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2016年8月25日(木)

『WoT』VRコンテンツ制作者にインタビュー。マークI戦車や『WoWs』向け動画の話も

文:あべくん

 現地時間の8月17~21日にかけて、ドイツ・ケルンで開催中の国際ゲーム産業見本市“gamescom 2016”。同会場にて、WargamingのPS4/Xbox One/Xbox 360/PC用ソフト『World of Tanks』のVR動画に関するインタビューを実施しました。

 インタビューに応えていただいたのは、Wargamingのグローバルマーケティングプロジェクトチームのリーダーを務めるAlexander Bobko氏です。

『World of Tanks』
▲Alexander Bobko氏。

●動画:WAR KNOWS NO NATION. 360° Panoramic Video

――『World of Tanks』のVRコンテンツを制作したきっかけは何だったのでしょう?

 VRは成長中であり、非常に大きな注目を集めているコンテンツです。こうしたコンテンツを制作することで、常に先を見据え、遅れを取らないように、というのが制作の大きなきっかけの1つではあります。

 私たちは他社様と違い、VRのためだけのコンテンツというものは所持しておりません。ただ、何もしないという訳ではなく、VRを使用したパノラマビューの映像やVRモードを使ったゲーム内のオブサーバーモードの制作に取り組んでおりました。

――VR動画を拝見しましたが、実写とゲーム内の映像、それぞれを同時に楽しめるのがユニークでした。

 VR自体新しい技術ですので、見せ方については試行錯誤をしてきました。制作初期はカメラを6台つなげて撮影したり、12台のカメラを円状につないで360度撮れるようにするなど、様々なテストを行いました。ただ、撮れるのはあくまで、その場に存在しているものだけなんです。

 このVRコンテンツに登場している戦車は、すでに存在しないものやレプリカしかないもの、動かないものが非常に多いです。それを再現するうえでCGを使いました。ただ、CGは作るのに非常に時間とお金がかかります。

 ですが、ゲーム内コンテンツであれば、すでにあるリソースで作れてしまううえ、360度にも対応している。ですので、本来再現できないものはCGで、それに実写を組み合わせてこのような形に仕上げました。

――今回視聴できたコンテンツには、マークI戦車が登場しましたね。

 観ていただいたマークI戦車については、まだどのような形になるかは決まっていませんが、ゲーム内でもプレイヤー様が触れる形で導入する予定です。

 ただ、それぞれのタイトルごとで異なる形になると思いますので、それぞれのプラットフォームでの発表を楽しみにしていただければと思います。VRについては、皆さまが楽しめる形に整えることができたら導入したいと考えています。

――日本のユーザーには、こうしたVRコンテンツをどのように楽しんでほしいですか?

 マークI戦車ですが、これは世界に1台しか現存しておらず、稼働もしません。この戦車を日本の方々に観ていただくのは非常に難しい。しかしVRでしたら、自分がまるで目の前で観ているかのような経験をしていただけるので、ぜひご覧いただきたいです。

『World of Tanks』
▲マークI戦車は、1916年に世界初の実戦投入された車輌。

――ちなみに日本では現在、『ガールズ&パンツァー』というアニメが流行っています。今後、アニメーションとVRコンテンツとの連動はあるのでしょうか。

 将来的には十分にありえると思います。VRは、視聴した人が実際に旅行しているような気持ちになったりアニメの世界に入ったり、そういった特別な体験を得られるもの。将来的には、そういったジャンルにも取り組んでいきたいですね。

 最近のアニメは手描きでなく3Dモデルを使用する作品も多くなっていますので、一から作るのではなく、すでにあるものでコンテンツを作ることもできますし。

――ちなみに、VR動画を観た方の反応はいかがでしたか?

 映像コンテンツを出したのはおよそ1年半前なのですが、当初はあまりいい評価ではなかったですね。というのも皆さん、このコンテンツをどのように楽しめばよいのかわからないようでした。VR技術自体、当時はまだ知られていませんでしたから。

 ただ、最近になってVRがどういったものかを皆さんに理解していただけるようになった。最近登場したコンテンツは、視聴時間もどんどん伸びてきています。ですので、非常にポジティブな印象です。

――VRという技術そのものについては、どういった印象をお持ちでしょうか?

 可能性だけでいうと非常に幅広いと思います。ただ私たちはゲーム会社ですので、ゲーム的な観点から言わせてもらうと、eスポーツなどでも使用できるのではないかと考えています。

 対戦をTVやネットの配信だけで観るのではなく、VRギアを付けることによって、まるでゲームの中に入って観戦できるような、そういった仕組みも考えています。

 私たちは毎年4月に大きな世界大会を行っているのですが、その場で試験的に導入したのが、先ほど述べたオブサーバーモードでした。これは、対戦を視聴している方が自由に戦場を見ることができる機能です。ゲームを画面ごしだけでなく、その場にいるような気持ちで観戦できるといったことを、今後も発展させていければいいなと思います。

 実際にオブサーバーモードを体験された方も「革新的だった」「未来的ですばらしい」といったポジティブなフィードバックを与えてくださいました。

――『World of Warships』のVRコンテンツにも期待しています。

 もちろん、こちらのプロジェクトで進めています。来年の2月ころには、実際の軍艦に入って中を観て回れるものを公開したいと考えておりますのでご期待ください。

――日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

 今年は戦車100周年としてお祝いしていますが、私たち自身は戦車を兵器としては見ていません。あくまで技術の革新や芸術の一作品のように考えています。

 ですので、戦車を兵器としてではなく、歴史上の大事な場面の1つや技術の発展形として見ていただき、ゲームやVRを通して歴史の勉強に役立ててほしいですね。

(C) Wargaming.net

データ

▼『World of Tanks』
■メーカー:Wargaming.net
■対応端末:PS4
■ジャンル:アクション
■配信日:2016年1月20日
■価格:基本無料/アイテム課金

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