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2016年6月30日(木)

『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』で綾野剛さんが気になるキャラとは?

文:電撃オンライン

 7月9日に全国ロードショーを控える『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』。本作は、9月30日に発売される全世界待望の大作RPG『ファイナルファンタジーXV』の物語の裏で起こっていた、ルシス王国での戦いを描く映像作品だ。

『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』

 本稿では、ニックス・ウリックを演じる綾野剛さんへのインタビューの模様をお届けする。

『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』
▲綾野剛さん。

――今回声優初挑戦ですが、普段の俳優業との難しさや楽しさなどといった違いを、どんなところに感じられましたか。

綾野:個人の主観で正直に言わせていただきますが、やはり自分のキャパでは声優をやるということに対して足りていません。今回の作品には山寺さんや数々の声優さんが出演されています。

 僕は役者を約13年近くやっていますが、それでも力が足りないと感じました。それは素直に認めなければいけないですし、声優という職業をプロとしてやっている方々とは、根本的に演技の質が違います。技術的な部分も含めて、もう上手というのを超えて、プロとしての凄みを感じました。

 ですから自分たちに何ができるのかというのは、まずそのキャパの違いを認めるところから始めさせていただいたというのをよく覚えています。努力は尽きませんが今自分にできることとして、事前にもっと何かできたことがあったんじゃないかとは思いました。

 せめて1カ月でもいいので、毎日声優としてのテクニカルな部分、声の出し方や表現方法の違いなどを特訓したかったなと。僕も忽那さんも役者をやっているぶん、「芝居をしたこともなく、声優を目指し始めた」くらいの方よりは、ある程度いろいろなことを想像できる“経験”があると思うのですが、それでもやはりプロの声優さんとは圧倒的な差があると正直感じました。

 1987年に『FFI』が登場したときと、今の『FF』の盛り上がり方は根本的に違うと思うんです。コアな人はずっと『FF』を知っていますが、今回僕や忽那さんが演じることの意義は「『FF』ってゲームがあるんだ、すごい世界があるんだ」といったことを、『FF』を知らない方に知っていただくことだと思っています。

 声優としては新参者としてのお仕事でしたが、山寺さんやほかの声優の方々の声はすでに入っていたので、そういったところで声から受ける情報を整理しつつ、現場の方々やいろいろな人たちからご意見をうかがって助けていただきました。

 それと僕たちは日本語吹き替え版ですから、英語だと抑えた芝居になっているものが、日本語だとある程度誇張していたりするんです。でもその誇張のなかでも表現を抑えたりとか、皆さんうまいんですよね。当たり前なんですが。だから自分たちが今できる最大の努力をして、そこに向かって行く姿勢だけは崩さないようにとは思っていました。

――体は動かさないけれど、汗だくになるくらい大変だったと?

綾野:事前に声優の方々の録られているときの動画を見ると、やはり皆さん声で肉体的なことも全部表現されてるんです。自分が役者として培った経験をどれほど声優の世界に生かせられるのか。

 役者としてできることはなんだろうという向き合い方をして、そこには真摯に向き合わなきゃいけないと思いました。ですから僕はアクションのシーンで、たとえば首を掴まれてるシーンとか、自分で首を掴んで顔をうっ血させないとできないんです。

 でもそんなことをしていればセリフは明瞭でなくなるし、CGの表情と自分の表情が違い過ぎてもよくない。だから、そうやって体を動かしていたので、録音部の方々はホントは「綾野さん動かないでください」って言いたかったんじゃないかなって(笑)。足を引きずるシーンも実際に引きずって、ももをたたきながらやっていたのを覚えています。

 それでも声だけで表現できてしまう人たちと差があるのなら、我々にできることはなんだろうとは正直考えていましたね。自分は画面だけのほうが感情を作りやすいかなと思って、照明をほぼ真っ暗にしてやったりしました。

 全部消してもらって、いざ始めようとしたら台本がまったく読めなくって、そりゃそうだよなって(笑)。少しでもやりやすいように、いろいろ実験はしてみましたね。僕たち役者が初めての現場に行くときは、メイクや髪型を整えて、役の衣装を着るんです。

 そのあと美術セットとかロケセットとか入ると、必ず自分たちの芝居場になるところを見て回るんです。その芝居場が今回はTV画面の中にあるので、その空間に限りなく近づけていくというと、こう入り込んでいくしかなくて、その能力としては役者という職業がプラスになっていると思います。

 役者だからできる入り込み方という意味で。だから我々ができることをただただ全力でやらせていただいたという感じです。

『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』

――以前“恩返し”という言葉を使っていましたが?

綾野:“恩返し”という言葉は少し語弊があるかもしれません。僕がもしただの『FF』ファンだったら「お前恩返しのつもりだったら声優さんに任せろよ」って言うと思うんです。だからそういう意味での“恩返し”とはベクトルが違うんですよね。

 単純に僕も『FF』のいちファンとして、この作品を1人でも多くの人に知ってもらいたいんです。僕より下の世代、たとえば忽那さんの世代やそれより下の世代、今の10代の子たちがどれほど『FF』を認知しているかということです。

 スクウェアからスクウェア・エニックスになって、その当時スクウェアで作っていた『SAGA』とか『聖剣伝説』とか素晴らしい作品がいっぱい出てきていたなかで、それでも大人気だった『FF』という作品。

 じゃあ今はあの頃と同じ強度の波をどれほど持続しているのかと。我々が演じたことによって『FF』という作品を1人でも多くの方に知ってもらいたい。それが少しでも『FF』への“恩返し”になるならと。自分が若い頃に『FF』で受けたストーリーだとかの影響が絶対に今の芝居や人生観に影響しているはずなんです。

 とくに男は単純ですし、その物語の登場人物に恋をしますし。だから何らかしらの形で『FF』にかかわり、作品を知ってくれる人が少しでも増えてもらえればという意味での“恩返し”だと捉えていただければと思います。

――これから初めて『FF』に触れる方に向けて、シリーズを通しての魅力を教えてください

綾野:“光と闇”ですね、やっぱり。常にそれは最大のテーマですから。『FF』の初代プロデューサー・坂口さんがそれを作り、植松さんが音楽を担当した“プレリュード”という曲も毎回使われている。そして、最後の物語“ファイナルファンタジー”という題名で、作品を打ち出し続けているというところに、まったくブレない『FF』の素晴らしさがあると思っています。

 ブレないからこそ、新しい人たちを取り込んでいく作業が非常に難しいわけです。今の時代にそぐわない部分もあると思いますが、それを諦めない姿勢がまた新しい改革につながるのではないかなと、個人的には思っています。

――キャラクターを見たときの第一印象と、命を吹き込んだあとのキャラが自分にとってどんな存在になったかを教えてください。

綾野:第一印象はキャラクターを見た瞬間、何のブレもなく『FF』だなと思いました。『FF』特有の世界観と言いますか、やや枯れて何考えてるかわからない腹黒いやつは大体ハットかぶっていたりとか。現代の洋服を上手く取り入れていたりとか、相変わらずまったくブレていないなと。

『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』
▲綾野剛さん演じるニックス。

 そもそも天野さんがイメージイラストを担当されていますが、そこから、このCGになったときに『FF』の重厚さがより増していて、喜びを感じました。声を入れて思ったことはいろいろあります。その瞬間ごとは常に燃え上がっていましたが、自分が声優という職業に対しての非常に底辺の位置にいるんだなと思い知り、いろいろな方の声を聞いて勉強させていただきながら、ニックス・ウリックという人間は作られていったなと思っています。

 今後こういう機会があるかわからないですし、もしまたこういう機会があったら、本当に山寺さんのところに修行に行きたいです。やっぱり山寺さんの声が強烈に残ってて、セリフの言い回しとかも何回聞いても、自分で耳コピできないくらいなんです。あまりにレベルが違い過ぎて。でも素直に楽しかったです。

 怖さや恐怖もたくさんありましたけど、それに立ち向かってる感じがこの世界観にピッタリで、精神状態が怖い、恐怖だ、いつやられるか、どうしたらいいかわからない、でもただただその瞬間は燃え上がらなきゃいけない。

 向かって行くしかない、もう振り返れない、もう突き進むしかない、走ろう! ……この状況とすごく似ていたので、それはプラスになりました。

――これまでに演じた役とニックスの似ているところや、ご自身の分身に感じる部分はありますか?

綾野:いや、こんなキャラクターは今まで演じたことないです。分身でもなくて完全な他人です。これはどの役に対してもそうなんでが、ちゃんと他人として存在しているので、でも誰よりも僕自身が役を愛せなければならないから、一番愛おしい存在であるけれど、まったく僕ではないというところです。

――綾野さんとスタッフ陣で作り上げてきたニックスの魅力を教えてください。

綾野:自分の過去ときちんと向き合っているというところですね。彼は自分が“王の剣”としてできることと、やりたいことのジレンマを抱えているんです。故郷のために何もできないことや、力を出し切れていない不甲斐なさなど。フラストレーションがたまって鬱屈している状態から、人が解き放たれる瞬間までが非常に魅力的なキャラクターだと思います。

――『KINGSGLAIVE』の登場キャラクターのなかで気になった人物がいれば教えてください。

綾野:山寺さんが演じられた“ドラットー”というキャラクターですね。山寺さんがお声を出しているというのもありますけど、この『KINGSGLAIVE』という作品のなかでドラットーという人物は非常に多くのキーを持っているんです。どのカギを開けるかによって、この作品の見方がどんどん変わってくるので、ある意味で一番注目して見ていてほしいキャラだと思います。

『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』
▲山寺宏一さん演じるドラットー。

 ドラットーの正義と我々“王の剣”の正義の対比みたいなものは、“ファイナルファンタジー”の“光と闇”に非常に近いんじゃないかなと思いました。将軍ではあるんですけど1人1人の正義は違うんです。なかでもドラットーの正義は非常に秀逸な正義を持たれているので、それがどう作品に影響するのかは非常に注目するべきポイントだと思います。

――ゲームの『FFXV』の印象を教えてください。また、実際に体験版などをプレイされていましたら感想も教えていただければと。

綾野:体験させていただいたんですが、驚き過ぎて、もうどのボタンを押せばいいのかなって状態でした(笑)。技の繰り出し方や召喚獣の大きさとか。自分の主観がリアルになってるじゃないですか? 昔の『FF』だと上から見下ろす俯瞰視点が多かったので、今はもう情報量がすごいんですよ。

 『DQ』なら戦闘のときに敵が待ってくれるじゃないですか。でも『FF』はハナから待ってくれない。ものすごいストイックなゲームに仕上がってる印象でした。でもそのストイックのなかに物語に引き込まれる映像美だとか、スクウェア・エニックスさんの情熱みたいなものが反映されてると思いました。

 操作方法は取説やヘルプで教えてもらえるので、ぜひ前のめりにやってもらいたいなと。僕自身もやろうと思ってます。仕事がおろそかになりそうです。ナンバリングは前作から6年ぶりなんですよね。僕はやっぱりナンバリングが好きなんです。

――ちなみに歴代ナンバリングのなかではどれが一番お好きですか?

綾野:僕は『III→IV→V→VI→I→II→VII』という順にプレイしました。どれもおもしろいのですが、物語も含めて自分がものすごく影響を受けたのは『IV、VI、VII』ですね。

 やっぱりインパクトも大きかったし、どんどんこう非現実に引っ張られてるんです。じゃあ現実世界に置き換えてものすごく違うかといったらそうでもなくて、誰かを守るために自分の命をいとわないという姿勢だとか、守るものがあるから強くなれるという姿勢だとか。

 とくに『FFVII』は物語のなかでも貧富の差が激しかったので、現代に置き換えるとこの地球上で起こっていることをすごく相対的に捉えていたと思うんです。とくにセフィロスの存在は大きかったですね。セフィロスにはセフィロスの正義がありますし、クラウドにはクラウドの正義があります。どちらの正義が正しいか誰も判断できない、そんなふうに考えさせられるRPGでしたね。

――『KINGSGLAIVE』は綾野さんにとってどんな作品になりましたか?

綾野:素直に『FF』という世界観にかかわれたということが非常に光栄でしたし、今でもその経験は自分のなかに生きているので、感謝の極みでしかないです。

 あとは今の自分が過去の自分に想いを馳せることもなく、もう未来を見続けて走っていくことしかできない状態になっていたとわかりました。1回立ち止まってゆっくり後ろを振り返るということも、とても豊かなことなんだなと。

 『FF』にかかわって改めてその頃の当時を思い出したりすると、昔の経験がじつは芝居の糧になったりしていました。いろいろなことを呼び起こさせてくれて、当時『FF』のゲームをやりながら感じていたキラキラした感覚だとか、思春期だからこそ考える“光と闇”の対比だとかを思い出させてくれました。

 やっぱりいつまで経っても『FF』は『FF』で圧倒的なんだなって思わせてくれたのは、イチファンとしても本当にうれしかったです。

――最後にこの映画を期待して待っている方々へ向けてのメッセージをお願いします。

綾野:この映画はゲームのエピソード0でもあり、ゲームのなかでリンクしている部分もあり、ゲームのその先の未来と言っても過言ではない作品になっています。『FF』を昔遊んだ30代40代で、今は『FF』から少し離れている人たちが、この作品をきっかけに当時のことを思い返してほしいなと思います。

 そのとき、自分の魅力的だった部分をもう1回再発見できるんじゃないかって。満を持して6年ぶりに登場するナンバリングの『FFXV』と同じ年に、この作品を出せるというのはものすごく有意義なことだと思っています。

 僕もイチファンとして、皆さんと共に協力して『FF』を盛り上げていけたらいいなというプロジェクトの1つに過ぎないので、そのプロジェクトに皆さまも協力していただいて、その2カ月後に発売されるであろう『FFXV』をさらに盛り上げていきましょう。

『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』

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