2016年6月13日(月)
『ワールド オブ FF』はメイン部分だけでナンバリング作品と同等のボリューム。さらにサブストーリーも充実
スクウェア・エニックスより10月27日に発売されるPS4/PS Vita用ソフト『ワールド オブ ファイナルファンタジー』。
“これは新しい『ファイナルファンタジー』の大きさ”をキャッチコピーとした本作について、ディレクターの千葉広樹氏とアートディレクターの泉沢康久氏にお話をうかがった。
――アートディレクターを務める泉沢さんの、具体的なお仕事内容を教えてください。
泉沢康久氏(以下、敬称略):作品全体のアート関係のディレクションをやってます。主にモンスター回りのデザインが中心です。オオビトのキャラクターは野村が手掛けていて、小さいプリメロキャラとミラージュ(モンスター)は自分が担当しています。
――泉沢さんは、この企画の立ち上げ時から参加しているとお聞きしましたが?
泉沢:プロデューサーの橋本真司の「近年の『FF』は、ファンの年齢層が高めになっていて、ゲームもリアル方向にシフトしている。子どもたちがもっと気軽に遊べる『FF』を作れないか?」という発案が始まりでした。
千葉広樹氏(以下、敬称略):その話を自分が受けて、チビキャラでできないだろうかという話からスタートしました。こういうキャラクターで1つの世界を作って、新しいチャレンジをしてみてはどうかとなったわけです。そこで、泉沢に参加してもらいました。
泉沢:チビキャラは、ファミコン時代のドット絵をモチーフにしています。最初は目も四角くしていましたが、野村から『FFV』のパッケージに描かれたイラストのようにしたほうがいいのではと言われ、今の丸みのあるカタチになりました。イメージとしては、ファミコンとスーパーファミコン時代のドットキャラが合体したような感じでしょうか。
――泉沢さんご自身は、最初にこのゲームの話を聞いたときは、どう思われましたか?
泉沢:デフォルメ系のゲームをまだ作れるんだと、純粋にうれしかったですね。多くのゲームがリアル志向にシフトしていくなか、デフォルメされたゲームはもう作る機会はないのかなと思っていたので。自分は、こうしたデフォルメキャラのほうが得意分野なので、こうした企画に携わることができてうれしいです。
――『FF』キャラクターが多数登場しますが、彼らはこの世界では、どんな存在なのでしょうか?
千葉:『FF』のキャラクターたちは、異世界から来たのではなく、最初からこのグリモワルという世界で暮らしている設定です。
そうしたこともあり、意外な組み合わせで、キャラ同士が知り合いだったりもします。ラァンやレェンがグリモワルに来る前から、彼らそれぞれにいろんな人生があり、そうしたサブストーリーを楽しむこともできるんです。
――声優さんもオリジナルと同じなんですね。
千葉:『FF』キャラクターたちは、小さくでも今までの作品のイメージを壊さないように、オリジナルの雰囲気からいっさい変えずに演じてもらいました。こうしたかわいい見た目になっても、クラウドはクラウドらしくふるまっているので、そこが逆におもしろくもありますね(笑)。
――世界観的にも、どこか懐かしさを感じますね。
千葉:デフォルメキャラがいっぱいいるコーネリアの町は、ファミコン当時の『FF』感がありますよ。物語冒頭でコーネリアの町が見えるシーンなども、ファミコンの初代『FF』のタイトル画面をイメージしたものになっているんです。
泉沢:そういう意味でも、親子で遊んでもらえるんじゃないかと思っています。昔、『FF』を遊んだ人たちが今、親になっているぐらいでしょう。いろいろな世代が持っている『FF』のイメージを残しつつ、幅広い世代の人に楽しんでもらえるようにしています。
――『FF』キャラクターのチョイスは、なかなかマニアックなところもありますよね。
千葉:この作品を長く続けていきたいという思いもあり、クラウドやライトニングなどの人気キャラクターを押さえつつも、マニアックなところも入れ込んでいます。
――『FF』キャラクターなどをチビキャラに落とし込むのは大変でしたか?
泉沢:一番最初に、チビキャラとして成立するかどうかを試したんですが、これが意外とうまくいったんです。テンプレートさえできてしまえば、それをベースに落とし込んでいけるので、全体的に苦労はあまりなかったですね。
デフォルメなので、割り切ることもできましたし。キャラクターの個性として、はずせないものだけはしっかりと再現していれば、思いきってデザインを変えることも難しくはなかったです。
――シドは完全オリジナルキャラなのでしょうか?
千葉:すごく悩んだ部分でもありますが、シドはシリーズごとに印象が違うので、逆にまだ見たことのないシドにしようと、オリジナルキャラにしました。もちろん彼のストーリーも用意しています。
――オリジナルキャラクターについては、何か苦労はありましたか?
千葉:タマとセラフィはマスコット的な存在なので、多少試行錯誤あったみたいですね。とくにセラフィは、声を喜多村英梨さんに担当してもらっていますが、喜多村さんのイメージから入ると裏切られると思いますよ。ちょっとクセのあるキャラクターになっています。
泉沢:セラフィはシルフをモチーフにしています。声を喜多村さんが担当するということで、かわいらしい妖精をイメージしてキャラを進めていたんですが、ボイス収録の際に野村さんの指示で今のイメージに急遽変更されまして、クリッとしたかわいい目だったのを、生暖か~い感じに調整しました(笑)。
――全体的にカジュアルなイメージの本作ですが、イメージ通りに気軽に遊べるものなのでしょうか?
千葉:比較的、気軽に遊べるように気を使ってます。ダンジョンに潜っても、いつでも最初の町に戻れて、またすぐにダンジョンに戻れるシステムを入れているんです。またバトルで全滅しても、ホームに戻されるだけで、お金も減りませんし、そこまでに入手したアイテムもそのまま。
ミラージュ集めのため、多少無謀に戦うプレイもアリのバランスになっています。細かいところですが、攻撃をミスすると“スカ”と出たり、一時停止はポーズではなく“ひとやすみ”になっていたり、堅苦しい言葉はなるべく排除していて、イメージ的にも気軽な感じを出すようにしています。
――ゲーム全体のボリュームも気軽な感じですか?
千葉:育成ややりこみ要素を抜きにして、ストーリー部分だけを余すところなく追っかけると、100時間は遊べる感じでしょうか。『FF』作品でもあるので、そこは軽めにはしたくなかったんです。なので、メイン部分のボリュームはナンバリング作品と同等。
そのうえで、サブストーリーを充実させています。とくに『FF』キャラクターに関しては、彼らがこの世界で何をしているのかといった部分を、脇道で楽しめるようになっています。サブストーリーではありますが、カットシーンによるイベントを盛り込んだ、しっかりしたものになっているんです。
――サブストーリーだけでも、かなりのボリュームがありそうですね。
千葉:ちなみにイベントシーンも早送り可能です。全部スキップすることもできますよ(笑)。いままでのプレイ感も大事ですが、より快適でラクに遊べる感覚を重視しているんです。
――バトルは見た目とは違い、歯ごたえを感じます。
千葉:序盤はゴリ押しで進められる程度ですけど、中盤以降は属性なども考えないとキツイ場面もある感じです。
『FF』ということで、バトルはアクティブ・タイム・バトルをベースにしていて、コマンド入力中にも時間が流れるフルアクティブの設定にすると、難易度は結構高くなるかと。ただ、これに慣れるとよりバトルが楽しくなるように、現在調整をしています。
――これまでの『FF』と同じように、慣れるまではウェイト設定で、慣れてきたらアクティブにすればよい感じでしょうか?
千葉:そうですね。あと、バトルにも早送りモードがあって、バトル中にR1ボタンを押している間、バトルが早送りになります。アクティブかつ早送りにするとかなり大変なことに(笑)。でもきっと、やり込む人はこれぐらいはやってのけるんじゃないかと思っています。
技を使うのに必要なAPは、ターン経過で少しずつ回復するんですけど、相手の弱点を突くことで、より多く回復可能です。弱点を突いてAPを効率よくためて、大技を連発するなどの戦い方を考えていくと、バトルはラクになるでしょう。
もちろん、そういったことを気にしなくても、十分に戦うことはできます。仲間にできるミラージュも多いので、自由に育てて、進化させてみてください。
――ミラージュ(モンスター)を仲間にするのも、本作の見どころの1つだと思います。ミラージュはどれくらい登場するのでしょうか?
千葉:登場するミラージュは200を超えます。なので、ノセノセの組み合わせを考えると、バトルでのバリエーションはかなりのものになるかと。ただ、使わないミラージュが出てくるのはさみしいので、全部のミラージュを育てたくなるように調整しています。
――ミラージュは進化もするようですが?
千葉:育てたミラージュは、ステータスやアビリティを引き継いで、別の姿に進化することができます。
進化させて育てるのはもちろん、またそれを元の姿に戻して育てることも。進化する前も先も、1体のミラージュとして大事に育て続けることができるんです。愛着を持って育てることができるので、基本的にはミラージュに名前をつけることをオススメします。
――ミラージュはどうやって仲間にするのでしょうか?
千葉:“ジェム”というのが、ミラージュを捕獲するためのアイテムです。アビリティの“ライブラ”を使えば、ミラージュを捕獲可能にする条件がわかるのですが、“暗闇にすると捕獲しやすくなる”など、モンスターごとにその条件はさまざまです。条件は“ライブラ”で簡単にわかるのですが、その条件自体がけっこう厳しいものもいます。
――ミラージュは複数捕獲することはできるのですか?
千葉:同じミラージュを複数捕獲することは可能ですが、あまり意味はないですね。いろんな種類を集めて、進化させるのがおすすめです。そのミラージュだけでパーティを組むといった選択もできますが、ぜひ気に入ったミラージュをじっくり育ててほしいです。
――ラァンやレェンの成長はどうなるのでしょうか?
千葉:ミラージュを育成してくと、ミラストーンという石を生み出してくれるんです。これを装備することで、ラァンやレェンも、いろんな技を使えるようになっていきます。
ミラストーンですが、例えばファイアを使うミラージュを育てると、ファイアのミラストーンを生み出すといったわかりやすいものになっています。結果、ミラージュの育成が、そのまま自分の強化にもつながるわけです。
ファイアのミラストーンを装備して、ファイアを使えるミラージュと組み合わせると、合体技が使えたりと、そこから派生するシステムのバリエーションも楽しむことができるようになっています。
――ミラージュのほかに、オーディーンといったメガミラージュも存在するようですが?
千葉:基本的にはミラージュと同じ存在です。ただし強力なので、呼び出すに条件が必要。呼び出すとメガミラージュ+レェンとラァンでのバトルになります。メガミラージュは、どこかの場所で出会って捕獲したり、ミラージュが進化した果てに出現したりと、さまざまです。
――基本的には『FF』シリーズの召喚獣にあたるものでしょうか?
千葉:そうですね。『FF』シリーズで登場する召喚獣のなかから、メジャーで人気のあるものを選んでいます。ちなみにメガミラージュにはボイスもあります。
オーディーンにはイベントも用意されていて、その声は小林清志さんにやっていただきました。そのほかのミラージュのキャスティングも、かなり豪華ですよ。
――ミラージュのデザインには、さまざまな有名デザイナーの方々が参加されているようですが?
泉沢:世界観とイメージを説明したうえで、基本的には自由に描いてもらってます。ラムウやサンダガイなどは『世界樹の迷宮』シリーズなどの日向悠二さんにお願いしました。できあがってきたものがとてもよかったので、デザインはほぼそのままです。
――敵バハムート軍のデザインも日向さんですね。
千葉:バハムート軍は、幻獣をベースにした鎧を着ているというテーマでデザインしてもらっています。例えば黒鎧の騎士ブレンディレスはバハムートをモチーフに、金面の騎士セグリワデスは『FFVI』のゾーナシーカーをモチーフにしています。モチーフは日向さん自身のチョイスなんです。
▲ブレンディス。 |
▲セグリワデス。 |
泉沢:三輪士郎さんにお願いしたオーディーンのデザインも、1発OKでした。どのシリーズでもない、独自のオーディーンになっているかと思います。
千葉:著名なデザイナーさんたちに頼むなら、それぞれの個性を出してもらったほうがいいですよね。ビッグネームの方々があと数名参加してもらっていますので、こちらは続報をお楽しみにしてください。
ちなみに、メカチョコボは弊社の板鼻利幸にデザインしてもらっています。以前、プロデューサーの橋本からのオーダーで、メカのチョコボを出してほしいといわれたんです。チョコボといえば、チョコボデザイナーの板鼻に描いてもらうしかないと、お願いしました。ちなみにメカチョコボにも、ちゃんとサブストーリーを用意していますよ。ボイスも入ってます(笑)。
――普通のチョコボとは違う存在なんですね。
千葉:そうですね。ちなみにチョコボの声はかなり意外な声優さんに担当してもらってます。デジタル加工が必要なんじゃないかと思っていたんですが、加工ナシでバッチリ演じてもらっています。
――あらためて、現在の開発状況を教えてください。
千葉:エンディングまで、ひと通りプレイできるようになっています。あとはブラッシュアップと、全体的な作り込みですね。バランス調整もしてますし、いろんな人の意見も聞きながら、よりよいゲームにしているところです。すべてに、いっさい手を抜かずにやっています。
――楽しみにしているみなさんへ、メッセージをお願いします。
千葉:もうすぐ『FF』関連のビッグタイトルも発売されますが、いい意味でどちらも楽しめる内容になっていると思いますので、ぜひ両方手に取っていただきたいです。じっくり長く遊ぶこともできるし、気軽にプレイすることもできるので、大作のプレイで息抜きに遊んでいただくのもよいかと。楽しみにしていてください。
泉沢:ミラージュは、かわいいものから、カッコいいメカ、ぬいぐるみっぽいものまで、いろんなジャンルに響きそうなデザインを用意しましたので、ぜひ楽しんでいただければと思います。願わくばフィギュア化もしていきたいので、よろしくお願いします(笑)。
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