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2016年7月8日(金)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“宴タメのススメ”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 ここでは、電撃PS Vol.616(2016年6月9日発売号)のコラムを全文掲載!

第85回:宴タメのススメ

 読者の皆さんはまだ未成年の方が多い気がしますが、今回は“お酒”の話を書きたいと思います。僕はお酒が大好きで、ほぼ毎日飲んでいます。飲まないのは、年に3日くらい。もちろんお店でも飲むし、家でも飲む。休みの日などは、朝起きたらとりあえずビールをプシュッ! いや~、たまりません。え、飲まない3日間はなにをやっているかって? 二日酔いで寝込んでいるに決まっているじゃありませんか……。

 ご覧になっている方も多いと思いますが、BS TBSに“酒場放浪記”という番組があります。僕はこの番組、自慢じゃないですが始まったころから毎回録画していて、その後何度も見直すほど大好きなのです。

 なんといっても、酒場詩人である吉田類さんがいい。お酒を愛し、肴を愛し、人を愛し、ということが画面いっぱいに伝わってきて、見ていると一緒に飲んでいる気持ちになってきます。実際、Twitterでは、月曜21時の放送時間をもじって、“#俺たちの月9”というハッシュタグが自発的に立ち上がっていて、ツイートを追いつつ家に居ながらにして飲む、という現象すら起こっています。

 最近はこの“酒場放浪記”の人気にあやかって、他の局でも酒場をめぐる番組が目白押しになってきました。所ジョージさん司会の“一億人の大質問!? 笑ってコラえて!”では、朝までハシゴ酒をするコーナーが大人気。飲み手として登場していたモデルの佐藤栞里さんは、今やこの番組のMCに抜擢されています。ダウンタウンのお2人が坂上忍さんとゲストと一緒に酒場をハシゴする“ダウンタウンなう”も、ゲストの魅力と相まって、毎回大きな反響を呼んでいます。

 また、ドラマの世界でもお酒をテーマにした作品が多くなってきました。武田梨奈さん演じるOLさんが、仕事終わりに可愛く1人で飲む“ワカコ酒”。戸次重幸さん扮する冴えない広告営業マンが、我慢ならず仕事の途中で見つけた銭湯についつい入ってしまい、風呂上がりの1杯を楽しんでしまう“昼のセント酒”。などなど、改めて書き出してみてもたくさんのお酒を扱った作品がテンコ盛りなんですよね。

 PlayStation CAMP! を運営していたころは、本当によく飲みに行っていました。PS CAMP! は、クリエイターを全国から募集し、その合格者たちとゲームを作るという施策だったので、当然、集まった人たちは年齢も違えば育った文化も違う。チーム応募もいれば個人応募もいて、考え方や趣味嗜好もバラバラだったわけです。

 で、手っ取り早く仲良くなろうと思った僕は、くじ引きでメンバーを5人決め、そこに僕が参加して飲む“シャッフル飲み会”というものを定期的に開催しました。これがあとからメンバーに聞くと好評だったようで、酒のパワーもあってか心理的な距離も縮まり、実際、チーム誕生の礎になったりもしたのです。このシャッフル飲み会、参加者はゲームを作りたくてオーディションまで受けている連中です。もちろんキミたち、飲みながら盛り上がる簡単なゲームくらい考えつくよね? という僕のムチャ振りのもと、即興ゲームみたいなことを毎回やっていて、これがめっぽう面白かった。

 即興ゲームといっても、みんな基本的には酔っぱらっているので、複雑なルールなんて理解できない。まず僕が最初にやったのは、“アメリカ50州を順番に言っていく”というだけのものでした。まあ、山手線ゲームみたいなものなのですが、ちらほら全然出てこない州があったりして、思いのほか盛り上がったのです。

 誰もが同じレベルで知っていて、それなりに量があるものを挙げていく、という点が、このゲームのキモ。他に同じようなテーマってないかな? ということで、次に47都道府県でやってみた。これはさすがにみんなわかるので、酔っぱらいがただただ順番に都道府県を言っていく、という不思議な時間が流れました。で、次に東京23区を言い合ったのですが、これがバランスが悪かった。

 まず、地方出身者と関東近県に住んでいた人で、ベースの“知っている度合”が違うため、参加者にとってイコールコンディションのゲームにならなかったのです。加えて、解答の量がそれまでの約半分と少ない。知っている人だけが答えるという偏りが発生し、あっという間に終わってしまったのです。「な、こんなゲームですらゲームバランスが大事ってわかるだろ?」という僕のセリフはみんなには届かず、さっさと別の話題に移っていったのを覚えています。

 回を重ねるごとに数々の“飲みゲー”が生まれました。そんな宝物のような空間だったのですが、飲みの場には大抵、お酒が飲めない人がいたりもします。「お酒飲めないのになんで来てくれたの?」と聞くと、必ず「この場が好きなんです」と言ってくれる。なんていいヤツだ、まあ一杯! と注ごうとして、あ、飲めないんだっけ、ということがあったりなかったり。というわけで僕は、ひたすら楽しい飲みの席のことを、宴会エンタテインメント、通称、“宴タメ”と呼んでいるのでした。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントJAPANスタジオエグゼクティブ・プロデューサー。PS CAMP! にて『勇なま。』シリーズ、『TOKYO JUNGLE』などを手掛ける。現在『トゥモローチルドレン』『NewみんなのGOLF』を絶賛開発中。最新作、『Bloodborne The Old Hunters』好調発売中!

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.617』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2016年6月23日
■定価:694円+税
 
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