2016年6月15日(水)
『KHIII』を楽しみたい人へ向けた『KH2.8』。野村哲也氏が語る「完全新作と思ってほしい」理由とは【E3 2016】
全世界同時発売が発表されたPS4用ソフト『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナルチャプタープロローグ』。
本作は、完全新作のプレイアブル作品『KINGDOM HEARTS 0.2 Birth by Sleep -A fragmentary passage-』と、新規HD映像作品『KINGDOM HEARTS χ Back Cover』、そしてHDリマスター作品『KINGDOM HEARTS Dream Drop Distance HD』の、『キングダム ハーツ III』へ繋がる3作品を収録したスペシャルパッケージだ。
この記事では、本作のE3 2016の出展内容や作品自体の内容について、野村哲也氏へ行ったインタビューの模様をお届けする。
『KHIII』の絵作りやシステムを体感できる『KH0.2』
――最新映像に加えて試遊出展と、E3では『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ(KH2.8)』の注目情報が続々と飛び出しましたね。
以前から2016年予定ということはお伝えしていまして、その予定どおりに制作は進んでいます。新情報公開までに間が空いていたため、心配の声を挙げる方々もいたかと思いますが、開発スケジュールは遅れていませんので安心してください。
――実際にE3版を試遊させてもらいましたが、『キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-(KH0.2)』のインパクトがとくに大きかったですね。
『KH0.2』は“完全新作”とうたっているとおり、久しぶりの据え置き機での新作なので特別な思いはありますね。
最新映像で見られたシーンは『KH0.2』の冒頭部分で、あそこから過去と現在が繋がって行く大事なストーリー展開がまだまだ待っています。映像は試遊版のものなので、実際にPS4であのクオリティのアクションを楽しむことが可能です。
――『KH0.2』のボリュームは、どれくらいになる予定でしょうか?
過去のインタビューでもお答えしたかと思いますが、これまでのシリーズ作でいうところのワールド1つぶんくらいの想定です。ただ、その“ワールド1つぶん”をどう捉えるかというところはあるかと。
先日『KHIII』の作業で、1ワールドを最初から最後まで通しで確認したのですが、思った以上に長かったんですよ。ひとまず『KH0.2』は、あっさり終わってしまうボリュームではないことは保証します。
――公開された最新映像に映っていたお城は、“キャッスル・オブ・ドリーム(『シンデレラ』の世界)”ですよね?
そうですね。E3の試遊では、城に入るまでの部分が遊べます。アクアが冒険する闇の世界は、さまざまな闇に飲まれたワールドが溶け合っていて、“キャッスル・オブ・ドリーム”以外のワールドも断片的に登場します。各エリアごとに仕掛けを用意しているので、遊びごたえはかなりあると思いますよ。
――『KH0.2』の作り方は、ほぼ『KHIII』と同じと考えていいのでしょうか?
そうですね。ベースとなるエンジンから全体の絵作りまで、『KHIII』と一緒です。バトルシステムも『KHIII』をベースにしているので、『KHIII』の一端を感じられる内容になっています。もちろんフルボリュームとなる『KHIII』には、ほかにも多くのシステムが盛り込まれていきますが。
――『KH0.2』のグラフィックは、過去作のものと比べると見た目の変化が劇的ですよね。
『KH0.2』や『KHIII』では、絵作りにライティングを使用しているので、それが一番の理由でしょうね。これまでのシリーズ作では、あえてライティングを使わない絵作りをしていましたから。『KHIII』のグラフィックを決める際、キャラと背景のバランスの落としどころには苦労しました。
――E3版『KH0.2』を試遊させてもらった感触として、バトルは『KHII』と『KHバース バイ スリープ』をミックスさせたような印象でした。
ベースのバトルシステムは『KH』や『KHII』を引き継ぎつつ、『KHバース バイ スリープ』にもあった要素などを組み込んでいます。操作キャラはアクアですが、『KHバース バイ スリープ』のときのようなデッキコマンドはなく、魔法に関してはMP消費式ですね。
――『KH0.2』の試遊では、敵に当てるとさまざまな追加効果が発生する魔法が印象的でした。
ブリザドなら敵を凍らせ、サンダーなら感電させたりします。地形への影響もあって、例えばブリザドを撃つと地面に氷の軌跡が残り、その上に乗ると滑って移動できたり。
最新作では、魔法は敵に当てて終わるだけの要素ではなく、このように連鎖反応を起こすものがいくつかあります。よりアクションに深みを持たせる一因になると思いますよ。
――マップは非常に高低差があって、探索しがいがありました。
そこはとても意識した部分になります。『KHIII』の初期の映像で、ソラが崖から飛び降りるシーンがありましたが、あれが海外のファンのなかではとくに好評だったようですが、『KH0.2』も『KHIII』も、全体的にマップは高低差を非常に意識して作られています。
ゲームのなかとはいえ、思わずゾッとするような高さもあり。『KH3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』のときも、スタッフが凝ったマップ構造をいくつも考えてくれていたので、今回も期待していてください。
――『KH0.2』を試遊してしまうと、いやがおうにも『KHIII』への期待が高まります。
そう思ってもらうためにも、『KH2.8』はぜひ遊んでいただきたいです。今回のE3でわりと新規部分の情報を出したので、新作らしさは感じてもらえたのではないでしょうか。
最終章を存分に楽しむなら『KH2.8』は必須!
――『キングダム ハーツ ドリーム ドロップ ディスタンス HD(以下、KHDDD)』は、元々2画面だったゲームが1画面になったことで、仕様の変化が生じましたね。
そこの作り直しには、試行錯誤が多かったですね。代表的なのは、下画面でタッチやスライド操作を求められた“リンクシステム”や“リアリティシフト”ですが、これらはボタン同時押しなどの別操作に変わることになりました。
当初は、DUALSHOCK 4のタッチパッドを使うという案もありましたが、検討の結果、ボタン操作に落ち着いたしだいです。
――バトル部分はオリジナル版と同じなのでしょうか?
シリーズ初の試みですが、今回『KHDDD』は60フレームになっています。そこがオリジナルと根本的に違いますね。その他、多少チューニングはしています。ドロップ時間や敵のリアクション等の調整中ですがほぼオリジナル版と同じです。据え置き機になって大きい画面で遊べるようになったことで、空間の広がりはより感じられるかと思います。
――E3版『KHDDD』ソラ編を試遊した際、お供に見慣れぬドリームイーターがいましたが?
それは“ポンダニャン(たぬき型のワンダニャン)”ですね。新要素として、仲間になるドリームイーターに新種を何体か追加しました。
――『KH2.8』に収録されるもう1作品『キングダム ハーツ キー バックカバー(以下、KHχBC)』ですが、最新映像を見て、あれほどしっかりキャラが登場する作品になるとは思いませんでした。
初期に公開した映像がキャラの語りが中心だったので、全体がそういうノリなのかと思わせてしまったのかもしれません。実際は今回公開した最新映像で流れたとおり、キャラはしっかり出ますし、戦闘シーンなどもあります。見てもらえればわかるように、『KHχBC』のグラフィックも『KHIII』と同じ仕様で作られています。
――『KHχBC』の物語は、『KH キー』や『KH アンチェインド キー』の裏側の出来事ということですよね?
『KH キー』や『KH アンチェインド キー』がプレイヤー(キーブレード使い)視点の物語であるのに対し、『KHχBC』は各ユニオンの統率者(予知者)視点の物語になります。
『KH キー』や『KH アンチェインド キー』でプレイヤーが活躍していたとき、予知者たちは裏側で何を考え、行動していたのか……。『KH キー』もしくは『KH アンチェインド キー』をプレイしている人なら、「これは、もしかしてあのときの場面?」と時間軸が一致する場面もあるかと思います。
――最終的に『KHχBC』シアター映像の尺はどの程度になりそうですか?
全体で1時間以上にはなるかと。過去のHDタイトルに収録したシアター作品(『KH 358/2 Days』と『KH Re:coded』)に比べると尺は短いですが、『KHχBC』はストーリー含め全編新規作成なので、見どころは豊富です。
――『KH2.8』収録3作品のうち、2作が完全新作というのはスゴイですよね。
制作側としては、『KH2.8』自体を新作として見てほしいと思っています。3分の2が新作というのもあって、今回はこれまでのような『HD 2.8 ReMIX』というタイトルにはしませんでした。
ゲームの中身は本当にファイナルチャプター(『KHIII』)の プロローグとなっているので、『KHIII』を存分に楽しみたい人は『KH2.8』をプレイしていただきたいですね。
――とくに『KH0.2』はグラフィックもバトルシステムも『KHIII』基準なので、限りなく『KHIII』に近いゲーム体験ができますよね。
ものすごく極論を言うと「今年中に『KHIII』の旅はもう始まるわけです(笑)。当初構想していた『KHIII』のボリュームが大き過ぎたため、『KHII』後の新たな旅立ちまでの経緯を切り分けて生まれたのが『KH3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』であり、『KH0.2』になります。
『KHχBC』も『KHIII』に関係してくる設定も描かれますし、本当に『KH2.8』は『KHIII』のプロローグに位置するわけなんです。
――E3から発売まで『KH2.8』はどんな展開を見せますか?
秋ごろから12月の発売に向けては、定期的に情報を出していければと思っています。日本のユーザーの方々に試遊していただく機会も作りたいですね。また8月には“KINGDOM HEARTS Concert -First Breath-”ツアーが始まります。
こちらはゲームの情報が出るわけではありませんが、シリーズ初のオフィシャルコンサートです。ファンの方にはぜひご参加いただきたいですね。構成や演出も来年のワールドツアーを見据えた凝ったものを考えています。
――ちなみに『KHDDD』では『すばらしきこのせかい』のキャラも登場しますよね。やはり『すばらしきこのせかい』の今後の展開に期待しているファンの人たちも少なくないと思いますが?
『すばらしきこのせかい』は海外でもファンが多く、遊んだ方々からは高評価もいただいていて、海外では直接続編を頼まれたことも何度かあります。ただ過去の実績などもあり容易なことではないですが、スタッフ一同模索は続けていますので絶対ないとは言い切れません。
――最新映像の最後には、『KHIII』の続報が今冬にあるようですが?
『KHIII』の情報を期待されていた方には申し訳ないと思い、その一文だけ入れさせていただきましたが、今回はやはり発売月が発表された『KH2.8』に注目していただきたいということと、『KH2.8が重要なポジションの内容であることをお伝えしてから、『KH2.8』の発売に合わせて、改めて『KHIII』の新情報もお届けしたいと思っています。
今回の『KH2.8』の発表で『KHIII』も順調に開発が進んでいることはわかっていただけると思いますので、この冬を楽しみにしていてください。
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