2015年8月8日(土)
バンダイナムコオンラインが運営するPC用オンラインゲーム『ガンダムジオラマフロント』。その制作陣インタビューをお届けする。
【インタビューに答えてくれたのはこの2人】
丸山和也さん
『ガンダムジオラマフロント』プロデューサー。プロモーションなども含めたプロデュース全般を担当しており、これまで『機動戦士ガンダムオンライン』や『GNO2』などのPC向けのタイトルを手がけてきた。
梅林佑行さん
『ガンダムジオラマフロント』の企画立ち上げ段階から関わっている、開発担当のディレクター。
▲梅林佑行さん(写真左)と丸山和也さん(写真右)。 |
電撃オンラインでも特集や攻略まとめwikiを展開し、注目してきた本作。お2人には、そんな本作が生まれた経緯や、これからの展望について話を聞かせていただいたので、興味がある人はぜひチェックしてもらいたい。
――『ガンダムジオラマフロント』の企画はどのようにして生まれたのでしょうか?
梅林:現在、バンダイナムコオンラインがサービス運営を行っている『機動戦士ガンダムオンライン』は多人数対戦アクションシューティングゲームですので、自身がパイロットとなって『ガンダム』の世界観の中でモビルスーツを自在に操る楽しさをメインに据えたタイトルです。その上で、新しいタイトルを考える際に、今度は“複雑な操作やアクションが苦手”な人に向けたタイトルを作ろうと企画が立ち上がりました。
丸山:『機動戦士ガンダムオンライン』は現在も非常にご好評いただているタイトルですが、その運営チームに対して「『ガンダム』は好きだけどなかなか操作についていけないので自分は遊べない」などのご意見を結構な方からいただいていました。そこで次は、シミュレーションゲームはどうだろうと考えました。あわよくば、『ガンオン』と並行していっしょにプレイしていただけるようなゲームが作れないかと。
また『ガンダムンライン』は宇宙世紀を中心とした作品を扱っていますが、それ以外の『ガンダム』ファンにもゲームを提供したいという思いもありました。
――今だったら、スマートフォン向けに出すという選択肢もあったかとは思うのですが、PC用のゲームにしようということは企画段階からあったのでしょうか?
丸山:はい。すでにスマートフォン向けのガンダムタイトルは複数ありましたし、「PCでしっかりとしたゲームを遊びたいけど、なかなか最近はいそがしくて長時間デスクトップPCに向かう時間はない」という方に向けて遊べるタイトルを提供したいという考えは初期のころからありました。
――3月に行われたクローズドβテストでは、どのくらいの応募があったのでしょうか?
丸山:クローズドβテストには1万人の参加者を募集したのですが、約3日間ですでに5倍以上の応募がありました。その後の正式サービスでもゴールデンウィークくらいまでには10万人を突破する方々にご参加いただきました。
ただ、開始当初はこちらの想定以上に多くの方に来ていただいたこと、また加えて、お1人あたりのプレイ時間が予測より大幅に長かったことで同時接続者数が1万人以上の状態が続き、その際アクセスしづらい状況が続いてしまいました。この件については、大変申し訳なく思っています。
かなり時間がかかってしまいましたが、連日課金以外のサービスを続けながらハード面、ソフト面双方の改修を行い、なんとか4月14日にはゲームも正常化してサービスを開始することができました。
――ユーザーによって遊び方の違いというのはかなりあるのでしょうか?
丸山:『ガンジオ』は「1日10分から遊べます」というキャッチコピーを使わせていただいているように、1日10分程度の短時間でもよいので、連日繰り返してログインしていただくことで十分に遊べるゲームになっています。さらに、PC上でなにかの作業やゲームをプレイしながらその合間に『ジオラマフロント』をプレイしてもらえる設計にしています。時間が進んでいる間に施設が完成して、またプレイして……と、いうようなスタイルで遊ばれている方もいます。
また、スマートフォンタイトルなどとの差別化という面では、多数のエースパイロットの録り下ろしフルボイス実装や、マウスによるドラッグやクリック操作で簡単にジオラマベースの編集ができる仕様を実装するなど、階級戦の上位を狙って頻繁にアクセスしてログイン時間もたっぷり使って、じっくりプレイをされている方にも遊んでいただけるようにしています。
そのようにユーザーによって好きなプレイスタイルで遊べる点も本作の特徴だと思います。7月22日に追加されたブラウザ版βサービス開始についても、例えばMacユーザーの方や外出先でログインしたいといったような、さまざまな方に遊んでもらいたいという意図です。
梅林:他にもリミテッドクエストのような期間限定のイベントを、集中的にプレイして、好きなモビルスーツを集めることと目的としている方もいらっしゃいますね。
丸山:やはり当初の想定よりも、ログインしている時間の長いユーザーが多くて、熱心に遊んでいただいているんだなぁと実感しています。
――個人的な話ですが、時間経過で資源はたまりますけど、量はあまり多くないので、やっぱり制圧戦とかを繰り返してためたほうが効率がいいので、それで自然とログイン時間は増えていったのかなと。
丸山:そうですね。さすがに一生懸命“制圧戦”をプレイした方とログアウトしている間に貯まる資金・資源が同じという訳にはいかないので、差がつく設計にはなっていますが、資金・資源以外の報酬やリソースも8月のアップデートで実装しています。是非忙しい方もお休みの日などは、長めにログインしていただいて、開催中のイベントなどに参加してほしいですね。
――ゴールデンウィークには“大階級戦”なども開催されましたが、階級戦自体はどのくらいのユーザーが参加されているのでしょう?
丸山:アクティブにゲームを遊ばれているユーザーの大体7割ぐらいが階級戦に参加されていますね。もちろん、毎回参加される方もいれば、何回かに1回参加するという方もいらっしゃいますけど。
梅林:大階級戦は初めてのリミテッドクエストということもあって、参加者はかなり多かったですよね。
――ちなみに大階級戦は今後開催される予定は?
梅林:もちろん、新しい階級戦についてはいろいろと検討していますよ! “階級戦”の開催スケジュールについては、今試行錯誤しているところでもあります。今後は、同じ同盟内でもっと一緒に遊べるような要素を追加していきたいと思っています。9月以降になりそうですが、2週間分の階級戦のスコアを集計して、そのスコアや順位に合計によって報酬が得られたりするような仕組みも考えているところです。
――制圧戦や階級戦などで攻めづらいジオラマを配置した人に、“いいね”みたいな感想を贈ってみたいと思う時もあるのですが……。
梅林:そういう要素もおもしろそうですね!ただ、今は複数のアップデート要素も同時に進行しているので、なかなかまだ手がつけられていなかったりするんですよね……。
――なるほど(笑)。“7月7日のアップデートのお知らせ”で、少将へ昇格された方が少ないと書かれていましたが、少将以上の階級のユーザーは全体の割合で言うとどのくらいなのでしょうか?
丸山:(7/28時点で)全体のおよそ2%程度ですね。
――階級戦についても、今のような形になった理由をお伺いしてよろしいでしょうか?
丸山:以前は、生活スタイルによっては階級戦が遊びづらい方もいたと思いますが、その部分を解消したかったのです。
――階級戦の参加登録をしても、いざ始まってみたら予定が入って参加できなかったり、そもそも階級戦のことを忘れてしまったりという経験が個人的にありました(笑)。
梅林:そうなんですよね。その場合は0ポイントで降格してしまうこともありましたし……。なので、まずはスケジュール変更を行って階級戦の参加へのハードルを下げるようにしました。
――階級戦について、これまでに届いた要望はどのようなものがありましたか?
丸山:やはりスケジュール関連が多いですね。階級戦に参加しないと手に入らないものがあるにもかかわらず、これまでのスケジュールだと参加できないという方もいらっしゃいました。なるべく多くのユーザーが参加しやすい時間に設定していたのですが、それでも参加が難しい方がいることは事実です。
階級戦についてはさまざまなご要望をいただいていて、遊びやすいスケジュールに今後も調整していきたいとは考えていますが、そのあたりについては、一度プレイヤーの皆様のご意見をいただき、参考にさせていただく、実施予定の“第1回ユーザーアンケート”でも設問に入れさせていただきたいと思っております。
――話は変わりますが、人気の高い機体というのはどのようなものがありますか?
梅林:まずはやっぱりザムザザーでしょう(笑)。ザムザザー、ストライクガンダム、ドムがゲーム序盤の人気です。エースユニットだと、ガンダムデュナメスやガンダムXなどのフライヤーのユニットも序盤は人気が高いですね。
▲モビルアーマーの強さを教えてくれたザムザザー。制圧戦でぷかぷか浮かぶザムザザーに頭を抱えていたのも、たった数カ月前の出来事なんですよね。 |
丸山:ザムザザーはテレビCMでも登場していましたから(笑)。
梅林:ガンダムX、ヘビーガン、ガンダムXディバイダーの開発ツリーは人気機体が連続で熱いです(笑)。前回の大型アップデートで50機体も追加したので、今は人気が多少バラけている感じはしますね。
同盟によっては、援護用の機体をZZガンダムに統一しているところもあるみたいですが。タイプでみると防衛の時はガーディアンタイプ、攻める時はシュータータイプが人気なのかなと。もちろんその都度流行するユニットは出てくると思いますが、今後の追加機体やバランス調整によって、なるべくそれらが変わっていくようにしていきたいですね。
――防衛施設が強くなってきているので、フライヤーだと出したとたんに対空ミサイルで……ということもありますしね。
梅林:あとはブースタータイプを使ってもらえるようにしたいと思っています(笑)。
――7月末の段階ですと、アビゴルを使いこなしている人は上級者というイメージがありますよね(笑)。
梅林:ゴッドガンダムはまだあまり使われているイメージがないですね。5月末から開催した“キリマンジャロの嵐”イベントだと、かなり重要な機体になりましたけど。
――ちなみに、そろそろまた活躍の機会があるんじゃないかとゴッドガンダムのレベル上げをしているところです(笑)。
梅林:この後のイベントについてはなんとも言えませんが、がんばって好きな機体を育てていただけるとうれしいです。
――ユーザーが追加してほしいと思っている機体には、どのようなものが?
丸山:ご要望をいただく中だと、マニアックな機体を多く見かけますね。例えばネーデルガンダムとか(笑)。どの機体が突出して多いというわけでもなく、いろいろな機体に散らばっている感じです(笑)。ザムザザーもそうでしたが、他のゲームではあまり目立たないような機体が活躍したりするので、そういうのに期待されているのかもしれません。
梅林:デスアーミーが一時代を築いた時もありましたしね(笑)。もともと、量産機も活躍できるゲームというのを目指していて、他の作品ですとエース機が中心になることがほとんどじゃないですか。
――先ほど人気の機体についてお話しを聞きましたが、シャッコーもフライヤーの戦力としてかなり人気で活躍していましたよね。
▲多くのプレイヤーがもっとも最初に入手したであろうフライヤータイプの量産機・シャッコー。愛着を持っている人も多いのでは? |
梅林:はい(笑)。ただ、今は開発ツリーの順番で強さが決まってしまうところがあるのですが、“テクニカルラボ”によって、どんな量産機でも現行の最高クラスの機体まで、がんばれば性能を引き上げられるようになりますよ。それと先日実装されたオペレーションセンターのサポーターには、“量産機(シリーズ)のHPアップ【機動戦士Zガンダム】”のように、特定シリーズの機体の性能をアップさせるサポーターもいるので、自分の好きなシリーズに統一して部隊を編成するメリットもつくようになります。
【テクニカルラボとは】
ユニットの“グレード”を上げることで機体の性能を上げることができる施設。グレードを上げられる回数や性能の限界はユニットによって異なっている。
十分強化したユニットは、MSラボ3で開発できるユニットと並べても引けを取らないので、お気に入りの機体をどんどん使っていけるようになる。
テクニカルラボとオペレーションセンターのおかげで、ユニット選択に幅を持たせやすくなると思うので、同じような部隊に攻められることも少なくなるかと思います。それとサポーターには防衛時にバフ(強化)効果がつくものもあるので、防衛施設の配置もそれに適したものができてくるんじゃないでしょうか。
▲先日よりゲームに登場したオペレーションセンター。キャラクターを配置することでユニットや基地施設の能力をアップできる。 |
丸山:今後も機体を追加する予定はありますし、まだ参加していないガンダム作品からも検討していきたいと思います。オペレーションセンターやテクニカルラボがさらに生きてくると思いますよ。もちろんエース機のパイロットはフルボイスでがんばります!
――テクニカルラボについてもお聞きいたします。説明を拝見したところ、レベル上限までいった量産機のレベル上限を解放するというものとは違うのですね?
梅林:はい、レベル解放ではありません。テクニカルラボでは、レベルに関係なく強化することで性能自体が一段階上がるといった形です。例えばアッガイなら、1回強化するとトーラス(サンクキングダム仕様)くらいになって、2回強化でドムくらい、3回強化でデスアーミーくらいになるというイメージです。
――それじゃあ最終的にはリゼルなみの性能のアッガイになるということも?
梅林:はい、もちろんできます!
▲お気に入りの機体を強くできるテクニカルラボの登場で、自分の好みをより反映させた部隊編成が可能になりそうだ。 |
――お気に入りの機体を強化していけるのはうれしいですね! ちなみに、開発スタッフのお気に入り機体などはありますか?
丸山:特徴があるガンダム試作2号機がお気に入りですね。正直、使いづらいところもありますが(笑)。
梅林:ロマン機体ですが、G-BURSTが発動できれば2万ダメージの攻撃なので夢がありますね。使いやすさでいうとキュベレイです。防衛エースとして配置してもファンネルで攻撃してくれますし、とにかく便利なんですよ。
――キュベレイと同様にローゼン・ズールも使いやすいですよね。
丸山:そうですね。後々イベント限定機体も、なんらかの手段で入手できるようにはしていきたいですね。ハロメダルや別のイベントで改めて配布したいとは考えています。
――ちなみにユニットの参戦基準はあるのでしょうか?
丸山:明確な基準はありません。シリーズごとのバランスもありますが、普段あまりスポットライトが当たっていないような機体をあえて出すようにしています。
――少し話は変わりますが、6月に行われた大型アップデートで一番大変だったことはなんですか?
丸山:あえて一つ挙げるのなら、新ユニット50体の実装じゃないでしょうか。ボイスの収録もかなりの数になりました。ただ、機体については、まだこれで打ち止めというわけではなく、今後も追加を予定していきますのでご期待ください。
梅林:同じく機体追加ですね。“各機体の戦闘による負荷”を考えるのが、とても大変なんですよ。チェックやバランス調整も必要となりますし。これは、このアップデートに限ったことではないのですが。
――より詳しくお話しいただいてもいいですか?
梅林:まず本作は、もともとクライアント版だけでなく、ブラウザでも遊べるようにと考えていました。そのため、大量の機体と施設を画面に同時に表示でき、かつブラウザでも表示できるようにする点が、開発で一番大変なところでした。
ユニットのグラフィックについては、もっと作り込もうと思えばできるのですが、そうすると負荷が増えてしまいます。機体の特徴を生かしつつ、負荷を抑えられるモデルやモーションにしています。サービス開始までもそうですし、アップデートの時もこの部分は大きく苦労した点です。
丸山:制約がある中で、最大限喜んでもらえるように“変形”や“特殊Gバースト”などの再現に開発スタッフは心を砕いていますね。
梅林:今はブラウザ版がβサービス中で、最初はクライアント版ではフルボイスで、ブラウザ版ではフルボイスは難しいかも……と思っていた時期もありましたが、ブラウザ版でもフルボイスでいくことができました。グラフィック周りも同じですし、クライアント版とブラウザ版で特に違いはなくなっているんです(笑)。
――電撃オンラインで展開している攻略まとめwikiチームも、その差について記事にしようと考えていたようでしたが、実際に触ってみて違いがわからなかったと言っていましたね。
丸山:他に大変だったことといえば、サービス開始直後のアクセス障害発生になりますね。
梅林:あの時は、本当に皆さんにご迷惑をおかけしました。ユーザーの皆さんに遊んでいただきつつ、その裏で平行して改修を行っていく形になってしまってしまいましたので、開発チームも連日泊まりこんでの対応を行っておりました。
丸山:そうですね、その件については繰り返しとなりますが、改めて申し訳ありませんでした。ただ、そのようなアクセスしづらい状況にもかかわらず、沢山の方が熱心に遊んでくれていて、激励のコメントも多くいただきました。それは現場スタッフのモチベーションにもなりましたね。
梅林:午前3時にメンテナンスを終えたら、数千人のユーザーが一気にログインしてくださったりして、『ガンダム』ファンのアツさに驚かされたりもしました。開発者としてはとてもうれしく思う反面、快適に遊んでいただけないことに申し訳なさと歯がゆさでいっぱいでした。
丸山:あらためて今後そのような障害が発生しないよう心がけて運営しています。
――今後追加していきたい要素などは、どんなものがありますか?
丸山:『ガンダムジオラマフロント』というタイトルのとおり、もっと“ジオラマらしさ”を表現できるようにしてきたいですね。遊ぶのはもちろん、見ているだけでも楽しい部分も出せればいいなと。いわゆる“デコレーション”仕様です。まだ実装時期は未定ですが、みながコレクションしたくなるような建物を実装したり、ジオラマべースを見ているだけで楽しくなるようにできたらうれしいですね。
梅林:コミュニケーション要素ももっと入れていきたいと思っております。
――それでは最後に、本作のユーザーにメッセージをお願いします。
丸山:『ガンジオ』は『ガンダム』が好きな人が、好きな機体を作るだけでも楽しめるゲームだと思っています。普段PCでゲームをプレイしない方でも、簡単に遊べるゲームですし、ブラウザでのプレイもできるようになりましたので、先ほど少し触れましたが、Macユーザーの方も是非ブラウザ版で遊んでいただけたらと思います。
梅林:これからも一生懸命開発していきます。まだまだ至らぬ点もあるかと思いますが、迅速な対応を目指し、新しい要素なども追加し続けたいと思いますので、今後のアップデートやイベントを期待していただけたらうれしいです。
――ありがとうございました。
(C)創通・サンライズ
キービジュアル制作:森下直親
ジオラマ製作:角田勝成/撮影:エルクラフト
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