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2016年9月16日(金)

SIEJAプレジデントの盛田厚氏にインタビュー。一家に一台PlayStationを目指し“ゲームは面白い”を普及させる【TGS2016】

文:電撃オンライン

 PS4 Proの発表や新型PS4の発売で沸くなか始まった東京ゲームショウ2016。各ブースでは新作タイトルやPS VRの体験に行列ができるなど、大きな盛り上がりを見せている。今回、会場近くにてSCEJAプレジデントの盛田厚氏にインタビューを実施。注目のPS4 ProやPS VR、PlayStationの展開についてお話をうかがった。

『PlayStation』

──ついにPlayStation 4 Pro(PS4 Pro)と新型PlayStation 4が発表されました。同タイミングで2つの選択肢をユーザーのみなさんに提示したことになりますが、これは意図的なものなのでしょうか?

 はい。意図的に出したものです。

──PS4 Proと新型PS4、それぞれどのようなプレイヤー(ターゲット)に向けたものと考えていますか? 

『PlayStation』
▲11月10日発売のPS4 Pro。

 まずはPS4のユーザー層を拡大していくということが戦略の根本で、そのためにチャレンジしたことが2つあります。

 1つは地域によって違うのですが、日本市場でいくとタイトルがそろっていないと言われていた時期があり、タイトルをそろえていった活動を経て、ようやく昨年頃からタイトルがそろってきました。そして、我々が今年にそろえなければいけないと思ったもの、ユーザーさんが待っていたタイトルが出そろったのがこのタイミングなのです。

 ですので、そこに向けて今度はコンソールのほうでもチャレンジをしたく、それが実行できたのがちょうど今日の東京ゲームショウ開催初日にできました。私も今すぐお店に行きたくて仕方がないです(笑)。そこで、本当に待っていた人、あるいはちょっと考えていた人が一気に買ってくれるという拡大を狙うのが、このPS4の新型です。

 もう一方で、今まで我々が行ってこなかったことですが、PlayStationのライフサイクルは長く、最初に先進のテクノロジーを入れて、7年から10年ぐらいにかけて売っていくということを行っていました。

 しかし、スマートフォンやPCが1年ごとにグレードアップしていく時の流れのなかで、我々PlayStationも中間地点あたりで1つハイエンドのモデルを出すというチャレンジをすると決めました。これは上流ユーザー、あるいはハイエンドでPCがグレードアップしていくのを見ながらPCゲームに目が向いたりしている人たちを、もう一度PlayStationにつなぎ止める。あるいは「こういうモデルだったら買ってみたい」と思ってくださるように、上層を拡大することを目指したのがこのPS4 Proです。

──新型PS4は日本的にいいタイミングの9月に発売が合わせられましたが、日本主導で新型PS4を発表したのですか?

『PlayStation』
▲9月15日から販売が開始された新型PS4。

 グローバルで判断しているので、必ずしも日本主導というわけではありません。しかし私自身は日本とアジアの市場を考えて、このタイミングというのは非常に重要だと思っていたので、アンディ(アンドリュー・ハウス氏)が最終的に決定してくれたと思っています。

──現状ではPS4 Proのスペックに対応するTVが少なく、かつ高価格です。PS4 Proはどのくらい先を見据えたスペックで設計されたのでしょうか?

 そういう意味でいうと2つあるのですが、1つはスペックがPCのようにどんどん上がっていくことを(リアルタイムで)見ているユーザーに対して、ハイクオリティ、あるいはハイエンドのモデルを提供するという意味で、現時点のユーザーに対して提供しています。

 もう1つは4Kのテレビがこれから普及していく世の中に対して、4K対応のゲームを出していきたいという希望もあります。そこは将来を見据えています。ただ、このPS4 Proは4Kのテレビではなくともスケールアップした映像を楽しむことができるので、必ずしも将来まで待ってくださいというわけではありません。でも、もっと4Kテレビが普及していくだろうと見据えて出したというのはありますね。

──ハードウェアの高機能化、PS VRのような独自技術の導入など、PlayStation市場はかなりコアな市場になってきている印象があります。これからのPlayStation市場をどのようにしていきたいとお考えですか?

 目指しているところは「一家に一台PlayStation」です。ですので、コア層だけでなく全員がユーザーターゲットだと思っています。口で言うのは簡単で、やるのはすごくチャレンジだとは思いますが、冗談で言っているわけではありません。

 日本市場も欧米市場も一緒だとは思うのですが、昔に子どもたちがすごくゲームをやっていた時代があって、その子どもたちが大人になって子どもができたときに、二通りのことになると思うんです。1つは自分の子どもには勉強しなさいとゲームを制限する。もう1つは本当に仕事が忙しくなってゲームをする暇がなくなったり、家族を持って奥さんがゲームに対して嫌悪感を抱いて止めざるを得なくなっているかだと思います。

 そんな人たちに対して「ゲームは面白い」ということを普及しようとしているのが、我々が現在行っているキャンペーンなんですけれども、それによって、まずもう1度、みんなにゲームをやってもらう活動をしないといけないと思っています。

 それは今年の年末商戦以降で、かなり達成できるのではないかと思っています。あとは、いかにそこを広げていくかというところですが、このキャンペーンを粘り強く続けていきたいなと思います。「できないことが、できるって、最高だ。」のキャンペーンを始めるときにみんなで誓い合ったことですが、自分も含めて1年で結果が出ないと「上手くいかなかったね」と言いたくなるが、やるからにはやり続けよう。最低3年間はやって、もう一度PlayStationというブランドを訴求しよう、と。

●動画:“できないことが、できるって、最高だ。2016/We can do everything”篇

 PlayStationというブランドがあまりにも定着したので、PlayStationを訴求することは必要ないのでは? と考えていたこともありました。でも、そうではなく、もう1回PlayStation、あるいはゲームという楽しみを普及していくことをやっていこうと決めたので、これは来年も継続していきます。この活動でゲームをやめていた人たちを取り込んで裾野を広げていくことは必ずやらなくてはいけないと思っています。

 もう1つその先を行くのがPS VRですが、PS VRがあることによってゲームをあまりやらない人が違うコンテンツだったら試してみる。PS VRだったら私もやってみたいから、ゲームをやりたいお父さんに「買ってもいいよ」と言ってくれる。PS4を買ってくれて、PS4が家にあれば子どもはゲームをやりはじめるし、家族でゲームをする流れになってくれればいいと思います。

『PlayStation』
▲10月13日発売のPS VR。

 PlayStationが展開できるノンゲームサービスがあって、ビデオサービスはPlayStationを通せばみんな見られるから、PlayStationが1台あれば充分だよねとなってくれればうれしいです。なんらかのチューナーつきのセットボックスというのは一家に1台あるので、それがPlayStationになることはありえない話ではなく、目指すところはそこを目指していきたいですし、PS VRはその可能性を高めるデバイスでありテクノロジーだと思っています。

──今おっしゃっていたPlayStationが目指すところは、そういう訴求をこれからされていくということですか?

 そうですね。ただ、それはPS VRというものがコンテンツとともに展開してくれると思います。我々が「これからのPlayStationはこういう時代だ」と言わなくても、PS VRのコンテンツでそういうものが創り出せると思っています。

 ただ、あくまでも私たちが行っているキャンペーンでやりたいことは、ゲームの楽しさをいかに訴求するかということです。そこを忘れたらPlayStationではなくなると思っています。もともとPS VRはゲームの大きなテクノロジーのイノベーションだと思っており、PS VRでは今までこういうゲーム体験ができたらいいなと思っていたことが実現できるので、そこは絶対にやっていかなければと思っています。

 それがまず第1弾で、それを訴求するためのテレビCMのキャンペーンであり、PlayStation祭です。みんなでやる! みんなで見る! とゲームをみんなに盛り上げていくことが第一ではありますね。それを行うためのツールとしてPS VRは価値があると思っていますし、PS VRの可能性は本当に広いものだと思っています。

『PlayStation』
▲PlayStation祭 2016秋のイメージビジュアル。

──PS VRは今までになかったハードウェアということで、とても興味はあるけど迷っていて様子見するお客様も多いと思います。今後プロモーション展開としてテレビCM以外にどんなプロモーションを予定されていますか?

 重ねてになりますが、PS VRは一家に一台あっても不思議ではないですし、そこがターゲットの市場だとは思っていますが、市場規模がどのぐらいかというと、ものすごく読みにくい。現在はとりあえず買おうという方でも、大変申し訳ないのですが予約ができない状況にあります。こういう盛り上がりはしばらく続くと思っています。

 そのような状況なので、今年はそれでも買おうと頑張って予約してくれた人たちが、実際に買って楽しかったと思ってくれることがすごく重要だと思っています。その人たちがうちにはあると自慢する。あるいはSNSなどに書き込んでくれることが一番のプロモーションだと思っているので、そこをいかに作り上げるかが重要だと考えています。

 本体はもちろんですが、コンテンツの楽しさのクオリティがすごく大事だと思っています。PS VRが楽しいものだと思ってくれれば、やり方は自然とできてくると思いますので、そこからのプロモーションが重要だと思っています。

──現状でPS VRの市場規模はどのぐらいだと思っていますか?

 現実問題として読みにくく、中期的な数字は想定しているのですが、読みとしてはあまり意味がなくて、むしろそれに近づけるためにどのぐらい努力をして、何をしていかなければいけない、どういうものを用意すればいいのかが重要だと思います。これについてさまざまな議論を交わしています。

──現在で市場を図るとすると、各法人に予約できたケースや、SIEさんが行っているプレミアムメールマガジンの登録者数などで公表できるものはありますか?

 公表できるものはありませんが、そこから図るのは難しいと思います。盛り上がったからとりあえず登録する人から、そこに気づいてないけど話題になっていることは知っていて興味がある人など、すごく幅広い層が存在するので。

 実際にイベントや店頭に体験しに来てくれる人たちを見ていると、最初はゲーム好きの人たちや、本当に特定のコンテンツ目当てで来てくれている人が多かったのですが、回を重ねるごとに全然ゲームをやったことがなさそうな人が来てくれたり、女性同士や家族で来てくれたりと、今までと違う層の人たちの体験が増えました。ゲーム人口だけでは図れない市場はあると思います。

──『マインクラフト』人気も手伝い、日本ではまだまだPlayStation Vita(PS Vita)に根強い人気があります。今回新色が追加されましたが、今後PS Vitaはどのような展開を考えていますか? 価格の改定やモデルチェンジなど検討されていることはありますか?

 PS Vitaはご存じのとおり、この2年間の活動で子どもたちにすごく広げることができたと思っています。あの活動があったからこそ、今回“キッズの星 プロジェクト”が必要だと思い、立ち上げられたところがあります。

 私が2年前に思っていた、子どもたちがゲームコンソール、あるいはコントローラーを持たなくなってしまった状況をとにかく危惧していたので、子どもたちの手にたくさんのPS Vitaが渡ったことはとてもうれしいですし、重要なことだと思っています。せっかく掴んだ手を絶対に離さないでいこうと思っていますね。

 これまで展開してきたキャラバンでのアンケートを集計すると『マインクラフト』を持っていない、PS Vitaも持っていないという人がけっこういます。理論上、まだ倍ぐらい売れる可能性がありますから、そこはプロモーションしていきたいですし、PS Vitaが子どもたちを含めて人の手にいきわたると、ライセンシーさんもタイトルを出しやすくなる環境が整いますから、まだPS Vitaは頑張っていきたいと思っていますし、すごく重要なプラットフォームだと思っています。

──ありがとうございました。

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