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2015年12月24日(木)

【電撃PS】SCE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』第72回。テーマは“リアルとの境界線”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 ここでは、電撃PS Vol.603(11月26日発売号)のコラムを全文掲載! 

第72回:“リアルとの境界線”

 最近、テレビ東京系列の番組が絶好調、というニュースをよく目にします。確かに僕も、『Youは何しに日本へ?』や『和風総本家』など、特にバラエティはテレビ東京系列の番組を見ることが多い。低予算ながらアイデアを振り絞って勝負しているように見えて、かつての『PlayStation CAMP!』と通ずるところもあり、一方的に応援しています。

 そういえば、大人気の『孤独のグルメ』も、当初企画としてはフジテレビに持ち込まれたもののボツになり、テレビ東京がキャッチアップして大ヒット、という記事も読みました。担当者はしてやったりでしょうねえ。

 そんなテレビ東京ですが、これまではどんな大事件が起きてもかならずアニメを放送しているといったイジり方をされることのほうが多かった(湾岸戦争勃発時も、普通に『ムーミン』を放送していてそれは驚きました)わけで、そのオチャメさは今も残りつつではありますが、確実に潮目を変えた番組があります。皆さんご存知、『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』です。

 『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』は、蛭子能収さんと太川陽介さんが、ローカルバスに乗って時間内に目的地を目指すという、いってみればそれだけの内容の番組です。しかしその珍道中が面白い。お2人のキャラクターも両極端で、計画はあってないようなもの。観光名所をすっ飛ばしたと思いきや、どうでもいいような食堂に立ち寄ったりもする。

 この行き当たりばったり感が、まるで自分も一緒に旅をしているような臨場感をもたらしてくれるのです。そんな、今やテレビ東京の代名詞ともなった『ローカル路線バス』ですが、なんと映画化されるというではないですか! これにはびっくりしました。

 『ローカル路線バス』は、表現手法としては、いわゆるドキュメンタリーといえると思います。どこまで台本的なものがあるかはともかく、“起こっていることを改竄せず追い続け、映像として記録する”というのが基本スタイルなわけです。映画版が同じような手法で構成されるかはわかりませんが、最近、このドキュメンタリーという手法がある種の求心力を持ってきているのではないか、という気がしています。

 たとえば、フジテレビ系列で日曜日に放送されている『ザ・ノンフィクション』。20年続くドキュメンタリーの人気番組ですが、これも最近、何かと話題になることが多い。また、映画でも、AKB48を追いかけた『DOCUMENTARY of AKB48』といった、よりリアルに、メンバーの素の魅力を伝える作品が公開されたりしています。

 かつては僕も、ドキュメンタリー映画をよく見ました。たとえば、アウシュビッツの強制収容所のホロコーストを追いかけた短編映画『夜と霧』。邦画では、戦時中の上官による部下射殺事件を追求する男を追った『ゆきゆきて、神軍』など。

 映画の殿堂、米アカデミー賞では、長編ドキュメンタリー部門、短編ドキュメンタリー部門、2つの部門がありますが、それだけ、映像表現としての実録、記録手法の価値を認めている、ということだと思います。で、ここで思うわけです。ゲームで、ドキュメンタリーという手法を採用することは可能なのかと。

 ずいぶん昔ですが、考えてみたことはありました。しかし、これがめちゃくちゃ難しかった。冷静に考えれば難しいのは当たり前です。なぜなら根本的に、ゲームやアニメは、クリエイターがすべてを一から作る必要があるからですね。既に存在している男の生き様を追いたいと思っても、まずその男を作らなければならない。対象を追い続けようと思ったら、まず対象そのものを“作る”必要があるのです。

 そもそも、ドキュメンタリーに内包される、真実を暴くといった姿勢や、告発といった機能が、完全娯楽のビデオゲームでやる必要があるのかというと、相性のよいテーマも見つからない。少し前に、フェイクドキュメンタリーが流行りましたが、設定としてそういうスタイルを採用するのは可能だと思います。フィクションとノンフィクションの境界を設定上曖昧にするような『ナナシノゲエム』などは、ホラーテイストの都市伝説的なテーマを、うまく二重構造として活用していたなと思います。

 と、ここまでいろいろ考えてふと思うのですが、最近大人気の“ゲーム実況”。あれって、“ゲームをドキュメンタリー化”している好例なのではないか? 構造としては、ゲームをプレイする実況者が、“追い求める対象”です。

 その対象がゲームに挑む姿を、ひたすら追いかける。そこに改竄性はなく、実録、記録的映像表現として鑑賞者に何かを与える。気づかないうちにドキュメンタリーという手法を採用していた“ゲーム実況”は、その求心力で人々を惹きつけ、ネットワークの発展ともに拡散されていった。

 その結果他のメディア、バラエティ番組や映画でも、その手法が再評価されコンテンツが増えた。案外、今のドキュメンタリー人気はゲーム実況がもたらしたのではないか。そんなことを思います。

 となるとですよ。ゲームでドキュメンタリーをやるのは難しいけれど、ゲーム実況をゲーム化するのは可能なのではないか? などと考えてしまうんですよねえ。リアルとの境界線を崩すことで生まれるナニカ。あると踏んでます。

ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

ソニー・コンピュータエンタテインメントJAPANスタジオエグゼクティブ・プロデュ ーサー。PS CAMP! にて『勇なま。』シリーズ、『TOKYO JUNGLE』などを手掛ける。現在『トゥモローチルドレン』『NewみんなのGOLF』を絶賛開発中。最新作、『Bloodborne The Old Hunters』好調発売中!

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

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