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2015年12月13日(日)

『Mighty No. 9』電撃PSプレミアムイベントトークショウまとめ。稲船敬二氏が未公開の最新情報を語る!

文:電撃PlayStation

 12月12日(土)に開催された電撃PlayStation編集部主催のプレミアムイベントの“稲船敬二降臨! 自ら語る『Mighty No. 9』と2016年”ステージ。イベントで行われたトークショウと実機デモプレイの内容をまとめてお届けします。

『電撃PS』
『電撃PS』
▲会場の様子。シアター風の座席と大画面でのイラストや映像が楽しめた。

『Mighty No. 9』の最新情報をPVとともに紹介

 トークショウでは、株式会社comceptのCEO/コンセプター・稲船敬二氏と電撃PlayStation編集長・西岡美道が対談。稲船さんが本作の魅力を解説しつつ、事前に募集した質問にサービス精神全開で解答していた。

『Mighty No. 9』
▲稲船敬二氏。

──まずは、このゲームについて教えていただけますか?

 このゲームは“クラウド・ファンディング”という仕組みで、みなさんからお金を集めて作ったゲームになります。本来、ゲーム製作というものはゲーム会社が資金を出資し、リスクを負ってお金を儲けるものですが、今回は「こういう企画をやりたい」ということをみなさんにお伝えして、資金を出してもらうアメリカの“キック・スターター”というシステムを使っています。

 それが、ちょうど2年前で全世界から4億円集まりました。会場のなかにも資金を出してくれた方がいますね。そうやって、提供してくれた方から資金をお借りして制作し、資金を出していただいた方にはただでゲームを届ける形になっています。

『Mighty No. 9』
▲『Mighty No. 9』のコンセプト。レトロゲームを現代の技術で今風に作ったらどうなるのか、という発想から作られている。

──クラウド・ファンディングは、出す金額によって内容が変わるんですよね。

 一番下は5ドルから始まっていて、5ドルだとゲームはもらえないのですが、その代わりEDのスタッフロールに名前が入ります。20ドル以上出した場合はゲームが送られてきますし、それ以上出すといろいろな物が付属品としてついてきます。

──確か、稲船さんのサインもついてくるとか……。

 そうなんですよ。予想以上に応募がきてしまったので、最近はイラスト入りのサインをずーっと描いていました(笑)。

 ゲーム自体はどういうゲームなのかと言うと、日本のレトロゲームが好きな人って世界中にいるんですよ。今の感覚でレトロゲームを作ったらどうなるのか、と考えて作ったものです。稲船敬二という名前はレトロゲームでなじんでいる人が多いようで“稲船の作るレトロゲームをやってみたい”という人たちに向けて作ったものになりますね。

──稲船さんが作りたいゲームと、求められているゲームが一致しているんですね。

 そこがクラウド・ファンディングの良いところだと思います。自分が作りたいだけでもダメですし、みんなが欲しいだけでもダメなんですよ。“欲しい”と“作りたい”が一致して、はじめてお金が集まる。

──それでお金が集まるなんて幸せなことだと思います。

 ファンあってのシステムですよね。建前ではなく本音で、ファンがあってこそのゲームだと言えます。とくに、このゲームはファンから「こういうモードが欲しい」「こういうシステムが欲しい」という要望を聞きながら作っているので、いろいろなモードが入っているんですよ。

 ボスラッシュモードもありますし、かなり難しい課題を与えて1個1個クリアしていくチャレンジモードや、2人でクリアを競うバトルレースなども入ってます。

『Mighty No. 9』

──では、作品について詳しく教えていただけますか?

『Mighty No. 9』

 ストーリーは、ロボットがたくさん使われている世界です。ロボット同士の技術を上げるために、戦わせる“バトルコロッセオ”というものがある時代で“マイティーナンバーズ”というチームがすごく活躍しているんですよ。

 そんなときに、ロボットが暴走して大変なことになっちゃうんです。主人公のベックは、もともと“マイティーナンバーズ”の補欠で全然使えないダメなロボットなのですが、なぜか狂わなかった。そこで、彼が立ち上がるしかないのですが大丈夫なのかな……というところから始まって、ロボットのベックが成長していくところを描く物語になっています。

『Mighty No. 9』

 ベックは、戦闘用ロボットとして開発されました。ほかのロボットはいろいろな能力を持っているのですが、ベックは何も持っていない。自分は何もできない、というところから始まるのですが、ロボットたちが狂い始めたことで自分がコピー能力を持っていることに気がつくんです。コピー能力って最強じゃないですか。仲間たちを助けてどんどん能力をコピーし、成長していくんです。

『Mighty No. 9』

 コールはサポートキャラクターで、ゲーム中も通信しながらサポートしてくれるカワイイキャラクターです。じつは、クラウド・ファンディング中にコールのデザインをたくさん描いて、選んでもらったんですよ。

 いろいろなデザイナーに声をかけて、その中で選ばれたデザインになります。もちろん、自分も参加したのですが、見事最下位でした。自分のデザイナーとしての力のなさを痛感しましたね(笑)。

『Mighty No. 9』

 Dr.ホワイトは、マイティーナンバーズを開発した良い博士です。ベックは彼が実験しているロボットで、マイティーナンバー1からいろいろ試した結果、ナンバー9は実験要素が一番強いんです。だから、ベックの力を信じているんですね。

『Mighty No. 9』

 三田博士は、三田テクノロジーという会社の日本人研究者です。このゲームはアメリカの話なんですが、やっぱり日本人を出したいじゃないですか。今回は、どちらかと言うと彼とベックが一緒に組んでやっていく形に近いです。

 先ほどお話したコールちゃんは三田博士が作ったもので、ベックたちをサポートする良い博士です。三田博士が乗っているものは、太りすぎた彼が歩かないで楽をするために作ったアイテムですね。アメリカ人を太らせて描くことは多いのですが、逆にあえて日本人を太らせて描いています。

『Mighty No. 9』

 昔のゲームだと博士しか出てきませんが、今の時代は博士だけではなくて、ビジネスをする人も出てきます。彼はロボット業界のなかでは力のある人間なんです。Dr.ブラックウェルという悪の博士がいるのですが、彼が今回の事件を起こしたのではないかと疑っていて、ベックたちとは別に事件を追いかけています。

『Mighty No. 9』

 マイティーナンバーズはベックを含めて9種類います。いくつか解説していくと、まずパイロ。彼はナンバー1ですね。ボクが好きなキャラクターで、体中に火をまとっています。じつは、ムキムキに見えるんですけど火が消えるとすごくみすぼらしいんですよ。

 ナンバー2のクライオは、可愛らしいキャラクターですが、ちょっと悪戯っぽい。水を操ることと、凍らせること。この2つの能力を両方できるキャラクターになっています。

 ナンバー3は女性キャラクターでダイナ。彼女は電気を操るキャラクターです。雷のイメージから電電太鼓をデザインしていて、かなり手ごわいですよ。数少ない女性キャラクターなので、割と人気がありますね。

 それから、じつはマイティーナンバーズは今回紹介した以外にもいるんですよ。今日は特別にお見せします。

『Mighty No. 9』
『Mighty No. 9』
『Mighty No. 9』

 これは、マイティーナンバー0。RAYというキャラクターです。RAYはクラウド・ファンディングで製作が決定したあとにキャラクターを追加したいということで、お金を集めて作ったキャラクターなんですよ。

 中心的なキャラクターなのですが、ライバルのようで味方ではない、というキャラクターを作りたかったんです。製品版ではRAYのステージも遊べますし、RAYを使ってプレイすることもできますよ。

 ちなみに、RAYは彼じゃなくて“彼女”なんです。すごい勝ち気な彼女で、ベックと同じく吸収する能力を持ってます。でも、ベックとは違った吸収能力になっていて上級者向けのキャラクターです。

 デザイン的には体が半分壊れていてゲッターロボみたいな見た目ですが、ボクは永井豪先生が好きなんですよ。ロボットを描くならこういう要素を入れようと思っていました。

ファンとのつながりを大事にする稲船氏

 ゲーム紹介のあとは、事前応募の際に募集した質問コーナーへ移行。稲船氏が3つの質問に回答してくれた。

【質問1】
 キックスターターの発表があった日に『Mighty No. 9』のバッカーになっていますが、発売まで待ち遠しくてイベントに応募しました。コンセプトさんでは、既に2回のキックスターターの企画がスタートしましたが、国内・国外での盛り上がり方など違いはありましたか? 日本ではまだまだキックスターターに対する関心が薄いようにも感じます。

 盛り上がり方は違いますね。日本だと投資という意識よりも、できあがったものを評価するという形が多いです。海外の場合は、クリエイターと一緒に作りたいという意識が大きいようですね。海外は海外で厳しいのですが、本作の9割以上は海外の投資でした。本当は、日本でももっと投資してもらえるようになって欲しいのですが、まだまだこれからです。

 やはり、今は「自分たちが面白いゲームを作りたい」と口に出すことが重要だと思います。物によってはゲームが作れなかったり、延期しちゃうこともあったりしますが……。このゲームも約束の期間からズレてしまって申し訳ないのですが、クリエイターは一生懸命作っているので、そういう形で応援していただけるといいな、と思っているんですよ。


【質問2】
 この作品はクリエイターとファンのつながりを強く感じるのですが、制作をしている中で、ファンとのつながりを感じたエピソードがあればお聞かせください。

 カプコンで働いていた時代から、ファンとのつながりは大事だと思っていて、このあともサイン会や握手会をする予定です。日本だと「稲船のサインなんていらないよ!」と言われると思いますが、海外でサイン会を開くとすごいですよ(笑)。1日で700人が来たときもありました。

 ニューヨークのゲームショップでやった単体イベントだったのですが、全然終わらないんですよ。しかも、すごいファンの方が喜んでくれていて、その顔を見るのがうれしかったですね。言葉が通じない外国のファンでも、心が触れ合う瞬間がわかるってうれしいじゃないですか。

 ……本当は半分くらい女性の方が来てくれるほうがいいのですが、自分のファンの9割は男性です(笑)。前にサイン会で大泣きしている女の子がいて、自分の番が近づいてくるとうれしくて泣いていましたね。だから、サインしたあとに思わずハグをしたら、お綺麗に見えたのですが男性の方でした(笑)。

『Mighty No. 9』

【質問3】
 みなさん、仕事以外ではどんなゲームをプレイされていますか?

 一般的に遊ばれているゲームは遊んでいますよ。スマホもコンシューマもやっていますが、ハマらないようにしているんです。のめり込んでしまうと、頭がそっち側に行ってしまうじゃないですか。職業柄、面白いだけでは入り込めなくて、冷静に見なくてはいけないんですよ。

 でも、たまにやめられないゲームがあって、それが名作なんだと思っています。具体的なタイトルは、オトナの事情や関係があるので言えませんが(笑)。

ガチプレイヤーも納得する難易度とスピード感を重視したゲーム性が実機プレイで判明!

 イベントの後半では、株式会社インティ・クリエイツのディレクター、池上欣志氏を招いて実機プレイが披露された。実機プレイでは、ナンバー7が登場し、本作の内容がわかりやすいという高速道路のステージを実演。このステージは、高速道路で車に飛び移りながら次々と移動していくのが特徴的な構造になっていた。

 実機プレイ中は、稲船氏によるゲームシステムの解説も行われ、弱った敵にダッシュして体当たりすると吸収できる本作ならではのシステムについて語っていた。なお、本作ではダッシュを使うと空中戦が可能。実際に飛ぶわけではなく、飛んだように戦えるおもしろさを出していると稲船氏は語った。

 また、本作には難易度のイージーが存在しないが、自信がない場合はオプションで自由に残機を増やして遊べるとのこと。横で見てても面白いゲームを目指しており、実況などで自慢のプレイをして盛り上がってほしいそうだ。

2016年は『Mighty No. 9』一色! 続編の構想や『RED ASH』の話も!?

──最後に、稲船氏による2016年の展望についてお聞かせください。

 毎年1年が過ぎるのが早いですが、2016年はやはり『Mighty No. 9』をヒットに結びつけて、みなさんに楽しんでもらいたいです。『Mighty No. 9』はシリーズ物にしたいと思っていて、企画自体は動いています。あとは、どうやって資金を集めるか。『Mighty No. 9』が大ヒットするのが一番簡単な方法なのですが、そこまでではなかったときは、またキック・スターターで誰かにお願いするかもしれません。

 それから、もう1作『RED ASH』というゲームも立ち上げました。キック・スターターとしては失敗したのですが、面白いと言ってくれる方がいてくれて海外の会社で作っています。これも、ちゃんとプロトタイプを作って見せていきたいですね。2016年は、やりたいことをやっていく年にしたいです。

 ゲームクリエイターの幸せって、お金持ちになることではなく、自分のやりたいことができることなんですよ。今の世の中では、それがし辛くなっていますが、自分がやりたいことを突き通していく年にできればいいと思っています。

 もし、自分がゲームクリエイターを辞めるとしたら、やりたいことが浮かばなくなったときにやめますね。今は、やりたいことをお金には変えられませんが、どこかでお金に変わったら引退します。そのときは「俺は金持ちだ」と言うので、そうすると「お前は最低だ」って返されるでしょう(笑)。

 ちなみに『Mighty No. 9』の発売日は、2016年2月12日に全世界で発売します。日本ではスパイク・チュンソフトさんが調整中ですが、ダウンロード専売で値段も高くならない予定です。

 本当にあっという間の1時間でしたが、ついつい言っちゃいけないことまでしゃべってしまいました(笑)。本当は、言っちゃいけないことを言わないようにテンションを低くしようと思ったのですが……でも、楽しくゲームを作っているのは伝わったと思うんです。

 作ってる自分が楽しくなくちゃ、ゲームっておもしろくないじゃないですか。ゲーム制作は9割苦痛ですが、1割の楽しい部分をどういう風に出していくのかという部分で、自分は常に楽しくやろうとしているんです。同窓会的な作り方で、昔ゲームを作ってたスタッフが集まって作っているので、ぜひ、遊んでみてほしいです。

『Mighty No. 9』

■『Mighty No. 9』関連告知

『Mighty No. 9』
▲2016年1月30日。インティ・クリエイツによるライブイベントを開催。ゲームの音楽が効けるチャンス!
『Mighty No. 9』
▲公式グッズラインナップ。オリジナルデザインTシャツ。オリジナル卓上カレンダー。メガセルティッシュBOXなど、各イベントで販売予定だ。

稲船敬二氏サイン会を実施! 『Mighty No. 9』のグッズ物販や展示、PS4版の試遊も

 ステージ終了後イベント会場では稲船敬二氏のサイン会が開かれた。なかにはその場で購入したベックのTシャツにサインをしてもらう人も。また、PS4版『Mighty No. 9』の試遊に加えてイラストの展示も行われ、多くの人が時間いっぱい楽しんでいた。

『Mighty No. 9』
『Mighty No. 9』
『Mighty No. 9』
『Mighty No. 9』

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データ

▼『電撃PlayStaton Vol.604』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2015年12月10日
■定価:657円+税
 
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