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2015年11月23日(月)

アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』で描きたかったのは真っ向から夢と向き合う女の子

文:千駄木和弘

 ソーシャルゲームからアニメへと活躍の場をさらに広げた『アイドルマスター シンデレラガールズ』。放送終了を記念して、プロデューサーのアニプレックス鳥羽洋典氏へのインタビューを敢行した。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 制作陣が、アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』で描きたかったテーマや演出面について掘り下げていく。

――全25話の放送を終えて、まずは感想などをお教えください。

 やりきれて本当にホッとしています(笑)。以前のインタビューでもお伝えしましたが、『シンデレラガールズ』はソーシャルゲームからのスタートでしたのでアニメ化にあわせた設定を考えるのがとにかく大変でした。

 前作の『アイドルマスター』はゲーム内にモデルとなる事務所があって、アイドルや社長、小鳥たちがいて、こういう日常があって……というように、アーケード版から始まりアニメ化が進むまでにいろいろな蓄積がありました。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 アニメ化の準備に入った時は、すでにXbox 360版があって、さらに『アイドルマスター2』も制作していたので、ゲーム内のコミュニティーパートのシナリオも参照できたなど、ある程度の下地がありました。ですが、『シンデレラガールズ』には下地がほぼない状態でした。カードの絵柄とテキストによる会話情報ぐらいしかなく、キャラクター数も多く雑多な状況でした。

 『シンデレラガールズ』のアイドルたちは、その当時で既に100人くらいいて、どうやって見せていくの? 事務所はどういうところなの? そのビジュアルはどうなの? という作りこみを高雄監督やバンダイナムコの石原章弘ディレクターたちとで組みあげていく作業が、まず大変でしたね。そこから始まって、最終的に25本のアニメを作り、走り切れたのがうれしかったです。

――2ndシーズンを通して、『アイドルマスター シンデレラガールズ』全体のテーマはどういうものだったのでしょうか?

 アニメ『シンデレラガールズ』全体のテーマは“成長と変化”です。“女の子の成長に真正面から向かう話にしたい”というのがありました。文字どおりの成長だけではなく、成長による環境や状況の変化などもしっかり描きたかった。

 つまり“何があってもずっと一緒”というテーマだった前作の『アイドルマスター』とはゲームの形式や内容も違うので、そことは少し変えていこうと考えました。『シンデレラガールズ』の2クール目を見てもらえるとわかるのですが、アイドルたちは状況の変化に合わせて各々が自分で考えて選択をするんですよね、今回は“それぞれの夢に向かっていく”お話でした。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 『シンデレラガールズ』のアニメ化を決めた時、そのテーマについて石原さんと相談して“環境や状況の変化に恐れず、夢に向かって正面から立ち向かう女の子”という内容に決めました。このテーマをしっかりと描けて、さらに『アイドルマスター』のことを分かっている人ということで、高雄統子さんに監督をお願いしたんです。

 もちろん、『アイドルマスター』シリーズという軸を外してはいけない。それを実現するために高雄監督から出されたアイデアが“コミュニケーション”で、それを体現するために作られたのがプロデューサーでした。また、これは全体のテーマであって、もう少し細かく分けたサブテーマもあわせて考えて制作していました。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 前作の監督・錦織敦史さんが言っていましたが、前の『アイドルマスター』は“家族”のお話なんです。だからみんなずっと一緒だし、物語後半でみんなが忙しくなった時にバラバラになりかけました。

 これは“家族の食卓”みたいなもので、いつも一緒に夕食を食べていた家族が、忙しくなって夕食に出られなくなるとすれ違いが起きてしまう。だから、できる限りみんな一緒にいられるようにしようよ、という感じです。

 今回の『シンデレラガールズ』は家族ではなく“クラスメート”なんです。例えるなら、シンデレラプロジェクトという学級にnew generationsという転校生が来た、そこにプロデューサーという無口な担任教師がいる、というと分かりやすいかもしれません。

 物語の初めは新しくできたクラスだから、あまりコミュニケーションが取れてないんです。各々は仲が悪いわけではないし表面的にはうまくやっていますが、先生ともイマイチ意思疎通ができていない。だから、6話・7話みたいな事件が起きてしまった、という流れですね。

 もう少し大きな括りで例えると、“美城高校のシンデレラプロジェクト学級”ということですね。学校なので、今後クラス替えがあっても皆同じ学校の生徒ですし、いろんなことを教えてくれる上級生もいて、困っている時は手助けする後輩たちもいるという感じです。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 もっと極端な例え方でいえば、13話が終わってシンデレラプロジェクトという“クラス”がうまくまとまりましたが、14話から突如、理事長の娘が学校に赴任して“うちの校風はこうじゃないから”と言い出し、P担任が“じゃあ文化祭をみて判断してよ”というのが後半の物語ですね(笑)。

 女の子たちの成長譚としては『アイドルマスター』も『シンデレラガールズ』も同じなのですが、見せ方はだいぶ変えています。アイドルたちが何かしら夢をみつけたら送り出してあげる、それは別れじゃないし、いつでも戻れる場所は用意してある。Triad Primusや未央のお芝居のお話、25話目の終わり方などはそういうものでした。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――第2シーズンでは他プロジェクトのアイドルと接触して成長していくという場面がありました。新しく登場したユニット編成や他部署アイドルの選定や設定についてお教えください。

 ケースバイケースです。Triad Primusなどはゲーム中からある設定ですし、*(Asterisk)+なつなな(夏樹+ナナ)はキャラクター性で選んでいます。Project:Kroneは“美城常務がユニットを選ぶならこの子たちだろう”と考えて選びました。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――Project:Kroneは美城常務の肝いりメンバーであると思うのですが、完全なる“スペック重視”ではないのかな? という部分が気になりました。また、高垣楓や木村夏樹など“誘ったけど断わられた”アイドルもいました。完全なるトップダウン式のプロジェクトではないのかな? という印象も受けました。

 それは勘違いですね。美城常務は複数の企画を並行して進めています。その中でクローネはすでに能力の高い娘だけでなく、潜在的なポテンシャルを持つ新人アイドルもメンバーとして選んだプロジェクトです。

 楓や夏樹の行動は、会社の指示を断っているので本当はよくないのかもしれませんが、そこは美城常務の余裕でもあります。断ってもいいけど、それでうまくいかなかったら分かってるよね? 次はないよ? というスタンスですね。

 自分の意には介さないけど、会社としてうまく行けばそれはそれでいい。美城常務は自分の感情と会社役員としての判断を別々に内包しているんです。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――オータムフェスの回ではシンデレラプロジェクトの成果が問われるライブなので、本来ならProject:Kroneは仮想敵(?)であると思います。ですが、シンデレラプロジェクトのメンバーが率先してクローネのピンチをフォローをしていたのが印象的でした。

 クローネはお互いを高めたり競いあう相手ではあるけど、憎んだりする敵ではありません。なので、ピンチの時は助けています。クローネは美城常務が見初めたアイドルですが、あの時、美城常務は現場に付いていなかった。それを助けたのがシンデレラプロジェクトとプロデューサーでした。

 オータムフェスはプロジェクトの進退とかに関わらず、盛り上げて楽しもうよという気持ちがアイドルたちにはあります。そこでクローネにトラブルが発生したら、私たちシンデレラプロジェクトは先輩だから助けてあげないといけないよねと。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 これは3話目でnew generationsが先輩アイドルたちから助けられた経験などがあり、それを後輩のクローネたちに行なっている。まさに学校の上級生・下級生の関係みたいなものです。この一連の流れをみて城ヶ崎美嘉が“成長してるね”と実感する、そこまでを描きたかった回でした。

 また、ここは『アイドルマスター』として大事なところで、ライバルであっても敵ではないんです。クローネは同じ事務所だから助けて当然で、たとえそれが別の事務所のライバルだとしても同じ。765プロだってJupiterが困っていたらきっと助けるはずです。それが『アイドルマスター』なんです。

――後半のもう1つの山場が23~24話の、卯月が「ガンバリマス」しか言わない状態に陥ったことです。途中に挿入されていた時計の演出が“何かの進行具合”というのは感じていましたが、卯月にかかった魔法を示しているとは思いませんでした。時計の演出についてお教えください。

 最初と最後は卯月を中心としたお話にする、というのはテーマのひとつとして最初から決めていました。卯月の問題が表面化したのは23話でしたが、そこに至るまでに何を持っているのか、何を目指すのかで悩む予兆をちょこちょこと描いていました。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 実は2クール目に入る前、13話で卯月と他のメンバーで意識の違いがハッキリと現れているシーンがあります。13話ラストで卯月が「夢みたいですね」と言います。それに対して他のメンバーが「夢じゃない」と言います。

 これはもちろん、第1期ED曲『夕映えプレゼント』の歌詞と対応しているセリフとして組み上げていますが、それだけでなく、この時も卯月はずーっと夢の中のままだったことを描いているんです。実は、3話のラストでも卯月は同じことを口にしています。その夢が覚めたのが23話だったのです。

 卯月の中ではずっと“アイドルになりたい夢”のままで、それが続けばよかったのです。ですが、未央や凛たちは自分たちのやりたいことをみつけて“現実の夢”に向かって進んでいきます。卯月は夢に守らていたため、そこに行き着くのが遅かったんですね。

 new generationsの3人でいることも悪いことではないが、固執しているのもよくない。なので24話でプロデューサーがこのまま留まるのか、変化を恐れず進むのか問いかけたのです。

――卯月の復活までの流れが非常に2期OP曲『Shine!!』の歌詞とリンクしている気がしました。(卯月の進退の場面でのプロデューサーと美城常務の会話や、ライブ会場の階段で卯月が言ったセリフなど)。これは狙ったものですか? 

 ちょうど脚本と歌詞はほぼ同時に作っていました。『Shine!!』に関しては脚本が先にあって、高雄監督が2クール目の脚本を元に作詞の森由里子さんにテーマをしっかり伝えているので、内容に沿った歌詞になりました。それは『Star!!』も同じです。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 また、24話で卯月が歌った『S(mile)ING!』も脚本と歌詞が合っていましたが、この場合は歌詞に合わせて脚本を書いたわけではありません。“島村卯月という女の子”の話を描いたら結果的に『S(mile)ING!』の歌詞に近くなってしまったんです。

 これは歌詞を書いた八城雄太さん、脚本の綾奈ゆにこさん、そして高雄監督が卯月に対して同じような気持ちを持っていたんだと思います。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――アニメの中では同一構図の演出が効果的に使われているシーンが多かったですが、特に24話目は1話目との同一構図シーンが多いのが印象的でした。

 卯月の夢の始まりとしてでもありますが、“すべては1話から始まっている”というのを描きたかったんです。特にnew generationsの3人に関しては公園のシーンが必ずターニングポイントになるので、それを踏まえた構図にしていますし、24話は集大成なので1話と重なるように意図的にやっています。

 1話を作っている時点で24話はこういうお話になると決まっていたので、後追いで作っていったというより、必然的にこうなったという感じです。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――24話目でおもしろいと感じたのは、朴訥(ぼくとつ)なプロデューサーが卯月に笑顔を作る場面でした。その他でもガッツポーズをみせたり、蘭子のセリフを真似て応援をしたりと、第2シーズンのプロデューサーは少し感情が豊かになり、人間的になった感じを受けました。

 環境の変化に合わせて成長するのはアイドルだけでなくプロデューサーも同様です。プロデューサーは、最初はアイドルたちと距離を置いていたけど、7話で一歩踏み込んでアイドルと二人三脚となり、13話で一心同体になりました。

 14話からは常務と衝突しますが、もうアイドルたちとの結束はあるので彼女たちをどうやって守っていくかに徹します。やるべき道が見つかるアイドルを送り出しつつ、最後に残った卯月の背中をどう押すのか、そういうお話でした。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 プロデューサーにとって卯月の笑顔に助けられたというのは本当のことで、1話で笑顔がいいと言った場面や7話の卯月の家にお見舞いに行ったシーンなど、ストーリー開始時からずっと笑顔に救われていましたが、うまく伝えられませんでした。

 物語終盤に笑顔をなくした卯月に対して「あなたの笑顔があったから前に進めた」と言えるようになったのは、プロデューサーも成長したからです。人間として成長はしましたが、不審者として捕まるのは変わっていませんでしたね(笑)。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――24話『S(mile)ING!』新録、25話の『流れ星キセキ』、『M@GIC☆』など2クール目はシンデレラプロジェクトのユニットではない新しい曲がかなり盛り込まれてた印象です。

 前作のアニメ『アイドルマスター』では膨大な曲の中からピックアップしていけばよかったのですが、『シンデレラガールズ』の楽曲は全体曲が少ないことと、アニメ前にリリースされているソロ曲も1人1曲くらいなので、それならばストーリーに合わせた曲を作っていこうよとなりました。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 『S(mile)ING!』の新録も前作と同じ手法でして、前作だと18話で律子が『いっぱいいっぱい』を歌うのですが、あの曲もアニメ用に歌い直してもらいました。キャラクターが感情を込めて歌うシーンは、それに合わせて歌い直さないといけないという考えがあります。

 また、『S(mile)ING!』はだいぶ前に収録した音源だったので、今回はアニメの物語を読み進めた大橋彩香さんに、今の卯月として歌ってもらいました。

 『流れ星キセキ』はnew generationsを象徴した曲で、最初の出会いから最後のライブまでに至る瞬間を歌詞にしました。また、各キャラのソロ曲を連想させるキーワードなども盛り込まれてます。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』
『アイドルマスター シンデレラガールズ』
『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――美城常務とはどういう人物なのでしょうか?

 海外から帰国した会長の娘で、やり手の女性トップ役員です。美城グループは総合エンターテインメント企業で、アイドル部門は立ち上がって間もない状態。トップアイドルもいますが、美城の伝統として“カリスマ性のあるスター”を育てたいというのが美城常務の考えです。

 美城常務は美城グループのブランドと伝統に強いこだわりを持っています。歴史と伝統を重んじる常務と、それよりもアイドルの夢や個性を重視するプロデューサーとの衝突が後半のお話です。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

 でも、実は常務の行動は結果的にアイドルたちの“夢をみつける”役割でもありました。プロデューサーが常務のおかげで“新しい可能性を見つけた”と言っていたとおり、13話以降も成長せず、あのままずっと行くわけにはいかなかった。プロデューサーも自分のこだわりの中だけでやっていたら新たな可能性を見落としていました。

 常務とプロデューサーは最後まで噛み合いませんでしたが、それは決して悪いことではないんです。会社なのですから違う考えが同居してもいいと思います。それでも、アイドルを育てて輝かせたいという思いは同じです。

――美城常務の方針からすると、悩みを抱えていた卯月やライブでミスをした鷺沢文香は常務に切られるのではないのか心配しました。

 それは、後でちゃんと結果を出していたからです。卯月に対しても実際にライブをみて、アイドルとしての輝きやポテンシャルはあると判断したためです。プロデューサーの方針は意に沿わないけど、アイドルたちの輝きは認めているといった感じです。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――美城常務、エピローグで専務に昇進してますよね。部下の手柄を自分のモノにしてる感じがしてモヤモヤします……

 ライブが成功したからではないですよ。役員はそんな簡単に昇進できません(笑)。あのシーンは“常務が専務になるくらい時間が経った”というエピローグの時間経過を表現したかったのです。彼女は彼女のやり方で専務になるほどまでに至った、それだけの時間が経過したよ、ということです。

――アニメで登場したキャラクターを集計してるファンがいて、その結果をみると89人ものキャラクターが登場してるという結果になりました。

 できるだけ多くのアイドルを出してあげたいというのは最初からありましたので、いろんな形で出していけたのでよかったかなと。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』
『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――ちょっとアニメから話がそれますが、ゲームの話も少しお聞かせください。スマホゲームの『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』がリリースされました。本ゲームとアニメの関連性があれば教えて下さい。

 アニメと『デレステ(スターライトステージ)』の作成時期が同じだということもあり、一緒に盛り上げていけたらいいなということで、なるべく連動できるようにやってきました。

 細かいアニメの設定までよく見てくださっていますし、それをうまくゲームの世界でも生かしてくださっているので、とてもうれしいです。

 また、11月26日発売のBlu-ray、DVD第6巻では、『デレステ』と連動した特典番号が封入されます。それはルームアイテム【シンデレラプロジェクト担当のプロデューサーデスク】です! ルーム内に配置するとアニメのプロデューサーが訪ねてきます。もちろん武内俊輔さんによるセリフも収録されていますので、ぜひチェックしてください。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』
『アイドルマスター シンデレラガールズ』
『アイドルマスター シンデレラガールズ』

――それでは、最後にひと言お願いします。

 現在はBlu-ray、DVD第9巻に収録される未放送話・特別編の制作と、11月28日・29日に開催される“アイドルマスター シンデレラガールズ3rd LIVE ~シンデレラの舞踏会 ~Power of Smile~”に向けて、スタッフ一同が懸命に頑張ってます。まだまだ走り続けていきますので、これからも応援よろしくお願いいたします!

『アイドルマスター シンデレラガールズ』

(C) BNEI/PROJECT CINDERELLA

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