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2016年5月25日(水)

元祖FPS『DOOM』をプレイした感想をお届け。マップ作りの楽しさも加わり、遊びの幅が広がる

文:イトヤン

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『DOOM』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。
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 ベセスダ・ソフトワークスより、5月19日に発売されたPS4/Xbox One/PC用ソフト『DOOM』のレビューをお届けします。

『DOOM』

FPSの元祖的タイトルが、完全新作・完全日本語化で現代によみがえった!

 1993年にid Softwareから発売された『DOOM』は、立体的な構造のマップを探索しつつ、奇怪なデーモンを撃ち倒していくという一人称シューティングです。さらにこの作品は、LANを利用した対戦プレイも可能になっていました。つまりこの『DOOM』こそが、現在のFPSのゲームシステムを確立した“元祖”と言えるタイトルなのです。

 筆者がFPSに本格的に出会い、そのおもしろさに目覚めたのも、この『DOOM』です。とはいえ、初めてプレイしたのは雑誌『電撃王』の編集部にサンプルとして届いた、スーパー32X版でしたが(笑)。

 そのしばらく後に、Windows 95マシンを購入して自宅でもプレイするようになったのですが、その頃にはすでに後継作の『QUAKE』が登場しており、自分はもっぱらそちらのほうを遊んでいた記憶があります。

『DOOM』
『DOOM』
▲オリジナル版の『DOOM』同様に、本作でも火星基地が舞台となります。特殊なスーツを身につけている主人公は、基地内部だけでなく火星の地表でも行動できます。

 さて、2016年の現代に登場した本作は、オリジナル版の雰囲気を生かしつつ、まったく新たなFPSとして制作された完全新作です。そのため、オリジナル版のファンならニヤリとする要素もあるものの、本作がシリーズ初体験という人でもまったく問題ない作りになっています。

 シングルプレイのキャンペーンモードは、主人公が火星の施設で目覚めるところからスタートします。主人公のいるUAC(ユニオンエアロスペースコーポレーション)の火星基地に、謎のデーモンが大量に出現。主人公は自分が生き残るためにも、デーモンたちを殲滅することになるのですが……。

『DOOM』
『DOOM』
▲キャンペーンの状況設定は基本的に、オリジナル版の『DOOM』と同様なのですが、主人公や彼が身につけるプラエトルスーツが祭壇のような場所に祭られているなど、どこかミステリアスな部分も用意されています。

 オリジナル版の『DOOM』は基本的に、デーモンを倒しながらマップを探索して、ゴールに到達すればクリアというシンプルな内容でした。本作もゲームの形式としては同様なのですが、敵を倒したり新武器を拾ったりした時に入手できる“コーデックス”を読むことによって、物語の背景や世界設定をより深く味わうことができるようになっています。

 特筆したいのは、このコーデックスやゲーム中に登場するキャラクターのセリフはもちろん、火星基地内部のモニター表示、さらにはマップエディットなどのシステムメッセージまで、本作のあらゆる部分が完全に日本語化されている点です。

 その一方で既報のとおり、本作のバイオレンス表現は海外版と同一の内容になっているため、近接戦闘で敵を倒した際などには、グチャグチャドロドロな(笑)インパクトある表現を楽しむことができます。

『DOOM』
『DOOM』
▲コーデックスの文章はもちろん、キャラクターの音声やモニターの表示まで、細部に至るまで完全日本語化。そのため激しいアクションを繰り広げていても、ストーリーにすんなり入り込めます。

接近戦の“グローリーキル”を駆使した、過激で奥深いバトルが楽しめる!

 本作のバトルは、現在の主流となっている他のFPSと比較すると、やや独特なものになっています。

 まず、本作のマップは基本的にオープンな作りになっており、遮蔽物に隠れながらチマチマと敵を倒していくのにはあまり向いていません。最初期の武器がハンドガンとショットガンということからもわかるとおり、プレイヤー自身が積極的に動き回り、敵に接近戦を挑んでいくスタイルが主流となります。これはオリジナル版を受け継いだ、非常に『DOOM』らしいプレイ感覚です。

『DOOM』
▲本作のステージは比較的オープンな作りとなっており、箱の裏などに隠れても、敵がどんどんと回り込んできます。じっと隠れているよりは、どんどんと動き回って回避するほうが得策です。

 この『DOOM』らしいプレイスタイルをさらに強調しているのが、“グローリーキル”と呼ばれる新システムです。デーモンにある程度のダメージを与えると、その身体が光り輝くようになります。その状態で近接攻撃を挑むと、デーモンの頭を踏みつぶしたり、デーモンの腕を引きちぎってその腕で殴りつけたりといった過激な表現で、敵を倒すことができるのです。

 しかもグローリーキルでデーモンを倒すと、死亡時に必ず回復アイテムをドロップします。近接攻撃のために弾薬を消費しない上に、体力を回復できるわけですから、これは積極的に狙っていきたくなる攻撃です。おかげで、ザコの群れを見かけるとすぐに突撃して、ドカッ! バキッ! グチャッ! とひたすら殴り殺しているという(笑)、過激なプレイスタイルになってしまうのです。

『DOOM』
『DOOM』
『DOOM』
▲デーモンにダメージを与えると、身体が白く光り輝き、接近するとオレンジ色に輝きます。この状態で近接攻撃を繰り出すと、過激なグローリーキルが発動して、回復アイテムをドロップします。

 また、序盤で入手できるチェーンソーで接近戦を挑むと、デーモンを血まみれにして真っ二つに切り裂くと同時に、大量の弾薬がドロップされます。ただしチェーンソーは燃料が限られているので、こちらは使いどころが重要です。

『DOOM』
『DOOM』
『DOOM』
▲敵を真っ二つに切り裂くと、大量の銃弾が飛び出してくるチェーンソーは、その爽快感がヤミツキになる武器です。ただしチェーンソーの燃料には限りがあるため、使用するタイミングがなかなか難しいのですが……。

 ところが、そうやって立ち止まってザコを殴っていると、遠距離から射撃してくるデーモンや、ダッシュで突進してくるデーモンにとっては、格好の攻撃の的になってしまいます。そこで本作のバトルでは、周囲の状況を確認して接近戦を挑むのか、それとも射撃で切り抜けるのかを瞬時に判断するという、独特の駆け引きが必要になってくるのです。

 近年のFPSで流行しているステルス主体の銃撃戦とは真逆の、ある意味古典的なヒットアンドランの攻防は、なかなか新鮮な感覚です。それになんといっても、グローリーキルでデーモンを倒す手応えは、なんともいえない爽快感があります。これはぜひ、自分自身で操作して味わってほしいと思います。

『DOOM』
『DOOM』
▲壁に張り付いて頭上から攻撃してくるデーモンや、シールドでこちらの攻撃を防御してくるデーモンなど、多彩な種類のデーモンが連携して襲ってきます。さらに、主人公よりも巨大で特殊な能力を持つ、ボスクラスのデーモンも!

シークレットの探索や、武器のアップグレードも充実!

 オリジナル版の『DOOM』では、立体的な構造(オリジナル版は3Dポリゴンではなく、疑似3D表示でしたが)のマップを探索するのも、非常に重要な要素でした。なにしろ、マップの各所に通常のプレイではなかなか見つからない、シークレットエリアやシークレットアイテムを用意しておくこと自体、オリジナル版の『DOOM』の影響を受けて、以降の作品で定番となったものなのですから。

 オリジナル版の特徴を受け継ぐ本作にも、もちろんシークレットがふんだんに用意されています。入手することでコンセプトアートなどを見られるドゥームマリーンの人形は、マップにも表示されるので比較的見つけやすいのですが、その他のシークレットはその場所に到達して初めて明らかになるため、発見するのはかなり困難です。

『DOOM』
『DOOM』
▲シークレットの1種であるドゥームマリーンの人形は、マップにその位置が記載されているため、発見するのはそれほど難しくありません。

 近年のFPSでは演出重視で、ステージを往復すること自体が少なくなっている中で、マップの隅々までこまめに探索する必要のある本作は、マップがかなり広い印象を受けます。ブルーキーやイエローキーといったアイテムを入手することで、行動可能なエリアが少しづつ広がっていく感覚は、『DOOM』に限らず少し昔のFPSを遊んでいた経験のある人には、懐かしいものがあるでしょう。

『DOOM』
▲本作のマップは立体的な構造になっており、回転させてさまざまな向きから確認できます。
『DOOM』
『DOOM』
▲ブルーキーカードを入手することで、扉が通行可能に。こうして少しずつ、行動できるエリアが広がっていきます。

 加えて本作では、ジャンプして壁の端に近づいた状態でもう一回ジャンプすると、壁をよじ登るという動作も用意されています。そのため、一見すると行けないような場所に登ることもできるため、探索可能な場所はさらに広がっています。

『DOOM』
『DOOM』
『DOOM』
▲離れた位置にある段差は、ジャンプで端に近づいてから、もう一度ジャンプすることで登ることができます。

 シークレットの探索以外にも、本作にはさまざまな楽しみが用意されています。プレイ中にはさまざまな新武器を入手できるのですが、それだけでなく武器に2種類の“武器MOD”を装備することも可能です。

 “武器MOD”は、その武器に通常とは異なるサブ射撃を付加できるもので、これにより戦術の幅がさらに広がります。また、武器MOD自体をアップグレードすることで、さらなる強化も可能です。

『DOOM』
『DOOM』
▲武器にはそれぞれ、2種類の“武器MOD”を装備して、プレイ中いつでも切り替えることができます。武器MODをアップグレードで強化することも可能です。
『DOOM』
『DOOM』
▲ショットガンの武器MODである“爆破ショット”を使用すると、グレネードランチャーのように離れた位置の敵を爆破できます。

 この他にも、主人公が身につけているプラエトルスーツの能力を強化したり、体力やアーマーの上限値をアップさせたりといったアップグレードも、豊富に用意されています。

 また、武器MODの強化に必要なポイントは、“ショットガン1発で2体を同時に倒す”といった、さまざまな種類のチャレンジを達成することで入手できますが、このチャレンジ自体もやりこみ要素となっています。

 バトル同様マップ探索の面でも、シークレット探索という古典的な要素と、能力のアップグレードという現代的な要素が上手く融合されていると言えるでしょう。

『DOOM』
▲プレイ中に入手したアイテムやポイントを使用して、プラエトルスーツの性能や、主人公の体力を強化することも可能。
『DOOM』
▲主人公は通常の体力に加えて、敵のダメージを耐えることのできるアーマーも装備できます。ステージ上で拾えるアーマーのアイコンのデザインは、オリジナル版をプレイしていた人にとっては懐かしいものになっています。

 このように本作は、オリジナル版『DOOM』のプレイ感覚を見事に受け継ぎつつ、現代のFPSとして楽しめるプレイスタイルに、しっかりとアップグレードされているという印象です。

 なによりオリジナル版の特徴だった軽快なアクションとド派手な戦闘が、その魅力を損なうことなく最新のグラフィックで再現されているところが、大きな魅力となっています。

 過激なバイオレンス表現も、敵が異形のデーモンということもあって、ホラー的なグロさではなく、アクションの爽快感を盛り上げるド派手な表現となっているのが、その楽しさに拍車をかけていると、個人的には感じました(とはいえ、苦手な人にはキツいかもしれませんが……)。

 オリジナル版の『DOOM』を楽しんでいた人には、本作はもちろんオススメです。ですが筆者としてはそれ以上に、近年のリアルなミリタリー系のタイトルで初めてFPSを触れた人にも、ぜひ本作をプレイしてもらって、FPSにはこういった楽しさもあると感じてもらえたらと思います。

『DOOM』
▲チェーンソーでデーモンを真っ二つ! こうやって静止画で見るとやたらとグロいようにも見えますが、本作にはホラー的なジメジメした怖さがないため、ド派手なスプラッタ描写はむしろ爽快感を盛り上げてくれるものだと言えるでしょう。

マップを手軽に自作できる“スナップマップ”で、無数の新マップを遊べる!

 本作では第3のモードとして、“スナップマップモード”が存在しています。これは、プレイヤー自身がステージを自由に作成して世界中のプレイヤーと共有できるという、マップエディットモードです。

『DOOM』
『DOOM』
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▲スナップマップモードでは、操作時の視点を選択できます。設計図モードでは、マップ全体の構造を確認するのに便利。一方、オブジェクトモードではマップの内部を実際のゲームに近い視点で移動できるので、オブジェクトを配置するのに最適です。

 FPSのマップエディットやレベルデザインというと、なんだか大変そうですが、スナップマップモードの操作はじつに直感的でわかりやすくなっています。基本的なフロアのテンプレートが用意されているので、その内部でカメラを自由に動かして、アイテムやデーモンをポン、ポンと配置していくだけで、自分だけのステージが完成するのです。

『DOOM』
『DOOM』
▲アイテムやデーモンの配置は、メニューから選択して位置や向きを決めるだけの簡単なもの。また、壁のデザインを変更したり、ライティングを配置したりといったことも可能です。

 このスナップマップモードが優れているのは、そうした配置面のデザインだけでなく、デーモンの行動やスイッチ操作によるギミックといった、さまざまな仕掛けも自作できるという点です。しかもそうした仕掛けの大半は、メニューから実行させたい機能を選んで、オブジェクトどうしを仮想の線でつなぐだけという、簡単な操作で実現可能なのです。

『DOOM』
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▲たとえば、ミニボスが出現するイベントを配置して、パネルとそのイベントを線でつなぐと……。
『DOOM』
▲パネルのボタンを押すと、ミニボスが出現するというギミックが完成!

 しかも本作には、こうしたギミックのロジックを自分自身で設定して、パズルの課題を解くことでロジックの仕組みを学べるという“スナップパズル”も用意されています。これがまた、純粋にパズルとして頭をひねる内容で、おもしろいんですよね。

『DOOM』
『DOOM』
▲10秒以内に5体の敵を倒せ、という課題。しかし10秒間には敵を1体倒すのが限界です。そこで、1体の敵にダメージを与えると、他の敵もダメージを受けるようなロジックを組み立てれば……?

 現在すでに、世界中のプレイヤーによって自作されたマップが多数公開されています。ちなみにそうした自作ステージの中には、床に配置されたキーボードを鳴らして音楽を演奏できるといった、不思議な内容のものまで存在しています。これを見ても、アイデア次第でいろんなギミックのステージを作成できることがよくわかると思います。

 世界中のプレイヤーが自作したステージを共有できるということは、新たなステージが次々と登場してくるということでもあります。ステージの自作はちょっと……という人でも、新ステージをひたすらプレイすることが可能なのです。

『DOOM』
『DOOM』
▲公開された自作マップは、プレイしたユーザーの評価が記録されるため、人気の高いマップや評価の高いマップを、簡単にチェックすることができます。
『DOOM』
▲今後は、世界中のプレイヤーが自作したマップがどんどんと配信される予定になっているとのこと。サンプルとして用意されたマップの中には、協力プレイで音楽を演奏できるという、とても『DOOM』とは思えないような内容のものも(笑)。

 密度の濃いシングルプレイに加えて、定番のマルチプレイに、スナップマップによる新ステージと、本作は盛りだくさんの内容になっています。スカッ! と大暴れできるFPSを心ゆくまで楽しみたいという人は、ぜひ本作にチャレンジしてみてください!

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