2016年1月15日(金)

『SAO ホロウ・リアリゼーション』には原作小説から初登場キャラも? 二見Pに2016年の抱負を聞く

文:てけおん

 バンダイナムコエンターテインメントがコンシューマ・アプリにわたって展開しているゲーム『ソードアート・オンライン』シリーズを手掛ける二見鷹介プロデューサーと河合泰一プロデューサーに、2015年を振り返ってもらいつつ、2016年の抱負を語っていただきました。

『ソードアート・オンライン -ホロウ・リアリゼーション-』

 2回にわたってお届けしていくこのインタビュー。前編では、コンシューマ新作『ソードアート・オンライン -ホロウ・リアリゼーション-』を軸に、さまざまな質問を二見プロデューサーにぶつけてみました。

 また“ソードアート・オンラインβeater’s cafe”では、二見プロデューサーがユーザーから直接寄せられた質問に答えています。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

『ソードアート・オンライン』
▲二見鷹介プロデューサー(左)と河合泰一プロデューサー(右)。

 河合プロデューサーには、後日公開予定の後編で、iOS/Android向けアプリ『ソードアート・オンライン コード・レジスタ』のこれまでとこれからについてお話を伺ったので、プレイしている人はこちらもお楽しみに。

世界で愛される『SAO』を実感した1年

――2015年は3月に『ロスト・ソング』、11月に『ゲームディレクターズ・エディション』の2本をリリースし、さらに最新作『ホロウ・リアリゼーション』も発表しました。振り返ってみると、忙しい1年だったのでは?

二見P:う~ん、前半はそうでもなかったんですけどね。

――そうなんですか?

二見P:『ロスト・ソング』の発売は3月でしたので、マスターアップ自体は1月には終わっていました。3月まではプロモーションを中心にやっていた感じですね。『SAO』は原作やアニメが海外でも大人気で、ゲームも海外で売っていこうということで、海外に行くことが多かったです。

 あと12月はかなり忙しかったですね。『ホロウ・リアリゼーション』をワールドワイドで発売させていただくとアナウンスさせていただきましたし、今後の『SAO』の展開を仕込んでいる時期でしたからね。

●動画:『SAO -ホロウ・リアリゼーション-』海外版ロンチトレイラー

――海外のイベントに参加してみて、むこうのファンの反応はいかがでしたか?

二見P:ゲームを遊んでくださった海外の方からの反応も届いていますけど、反応は上々でした!

――海外だとニューヨークのコミコン(コミックコンベンション)や、アジアのイベントにも参加されていますけど、それぞれのファン層で特徴はありましたか?

二見P:アジア圏のファン層は若いイメージですね。他にもアメリカとフランスに行きましたけど、年齢層はアジア圏とは反対に幅広いんです。女性ファンも多くて、すごく新鮮でしたし、『SAO』という作品が世界中で愛されているんだなと実感することができました。

――世界での『SAO』人気を肌で感じた1年だったと。

二見P:ただ、あくまでも原作とアニメの人気です。ゲームはこれからということを再認識しました! 頑張りっていこうと。そして、2015年を振り返ってみて思ったのは、“電撃文庫 秋の祭典2015”で『SAO』の劇場アニメが発表されましたけど、そのアニメを観たいので早く公開してください! ということですね(笑)。僕も他のファンと同じようなことを思っています。

●動画:劇場版『ソードアート・オンライン』制作決定PV

念願叶って、いよいよPS4でゲーム『SAO』が展開!

――以前から「PS4で『SAO』を出したい」とおっしゃっていましたが、2015年には『ゲームディレクターズ・エディション』が発売されて念願が叶いましたね。

二見P:正直に言うと、まだ達成したわけではないと思うんですよ。『ゲームディレクターズ・エディション』は、PS4でできることも入れてはいるものの、あくまで移植作品です。完全新作の『ホロウ・リアリゼーション』でようやく達成したと言えるんじゃないかと思っています。

『ソードアート・オンライン』

 以前のインタビューで『ホロウ・フラグメント』の続編を作ると話ましたけど、その時に構想としてあったのが『ホロウ・リアリゼーション』なんです。

――いきなり続編である新作を出さずに、『ゲームディレクターズ・エディション』に『Re:ホロウ・フラグメント』を盛り込んだのは、間に『ロスト・ソング』をはさんでいるからということなのでしょうか?

二見P:『Re:ホロウ・フラグメント』について話すと、ただ単にベタ移植というわけではなく、現時点でPS Vitaという土台を生かしてできるいろいろなことを盛り込んだ作品になっています。

 また副次的なものですが、『ホロウ・リアリゼーション』より前に本作の開発を行ったことで、PS4でのソフト制作に対して開発現場がこなれたことは大きな収穫だと思っています。

 プレイヤーの皆様の温かいご意見により、昨年末や、これから配信されるアップデートで『Re:ホロウ・フラグメント』はより遊びやすくなっています。この作品と『ホロウ・リアリゼーション』は同じ開発スタッフが制作しているので、それらが『ホロウ・リアリゼーション』には生かせる形で開発ができていると思います。プレイヤーの皆様にはとても感謝しております。

――アップデート内容も非常に豊富でしたし、女性アバターが作れるようになっているのもうれしかったポイントですね

●動画:PS4『SAO Re:ホロウ』で女性アバターを作成!

――昨年末のニコ生で公開した『ホロウ・リアリゼーション』は、まだ開発状況が10%とのことでしたが、もう少し詳しく聞かせていただけますか?

二見P:あれはあくまで開発状況であって、ここからグラフィックが劇的に進化するということではないので、その点だけご理解いただけると幸いです。

 もともと僕らはグラフィックがすごいゲームを作っているわけではなくて、グラフィックの置き方や見せ方、その空気の感じ方などのゲームデザインを工夫してもらっています。開発状況を10%と言ったのは“見た目的な部分やゲームの雰囲気が感じられるシステムができたところ”という意味です。

 そこからどうやって遊び的におもしろくしていくのか? システムが絡んでどうおもしろくなるのか? が、今後の課題になっていきます。『SAO』としてさらにディテールを深めていき、より楽しく遊んでもらえるようにしていくところですね。

――では『ロスト・ソング』と『ゲームディレクターズ・エディション』の開発で大変だったことは?

二見P:『ロスト・ソング』はとても大変でしたね。短い期間で開発現場に頑張っていただいたんですけど、これまでとはジャンルも違ったこともあり、ゲームらしさの追求をギリギリまでやっていました。

 発売3カ月前になって、私が「この仕様を変更しよう」とか言い出して、開発現場から怒られることもありました(笑)。マスターアップ段階では、決められた予算と期間で100%のものを作った自信はあるんですけど、そこからさらに手を加えたくなることもあって……。

――マスターアップを迎えて開発も一段落と思ったら、そこからアップデートに向けて動き出す感じですか?

二見P:アップデート自体はやろう! と決めています。ただ、先ほども開発現場から怒られたと言いましたが、マスターアップしてからすぐに、アップデートの内容を話していたら、「無事にマスターアップしたことも少しはほめてください」と(笑)。

――『ロスト・ソング』ではセブンやレイン、スメラギが登場しましたが、これらの新キャラクターへの反応はいかがでしたか?

二見P:スメラギはゲームでの出番が少なかったんですけど、セブンやレインはユーザーに愛されるキャラクターになったんじゃないかなと。

『ソードアート・オンライン ゲームディレクターズ・エディション』
▲こちらは『SAO ゲームディレクターズ・エディション』応援イラストの1枚。PS4版『SAO -ロスト・ソング-』では、セブンのライブシーンが新規映像として収録されているので、まだ見ていない人はぜひ!

 ストレアやフィリアと違う点として、セブンたちはキリトとの恋愛要素がないんですね。そのあたりから友だちに近いキャラクターとして見てもらえたのではないでしょうか。『コード・レジスタ』でも彼女たちは人気のようですし、原作やアニメのキャラクターと一緒に愛されているというのは、うれしいところです。

 『ホロウ・リアリゼーション』でも、セブンはちょいちょい出てくると思いますよ。科学者という設定がすごく便利で(笑)。レインも登場予定ですが、2人ともメインにがっつりと絡んでくるわけではありません。

――『ロスト・ソング』を遊んだ海外のユーザーの反応はどうでしたか?

二見P:Twitterやfacebookを見ると、おおむね好評かなと思います。ただ、海外だとRPGを好きなユーザーが多いのか、『Re:ホロウ・フラグメント』のほうが人気が高いみたいです。

 でも北米で『ロスト・ソング』は10万本、欧州でも5万本くらいが売れたので申し分ないですね。海外だとDL版がよく売れていて人気です。DL版だけで見ると、北米で3万本程度出ています。

――海外でもキャラクターゲームはある程度人気があると。

二見P:Steamでも『CLANNAD』がとても人気が出ましたよね。『SAO』のゲーム自体は、ライトな層に大変人気のある作品ですけど、もっとコア向けの作品も海外のファンに遊んでもらえると思うし、展開していくべきだなと感じました。

 ひとつ勘違いしないでもらいたいのは、海外ユーザー向けに『SAO』のゲームを作るわけではありません。あくまでも日本をはじめ、世界の『SAO』ファンがターゲットですし、日本で生まれた『SAO』ですから、まずは日本のファンが満足できるゲームを目指して制作をしていくつもりです。そうして作っていったものが、結果として海外のファンにも遊んでもらえるものになるように、現場のレベルもモリモリ上がっています。

――昨年秋には『プレイステーション4 ソードアート・オンライン ゲームディレクターズ・エディション《Aincrad》Model』が発売されましたけど、このモデルの発売経緯についても教えてください。

二見P:僕は『インフィニティ・モーメント』のころから、限定モデルを出したいと思っていたんですけど、その念願をようやく叶えることができました!

 さまざまな経緯があったんですが、4年越しの思いが成就して個人的にもすごくうれしかったですね。だからこそこだわったところなんですけど、PS4のベイカバーのデザインは『インフィニティ・モーメント』のものなんです。

『ソードアート・オンライン』
『ソードアート・オンライン』
▲こちらはプレイステーション4 ソードアート・オンライン ゲームディレクターズ・エディション《Aincrad》Model。
『ソードアート・オンライン』
▲そしてこちらは『インフィニティ・モーメント』のキービジュアル。ベイカバーの部分に刻まれているビジュアルはこちらのものとなっている。

『ホロウ・リアリゼーション』には原作から新キャラも登場!? ただし……

――いよいよコンシューマ最新作『ホロウ・リアリゼーション』について聞いていきたいと思います。本作で二見Pがこだわっている要素は?

二見P:僕というより、現場含めてですね。『ホロウ・リアリゼーション』のこだわりは、“よいしょシステム”ですね。まだ名前は仮の段階ですが(笑)。

 これはプレイヤーが他のキャラクターをほめるだけでなく、他のキャラクターから自分がほめられるシステムです。例えば敵を攻撃する際の連携で、アスナやリズベット、シリカが攻撃して行って、とどめをキリト(プレイヤー)にまかせてくれたりするんですが、そこできちんととどめを刺すと、みんなが「すごい!!」ってほめてくれるんです。

 これがすごく気持ちよくて(笑)。本作は4人パーティなので、こういう形のコミニケーションもおもしろいのかなと。

 もうひとつのこだわりは、新ヒロインのプレミアです。この娘がどれだけカワイイのかを言いたいんですけど、まだ言えなくて……。

『ソードアート・オンライン』
▲新ヒロイン・プレミア。無表情に見えるが……とてもかわいいところも?

――どういった点がプレミアの魅力なんでしょうか?

二見P:プレミアはNPCという設定なんですが、物語を通じて成長していく姿がホントに魅力的でかわいいんです。プレミアが成長し、いろいろといけないことを覚えていく過程もかわいいので、ぜひ楽しみにしていただければ!

 それと、『ホロウ・リアリゼーション』には原作小説からあるキャラが初めて登場する予定です! ただし“ア”の付く人や“ユ”の付く人ではないので、そこはご了承ください(笑)。

――それでは最後に、2016年の抱負をお願いします。

二見P:『SAO』はゲームの規模を大きく開発できる、幸せなタイトルになってきていると思います。コンシューマ、アプリの別なく、バンダイナムコエンターテインメントとしての『SAO』が一番よい形で皆様に提供できるよう、さまざまな連動を含めて楽しくやっていきたいと思います。

 “キャラクターゲーム”と言われるジャンルのゲームですが、しっかりと“ゲーム”としても楽しめる作りを目指しているので、今年も多くの方に遊んでいただけるよう頑張っていくつもりです。そして、ゲームから原作やアニメの魅力をより感じられるものになるよう、その土台をしっかりと作れる1年にしていきたいと思います。

――ありがとうございました!

 ゲーム『SAO』キーマンインタビューの前編では、二見プロデューサーがコンシューマゲームについて話してくれましたが、いかがだったでしょうか? 『ホロウ・リアリゼーション』には原作小説に登場したキャラクターが姿を見せるとのことで、どのキャラなのか想像してみるのも楽しいのではないかと。

 インタビューの後編では、河合泰一プロデューサーが『SAO コード・レジスタ』について話してくれているので、興味がある人はこちらもあわせて読んでみてくださいね。

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