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2016年2月22日(月)

【電撃PS】SCE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“雪の降る町を”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 ここでは、電撃PS Vol.607(2016年1月28日発売号)のコラムを全文掲載! 

第76回:雪の降る町を

 これを書いている1月18日、全国で大雪が降りました。関東もご多分に漏れず、夜通し降り積もった雪により、交通機関が大混乱に陥りました。たぶん、雪の多い北国の人達からすれば、なんで東京は毎回少し雪が降っただけであんなにも翻弄されるのか、とお思いでしょうね。しかしまあ、慣れないことに人は右往左往するもの。僕も、この日は出社するのも一苦労でした。

 まずは家から近場の駅に行くわけですが、僕には、20分くらい歩くけど電車に乗っている時間が短い駅と、電車に乗っている時間は長いけど歩いて5分くらいの駅の2つの選択肢があって、どちらに向かおうかと迷いました。外は、雪から変わった雨が結構降っている。足元もぐじゅぐじゅの状態だし近い駅にしよう、と決め、歩いて5分の駅に向かいました。

 しかしホームに着いたは良いものの、全然電車がこない。やっと来た電車は満員を通り越していてとてもじゃないですが乗れず、数本待ってようやく乗車。しかしこれが徐行運転でちっとも進まない。社内アナウンスによると、速度制限を守っているということと、雪用のブレーキ使用により遅れが生じておりますとのこと。へえ、そんなブレーキがあるんだなあと思いながら、スマホでも見ようと思うものの、体勢を変えられないくらい混んでいるので、目線に入る社内広告をなんども読み返していました。

 さて、乗り換え1回目の駅に着きましたが、ここでもまた電車が来ない。ホームで待っている間ツイッターで色々と情報を追っていると、社内のスタッフも大変なことになっている。そもそも、まだ地元の駅にすら入れていない人も結構いました。弱いなあ、東京。そんなことを思いながら乗り換えの電車を待っていたわけですが、待てど暮らせど来ません。なので、いつもは使わない路線に乗り、目黒駅まで行きました。

 通常だとここまで20分くらいのところ、この日かかった時間は1時間半。で、ここから山手線に乗り換えて、会社がある品川までは3駅。なのですが、山手線のホームに入る階段で入場規制がかかっていて入れない。軽く怒号なんかも飛び交っている。皆さん、落ち着きましょうよと思いながら、らちが明かなさそうなので一回外に出て喫茶店にでも入るか、と別の入り口に向かってみると、そっちは楽勝でホームに入ることができ、しかも山手線そのものはガラガラ、という状態。

 なんなんだと思いながら品川に到着。まだ雨が結構降っていて、最後の最後、会社前の歩道橋でびしょ濡れになったものの、無事出社となりました。結局、かかった時間は2時間ちょっと。いつもの3倍くらいの時間を要したのでした。

 しかし、ふと思います。なぜ毎回こんな混乱が起こるのでしょうか。これにも僕は、SNSの力が大きく作用しているのではないかと感じています。

 ちなみに前日から、今夜から雪が降り明朝は交通機関が混乱する、という情報はニュースでは流れていました。ツイッター等を見ても、「明日雪降るのか」とか「ちょっと早めに出なきゃなあ」とか、明日の行動を示唆するツイートがたくさん見受けられました。それらの情報を元に、“いつもより早く”家を出た人も多かったと思います(僕もいつもより30分早く家を出ました)。そしてここに、混乱のキモがあるのではと思うのです。

 かつてSNS的な情報の発信、拡散手段がなかったころは、雪が降るという予報を夜のニュースでは見るものの、特にそれらしい心構えはせず、朝起きたらやっぱ雪だね、ということで普通に通勤通学していたように思います。しかし今は、過剰な情報量を浴びて刷り込まれることにより、人々が「対策をとらねば」と“行動”に移すことをします。結果、“早めに家を出る”という意識が行動を呼び、その行動が量的キャパシティを越えた時点で滞留する。そこに第2陣の“早めに家を出た人”がなだれ込み、第3陣、第4陣と重なることによって、大混乱へと繋がってしまうのだと思うのです。

 情報がないならないで、予測や勘で人は動きます。しかしなまじ情報が容易に手に入ると、その情報を元に人は動いてしまいます。だから、行動が“散らない”わけですね。これってゲームで言えば、参照データテーブルが画一的過ぎて、アルゴリズムがばらけない感じと似ています。

 たとえると、妙に敵とエンカウントし過ぎるバランスの悪いRPG、とでも言いますか。人間なので、優れた自律的AIが搭載されているはずなんですけどねえ……。と思いつつ、写真のように、そんな混乱の中でも“善意”を発揮できる人達がいる。特殊な状況だからこそ顕在化する人の行い。人間のAIって、素晴らしいなあと思うのでした。

『ナナメ上の雲』

※このコラムは電撃PS Vol.607(2016年1月28日売り号)に掲載されたものです。

ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

ソニー・コンピュータエンタテインメントJAPANスタジオエグゼクティブ・プロデュ ーサー。PS CAMP! にて『勇なま。』シリーズ、『TOKYO JUNGLE』などを手掛ける。現在『トゥモローチルドレン』『NewみんなのGOLF』を絶賛開発中。最新作、『Bloodborne The Old Hunters』好調発売中!

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

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■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2016年2月25日
■定価:657円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.609』の購入はこちら
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