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2015年7月4日(土)

『カオスチャイルド』インタビューディソード編。持ちにくそうな形状の理由をCHOCOさんに聞く

文:ごえモン

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『CHAOS;CHILD(カオスチャイルド)』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。
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 MAGES.のゲーム&音楽ブランド・5pb.から6月25日に発売されたPS4/PS3/PS Vita用ADV『CHAOS;CHILD(カオスチャイルド)』。本作の発売を記念したインタビュー企画の連載第5回をお届けします。

『カオスチャイルド』

 最終回となる第5回でお話を伺ったのは、ディソードをデザインされた麦谷興一(CHOCO)さんと松原達也プロデューサーのお2人です。

 インタビューでは、それぞれのディソードのモチーフやボツ案、持ちにくそうな形状の理由について聞いています。漫画家になった経緯も伺ったので、ディソードが好きな人や麦谷興一(CHOCO)さんのファンはぜひチェックしてみてください。

『カオスチャイルド』
▲麦谷興一(CHOCO)さん

勉強が嫌で武蔵野美術大学へ

――『カオスチャイルド』の話に入る前に、まずは漫画家/イラストレーターになられた経緯を教えていただけますか?

麦谷:幼稚園児のころから絵が好きで、小学生の時にF-14(トムキャット)を描いていたのを覚えています。

 小学生の時に見た『超時空要塞マクロス』の影響で、子どものころからメカが好きでした。実はそのころ『機動戦士ガンダム』をまったく見ていなくて、『マクロス』で育った子どもだったんです。

――それからはどうされたのですか?

麦谷:漫画家になろうと思っていたのですが、「絵を描くのに絵の勉強をしていちゃいかん」みたいなことを手塚治虫さんが言っていたと思うので、普通科を受けようとしたんです。でも、勉強するのが嫌だったので武蔵野美術大学に行くことにしました。

 美大に入ってからは、授業を受けないで漫画研究会にばかり通っていました。今思い返すと、ちゃんと授業を受けておけばよかったと思います。

 でも、漫研に通っていたおかげで人のコネクションができて、『コミックZip』でデビューすることになりました。

 漫研と聞くと、ただ趣味で漫画を描いているだけだと思うかもしれませんが、うちの漫研はデビューが前提みたいなところで、現役で何人も漫画家としてデビューしていました。お前も20歳までにデビューしろ、みたいな空気でしたね。

――個人的には、CHOCOさんといえばメカと美少女のイメージがあります。

麦谷:最近はそんな仕事ばかりくるんですよ(笑)。昔は宮崎メカっぽいものばかり描いていたんですけど、高校生の時に見た『トップをねらえ!』でだいぶ描くものが変わった気がします。でも、もともと男ってみんな、メカも女の子も好きじゃないですか。

もともとは体のパーツがディソードのモチーフだった

――前作のディソードは植物がモチーフだったかと思いますが、どのようにデザインされたのですか?

麦谷:『カオスヘッド』の時は、最初から花がモチーフでしたし、形も「こんな形で」とかなり具体的な指定がありました。やりやすかったのが“中二病デザイン”という指定で、それを聞いて「ああ、なるほど」と早めにデザインが決まりました。

『カオスチャイルド』
▲『カオスヘッド ノア』のキービジュアル

――『カオスチャイルド』のディソードはどのような流れでデザインされたのでしょうか。

麦谷:今回は特に指定がなかったので、「体のパーツにしましょう」と僕から提案しました。最終的には五感がモチーフになりましたが、もともと僕の案だと“目玉とか脊髄とかの体のパーツ”だったんです。

 体のパーツという具体的な形のものではなく、視覚や触覚などの抽象的な話になったので、急にやりづらくなったのを覚えています(笑)。

――なぜ体のパーツにしようと思ったのですか?

松原:各キャラにはそれぞれコンプレックスがあります。例えば、主人公の宮代拓留だったら物を見て調べなければ気が済まない性格なので、それに対応した体のパーツを特徴づけたデザインにしたらいいんじゃないかとご提案いただきました。

麦谷:拓留が新聞部でカメラを使うと設定にあったので、そこからですね。

すべてのディソードを麦谷興一(CHOCO)さんが解説

――各ディソードのデザイン意図を教えていただけますか。

麦谷:一番最初にデザインした有村雛絵のディソードは、当初“耳”という指定だったので本当に耳にしました。セカンドモチーフに蝶々も入れたのですが、「今回はちゃんとした剣にしてほしい」と言われましたので、修正して今の形になりました。

『カオスチャイルド』

 僕はイロモノが大好きで、とても剣に見えないようなヘンテコなデザインにするほうがおもしろいと思ったのですが、「ここまでくると剣ではないです」とボツになりました。あくまでバスタードソードのようなデザインがほしいということだったみたいです。

――個人的な感覚ですが、ディソードのほとんどが持ちにくそうなイメージがあります。

麦谷:ディソードはパーソナルなものなので、“自分にはしっくりくるけど、他の人が持ったらまったく合わない”というふうになるんじゃないかと思っています。例えばルイジ・コラーニのエルゴデザインみたいなものですね。

 なので、どう構えたらいいのかわからないと言われると思いましたので、すべて構えているポーズ付きで提案しているんです。

『カオスチャイルド』
▲麦谷興一(CHOCO)さんが描いたディソードを構えている有村雛絵。

松原:そもそもどこをどう持つのかが難しいですからね。構えているポーズをいただいているので、それがそのまま立ち絵のポーズに反映されています。

麦谷:『カオスヘッド』の時も、ラスボスのディソードはどこを持ったらいいかわからないという話がありました。前作も今作も、本人以外持ちたくない、持ったら危ないというようなコンセプトで考えています。

――雛絵の次にデザインされたのは?

麦谷:触覚をモチーフにした来栖乃々のディソードです。最初は指先(皮膚)の延長みたいなデザインでしたが、これも「剣じゃないよね」という話になって修正しました。

『カオスチャイルド』

松原:それもありましたが、3Dで動かした時に2Dとの合わせが不可能ではないか、という話になったので変えていただきました。

麦谷:デザインは変わりましたが、コンセプトは最初とだいたい一緒です。指先と水かきを延長したような剣にしました。逆手で使う剣ですが、馬乗り状態で振り下ろすイメージもあったので、クレイジーでいいかなと。

――次に山添うきのディソードについて教えてください。

麦谷:うきの嗅覚はすごく悩みました。鼻腔をモチーフにしたのですが、見てもわからないですよね? これは家にあった羊の頭蓋骨を見ながらデザインしています。

『カオスチャイルド』

――中央のガラス玉のようなものにはどのような意味があるのでしょう。

麦谷:鼻腔の気流が通る穴を玉で埋めてあるのですが、そのまま気流が通るのではなくて、何か怪しい透過光のエネルギーが通っているというイメージです。ハートマークに見える部分があると思いますが、これは羊の鼻の骨の形を再現しています。

――次にデザインされたのは?

麦谷:拓留と尾上世莉架です。2人のディソードは構えた時にカッコよく見えることを前提にしつつ、構えた時にちょうどディソードの目と拓留の目の位置がかぶさるように作りました。スポークのように奥が透けて見えるのは、体が隠れないようにするためです。

 あとは前作の主人公のディソードが少しさびしい剣だったので、意識して変えています。

『カオスチャイルド』
『カオスチャイルド』

――西條拓巳の剣はどうしてあの形になったのですか?

麦谷:究極に煮詰めたものって、シンプルになるか派手になるかのどちらかになると思っています。あれは前作のラスボスとタクの対比ですね。

松原:世莉架の剣は変形するのですが、本編で出せませんでした。本当にもったいないのですが、シナリオが当初考えていたものよりもしっとりしたものに変わったので、彼女が剣をジャキンと開いて戦う、みたいな場面を作れなかったんです。

 せっかく3Dモデルも変形するように作ったので、オープニングムービーで変形させたものを登場させました。

――久野里澪のディソードについて教えてください。

麦谷:デザインは前作の蒼井セナと一緒なんですが、少し違います。そのどう違わせるかでものすごく悩みました。最初はおもちゃっぽくしようと思って形をデフォルメしたのですが、これじゃないと。

『カオスチャイルド』

 悩んだ結果、セナの剣を現代にあるパーツで作ったらどうなるか? といった方向性に変えて、手元に落ちているパーツで作ってみました。

――実際に作ろうと思えば作れるというわけですか?

麦谷:作れるといいですね(笑)。でも、3Dモデラーさんに「ここは真鍮でここはアルミです」といった形で材質や質感を説明できたのでやりやすかったです。

――続いて香月華のディソードについて教えてください。

麦谷:華は初稿からそんなに変わっていないです。映画『SAW(ソウ)』に出てきた頭かち割り機みたいに、中に手を入れたら喰われそうで、絶対に手を入れたくないと感じるものにしようと思ったんです。

『カオスチャイルド』

――舌の部分の長さは一定なんですか?

麦谷:そこは妄想なので好きな長さに伸ばせるようになっています。クラシックな印象にしたかったので、ネジをすべてマイナスにしてみました。先ほど話した久野里のほうは六角ネジを使っています。これがプラスネジだと安っぽく見えちゃいますからね。

――ネタバレになるので詳しくはお話できないかと思いますが、敵が使うディソード2本について教えてください。まずはラスボスの●●から。

麦谷:実はあのディソードにモチーフはありません。ちなみに背負っているバッグはBoblbeeです。

松原:アニメになるといろいろとおもしろいことができそうなディソードですよね。ADVだと崩壊していくところなんてとてもじゃないけど作れませんから。

麦谷:いろいろなギミックを考えましたけど、ADVだと動かせないですもんね。

松原:本当はコンパクトに折りたためる構造なので、アニメになった時はちゃんと見せてほしいです。あと、「使っている間は手が焼けます」とか、ちょいちょいラフに怖いことが書いてあったのが印象的でした。

――手が焼けるってどういうことですか?

松原:手が焼けるほど持ち手が熱いので、初稿では手を突き破ったネジをボルトで締めて、無理やり持たせるデザインでした。

――ということは、本編でも手が焼けていたということですか。

松原:焼けています。ラスボスは気合いでなんとか持っているんです。

麦谷:この作品はそういうことをやっていい作品だと思いましたので(笑)。

――あんなにいい笑顔で戦っているのに、実は手が焼けていたんですね。

麦谷:好き勝手にネタ出しをするので、大丈夫なものだけを使ってもらえれば、という気持ちで提案しています。たとえゲーム内のテキストなどで採用されなくても、絵にするためのモチーフとして勝手に決めて勝手に使っています。

――続いてもう1人の敵が持つディソードについて教えてください。あの剣のモチーフは脳ですか?

麦谷:脳に手を突っ込んでいるような絵面がクレイジーかなと思ってデザインしました。

松原:返しがついた4本の刃がばかっと開いて敵を捕らえるんだろうなと、イラストを見て「CHOCOさんひどいな」と思いました(笑)。

――4本ある刃の部分は何をモチーフにデザインされたのでしょう?

麦谷:脊椎がモチーフです。普通は1本ですけど、きっとどこかから引っこ抜いてきたんじゃないでしょうか。

 ……このシリーズのデザインを受けると、自分が何か悪いことをしているような感覚に陥りますね(笑)。話は変わりますが、絵を作る時って、先にディソードのモデリングを置いてから他を描いてもらうんですか?

松原:レイアウトの段階でディソードのシルエットを置くのですが、キャラのほうをクリーンナップしてから、それにピッタリ合うようにレンダリングするんです。その後にキャラと重なっている部分を描き足したりしています。

麦谷:ちゃんと立体的にキャラを描ける人じゃないと難しい作業ですね。

松原:2Dは嘘をつけてしまうところがあると思うのですが、3Dは嘘をつけないので、合わせ作業はなかなか難しかったです。特につばぜり合いをしているシーンを描こうとすると、その苦労が二倍になるのでより大変でした。

麦谷:ディソードが発表された時に、ファンアートを描かれる方が頑張ってディソードを描こうとしているんです。でも、それは僕でも無理だからたぶん無理だと思います。

松原:描けないですよね。だから毎回3Dモデルを作っているわけで。

『カオスチャイルド』

松原:CHOCOさんにお伺いしたいのですが、デザインしていく時のプロセスってどんな感じなんですか? 最初にこちらから資料と設定をお渡ししますよね。それを受け取った後って、どういうふうに考えていくのでしょう?

麦谷:いただいたモチーフのオリジナルを調べます。前作の植物だったら図鑑などで調べて、一回そのものを自分で描いてみるんです。そうすると、モチーフのディテールがわかっておもしろい部分が見つかるので、そこから形にしていきます。なので調べる時間が一番長いかもしれないですね。

松原:逆に、これだと決まってからは早いのですか?

麦谷:クリーンナップ自体はそんなに時間がかからないですね。世莉架のモチーフはハサミですけど、これは裁ちばさみではなくて、床屋さんで使うハサミがモチーフです。なので、床屋さんのハサミの資料を一生懸命集めるところから始めます。

――床屋さんの資料ってあるものなんですね。

麦谷:大抵のものは『月刊○○』という本が出ています。

松原:『月刊水道管』とかもありますからね。

麦谷:別の仕事になりますけど、『ゼノサーガ』の時は『月刊アーチェリー』を買って描きました。

――『カオスチャイルド』からは少し離れますが、仮に次回作のディソードを作ることになったとしたら、今度は何をモチーフにするかアイデアはありますか?

麦谷:『カオスチャイルド』では体のパーツをモチーフに作ってみたかったのですが、そういった依頼はなかったので、やってみたい気持ちはあります。

 ちなみに前作のディソードは青かったですが、今回は白やピンク色をしています。これは肉とか骨、脂肪の色なんですよ。人間って皮をむくと意外とピンクじゃなくて白かったりするので……でも、次やるとしてもそういうグロいのはナシですもんね?(笑)

松原:はい(笑)。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

松原:オープニングムービーにモチーフの絵が出ていますが、そういった少しの情報から後ろに隠されたものを探してみるとおもしろいと思います。

【カオチャインタビュー連載】

(C)2014 MAGES./5pb./RED FLAGSHIP/Chiyo St. Inc.
(C)2008 5pb./Nitroplus/RED FLAGSHIP

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