィさんが先行調査をしたので、ぜひ長い目で見守ってください(苦笑)。あとはチップについて魅力的なキャラを出したいと思っています。
――これ以降、『PSO2es』にどんなものを加えていきたいと思っていますか?
陳:『PSO2es』は『PSO2』のエッセンスを落とし込んだ遊びの要素と、『PSO2』と連動することでもっと便利にするという2つがあるのでどちらも続けていきたいと思います。開発で優先したいと思っているのは遊びやすさです。もっとブラッシュアップできるところはありますし、より気軽に楽しくというのもできると思っています。
あとは、新規のユーザーさんにもっと入ってきてほしいと思っています。世界観にふれていただき、そこから『PSO2』に行っていただきたい。ただ、初心者は操作性や遊びやすさで離れていってしまうので、ブラッシュアップはつねに追求していきたいです。
――『PSO2』ではカジノロビーがありますが、『PSO2es』に実装されないのでしょうか? 昔、『ファンタシースターユニバース』のモバイルでポーカーができたと思うのですが、そういう形で何か考えられているのでしょうか?
陳:ありましたね。ユーザーさんからの意見として、倉庫、サポートパートナー、カジノを要望する声が多いです。ただ、すべて反映させることはできないので、いろいろな状況を加味しつつ決めています。
酒井:その時のトレンドがあるので、それとうまく合致する形でやっていこうと思います。例えば、今からサポートパートナーを実装しても、使う人がいないならば意味がない。そこはしっかり見極めつつ、開発していきたいです。
――セラフィがロビーに出ていますが、そういったコラボは今後も行われるのでしょうか?
陳:はい、今後もやっていきたいと思っています。
酒井:『PSO2』だけやっている方は、『PSO2es』のよさを知らない。今回の連動企画は効果があったと感じているので、もっと知らせていければと思っています。
――遊ばれている方が増えているとお聞きしましたが。
陳:先日の『PSO2』連動クエストから遊んでくださる方、再びプレイされる復帰ユーザーが増えています。半年前と同じくらいまで遊ばれている方が戻ってきています。
酒井:実は現在放送中のCM効果で増えているという話もあります。『PSO2es』の話をしているわけではないのですが、検索すると出てくるのでそこから入ってくれているようです。
陳:スマートフォンのアプリは、セールスが下がっていくことが多いのですが、徐々に上がってきているという珍しいケースです。サービスを始めて1年が経過して、ここまで続けてこれたのも遊んでくださっているユーザーの皆さまのおかげだと感謝しています。
――確かにアプリは、結果が出ないとすぐにサービス終了してしまうケースもあります。修正を繰り返し、クオリティを上げていくことは珍しいのかもしれませんね。
酒井:会社には『PSO2』とセットで考えてほしいと言っていて、『PSO2es』としては大きい利益にならなくても、1つのサービスとしてとらえてもらうことで、全体としては大きな利益となっていますので、『PSO2es』もさまざまなアップデートを考え、今後も続けていきます。
陳:遊んでくれている皆様の期待にこたえて、ドンドンよくしていきたいと思っています。
――『PSO2』本体の緊急クエストとかぶった時に、どちらに行けばいいのかユーザーは迷ってしまうと思うのですが、今後はどうする予定なのでしょうか?
陳:『PSO2es』の緊急クエストのスケジュールを立てるに際して、『PSO2』の予告緊急は意識しています。
酒井:なるべくかぶらないように気をつけています。
陳:ただ、『PSO2』は夜にいいクエストがあるので、そこを避けていると昼間しか配信できなくなってしまう。重なりを恐れすぎてしまうと、いびつな運営になりかねないので、余裕を持たせて『PSO2es』の緊急クエストは時間を長くとっています。ただし、今後も『PSO2』の予告を見ながら調整するのは変わらないです。
――技術的にできないことはわかっているのですが、同時にログインしたい時がありますね。
酒井:アハハハハ、それも言われますね。
陳:データが同じものなので難しいですね。あとは、『PSO2』がメンテの間にやりたいという声も多数いただいていますが……どちらもすみません!
――まだプレイしていないアークスもいると思うのですが、本アプリのいいところはどこでしょうか?
陳:タイトルについている“es”はエッセンス(essence)からとっています。『PSO2』のおもしろさを体験しながら、チップという独自要素を体験できるので、『PSO2』を遊ばれていない方にもぜひプレイしていただきたいです。『PSO2』とは違う形のフレンドを活用した緊急クエストがあるので、そちらも味わってみてください。
――しばらく休んでて復帰したらクエストがいろいろあって目移りしますが、どこがオススメですか?
陳:基本的にはスペシャルクエストを毎週やっているので、そちらをチェックしてください。あとはアークスクエストを積み重ねていっていただくと、コストや行動力が上がり、やれる幅が広がっていきます。他には緊急クエストも不定期ですがやっていて、レベルが低くても“初級”をやっているだけでも救援がきて、楽しみながらレベルもドンドン上がるのでオススメです。
酒井:『PSO2』はPCやPS Vitaでないとプレイできないんですが、『PSO2es』はどこでもプレイできるという恩恵があります。プレイすることで連動経験値が入りますし、『PSO2es』でしか手に入らないものもあり、『PSO2』のプレイが楽になる。今後入るマイショップ連動によって、外出先でもビジフォン検索がよりはかどるかと。『PSO2es』ならではのおもしろさもありますが、これをプレイすることで『PSO2』がよりはかどることが多々あるので、プレイしていただけるとうれしいです。
陳:個人的にはマイキャラを手元で見られることも大事にしています。ロビーとかでもキャラをつねに見えるようにしています。キャラクターの活躍できる場所が1つ増えたととらえていただき、『PSO2es』をプレイすることでより自キャラ愛を高めていただけるとうれしいです。
(C)SEGA
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