2015年6月17日(水)
“E3 2015”に合わせて行われた、任天堂のインターネットプレゼンテーション“Nintendo Digital Event”の模様をお伝えするとともに、そこから見えてきた任天堂の戦略についての考察をお届けする。
プラットフォームホルダー3社の中で、任天堂だけはマイクロソフトやSCEと違い、業界関係者を招待したプレスカンファレンスではなく、世界中のファンに向けたインターネットプレゼンテーションという形をとっている。
この理由については、任天堂の岩田社長自身がTwitterで説明している。
[岩田]以前のMedia Briefing(記者発表会)には、メディア記者の方々だけでなく、証券アナリストの方々、流通関係者の方々、業界関係者の方々が参加され、インターネット中継が一般的になってからは、ゲームファンの方々にも広くご覧いただけるようになりました。#Iwatter
任天堂株式会社 (@Nintendo) 2015, 6月 16
[岩田]一方で、参加者の方々が記者発表会に求めておられる情報は、立場によって大きく異なります。全ての方に満足していただくのは年々難しくなりました。そういう時期にNintendo Directという新しい方法が確立され、当社のE3はここ2?3年で大きく変化しました。#Iwatter
任天堂株式会社 (@Nintendo) 2015, 6月 16
[岩田]これが、かつてのMedia Briefingが、Nintendo Digital Eventに変わった背景です。流通関係者の方々向けには、Digital Event放映中の時間にお集まりいただいて、別途流通関係者の方々向けの発表会を開くことになっています。#Iwatter
任天堂株式会社 (@Nintendo) 2015, 6月 16
つまり任天堂はE3における情報発信を、世界中のゲームファンにエンターテインメントを“直接”提供するものとして考えていることがわかる。
そのことが実感できるのが、今年のインターネット配信の構成だ。最新情報をプレゼンテーションする“Nintendo Digital Event”の2日前から、『スマブラ』新コンテンツの即日配信や、ゲーム大会“任天堂ワールド・チャンピオンシップ 2015”の生中継を行って、ゲームファンを楽しませていた。
エンターテインメントという意味では、今年の“Nintendo Digital Event”の導入部は素晴らしいものだった。岩田社長と米国任天堂のレジー社長、そしておなじみ宮本茂氏の3名がパペットになって登場し、ユーモラスなやり取りを繰り広げるというもの。さらに、3名のパペットの顔が『スターフォックス』の動物たちの姿に変身することで、続くゲームの紹介へとスムーズに移っていく形になっていた。
▲岩田社長らが『スターフォックス』のキャラクターに変身! |
昨年のE3でその存在が明かされて、今回ついに正式発表となったWii U用ソフト『スターフォックス ゼロ』は、テレビとWii U Game Padの2つの画面や、ジャイロ機能を利用することにより、戦闘機の飛行や変形によるアクションを新たな操作感覚で楽しめるようだ。
▲『スターフォックス ゼロ』 |
また『スターフォックス』シリーズのアイデアと、京都の伏見稲荷との関係を語る宮本氏のインタビュー映像も放映されて、非常に興味深いものとなっていた。
『スターフォックス ゼロ』の紹介に続いては、レジー社長の人形ではなく本人が登場。今回のテーマを“TRANSFORMATION(変化)”とした上で、任天堂の変化を感じてほしいと語った。
続いて行われた、アクティビジョンの『Skylanders SuperChargers』というタイトルに関する発表は、海外ではかなりの驚きを持って迎えられたことだろう。
▲『Skylanders SuperChargers』 |
実は『Skylanders(スカイランダーズ)』のシリーズは、ゲームと実物のフィギュアが連動するというシステムを、海外で広く定着させた作品だ。このシリーズのヒットにより、海外ではディズニーやレゴといった一流のキャラクターブランドが、同様の商品を送り出している。さらには任天堂のamiiboも、こうした展開を意識したものだ。
今回、ドンキーコングやクッパが『Skylanders SuperChargers』のフィギュアとして登場し、さらにそのフィギュアがamiiboとしての機能も使えると発表された。つまりは、こうしたシステムの元祖的作品と、amiiboがコラボしたわけだ。
▲フィギュアの土台を動かすとamiiboとして使用できる。 |
次に紹介された『ゼルダの伝説 トライフォース3銃士』は、トゥーンゼルダの3DS用新作だ。3人のプレイヤーが同時に操作する3人のリンクが、協力してダンジョンを攻略していくというシステムは、かつてゲームキューブとゲームボーイアドバンスを連動させる形でマルチプレイを実現した『ゼルダの伝説 4つの剣』を連想させる。そういった意味では、任天堂のマルチプレイに対するこだわりが感じられる作品だ。
▲『ゼルダの伝説 トライフォース3銃士』 |
また同時に、Wii Uで発売された『ゼルダ無双』の3DS版も発表された。こちらはWii U版とDLCの内容が移植された上に、『ゼルダの伝説 風のタクト』のキャラやマップが追加されているという。
▲3DS『ゼルダ無双』 |
今回、新たに発表された3DS用ソフト『METROID PRIME:FEDERATION FORCE』は、『メトロイド プライム』の世界観で、ブラスターを装備したロボットを操作するFPSだ。こちらも最大4人で協力してミッションを攻略するという、マルチプレイがフィーチャーされている。
▲『METROID PRIME:FEDERATION FORCE』 |
またミッションの合間には、“Blast Ball”というサッカーのような3on3のスポーツ競技で対戦できるが、これはE3の直前に開催されたゲーム大会“任天堂ワールド・チャンピオンシップ 2015”の対戦種目としてサプライズ発表されていたものだ。
ここから先は、日本ですでに発売されていたり、詳細がすでに明らかになっていたりする作品も含めて、多数のゲームが次々に紹介されている。その中で新規に発表されたものは、Wii U用ソフトの『どうぶつの森 amiiboフェスティバル』と『マリオテニス ウルトラスマッシュ』、そして3DS用ソフト『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』の3タイトルだ。
『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』は、『マリオ&ルイージRPG』と『ペーパーマリオ』の世界観が融合したというユニークな内容の作品だ。3Dレンダリングで描かれたマリオやルイージと、2Dで厚みのないペーパーマリオのキャラクターが共演する光景は、非常にユーモラスなものになっている。
▲『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』 |
そして最後に紹介されたのは、『スーパーマリオブラザーズ』30周年記念タイトルとなるWii U用ソフト『スーパーマリオメーカー』だ。こちらは『スーパーマリオ』シリーズのコースをユーザーが自由に作成して他のユーザーとシェアできるという作品だ。
▲『スーパーマリオメーカー』 |
今回の映像では、amiiboをタッチすることでリンクやマルス、さらにはWii Fitトレーナーといった任天堂キャラクターが、2Dのドット絵になって『スーパーマリオ』の世界に登場するという新要素も披露された。また、30年前に作成された手描きのコースデザインを見ながら、宮本茂氏と手塚卓志氏が語り合う様子は、ゲームファンとしては非常に感慨深いものだった。
▲さまざまなアイデアが詰め込まれた『スーパーマリオブラザーズ』の手描きのコース。 |
今回の“Nintendo Digital Event”全体を通して見た場合、筆者個人の感想としては、ややインパクトを欠いていたという印象を受けてしまう。今回発表されたタイトルはいずれも魅力的だったが、従来の任天堂カラーの枠内に収まるものでもある。昨年の任天堂で、というより昨年のE3で最大のサプライズとなった『スプラトゥーン』の衝撃を毎回期待するのはさすがに贅沢だが、レジー社長が言うように“TRANSFORMATION(変化)”をテーマに掲げているのであれば、もう少し攻めの姿勢を見たかったとも思う。
ただ、今後の任天堂には新ゲームハードの“NX”や、DeNAとの提携によるモバイルゲームへの参入など、まさに“TRANSFORMATION”となる展開が控えている。また『スプラトゥーン』の現時点での運用からは、新コンテンツを少しずつ定期的に追加していくというオンラインゲームならではのスタイルにチャレンジしている様子も伺える。そうしたことを考えると、任天堂にとって今年のE3は、次の大きな変化を見据えて足元を固める年となっているのかもしれない。
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