2015年7月31日(金)

PS4版『FFXIV』の中国での発表やこれからの展開について吉田直樹氏にインタビュー!【ChinaJoy 2015】

文:電撃PlayStation

 現在開催中の『ChinaJoy 2015』の前日に行われたカンファレンス『2015 PlayStation Press Conference in China』。その直後の合同取材で、『FFXIV』のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏に、中国におけるこれからの展開についてインタビューを行った。

『China Joy 2015』
▲『ファイナルファンタジーXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏。

――中国でのPS4版『FFXIV』がついに発表されました。

 檀上でも発表させてもらったとおり、サーバー、コミニュティの運営に関してはPC版と同じくシャンダ・ゲームズさんにお願いしています。また、PS4版のランチャーやアカウント回りも開発する必要がありますが、ご存じのとおり『FFXIV』は膨大なプラットフォームとグローバル版の運営も含めてやっています。

 これを行うにはチームにPS4の技術的な知見がないと難しいので、そこに関してはSCEさんがバックアップしていくことになります。ただ、PC版と同じくパッチだったり、ゲーム本体の開発は日本の開発チームがやっています。それをPS4で運用していくためのテクノロジーに関しては自社が持っていますが、現状はグローバル版で手いっぱいなので、今回SCEさんとお願いしたうえでシャンダさんと一緒に取り組んでいく形になります。

――サーバーはシャンダさんと同じものになるのでしょうか?

 そうなります。当然グローバルと同じポリシーで運営していくので、PS4版、PC版どちらでも同じワールドに接続できるようにお願いしています。

――5月にお話をうかがったときは、PS4版の発売にはもっと時間がかかる印象でしたが。

 そこは人それぞれの感覚の違いかと。2016年といっても1月から12月までありますし(笑)。ぼくとしては2016年ってけっこう先なイメージなんです。

――リリースまで課題も多いと思います。

 これからいろんな試行錯誤がシャンダさんとSCEさんのなかでもあると思います。これほど大きな規模のMMORPGを改めてPS4で開発運営するということになりますから。ただこれらをキチンとクリアすることが最初の課題となるので、2016年のどの時期になるかはまだわかりません。

――『蒼天のイシュガルド』として出るのでしょうか?

 そうなると思います。同じワールドでプレイできることが前提ですし。現在中国版もPC版はパッチ2.5まで来ているので、そうなると当然次は3.0になります。必然的に同じワールドで遊ぶにはバージョンをそろえる必要があるので、PS4版をリリースするころには3.0になっていると思います。

――ビジネスモデルについて教えてください。

 ビジネスモデルに関してはシャンダさんとSCEさんが協議して決めたものを、我々から知らせていく形になります。

――PC版と違う形になることも?

 あるかもしれません。これから決まっていくと思います。

――ハードによってビジネスモデルが違うというのは珍しいと感じますが。

 MMORPGではそんなにありえない話ではないかと。オプションの1つという考え方なので、別のサービスがあるというのも往々にしてあります。当然、料金形態が違いすぎるというのはナシに、とはお願いしていますが。

 今の中国のゲーマーさんに対するビジネススキームってものすごい勢いで変わっているので、そのときにあったベストなビジネスモデルを提案していただけると思っています。あと、ほかのPS4タイトルとビジネスモデルが違いすぎるとせっかく育ってきた中国のPS4ユーザーの価値観がずれてしまうかもしれません。

 このあたりの戦略に関してはSCEさん側で働きかけてくれるので、そこらへんを踏まえたビジネスモデルの提案をしてもらえると思います。

――2月にはPC版で中国だけのオリジナルイベントが開催されました。中国だけのイベントはほかにも用意されているのでしょうか。

 もちろんあります。我々はリージョン対応という考え方をしていて、中国版とは話が離れますが、まもなくスタートする韓国版も風土に合わせたスペシャルイベントを考えています。そこはシャンダさんとお話をしたうえで、中国のユーザーに向けた中国ならではのイベントを、というのがリージョン対応という考え方になります。

――ゲームバランスはグローバル準拠になるのでしょうか。

 はい。ただ中国のプレイヤーのプレイスタイルが違うのがβテストで明らかになったので、少しずつコンテンツの消化スピードとか、コンテンツのロックの仕組みは徐々に変えていく予定です。ここもシャンダさんと話をしていて、実は先日のパッチも少し修正されています。

――どのあたりが違うのですか?

 もう過ぎた部分ですけど、極蛮神はひとつ前の極蛮神を倒さなくても次のに行けたりします。

――中国のプレイヤーにとってそのボスは難しかったと。

 そうではなく、そのときの最新コンテンツを遊びたいという声が多かったので修正しました。

――以前『ミリオンアーサー』のローカライズの取材では、開発のグリモアさんは自由に開発しているとおっしゃっていました。その自由にやらせてもらっているスピード感が成功につながっていると分析されていますが、『FFXIV』という強力なタイトルだとスピード感を持って中国版を運営するのは難しいと危惧しますが、そのあたりはどうお考えですか。

 それは少し前提条件がずれていて、『ミリオンアーサー』の場合はアプリの開発自体をシャンダさんにお渡ししているんですけど、『FFXIV』の開発はすべて日本側で行っているのでそもそもモデルが違います。

 おそらくあの規模の開発をまるごと、というのは尋常じゃないレベルと数の開発者が必要になるので、そういうやり方はできません。シャンダさんには中国のサーバーでの出来事やコミュニティの意見を吸い上げてもらって、それをフィードバックしていく流れになります。

 例えば、次のパッチではグローバル版はAという仕様だけど、中国版はA’という仕様にならないかというイメージ。そこに関しては制約はほとんどもうけていないので、かなりフレキシブルにやれると思います。

――そのうえでSCEさんも絡みつつ、シャンダさんでやるのはすごく大変そうですが。

 SCEさんはシャンダさんに任せている側なので、ゲームの中身に口を出すかどうかはSCEさん次第ですが、そこまで大変ではないのかもしれません。SCEさんのモチベーションやテンションが高く、中国のゲームビジネスに関しては『FFXIV』以外にもスピーディに動いています。日本の大企業的な遅さはまったく感じないので、そこは全然心配していません。

――中国ならではのフィードバックにはどのようなものがあるのでしょうか。

 もっとパーティを組んで、ほかのプレイヤーのパワーレベリングをサポートしたいというリクエストが非常に多かったので、どうしようか考案中です。

――それは友達を誘っていっしょにやりたいから、ということなのでしょうか。

 それもあると思いますが、別のゲームの巨大ギルドをそのまま連れてきて一気にレベルを上げたい、というのが本音かなと。これも中国のオンラインゲームコミュニティならではの要望で、すごく家族っぽさが強く感じました。

――それに合わせたパッチが今後行われると。

 今後というか、もうすでに行っているところです。

――中国はゲーム市場はPCが主流だと思いますが、そこからPS4版を広めていくうえで何か考えている試みなどはありますか。

 まず前提として、ぼくは最大のゲーム市場はソーシャルゲームで、PCが最大勢力ではないと考えています。今回PC版『FFXIV』を中国でリリースさせてもらって1年になりますがそこで感じたのは、思っていた以上にソーシャルへ市場が移ってしまったという感想が1つ。

 もともと『FFXIV』は中国でのサービスを決めていたので、ロースペックPCでも動くように設計していました。中国はネットカフェのPCスペックがあまり高くないので、極端にハイクオリティのグラフィックのゲームが普及しておらず、かつ政府のレギュレーションから海外のゲームを輸入しにくい環境にあります。

 このなかで中国のゲーマーはコストパフォーマンスの面もありますが、ソーシャルゲーム>PCゲームと考えている人が多いのでは、というのが中国でビジネスをさせてもらって感じた2つ目の感想になります。つまり日本のようにコンソールゲームが最上位にあって、と思っているものが逆なんじゃないかなと。

 そこに初めてコンソールが入ってくることで、政府のチェックが必要とはいえ、ハイクオリティのゲームがPCを買うより安くそろうことで、これからまさにハイクオリティゲームの時代が始まるんじゃないかなと。SCEさんもそこを始めようとされているんだろうと思っています。『FFXIV』もその波に乗ってハイクオリティMMORPGが普及していけばいいですね。

 一般的なPCゲームのハイクオリティさってあまり中国では浸透していないと思っているので、それを飛び越えてPS4でハイクオリティのゲームが進出してきて、その新しさや凄さに触れたコアゲーマーが生まれることを期待しています。

『China Joy 2015』

――これから『FFXIV』を中国で運営していくうえで、スクウェア・エニックスとしてプロモーションしていく施策などはありますか。

 すでに行っています。中国のローンチに向けて月に1回来て、中国全土をシャンダさんと一緒に回っています。プレイヤーの方と交流してPRというツアーをやっていましたし、実際グローバル版で作ったパッチのPR動画はシャンダさんに渡して中国字幕をつけて展開したり、あとはビデオコメントを求められればお渡ししたり。

 まもなく中国『FFXIV』が1周年なので、そこで僕も行ってプレイヤーの方と触れ合えれば、と思っています。

――反響のほうはどうですか。

 招待制なので会場に来られる人は数百人ですが、応募は当然数千、数万はいただいています。そこはグローバルと変わらないですね。シャンダさんが運営しているので僕らは何もしないという考え方ではなく、一緒に『FFXIV』を、という考え方なのです。

 日本でグローバル版を運営しているときは、日本でF.A.T.E.という名目で日本を回ったり、海外の場合だとゲームのイベントがあれば必ず行っています。直接その国のプレイヤーとコミュニケーションをとるというベースの企画はシャンダさんにお願いしているので、そこに違いはありません。

――販売方法に関して教えてください。

 まだこれからですね。ただ中国の場合だとエクスパンションをパッケージで売るという概念がPCではなかったので、おそらくオールインワンではないかと思いますが、まだうかつなことは言えません(笑)。

――すでにPC版があるなかで、PS4版を出すことでどんな変化があると思いますか。

 ハイクオリティのゲーム体験をもっと身近に感じられるようになれば、と思います。ゲームってある程度ストレスがあって、それを乗り越えることで快感だったり面白さがあるとぼくは思っています。アプリでものすごい数のゲームが毎日毎日リリースされているなかで、ちょっと今のゲームは受け身になりすぎていると思います。

 PS4で発売されていくゲームはものすごいゲーム体験があるからこそ、すべてがボタンを押してるだけで進むものではありません。もっとゲームらしいゲーム体験がなかなか出てこなくなっている市場だと思っているので、PS4を通じてそういったゲームが入ってくることで、ゲームらしいゲームを楽しめる人たちがもっと増えていければ、それこそがコンソールの意義なのかなと。

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