2015年5月13日(水)
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『CHAOS;CHILD(カオスチャイルド)』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。
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MAGES.のゲーム&音楽ブランド・5pb.から6月25日に発売されるPS4/PS3/PS Vita用ADV『CHAOS;CHILD(カオスチャイルド)』。本作の発売を記念したインタビュー企画の連載第3回をお届けします。
お話を伺ったのは、BGM/SEを制作した阿保剛さん。各種BGMの解説やSE制作秘話の他、阿保さんがゲーム業界に入ったきっかけも聞いていますので、『カオスチャイルド』のBGMが好きな人はもちろん、阿保さんのファンもぜひチェックしてください!
▲阿保剛さん |
――この業界に入った経緯を教えてください。
自分はもともとゲームが好きで、小学生のころに発売されたファミコンに熱中していたのですが、一番引かれたのがゲーム自体とリンクしている音楽でした。特に任天堂さんの音楽がすごく魅力的で「こういうものが作りたいな」と思い、Basicを勉強して簡単なプログラムからグラフィックを描いていました。
後に魔法の箱のX68000を手に入れて、プログラムやグラフィック、音楽を作るようになったんです。そして作っているうちに音楽がメインになり、“音楽を作るためにゲームを作る”、“シューティングゲームの曲を作りたいからシューティングを作る”といったように目的が逆転してしまいました。
いろいろな曲を作っていたのですが、『マイト・アンド・マジック』や『ミステリーハウス』などを発売していたソフトハウスのスタークラフトに送ったんです。そうしたら「じゃあ来週から来て」と言われました(笑)。
――ずいぶん展開が早いですね(笑)。
当時はこんなふうにいきなり採用、なんてことが多かったですね。でも、送ったにもかかわらず断っちゃいまして。
――えぇ!?
で、断ったんですが、また自分で作りたいものを作って、もう一回曲を送りました。そうしたら、やっぱり「来て」と誘われまして。それが業界に入ったきっかけでした。
――音楽好きになったきっかけのゲームはなんだったのでしょう?
パソコンゲームとアーケードゲーム関係ですね。ただ、当時は小学生だったので、ゲームセンターに行ってもゲームができないんですよ。怖いですしね(笑)。なのでACが3割、PCが7割くらいでした。
当時好きだったのは、『ハイパーオリンピック』やアドベンチャーの『デゼニランド』、『テグザー』、『ザナドゥ』などで、PCを持っていた友だちの家に入りびたり状態でいろいろなゲームをプレイしました。『テグザー』と『ザナドゥ』は音楽がよくて、特に『テグザー』の音楽はずっと口ずさんでいましたね。
一番「なんだこれ!」と思ったのは『ロマンシア』でした。電機屋さんで初めて聴いたのですが、今までのゲームとは音楽のつくりやクオリティが全然違うんです。
店員さんに「箱の中にカセットテープが入っているの?」と聞いてしまったほどで、その時に「いやいやパソコンの音だよ」と言われて「こんな音が出るのか!」と衝撃を受けました。
当時は作った人は意識しておらず、“あのゲームの曲”という認識でした。後になって古代祐三さんが作曲された曲だと知って、今になって思うとあの曲や音の作り方にはだいぶ影響を受けたと思います。
――今でもその影響は残っていますか。
残っていると思います。特に意識はしていませんが、曲を作る過程で、たとえば冒険ものだったら『イース』の曲を思い浮かべてしまいます。
――これまで数多くの作品に携わった阿保さんですが、特に気に入っている作品を挙げるならどれになるでしょう。
個人的には『Remember11 -the age of infinity -』や乙女ゲームの『花咲くまにまに』が気に入っています。科学ADVシリーズは自分の趣味が入っているので思い入れが強いです。
――『クリミナルガールズ』でエンディングのボーカル曲を作られていましたが、あまりボーカル曲を作られないイメージがあります。
そうですね。ボーカル曲は仮歌を作って収録してアレンジして、とウェイトが大きく時間がかかるイメージがあります。BGMは数をそろえるために1~2日で1曲を作っていくので、ボーカル曲は時間との戦いなのかなと思います。大変ですが、機会に恵まれればまたやってみたいですね。
――1~2日で1曲をというお話ですが、そんなスピードで作曲できるものなのですか。
曲によるのですが、計算する時によく使うのが2日で1曲なんです。これを基準にして、たとえば30曲を作る必要がある時は、30×2で60日かかると計算します。まあ、こんな単純にはいかないですが(笑)。1日に4曲ぐらい作る時もあれば、1曲にかなりの時間をかける時もあります。
――1日に4曲……かなり早い気がします。
そうしないと終わらないんです。それに時間があればあっただけ作り込めてしまうのが音楽だと思うので、2日で1曲と目安を作って作業しています。
――先ほどは作品でお答えいただきましたが、単体で一番お気に入りのゲーム曲はどれですか?
どんな些細なものでも思い入れがありますから、一番は決められないですよ(笑)。でも『シュタインズ・ゲート』のメインテーマは5年くらい前の曲ですが、うれしいことにいろいろな方にアレンジしていただいて今でも聴く機会がありますから、そういう意味では気に入っています。
――あの曲を初めて聴いた時はえもいわれぬ恐怖を感じました。
第一印象はそうですね。でも因縁や宿命、自分の進む道といったいろいろなテーマを込めて、物語にあわせて曲を展開させています。
前半はゲルバナやSERNに狙われていく怖いイメージで、後半は世界線を越えて未来を変えていくイメージですね。なのでシナリオを読み進めていくにつれて、別の印象を持たれると思います。
――1曲の中で物語が展開しているのですね。
『シュタインズ・ゲート』のメインテーマは最初から最後にいたるまでストーリーの内容を込めました。『カオスヘッド ノア』にはありませんでしたが、科学ADVのメインテーマは物語とかなりリンクさせています。
基本的にシナリオを読んだ時の感情をメモにとっていくのですが、『シュタインズ・ゲート』、『シュタインズ・ゲート 線形拘束のフェノグラム』、『ロボティクス・ノーツ』、『カオスチャイルド』はそのメモの通りに曲を作りました。冒頭だと、やっぱり“怖い”ってメモしているんですよ(笑)。
――では、特に松原さんからの曲の指定はなかったのでしょうか。
『カオスヘッド』の時はありましたけど、科学ADVでは具体的な指定がありません。タイトルが走る一番最初のタイミングで曲の方向性だけ松原と打ち合わせて、あとは自分がシナリオを読んで「こんな曲はどうですか?」と提案します。
――シリーズで共通のイメージはありますか?
あります。未知の領域のようなわからないもの。わからないけど、正体が知りたいUFOのような謎、オカルトのイメージですね。
これらを念頭に置きつつ、『カオスチャイルド』では見えないものが見えるといった超常現象をイメージしました。シナリオがダークで怖いので、音も曲も暗くしています。色で言うと黒と白ですね。
――黒はなんとなくわかりますが、白の意味は?
白があるから黒が見えるというように、白もけっこう怖い色だと思います。モノトーンの世界観です。そういう意味で、PS移植版のオープニングムービーは映像も志倉さんが作られた曲も自分の考えている世界とピッタリで気に入っています。
――他に『カオスチャイルド』のBGMを作曲されるうえで意識されたことはありますか?
ずっとメロディが流れているのも物語としてどうなのかと思いましたので、メロディアスな主張する音楽ではなく、環境音を意識しました。音もきらびやかなものは少なめで怖い音にして、曲中に「ギャー」や「うわー!」といった悲鳴を入れています。
――『カオスチャイルド』のBGMについて、それぞれ解説していただけますか?
メインテーマは、“Live5pb.2013”で上映したPVの曲をもとにして作りました。やっぱりPVでユーザーさんに与えた第一印象は大事だと思いますので、そこに“AH東京総合病院”と“ロールシャッハテスト”のホラーなイメージなどの物語の中の要素を組み込んでいきました。
“ロールシャッハテスト”は何気ない絵ではあるのですが、なんとなく恐い印象がありました。自分にはわからないけど、自分が考えないようなことを考える人もいる。怖い考えになる過程のようなイメージで、そんなメンタル的な怖さを音で表現してみました。
そうやっていろいろな要素を詰め込んでいったら、ものすごく長い曲になってしまったんです。最終的には、メインテーマがあんまり長すぎても、ということでPV、AH東京総合病院、ロールシャッハテストの3つにテーマを絞って、半分くらいの長さにしました。
先ほどの黒と白の話でいうと、“コーンコーン”という音が白で低音が黒という組み合わせです。曲が進むにつれてだんだんと黒が多くなっていって、途中は環境音一色になってしまいます。
『THE THIRD MELT』はかなり初期に作った曲です。『カオスヘッド ノア』の終盤で渋谷地震が発生しますが、そのシーンをイメージしました。雨が降っていて、主人公のタクが倒れていて、足音が聞こえてくる。シナリオを読んだら『カオスヘッド ノア』とリンクしていたので、曲もそれに合わせてみました。
あと、『WORLD -C;C MAIN THEME』のフレーズをわざと5拍子にして入れています。作品のテーマの1つに五感がありますし、5pb.の5でもありますからね(笑)。
4拍子を聞くと安心しますが、5拍子だと1回ずっこけるんです。頭の中でリズムをとりたいんだけど、半分ずれて次に入っていくので違和感が出せます。他のゲームではあまり使いませんが、音楽的な違和感を出したい時は変拍子を使います。科学ADVは5や7拍子が多いですね。
BGMで緊迫感の度合いを演出したくて作った曲です。これはそのシリーズの第一段階で、“何かが起きるかもしれない”という軽度の緊迫感を表現しました。
暗闇の中で、先に行きたくないんだけど行かなくてはいけない、その先で何かが見えた気がする、そんな“実際の怖さを知る前の軽い恐怖感”ですね。これは環境音楽に徹しています。
緊迫感シリーズの第二段階で、“やっぱり何かが起きた、どうしよう”とけっこう緊迫した状態です。シナリオを読んだ時に、主人公たちが初めて当事者になる事件の“回転DEAD”が強烈だったので、このシーン向けの曲を作りたいと思って作曲しました。
このあたりから曲の方向性が固まってきて、ホラー音楽っぽく悲鳴を入れようとか、ドレミファソラシドに当てはまらない音階を入れたりとかしています。コーラスも綺麗なものではなく、バリトンで怖さを演出しました。
あと、民族的なBGMにしてみようとガムラン音楽を取り入れています。これは不思議な音階で、普段は明るくて安心する音楽なのですが、真っ暗な中で聴くとけっこう怖いんです。
ちなみにこの曲には“another version”があります。イレギュラーですが、最初に“another”を作ってから、もっと怖くしたい、でも最大の怖さにはしたくない、と『COUNT DOWN』を作りました。曲自体は同じですが、後ろで鳴っている音が違うんです。
緊迫感シリーズの第三段階で、“命にかかわるから逃げなくちゃダメだ!”という一番緊迫した状態です。悲鳴も入れていますので、ヘッドホンで聞くとさらに怖くなるように作っています。
“回転DEAD”で言うところの、被害者の首が回転してノックの音が聞こえる直前くらいのイメージですね。この後になると、もはや無音のほうが怖いだろうと三段階で止めています。
曲名通り、怖くも明るくもない日常的なシーンで使われる曲です。ニュートラルといっても、怖さの度合い的には10段階でいうところの4くらいです。
イメージとしては、明るい昼間ではなくて曇った昼間。『カオスチャイルド』では明るさはあまりイメージしませんでした。ギャグシーンでもガムランを使っていますし、全体的に“怖い、暗い、真っ黒”と意識して作りました。
――1つ気になったのですが、曲名はどのように考えるのでしょう?
キーワードをたくさんメモして、作曲した後にメモの中からしっくりくるものを英語に直し、過去の曲名とかぶっていないか確認して決めます。
実際、かなりかぶるんですよ(笑)。“○○メモリーズ”や“メモリーズ××”なんてけっこう使っているので、もうメモリーズは使えないですね。でも『カオスチャイルド』は全部すんなりと決まりました。
「みんなで協力して渋谷を復興させよう!」という一体感をイメージして作曲しました。よく聴くとアフリカ的な陽気なボーカルが入っています。先ほど明るさはあまりイメージしなかったと言いましたが、これは陽気ですね(笑)。
超常現象や超能力をイメージして作曲しました。ゲーム本編ではなぜか力士シールがいろいろなところに貼られていますが、そんなちょっとした違和感、不思議な感覚、意図がつかめないイメージも込めています。
この曲は環境音楽に徹しています。個人的に超能力モノの作品が大好きなので、こういった曲を作るのは楽しいです。
――余談ですが、超能力モノというと?
『幻魔大戦』や岡崎つぐおさんの『ジャスティ』などが好きです。『幻魔大戦』はキース・エマーソンの音楽が好きですね。あとは『AKIRA』。大好きでサントラを買いました。
『カオスチャイルド』全体で3番目くらいに作った曲です。曲名の通り、“回転DEAD”が起こったホテルの“妖精のダンス”をイメージしています。シナリオに“一定の周期でオルゴールの音がずっと流れている”といった表記があるので、それを読んで作ろうと決めました。
実は刑事モノも好きで(笑)。『カオスヘッド ノア』や『カオスチャイルド』は刑事側のポジションが大事だったり、そのへんの描写が多かったりするので、刑事モノの曲は作ろうと決めていました。
回転DEADの後に現場に刑事がやって来て捜査をするのですが、この曲はそんな捜査のシーンと刑事をイメージして作曲しました。普通の刑事ではなく、“キレる刑事”のイメージですね。
“マッピングモード”がどういったものか見てから作りたかったので、動画をいただいてから作曲しました。プレイヤーの思考を邪魔しないように、静かな曲にしています。
これにも“another version”があって、もっと静かな曲になっています。同じ曲でも2種類あるとゲームの雰囲気も変わってきますし、演出的に効果があると思って複数作っています。
通称“久野里のテーマ”で、“WHITE”は久野里の白衣をイメージしています。彼女は頭の回転が速い印象があったので、ドラムをベースに使って早いテンポのリズムで引きずっていくような曲にしました。
久野里が登場してから「目撃者がいるとすれば――お前だけだろ」というセリフが出てくるシーンまでを読んだ時に「カッコいい! この曲を作ろう」と決めました。
この曲もけっこう気に入っていて、ゲームのいろいろなシーンで使いたいくらいなのですが、久野里のテーマにしてしまったので汎用するのは断念しました。
『カオスヘッド ノア』にあった『Girls』というBGMの『カオスチャイルド』版です。ヒロインたちの日常シーンで汎用的に使えるように、普通のギャルゲーに収録されていてもおかしくない曲を意図して作りました。
すごく明るい曲ですが、しっとりバージョンも作って他のシーンにも合うようにしています。ヒロインだけでなく、学園生活でのやり取り、学校でのくだらない話、どつき漫才のようなシーン、そういったところもカバーできるような曲にしました。
ギャグシーンで使われる曲です。これは深く考えずに伊藤とタクがくだらない話をしているシーンをイメージしました。
すべて手弾きでクオンタイズせずにわざとリズムをずらすことで、ギャグ的なズッコケ感を表現しています。これも5拍子ですね。
これは『THE THIRD MELT』を違った形で使いたいと思い、かなり後半に作った曲です。『THE THIRD MELT』は冒頭のシーンをイメージして作った曲ですが、『THEN』は物語全体を把握したうえで、タクの“こうだったらいいのに”と“しんみりしているシーン”を想定して作っています。
『THE THIRD MELT』は5拍子ですが、こちらは4拍子にして違和感が出ないように、普通に聴けるようにしました。
なぜ“RIKISHI SEAL”ではなく『SUMO SEAL』なのかというと、力士シールのことを相撲シールと言っている人もいて、自分はずっと相撲シールが正しいと思い込んでいたんです。力士のことをスモウレスラーとも言いますし。そんな間違った認識のまま、曲名をつけてしまいました(笑)。
実際の力士シールは怖くなかったのですが、ゲーム本編ではキーワードであり、怖さのもとになるものなので、暗闇の中に力士シールが貼ってあり、なぜか目が合ってしまう、こっちを見ているような気がする、という得体のしれない怖さをイメージして作曲しました。
これも環境音楽に徹した曲ですね。もっとも環境的なBGMかもしれません。全然音楽的ではありませんが、世界を作るBGMそのものなので、自分は大好きです。
自分の曲の作り方として、メロディはあまり重要視しないんです。ベースラインやリズム、コードなどを全部合わせて1つの音楽で、それを引っ張っていってくれるのがメロディだと思っています。
この曲はそういった旋律はありませんが、曲自体がメロディという考え方で作りました。アンビエント(環境音楽)を聴いているとこういった曲が多くて、自分でも作ってみたいなと思っていたんです。この曲にもメインテーマの要素が入っていますね。
――メインテーマの要素を他の曲でも使っている理由は?
物語の要の部分を入れたいという思いがありまして。『シュタインズ・ゲート』のメインテーマは一番最初に作って、これを発展させるようにBGMを作っていきました。
『カオスチャイルド』はいくつか物語を構成する曲を作って、その中から主要なものを抜き出してメインテーマを作っています。物語を進めれば進めるほど、メインテーマが意図するものがわかると思います。
ロールシャッハテストの図柄にはいろいろな見え方がありますが、この曲は図柄を見て“怖い思考をしている場合”をイメージで作りました。
鍵盤を見ないでイヤな音が出るように何回も弾いて、「これだ!」と思う不協和音を収録しました。不協和音と不協和音を重ねるとおさまりが悪いので、ときどきは綺麗にして、また不協和音にして、とパズル的に組み合わせを考えて作っていくのがおもしろかったです。
ニコ生などの双方向のやり取りができるコミュニティ番組や電脳空間をイメージしました。それと同時に学園祭をイメージしています。学園祭=渡部のインタビューなので、渡部のテーマになっています。
▲ニコニヤニュースの記者・渡部友昭 |
――個別のテーマがあるなんて渡部は贅沢ですね(笑)。
男のテーマがあるのは珍しいのですけど、今回は刑事のテーマもありますしね。逆に、ヒロインごとの個別テーマはありません。
……あっ! でもこれは乃々のテーマですね(笑)。『HER WORRIES』=彼女の心配、彼女=乃々ということで、乃々がタクのことを心配してかまってあげているシーンをイメージしました。
ただ、かまいすぎて「かまうな!」と言われてしまう、世話してあげたいけど、あまり接することができない、というような悲しみもイメージしています。
乃々限定にしてしまうと他のシーンで使えないので、自分の中では彼女=乃々ですが、ゲーム中では乃々のテーマに限定されていません。これは早くできて、2~3時間くらいで作れました。
チャットシーンで使われる曲です。これもシナリオを読んで“あみぃちゃん”とのやり取りが気に入って作ろうと決めました。4曲目か5曲目とかなり初期に作った曲で、回転DEAD関連の曲よりも先でした。
正体不明の2人が嫌なたくらみをしているという、2人の会話のやり取りがイメージのすべてです。これもガムラン音楽ですね。
『THE AIR OF TERROR』=恐怖の空気、恐怖感。これはBGMをすべて作り終わってから、もっと環境音楽を作ろうということで追加で作った曲です。
この曲は途中でいったん静かになるのですが、ホラーって怖いと思わせておいてからいったん安心させて、その後に恐怖シーンがくるじゃないですか。登場人物が安心しているシーンを見て、われわれが「安心しちゃダメ!」と思う部分や、恐怖が近づいてくるような構成を意識しました。
なんとなく、『トワイライト・ゾーン』や『オーメン』といった古いホラー映画をイメージしています。
これも追加で作った曲です。「犯人はこいつなんじゃないか?」といった疑惑のシーンで汎用的に使える曲にしました。この曲にも“another version”があって、さらにイントロだけのバージョンも作りました。
こういういったん気持ちを落ち着かせる系統の曲があると、次の展開へと話を進めやすいと思って、多めに作っています。
汎用的に使える悲しい曲です。死にまでは至らないけど、絶望感のある悲しさ。誰かに裏切られたという悲壮感も込めました。これは特にアレンジがなく、テーマともあまり関係がないので自由に作りました。
『WHAT WAS LOST』よりも、もっと悲しいシーンで使う曲です。こちらはメインテーマのピアノバージョンで、重要なシーンで使うことを想定しました。
この曲も、ひと通り作曲が終わった後に追加した曲です。タクの回想シーンで使うことを想定しています。メインテーマを使うと使用過多になってしまうので、メインテーマを使うまでもない回想シーンというイメージです。汎用的な曲なので、回想以外でも使っています。
夕暮れの日常、白から黒に移り変わる夕暮れ時、しんみりする夕暮れではなく、少し怖い不安のある夕暮れをイメージしています。
児童養護施設でタクたちが過ごしていた過去の回想シーン、幼少時代の曲として作りました。この曲を作った後に『THEN』を作っています。過去の記憶を回想する時が『THEN』で、養護施設での生活を描写する時は『FAR DAYS』です。
使うシーンがきっとあるだろうと作った『GIRLISH』のピアノバージョンです。どのシーンで、というイメージは特になく、『GIRLISH』のしっとりバージョンという作り方をしました。
安心して聴ける曲調ですが、ユーザーさんが「あーーーーーー!」となっている時に流れる曲です(笑)。すべてが終わってしまった喪失感、明るくなりきれない悲しさを盛り込みました。
バッドエンドにかかわる曲です。プロットを読んで、「このシーンの曲がほしい」と思って作りました。悲しさではなくて、「もうダメだ……」という挫折感、絶望感をイメージしています。
ネタバレにかかわるので、Twitterでは解説しなかった曲です。決定的な“あの真実”を知ってしまった時に流す曲として作っています。
本作では決定的なシーンが何回も出てきますが、『VISIBLE ESSENCE』でイメージしたのは実は●●は●●だったというシーンです。なので、スクリプターさんにわたす時には「ゲームの前半では使わないでください」とお願いしました。
後半でしか使ってほしくない曲はけっこうありまして、このあたりから連続します。
華ルートの●●マンの曲です。シナリオを読んで「●●マンがカッコいい!」と引き込まれて作りました。このシーンに限らないように作りましたが、結果的に専用曲になりました。
一番最初のPVで使われていますが、あの時は説明できませんでした。それにしても、あのルートだけ特殊ですよね。林のシナリオは読むとイメージをすごく掻き立ててくるんです。
▲香月 華 |
ゲーム終盤のバトル曲で、このシーン専用の曲として作りました。剣と剣の戦い、ヒーローをイメージしていて、『カオスヘッド ノア』で追加した戦闘曲の位置づけです。
弾き飛ばされたり、形勢逆転したりといった状況が曲の中で展開していて、これにもメインテーマのフレーズを入れています。
本当はすべての戦闘シーンで専用曲を作りたかったのですが、結局専用曲として作ったのは『BREAK FORTH』とラストバトルの曲だけでした。
ラストバトルの曲です。この曲はサントラと本編でイントロが違っています。サントラ版のほうがドラマチックに仕上がっているので、移植版ではサントラ版を収録しました。
悲しみのディソード、誰かに止めてほしい、でもそんな人はいない。戦闘曲というよりも、シーンの描写のための曲、という作り方をしました。
かなり初期に作ったトゥルールートの曲です。限定した場面で前作のアレンジ曲を入れようと考えて、最終ルート専用曲として『カオスヘッド ノア』の『SHIBUYA』という曲をアレンジしました。前作をプレイした人に気づいていただけるとうれしいです。
“LAST LINE”というタイトルは、世界線じゃないですけど、最後のシナリオ、最終ルートをイメージして付けました。
『DID YOU ENJOY?』のアレンジバージョンで、最終決戦を終えた後のタクの生活をイメージしました。最終ルートのほとんどはこのBGMで、ずっとこの曲でもいいくらいの気持ちで作っています。終わりに向かっていく、リセットされていくという意図を込めて『RESET』と名づけました。
かなり考えて作ったPV用の曲です。最初の打ち合わせで絵コンテをいただいたので、その絵コンテ通りに作ってみました。
若林が参加したことでかなりわかりやすい絵コンテだったので、各シーンに合うように、ムービーになった時にうまくシンクロするように曲を展開させました。
オールクリア後の専用曲です。サントラを作り終えた後にクリア後の専用曲がほしいと思って作った曲なので、サントラには入っていません。まだサントラ化されていない科学ADVの曲もあるので、いずれ、それと合わせてコンプリートBOXにできるとうれしいですね。
メインテーマを明るい曲調にしつつ、オールクリア後に「終わっちゃった……」と喪失感を覚えてもらえるように作りました。
――『カオスチャイルド』のBGMで一番気に入っている曲はどれですか?
一番……3つくらい答えてもいいですか?
――大丈夫です!
メインテーマの『WORLD -C;C MAIN THEME』と久野里のテーマ『AN INTERFERER IN WHITE』、あとは●●マンの『HE IS …』でしょうか。
でも『RORSCHACH TEST』も好きなんですよ。気に入っている曲はけっこうあって、刑事の『INSPECTION』も捨てがたいですし……。
――では3曲はやめて、その5曲ということにしましょう! 最後に読者へメッセージをお願いします。
たいていの人は夜にプレイすると思いますけど、夜に1人で、できればヘッドホンをしてプレイしてください。閉じた環境でプレイしてもらえると、より物語の怖さが楽しめると思います。
余談ですが、自分はヘッドホンをして仕事をしているので肩をたたかれるとすごく怖いんです(笑)。あと、なぜか人の気配がするとわかった瞬間が怖いですね。自分は会社の奥で隠れて仕事をしているので、人の気配が全然わからないんですよ。
――スタジオとかで作曲されていないんですか!?
普通のデスクで作っています。普通といっても囲われているので、火事になったら逃げ遅れちゃいますね。
しかし『シュタインズ・ゲート』なんかはよく作ったなと思います。席の後ろに複合機があって、前には営業の席がありました。たぶん、今までで一番ひどい環境で生まれたのが『シュタインズ・ゲート』の曲です(笑)。
――そんな環境であの名曲が生まれたなんておもしろいですね。
FAXと大量印刷などが始まると仕事に集中しづらかったですよ。特に効果音がシビアでしたね。ノイズがちょっとでも入るとダメなので、エアコンもすべて止めたいぐらいです。
なので誰よりも早く出社して、空調を全部きって、一番奥の会議室でケーブルを引きずって人を引きずる音を作ったり、うろうろと歩いて足音を収録したりしていました(笑)。
――ノックの音やストラップを握る音も阿保さんが作られたのですか?
ノックは加工だけ担当しましたが、ストラップは静かな倉庫で、ディレクターの松本が口で発した音を録音して加工しています。
――なるほど! まさか阿保さんご自身がほぼ1人でSEを収録していたとは……。最後と言いつつ長くなってしまいましたが、本日はありがとうございました!
※次回はシナリオ編を予定
【カオチャインタビュー連載】
→『カオスチャイルド』インタビュー全体編。傑作と評価された魂の作品の誕生経緯やアニメ版への願望を聞く
→クソったれと叫びたくなる『カオスチャイルド』非実在青少女の誕生経緯は? インタビューグラフィック編
→『カオスチャイルド』インタビューサウンド編。阿保剛さんがBGM40曲を解説!【本記事】
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