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2015年11月26日(木)

【電撃PS】SCE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』第71回。テーマは“おそ松なショック”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 ここでは、電撃PS Vol.602(11月12日発売号)のコラムを全文掲載! 

第71回:“おそ松なショック”

 秋クールに入り、いろいろと新しいテレビ番組が始まりました。僕は昔から、日本のテレビドラマは世界に誇れると思っていて、毎回結構な数の作品をチェックしています。

 今クールは、皆さんご存知、西尾維新さん原作の『掟上今日子の備忘録』、『半沢直樹』で大ブレイクした、池井戸潤さんの直木賞受賞作『下町ロケット』、医療系作家として個人的に大好きな久坂部羊さん原作の『破裂』、そして昨今では珍しく、原作なしで井上由美子さんオリジナル脚本の『遺産争続』などなど、バラエティに富んだラインナップで、ウチのトルネは容量パンパンです。

 昔から、映画は監督のもの、ドラマは脚本家のもの、といわれます。実際、新聞のテレビ欄を見ても、脚本家がクレジットされることはあっても演出家の名前が記載されることはほとんどありません。たとえば大御所だと、倉本聰さん、山田太一さん、橋田壽賀子さん。これらのレベルの方々は、脚本を書いたという事実そのものが、そのまま宣伝文句にもなったりしますよね。

 一方映画は、やはり作り手として大きくフィーチャーされるのは監督です。昨今はメディアミックスなどの隆盛もあり、ドラマ版の演出をやられていた方が映画版の監督もやる、ということが普通になっていて、興行収益でも大ヒットとなった『HERO』なども、ドラマ版映画版ともに、鈴木雅之さんがメガホンをとられています。

 ただ、三谷幸喜さんはご自身で監督もやられますし、『リーガルハイ』の古沢良太さんは、映画の脚本を書かれた場合でも、監督と同等にパッケージに売り文句として名前が出ていたりもするので、垣根はかなり変化してきているともいえますね。

 というわけで、テレビドラマについては脚本家や演出家が誰か? というポイントでそれなりに嗅覚が働き、のちのち話題作になる作品を一話から見ていることが多いのですが、そうもいかないのが……そう、アニメなのです。

 一般的な40歳半ばのおっさんとしては、それでもかなり詳しいほうだとは思います。しかし、それこそのちのち話題作になるような作品を、最初から見ていることが案外少なかったりするんですよね。一応クールの変わり目には事前チェックをしてそれなりに録画するのですが、本気な人達がネット界隈で盛り上がっている作品に限って取りこぼしていたりします。

 なので最近は、その筋に詳しい人たちをツイッターでフォローし、それらの人が期待しているっぽい作品を録画して見たり、という努力(?)もしていたりします。そんな努力も実ってか、今クール、破壊的に素晴らしいアニメに出会えました。『おそ松さん』です。

 オリジナルは、故・赤塚不二夫さんの『おそ松くん』という漫画で、初回掲載が1962年ということで、僕も生まれていない時代の作品なのですが、何度かアニメ化もされているのでご覧になったことがある方も多いと思います。『おそ松くん』は、六つ子の少年を主人公に、イヤミやチビ太といった個性的なキャラクターがドタバタを繰り広げるギャグ漫画。その六つ子が大人になったという設定で、同じくナンセンスギャグを爆発させたのが、『おそ松さん』というわけです。

 僕はどんな漫画を読むときにでも、ある一つの視点を意識します。それは、その漫画の登場人物たちが、“自分自身を漫画のキャラクターであることを自覚しているかどうか”という点です。それを気づかせてくれたのが、同じく故・赤塚不二夫さんの『天才バカボン』という漫画でした。

 この漫画の登場人物たちは、自分が漫画のキャラクターだということを自覚しています。具体的には、漫画のキャラだから死なない、と無茶をしてみたり、漫画のキャラとして読者に語りかけてみたり、コマという枠組みを飛び越えるような動きをしてみたり、と、“漫画”そのもののフレームワークを破壊するのです。

 最初にこれを体験したときは、本当に衝撃でした。ストーリーが主体の漫画は、あまりこの構造を採用しません。当たり前ですが、キャラクターが“漫画のキャラ”であることを自白してしまった瞬間に、物語から引き戻されてしまうからです。

 『おそ松さん』はこの、“自分自身で自分のメディア(漫画/アニメ)を相対化する”ということを、アニメとしてやり切っている感じがします。30分を分断し、ショートコーナー的に組み立てられた構成。ふんだんに採用される、他のアニメ、映画のパロディ。モノクロの“過去の自分”たちを引っ張り出してくるといった映像表現。それら、登場人物たち、ひいては作品自体が、“これはアニメである”ということを自覚していることによってしか成立しないギャグが、素晴らしく面白いのです。

 思えばアニメは、監督と脚本家が両立して表に出てきている気もしますが、この怪作を生んだ要因として、そのあたりのバランスの良さも関係しているのかもしれませんね。

 実は『勇者のくせになまいきだ。』というゲームも、何を隠そう、この“自己相対化”という仕組みを採用したゲームでした。登場する魔王は、自分がゲームのキャラクターだということを自覚し、そしてゲーム文化をネタにします。もちろんそれができたのは、当然ながらこれまで先達が紡ぎあげてきた、相対化できる“ゲーム文化”があったからこそ。その感謝だけはお粗末にしてはならないと、『おそ松さん』を見て思うのでした。

ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

『勇者のくせになまいきだ。』シリーズなどのプロデュースを経て、クリエイターオーディション“PlayStation CAMP!”を主宰。全国から募ったクリエイターとともに、『TOKYO JUNGLE』『rain』などを生み出す。昨年に、『ソウル・サクリファイス デルタ』『フリーダムウォーズ』『俺の屍を越えてゆけ2』をリリース。部内最新作『Bloodborne』が全世界で好評発売中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

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■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
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