2015年4月25日(土)
MAGES.のゲーム&音楽ブランド・5pb.から6月25日に発売されるPS4/PS3/PS Vita用ADV『CHAOS;CHILD(カオスチャイルド)』。本作の発売を記念したインタビュー企画の連載第2回をお届けします。
第2回は、演出を担当された若林漢二氏とサブキャラクターデザインを担当した松尾ゆきひろ氏にグラフィック全体について伺いました。
アニメ畑で活躍されてきた若林氏が参加された効果は? 本作屈指のエグイ事件“非実在青少女”の誕生経緯は? キャラクターのデザイン意図は? “絶対にパンツを見せない方針”の理由は? などなどさまざまなことをお聞きしています。
本作のグラフィックがどのようにして生まれたのか。スタッフたちのこだわりのポイントが気になる人は、ぜひチェックしてください!
▲松尾ゆきひろ氏(写真左)と若林漢二氏(写真中央)。プロデューサーの松原達也氏にもご同席いただきました。 |
――若林さんと松尾さんが本作でどのような作業を担当されたのか教えてください。まずは若林さんからお願いします。
若林:僕はグラフィック周りの演出やイベントCG等のレイアウト(画面設計)の作画監督を担当しました。具体的には絵コンテを使っての演出とレイアウトの指定、仕上がりのチェック、ゲームとして全体を組み上げる過程での絵と音の表示タイミング等の演出、あとはモンスターや小道具のデザインなども担当しています。
▲若林氏はオープニングムービーにも登場したモンスターをデザインされたそうです。このモンスターが本編でどのようにして活躍するのか、気になる人は移植版で確かめてみてください。 |
――ADVで絵コンテを作るのは普通のことなのですか?
松尾:他社さんがどうやっているかはわかりませんが、自分は昔からコンテありきでグラフィックを作ったほうがいいと思い、そういったスタイルでやってきました。若林が専門的な技術を持っているので、これまでよりも完成度が高いコンテになりました。
松原:原画などはアニメスタジオやアニメーターさんに担当してもらうことが多いため、必然的にアニメと同じような工程を経て作っていきます。最後の塗りの部分以外はアニメとほぼ一緒の作業ですね。
▲写真は公式原画集を撮影したものです。アニメのような作業工程で制作していることがよくわかります。 |
――続いて松尾さんお願いします。
松尾:ささきむつみさんがデザインされた以外のキャラクターと制服のデザインを担当しました。キャラ作監として、若林がレイアウトをチェックした後にキャラの修正を入れたりもしています。
――具体的にはどのキャラをデザインされたのでしょう。
松尾:主人公の宮代拓留(みやしろ たくる)の妹弟にあたる橘結衣・結人、拓留たちの義理の父親の佐久間亘、刑事の神成岳志、ゲンさん、魔法幼女エリンなどです。
ちなみにささきさんには、看板になるメインのキャラのデザイン、塗りまで作っていただきました。
▲ささきむつみさんがデザインしたキャラクターたち。 |
▲よく見ると意味深なアルファベットが……。香月 華の下が“G”で山添うきの下が“AA”。格差社会的な何かが感じられます。 |
――前作の『カオスヘッド ノア』からそうですが、ささきさんのキャラがすごくかわいらしい一方で、ゲームの雰囲気は暗く残虐なシーンやグロいシーンがあります。これにはどういった狙いがあるのでしょう。
松原:今はADVの数が多少、少なくなりましたけど、PCの『カオスヘッド』を作っていた当時はもっとたくさんのADVが発売されていました。そのため、いかにユーザーさんに興味を持ってもらうか、ということがすごく重要だったんです。
ささきさんと言えば、『メモリーズオフ』などのいわゆるギャルゲーのキャラデザで認知されている方です。かわいらしいイラストに対して、ふたを開けてみれば真逆の展開が待っているとなると、それだけで1つフックが作れます。そういったところを狙ってギャップを出していきました。
――初期の構想からデザインが変わったキャラはいますか?
松尾:絵としてはほとんどのキャラが第一稿から変わっています。髪形や色、服もすべて変わったくらいです。当初、『カオスチャイルド』が以前よりもシリアス寄りでいくという意図をささきさんに汲んでいただき、デザインを起こしていただきました。
初期に描いていただいたキャラは大人し目なデザインで、シリアスな物語にふさわしいものだったのですが、志倉をはじめスタッフから「ささきさんをイメージできるデザインのほうがいいのでは?」と意見をもらい、今の形になりました。
――キャラをささきさんと松尾さんのお二人でデザインされているということで、サブキャラをデザインする時に気を付けていることはありますか?
松尾:ささきさんがデザインしたメインキャラの絵柄や雰囲気を壊さない、逸脱しないように心がけました。ささきさんが出さないようなキャラの味や、ささきさんよりもシナリオに近い位置にいるからこそ分かる部分を意識して作っています。
――サブキャラそれぞれをどういった意図でデザインされたのか教えてください。まずは橘結衣と結人についてお願いします。
松尾:とにかく、かわいい妹・弟と思ってもらえるような見た目になればいいなと思ってデザインしました。未公開の設定ですが、結衣は渋谷地震の時に男に乱暴されそうになった過去があるので、女の子だけど生足を出さないキャラにしています。
青葉寮の前での記念写真でもズボンを履かせて、一貫させました。かわいくて天真爛漫に見える娘なんだけど、事件の悪影響はまだ残っているんだよ、という部分を盛り込んだつもりです。
▲手前左が橘結人でその右側にいるのが橘結衣。画面奥の白衣を着た人物が佐久間亘。 |
――結衣や結人の義父の佐久間亘はいかがでしょう。
松尾:佐久間は、渋谷地震で被害にあった子どもたちの面倒を見ているお父さんというイメージです。乃々からは「もう、お父さんしっかりして」なんて言われるタイプでもあったので、おおらかな性格でスキを見せつつも、優しくて包容力のあるデザインにしました。
――私が個人的に好きな蒼崎夢について教えてください。
松尾:当初、蒼崎夢のグラフィックを作る予定はありませんでした。しかしシナリオの都合上、あったほうが効果的だという話になり、若林のコンテをもとに外部の原画さんにデザインしていただきました。
その段階でも十分かわいかったのすが、少し乃々とかぶってしまいそうだったので、自分のほうで見え方を修正しています。周りにいないタイプにしようと、ショートカットでゆるふわな“クールキャットプレス”に出てきそうな子をイメージしてデザインしています。
――ゲンさんはいかがでしょう?
松尾:ゲンさんにはとある深い裏設定があったのですが、本編で採用されることがなく、ただのホームレスのおじさんになりました。
とはいえ、単純にホームレスのおじさんを描くのではなくて、シナリオに書かれていた“貴族ごっこをしている”という設定を生かして、シルクハットをかぶせてステッキを持たせています。
▲主人公が愛読している雑誌“クールキャットプレス”を届けてくれるホームレスのゲンさん。 |
――では一部で人気の川原雅司くんは?
松尾:川原くんはあそこまでキャラが立つとは思っていませんでした(笑)。男友だちのポジションにはすでに伊藤真二がいたので、真面目な役として生徒会副会長をイメージしてデザインしました。
▲川原雅司くん。とあるルートでの活躍で、一部から人気のキャラです。 |
若林:シナリオを読むまでは、あそこまで●●だとは思いませんでした。
松尾:そうですね(笑)。実は先日のエイプリルフールの時に川原くんの絵を描いたのですが、アップしたつもりがアップできておらず……。
松原:何をやっているんですか(笑)。どうりで絵を見せてもらったのにTwitterに上がってこないと思った。
――それはどのようなイラストなのですか?
松尾:「移植版には僕と来栖のハッピーエンドが!?」みたいなことが書いてあるイラストです。松原に「こんなことを書いていいの?」と確認をとって、あとはアップするだけだったんですが……(笑)。気づいたのが4月2日だったので、もう世に出せないなとあきらめました。
▲幻となった川原くんのエイプリルフールイラスト。ひどい表情です(笑)。 |
――彼だけ違うデザインの制服を着ている理由は?
松尾:あれは昔のマンガだと白学ランです。本来は祭りや慰霊祭など式典で男子が着用する制服なんですけど、川原くんは副会長なので、つねにビシっとしていなければいけないという考えで着ています。ちなみに、制服は喪服をイメージしてデザインしました。
▲川原くんが着用しているのは、一番右の“Cのダブル”。 |
――アニメ畑の若林さんが本作に参加されることになった経緯を教えてください。
松原:若林とは『STEINS;GATE』のTVシリーズのころからちょくちょくお会いしていて、『劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ』の上映直前イベントの楽屋で声をお掛けしました。
その場で「今後いろいろなことをやっていけたら楽しそうですね」と話をしていて、若林からは「ゲームにも興味あります」なんて言葉をいただいたので「それならうち(MAGES.)に来なよ」と志倉が誘ったのがきっかけです。
――若林さんはこれまでゲームの開発にかかわったことはありますか?
若林:昔、『エターナルアルカディア』に携わったことがあります。
――おぉ! あの名作RPGの!? どのようなことを担当されたのでしょう。
若林:当時ドリームキャストでの初の試みとして、通常のプレイ画面とイベントシーンをつないで、切れ目なくリアルタイムレンダリングで演出したいという話がありまして。そこで、アニメや映画の手法が必要になり、私が招聘されました。
当時、私はProduction I.Gに所属していたのですが、コンテマンを探していた開発スタッフからI.Gの社長に話がいって、ドナドナ的な感じで連れていかれた感じです。1年くらいコンテと演出をしていました。
――ドナドナとか言っちゃって大丈夫ですか?(笑)
若林:もう時効だと思います(笑)。それよりも前だと『ダブルキャスト』などの“やるドラ”シリーズの制作に携わっておりました。『カオスチャイルド』は久しぶりのゲーム制作だったので、勉強させていただきました。
――久しぶりとのことですが、苦労された点はありますか。
若林:苦労と言っていいのかわからないですけど、工夫するポイントはところどころにありました。
というのも、アニメの場合は作る側が尺を決定しますが、ADVの場合はプレイヤーさんそれぞれのボタンを押すスピードで尺が変わってきますので、どうやってタイミングを合わせるのか、どうやってプレイヤーさんに“ここでボタンを押してください”と伝えるかを試行錯誤しました。
――それは開発側で制御できるものなのですか?
若林:まだ全然未完成ではあるのですが、なんとなくコツをつかみかけてはいます。
人間の心情を操るという意味ではアニメに近い部分はありますが、アニメの場合は演出側で“ここはここまで見せる、一方ここはここまでしか見せない”というように考えて作り、ゲームの場合はプレイヤーさんに“これ以上見たくない、この先がすぐに見たい”と感じてもらうように作ります。
――具体的に、その手法を取り入れたシーンはどこですか?
若林:随所にありますが、音なども含めると8章の終わりがわかりやすいです。例の事件が起こった後に、待機していた記者たちが駆け寄ってくる様子をSEだけで表現したのですが、SEの音質やタイミングにかなり凝りました。
どんなタイミングでボタンを押して読み進めても、緊張感が持続するように作ったんです。あのシーンは直前に見るに堪えないものを表示していたので、プレイヤーさんの心情としては衝撃を受けながらも次がどうなるのか知りたくなるはずと考えて演出しました。
――松尾さんから見て、若林さんが参加されたことによって生まれたプラス点はありますか?
松尾:アニメ畑で培われた感覚や技術、理論が随所に生きていて、絵作りの部分に芯が通ったと思います。特に『カオスヘッド ノア』と比べるとよくわかるのですが、ゲームの冒頭から一貫した雰囲気が作られています。
プレイヤーさんが受け取るメッセージ性がより強くなったと思いますし、原画や仕上げの部分でも勉強させてもらうことが多かったです。
――特に見てほしいイベントCGはありますか?
松尾:非実在青少女です。
▲『カオスチャイルド』でトップクラスにエグイ事件“非実在青少女”。PSハード版限定版特典の元ネタです。 |
若林:そこだけじゃないですよ!(笑)
松尾:もちろんそうですけど、どうしてもインパクトが強いですよね。殺され方という言い方はアレですけど、制約がある中で、どう表現すればより衝撃的な事件になるのかを試行錯誤しました。
その結果、生まれたのがあの“箱”です。想像で残酷さが増す作り方ですね。実はこれ、若林のアイデアなんです。
――別のインタビューで、主人公を演じた松岡禎丞さんが非実在青少女発見シーンの収録時にかなり憤っていたと聞きました。どうやってあんなひど……素晴らしい事件を思いついたのですか?
若林:いつもこの場にいる3人で、シナリオを読みながらどんな絵にするのかを考える打ち合わせを定期的にやっていました。
個人的にシナリオを読んだ段階では全体に綺麗な話すぎるのではないかと懸念していまして、もっと狂気を表現したいと考えていた中で、特に●●の死をもっと重く描くべきではないかと思っておりました。
非実在青少女は、シナリオ上では“バラバラ死体”と書いてあったのですが、当然、このまま描いてしまうと画面が真っ暗になってしまいます。なので「表現をソフトにしよう」とか「見せなければ大丈夫じゃないか」といった意見が出てきました。
そんな時、当時、資料として実際に起こった凄惨な事件などを調べていたのですが、そこで人間の死体を真空パックで保存したり、ラッピングしたりしていた事件を見て「……ハッ!」となりました。
つまり“見せられない”ことを逆手にとって「箱に入れて隠してしまうのはどうだろう?」と思いついたんです。
松尾:見せないことで、プレイヤーさんに妄想させる効果があります。さらに、レイアウト修正で若林が箱のデザインにいろいろなメッセージを込めたのですが、それがまたエグイ(笑)。よく見て考えてみるとさらにエグくて、必要以上に狂気が感じられます。
松原:(下記の写真)これが打ち合わせをしている時に使っていた資料です。これは体験版部分のシナリオなのですが、シナリオが上がってくるとこうやってすぐにプリントアウトして、おのおのがメモしたものを持ち寄ってコンテを作っていきました。
▲これが実際のメモ。 |
▲横から見るとこの厚さ! 大ボリュームに見えますが、1章のみの文量だそうです。 |
――本作には規制されたCGがたくさんありますが、これはもともとすべてを出すつもりで描かれたものなのでしょうか?
松尾:もちろんレーティング審査があるので、どの程度のことをやったらダメだというのはわかっています。
しかしすべてを描いておくと、どこまで隠せるのか、どういった隠し方があるのかの選択肢が増えるので、省略して描くことは考えていませんでした。なので原画を見ると生々しい絵がいっぱいあります。
若林:その反面、パンツは絶対に描かないという方針でした(笑)。
――確か一か所だけ見えるシーンがあったと思いますけど、なぜその方針なのですか?
松原:妄想をテーマにした作品なので、ユーザーさんに妄想させようという考えがあって隠しています。
7章ラストの全員のスカートがめくれるイベントなんて、普通の作品だったらサービスシーンということで全部見せちゃうと思うのですが、拓留と伊藤からは見えているんだけど、ユーザーからは見えない角度にしました。
――……私も見たかったです(笑)。でもプレイヤーは彼女たちがどんな下着をつけているか具体的にはわからないわけですよね。そこを妄想で自由に考えていいのですから、いろいろとはかどりそうです。ちなみに尾上世莉架(おのえ せりか)は某マチ●先生みたいなポーズをしていました。
松尾:最初は違うポーズだったのですが、世莉架だったらああいうポーズをとるだろうと思い、若林に許可をもらって修正を入れさせてもらいました。
若林:それは素晴らしいと思って、積極的に賛成しました。
――来栖乃々(くるす のの)のはいていないCGも好きです。表情が素晴らしいですね。
松尾:拓留たちを説教している途中なので、とっさに何が起こっているのかわからないんだけど、おおよそどういう状況になっているのかは想像できるという、複雑な感情を表してみました。
▲この絶妙な表情とカメラアングルが素晴らしい。スカートがめくれておへそが見えているところも最高なんです。 |
若林:このシーンもこだわりました。コンテではパンツを描いたのですが、実際にはギリギリ見切れる感じに仕上げています。
――個人的な感想ですが、背景が前作よりも渋谷っぽくなっていたような気がします。『カオスヘッド ノア』の時には何か制約があったのでしょうか?
松原:いえ、そういうわけではなく、前作は前作で制作期間との兼ね合いもあって、その中で作れる最大限のものを用意したつもりです。それに前作の主人公は引きこもりなので、家と学校の間でしか行動しないんです。
今作には妄想トリガーとマッピングトリガーがあります。地図があるからには、渋谷の街をあちこち動けるように作っておかないとおもしろくないと思い、渋谷感が出るように当初から設計しました。
また、主人公は新聞部に所属していますから、渋谷のあちこちに取材に繰り出すシナリオ設計になっています。渋谷感が出ていると感じていただけたのは、その効果が出ているんじゃないかと思います。
松尾:前作は観光地のような場所や有名どころが多かったのですが、今回は地味なところも使っています。若林が渋谷の街に詳しいので、そんなところも生きているのかと。
――作中に登場する喫茶店にはモデルがあるのでしょうか?
松原:実際にある“cafe LAX”をモデルにしていて、許可をいただけたので実名で収録させていただきました。
――なるほど! 私はあそこの右下にいる女性が好きなんですよ。
若林:まさかそこに注目するとは……。
松尾:新しい着眼点ですね(笑)。
――もし渋谷が舞台の新作を作るとしたら、またモブとしてぜひ! 本作では光の表現も特徴的だった印象があります。何かこだわりはありますか?
若林:自然光をリアルに再現する部分と人工照明を意識的に使っている部分があります。この作品のテーマの中で、かわいいキャラがかわいくないように見える仕掛けと言いますか、かわいいキャラで恐怖を演出しようとしたとき、照明も非常に大切で。
意図的に寒色の比率を高くしたり、あからさまにありえない赤さの照明を入れてみたり。人口照明とリアルな照明を複合させて、場面を成り立たせています。
――たしかにあまり見ない色が多かった気がします。
若林:メリハリをつけたかったという理由もあって、各キャラのもともとの色を壊してしまうような強い照明を入れたりしました。
松原:ほとんどの人が気づいていませんが、同じことを立ち絵でもやっています。立ち絵の前にフィルターがあるのですが、それによってキャラの立ち位置が変わるだけで、たとえば右から光がさしている場面ではキャラ絵にもそれが反映されるような効果を出せるように作りました。
旧来のADVでは通常色、夕方色、夜色の3パターンの立ち絵が多かったのですが、このフィルターによって、より自然にキャラたちが世界にいると感じられる存在感が出せました。なんとなく「他のゲームと少し違うかも?」と意識せずとも伝わってくれているとうれしいです。
――松原さんから見て、若林さんが参加されて変わったことはありますか?
松原:これまでも私と松尾で同じような作業をやっていたのですが、若林は今の現場を知っている方なので、一段階上の演出が作れるようになったと感じています。
若林は映画畑の人間でもあるので、より映画的なカットを作れるようにもなりましたから、本当に演出面でのパワーアップが著しいと思います。
――トゥルールートのスタッフロールの演出が秀逸で、強く印象に残っています。
若林:特にSEのFOとロール入りのタイミングに注力しましたね。ストップウォッチでベストな位置を探りながら何回も調整しました。ちょうど開発の終盤だったこともあって、位置が決まった瞬間は長い制作期間の中でもっとも感動した場面でした。
――プレイヤー側も30~50時間くらいプレイした後に見るものなので、心情がマッチしていたのかもしれませんね。すごくいいシーンになったと思います。これまではこだわりをお聞きしましたが、本作に収録しきれなかったアイデアはありますか?
若林:最初の話ともつながりますけども、もっと細かくプレイヤーさんの受け取り方を想定して、コントローラの動きをコントロールできるんじゃないかと思っています。すべてが終わった今になって、欲として出てきましたね。
――若林さんは今後も科学ADVチームとして活躍されるのですか?
松原:もちろんです。
若林:次回作ではもっと攻めたことをやりたいです。
――すでに具体的なアイデアがあるのですか?
若林:はい、当初から用意しているアイデアもいくつかありますが、実際の制作現場で生まれてくるものも多いので、今回も制作が進むにつれてエスカレートしていくかと思います。
――次回作での新しい演出を楽しみにしています! それでは最後に、移植版を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
松尾:プラットフォームが広がってプレイしてもらう人が増えるのはうれしいです。やってみると予想以上にギャップがあるタイトルだと思います。ぜひ実際に体験してみてください。
若林:体験版をプレイされた方々から、グロいとか怖いなどのご意見を聞きますが、本編はそれどころではありませんので、皆さん、ぜひご飯を食べながらプレイしてください。
松尾:ひどいコメントだ!(笑)
若林:……って言うとひどいゲームだと思われるかもしれませんが、本作は“クソったれ”なゲームです(笑)。プレイした皆さんに「クソったれ!」と言っていただければうれしいです。
――「クソったれ!」がほめ言葉になる珍しい作品ですよね(笑)。最後に松原さんお願いします。
松原:本作はシリーズ屈指のクオリティになっていると自負していて、そんなゲームができたのも若林と松尾の力があってこそだと思います。今後はさらにすごいものを見せていけると思うので、期待していてください。
(C)2014 MAGES./5pb./RED FLAGSHIP/Chiyo St. Inc.
(C)2008 5pb./Nitroplus/RED FLAGSHIP
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