2015年6月21日(日)
“E3 2015”で出展されていたゲームで筆者がとくに注目していたなかの1つが、『塊魂』『のびのびBOY』の高橋慶太氏の新作アクション『Wattam』だった。
写真を見てもらえればわかると思うが、キャラクターたちがとにかくかわいい。このキャラクターたちがいったいどんなストーリーを演じてくれるのか、高橋氏がどんなゲームを作ったのか、とても楽しみにしていた。会場では本人に解説してもらいながらゲームをプレイすることができたので、『Wattam』についての詳細をレポートしよう。
▲高橋慶太氏の作るアクションといえば、個性的なキャラクターとストーリー、そしてアクションとしての手触り感を大事にしているのが特徴だ。まずはベースとなるストーリーについて聞いた。 |
――『Wattam』はどんなストーリーなんですか?
高橋:地球の女王さま(クイーン)が悪者と戦っていて、ピンチになったから最終兵器を使います。大爆発を起こして、そして誰もいなくなってしまった。
――悪者はなんか見覚えのあるシルエットですね(笑)
高橋:ね(笑)。その何年後かに再び世界が再生したんだけど、プレイヤーキャラクターのMayor(メイヤー)しかいなくて、彼は1人ぼっち。メイヤーは日本語でいうと市長とか町長とかそんな感じ。よく見るとわかるけどメイヤーは女王の子供です。女王は最後に爆弾を使いましたけど、同じように爆弾を使える。爆弾は帽子のなかにあります。
――女王はどこに行ったんですか?
高橋:女王がどこに行ったのかは、のちのちストーリーにもかかわってきます。
高橋:メイヤーはずっと1人ぼっちだと思ってたんだけど、あるときにほかの人もいることに気がつく。人がいるじゃん、手をつなげるじゃん、その人になることもできるじゃんと。
高橋:人にはそれぞれスペシャルアクションがあって、雲は雨を降らせることができる。雨を降らせると花が咲いてまた人が増えていく。そうするとまた人がいるじゃんと。キャラクターたちはみんな人です。
――人が増えていくとどうなるんですか?
高橋:いちばん最初は友だちを5人作ろうよ、というのがなんとなくの目標。目標は画面の左に表示されます。5人と手をつないでメイヤーのアクションで花火のように打ち上がって爆発すると、次の段階に進む。E3のバージョンではこのへんはわかりやすくしてます。
――ステージごとに目標があってそれをクリアしていく?
高橋:いや、それだけのゲームではないです。積み木を積んで壊しちゃうのって楽しいってところから着想しているんだけど、みんな楽しいこと好きじゃん? 楽しいから来たんじゃん? だったらもっと人を呼ぼうよ、楽しいことしようよと。
――単純にクリア条件を満たしていくだけのゲームではないんですね。
高橋:狙っているところは『塊魂』と『のびのびBOY』の中間のゲームプレイかな。フリーでもあるし、多少ガイドもされている。できるだけ気づいてほしいし、明確にはしたくない。でも触っているだけで楽しいというのは今までと変わらない大切な要素です。
――キャラクターが個性的でとってもかわいいです!
高橋:目と鼻と口を描いているだけですけどね(笑)。キャラクターの名前は開発チームの名前を今はつけているけど、FacebookやPSNのIDが表示されたら面白いですよね。あとキャラクター1人1人がユニークな音楽を持っていて、手をつなげるとマッシュアップされます。何人つながっても音楽はマッシュアップされますよ。手をつなげる人数に限界はありません。
――個人的には寿司がとくに好きです。
高橋:トロと卵とサーモンがいます。寿司はネタの部分で全部飛べますよ。マグロはヘリコプターみたいに回転して、サーモンはパタパタと羽ばたいて、卵はジェットパックです。
――いま金色のリンゴが出てきましたけどどうやったんですか?
高橋:木の近くでパーティをするとリンゴが金色になります。食べ物は食べられるので食べてしまうと……
――あ、うんち登場(笑)
高橋:で、うんちをトイレで流してあげると、金色になります。
――ゴールデンうんち! これうんちにされたチームの人はなんて言ってました?
高橋:喜んでましたよ(笑)
高橋:次のレベルでボスが出てきます。
――どんなボスですか?
高橋:枕です。
――(笑)
高橋:枕は人と仲良くしたいんだけど枕に触るとみんな寝てしまう。眠らせたくないのに眠らせてしまう。手をつなぐとみんな寝ちゃう。
――友だちになれないんですね。眠らせないためには…眠くならない……あ! コーヒーですね。
高橋:そうそう。で、コーヒー豆のキャラがいるので、彼を間にいれるとみんな寝なくなる。10人で手をつなぐことができれば彼の悩みは解消されます。彼はこれで自分の能力をコントロールできるようになるので、手をつないでも寝なくなります。でも眠らせる能力は持っているので、切り替えると他の人を眠らせることもできます。
――寝てる姿がみんなかわいいですね(笑)
高橋:寝ちゃうのいいよね、平和じゃん。
――積み木遊びの楽しさだったり、何かを組み合わせてみたくなったり、いろいろ試すのが楽しそうですね。
高橋:これはこういう遊び方もあるよって例なんだけど、bとoとoとmの形をしたキャラで手をつなぐと……
――あ、爆発した。
高橋:boom、で爆発、です。メイヤーも手をつなぐポジションで爆発の仕方が変化します。いつもは1回の爆発なのに、ドーンドーンドーンと連続で爆発したり。なんか気づいてやってみたときにちゃんとリアクションが用意されていると楽しいよね。どんだけ小ネタが仕込めるか、かな。
――ちなみに『Wattam』ってタイトルはどういう意味なんですか?
高橋:このゲームのベースを作ってくれたのがインド人で、タミル語で『輪』という単語がvattamなんです。日本語だとwa(輪)だから、それを混ぜて『Wattam』。
“E3 2015”の開催期間である3日間は毎日ブースに見に行って、プレイしている人とそれを見ている人を観察していたが、みんな笑顔で楽しそうに『Wattam』を見ているのがとても印象に残った。人を笑わせる、笑顔にさせるゲームというのは、じつはなかなかない。高橋慶太氏のゲームにはそういうパワーがあるのは過去のゲームを見てもわかる。
筆者の印象として、『Wattam』はモニターの中にある“遊び場”。子供の頃、積み木遊びをするときに目的なんてなかった。思いのままに積み木をくみ上げて、いいものができたとしてもガチャンと壊してそれでおしまい。ときにはいろんな壊し方を試してみたりして、壊すのも楽しかった。目標を満たせばゲームは進行するが、それだけが遊び方ではなく、いろんなキャラとからんでみて変化を楽しんだり、いろんな爆発をしてみたり。
例えば筆者は、キックでほかのキャラを画面外に蹴り出すのにハマってずっとそれをやっていた。いかに面白い場が用意できるかが、高橋氏の腕の見せ所ではないだろうか。
最後に、取材中に「『Wattam』はゲームっぽくないですね」と聞いたところ、返ってきた答えが印象的だったので紹介したい。「ゲームってなんだろうね。わかんないよね、ゲームって。ゲームの定義なんてわかんないよね」。
高橋さん、完成を楽しみにしています。
なお、電撃PlayStation6月25日発売号の高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』でも『Wattam』の深い話が書かれているので、読んでみてください!