『重力迷宮のリリィ』は地下世界を舞台とした王道のボーイ・ミーツ・ガールストーリー【電撃文庫新作紹介】

文：電撃オンライン

　金子跳祥先生が執筆する、電撃文庫『重力迷宮のリリィ』の紹介記事をお届けします。

■第21回電撃小説大賞最終選考作!!
　地下スラム都市×電脳×ファンタジー！

　「やることが出来た。ガキを一人助ける。止めても無駄だぞ」

　危険すら顧みず、何の縁もない一人の少女を守るために「迷宮層」の全てを敵に回す、掛け値なしの馬鹿、チャンク。それが、この地下神話の主人公だ。

　ここは、見上げれば天蓋に覆われた地下都市。クズしか存在しない底辺。猥雑な建築物が建ち並び、奇妙な熱気に包まれたその街は、「迷宮層」と呼ばれている。そんなスラム街で生まれ育ったチャンクの生業は、郊外エリアに湧き出てくる機械獣カニバルを索敵して狩り殺すこと。

　最低の環境だったが、チャンクはそのシンプルな生活が気に入っていた。電脳使いの天才で引きこもりニートの兄・セウト。カニバル狩りの友人・ダストバニー。守銭奴の情報屋・ネロ。マフィア私兵集団「天使部隊」の少女・ミザルー。変人達に囲まれて生きるチャンクの日常は、ある日一変する。

　彼が狩りの最中に拾った謎の少女、リリィ。それが、地下世界を揺るがす大事件の始まりだった――。

【物語のここに注目！】

■大切な少女と出会い、少年はたくましく成長する――
　荒廃した地下都市で始まる、王道の“ボーイ・ミーツ・ガール”

　暴力的なロックのビートが似合う近未来のスラム街、無差別に人間を襲う殺人機械、運命的な少女との出会い、怖いもの知らずな主人公、気分がスカッとするアクション……。そんなキーワードに胸躍る人は、電撃文庫『重力迷宮のリリィ』をどうぞ！

　本作は第21回電撃小説大賞の最終選考に残り、審査員に評価された注目作です。主人公の名前はチャンク。荒廃した地上を放棄した人々が暮らす、地下都市“宇宙島”で育った少年です。ある日、彼は殺人機械が活動する街で身元不明の少女・リリィを保護します。それが地下都市の情勢を揺るがす大事件に発展するとも知らずに……。

　電撃文庫にはめずらしいスラム街育ちの主人公がとにかく新鮮!!　リリィを助けたことで、チャンクは地下世界を支配するマフィアから追われる立場になりますが、彼は絶望しません。持ち前の突進力と仲間の協力、実の兄・セウトの助言でピンチを次々と切り抜けていきます。

　そこには熱い友情と兄弟愛のドラマがあって、大人に媚びることなく、心のままに生きる彼らの眩しさといったら！　セウトのセリフ――「マジでビビってしまうような恐ろしいことでも、やりたいことてのがあんだよ」という言葉が素直に納得できます。

　また、電脳化した肉体や荒廃した近未来といった、サイバーパンク風の世界観も本作の魅力の1つ。チャンクたちが暮らす地下都市は、日常的に謎の殺人機械獣“カニバル”が発生し、住民を殺しまくっている危険地帯です。チャンク自身、改造ガトリング銃で機械獣を狩るハンターでもあります。物語後半には巨大機械獣との激戦もあり、少年マンガのようなバトルアクションを楽しめるので、最後まで見逃せませんよ！

【登場人物のここに注目！】

■まるで殺伐とした廃墟に咲く、一輪の白い花 　リリィちゃんを守ってあげたい!!

　「ハードSFっぽいけど、小難しいんじゃない？」とご心配のみなさん、ご安心を!!　本作はチャンクとリリィの交流を描いた“ボーイ・ミーツ・ガール”がメインの物語です。

　ヒロインのリリィは華奢な肉体と幼い顔立ちが魅力的な少女。その愛らしさは殺伐とした廃墟に咲く、一輪の白い花のようです。いつも言葉数が少なく、心情は読めません。他人との交流に興味がないのか、それとも言葉自体に意味を見出していないのか。チャンクにはとてもよく懐いているようなのですが……。

　意外なことに、リリィの特技は電脳空間でプレイするシューティングゲーム。素早く状況判断をしながらハイスコアを叩き出す姿は、ふだんの幼い姿からは想像できません。電脳能力だけが高スペックで、地下世界を支配するマフィアに狙われていて、“ワケあり”な過去を隠しているのは確実――？　しかし、俗世に染まらず、無垢な心で生きている彼女の姿には、読み手の庇護欲を掻き立てる健気さがあります。

　大人たちに翻弄されるピュアな少女を守りたい。そんな願望を抱くあなたのためにある物語かもしれません。

(C)金子跳祥/KADOKAWA CORPORATION 2015 イラスト：イセ川ヤスタカ

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