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2016年5月14日(土)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“失敗のススメ”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 ここでは、電撃PS Vol.612(2016年4月14日発売号)のコラムを全文掲載! 

第81回:失敗のススメ

 どうも! ソニー・インタラクティブエンタテインメントの山本です。いやあ、ついに変わってしまいましたよ、社名が。まだぜんっぜん慣れなくて、特に略称だと言い淀んでばかりいます。だって、SCEとSIEですよ。音も見た目も全然違いますもんね。しばらく時間はかかりそうですが、頑張って対応していきたいと思います。

 4月といえば、学生の皆さんにとっては卒業や入学、新学期のシーズンだと思います。社会人だと“組織変更”というものがあって、場合によってはそれまでとまったく違う業務を任命されたりもして、慌ただしく日々が過ぎていきます。僕も従来のタイトルプロデュースに加え、新たなミッションもいくつか増えましたので、またこの場でも皆さんにお伝えしていけたらと思います。

 会社という場所の面白さには色々な要素がありますが、その一つに、“年齢がバラバラ”という点が挙げられると思います。高校くらいまでだと、周りにいるのはほぼ同い年の人達ですよね。大学でも、1~3歳違いの人がいるくらいだと思うのですが、会社は、新入社員の場合、同期の人であっても、院卒だったりするとその時点で4歳違ったりするわけです。しかも、同じ空間で働いている“先輩“”は、30代、40代、そして50代までいます。当然、育ってきた環境、影響を受けてきた文化、時代的なバックボーン、すべてが違うので、話が噛みあわず往生することもあれば、違う価値観で世界が広がったりもして、より幅広い刺激を得られることになります。

 そういえば先日、日本一有名な“50代男性”である、吉田プレジデントと飲みに行きました。特段示し合せたわけではなく、たまたま近場に居た僕と、スタジオタイトルのプロモーション担当である西島課長ほか、5人くらいで飲んだのです。で、酔いながら色々話す中で吉田さんから出た一言が、非常に感慨深かった。それは、「最近、失敗するやつがいなくて面白くない」という言葉でした。

 ゲームの企画を考えたりそれを売るための策を考えたりすることは、つまりはアイデアのぶつけ合いに他なりません。僕は、この稼業の醍醐味は、アイデアのぶつけ合い、つまり、“誰もやらなかったことをやる”部分にあると思っています。しかしそうじゃない人の場合はどうか。よく見られるのが、“成功したパターン”をトレースするというやり方。それはそれで間違いではないとは思うのですが、これによって得られるものは決して“成功”ではなく、大抵の場合、“失敗しなかった”という消極的な印象なんですよね。

 思い返すと、西島さんとは、かつて『デカボイス』というゲームで一緒に仕事をしたことがあります。『デカボイス』は、マイクを通じて自分の声を入力する、“音声入力”をメインとしたゲームでした。刑事モノという設定なので、パートナーの警察犬に指示を出したり、遠く離れた相棒刑事と音声でやり取りしながら事件を解決していくゲームなのですが、彼のプロモーションアイデアがイチイチ面白かった。

 「声を使うから浅田飴と組んでのど飴を用意しましょう。通称、“デカ田飴”」「音声入力のゲームとかまだやったことがない人が多いから、店頭でイケメンインストラクターにプレイさせましょう。通称“デカボーイズ”」「映画っぽい雰囲気のゲームだから、水野晴郎さんにプレイしてもらってインタビューしましょう」とかとか。

 結局このゲームは、セールスとしては失敗に終わるのですが、でも、ノリと勢いでコンテンツに一定のイメージをつける、ということを僕は彼から学び、その精神は、その後『勇者のくせになまいきだ。』シリーズで息づくこととなります。

 デカボイスの後、彼とは『TOKYO JUNGLE』で再び一緒に仕事をします。僕はエグゼクティブプロデューサーという役回りではありましたが、「え、ホントにこのゲーム売るの?」という空気が社内を漂う中、彼だけは企画当初から「イケる!」と乗ってくれて、周囲を説得し、最終的には大きな宣伝費を分捕り、輝くようなプロモーションをしてくれました。クリスピーズという20代の会社が作る、可能性に満ちながらもほぼデビュー作の拙いゲームに、大きく“賭けて”くれたのです。そしてその賭けは、大成功を収めることになります。

 “失敗”とは、結果です。そしてそれは“挑戦”の結果であり、ただ“失敗しない”だけの仕事に、挑戦はありません。西島さんが『TOKYO JUNGLE』に乗ってくれたのは、挑戦以外の何物でもない。もっと言えば「イケる!」と思うかどうかなんて理屈じゃないわけで、つまり挑戦ですらなく、本能だったのだと思うのです。

 吉田さんが飲みながら語った「失敗するやつがいなくて面白くない」という一言は、挑戦する気概の稀薄さと、本能で仕事をする人が減ってきた、という指摘だった。先輩が後輩に「挑戦しろ」というのは会社ではよくある光景だと思うのですが、その先の失敗まで許容して叱咤をくれる先輩が、ウチにはいる。そして、一緒に挑戦し、失敗し、成功を目指せる西島さんのような同世代もいる。よし、もっともっと失敗して、大成功してやるぞ、と思うのでした。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

ソニー・インタラクティブエンタテインメントJAPANスタジオエグゼクティブ・プロデューサー。PS CAMP! にて『勇なま。』シリーズ、『TOKYO JUNGLE』などを手掛ける。現在『トゥモローチルドレン』『NewみんなのGOLF』を絶賛開発中。最新作、『Bloodborne The Old Hunters』好調発売中!

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.614』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2016年5月12日
■定価:694円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.614』の購入はこちら
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