2016年9月26日(月)
【電撃PS】『サガ スカーレット グレイス』インタビュー! 河津秋敏氏&伊藤賢治氏が語る制作の裏側
スクウェア・エニックスから12月15日に発売予定のPS Vita用RPG『サガ スカーレット グレイス』。9月18日に行われた東京ゲームショウ2016最終日のステージイベントでは、『サガ』シリーズの生みの親・河津秋敏氏による実機プレイの解説などが行われ、これまで謎に包まれていたゲーム内容が明らかになりました。
ステージでは、声優の中村悠一さんによる司会のもと、本作のゲームデザイン/シナリオを担当した河津秋敏氏、プロデューサーの市川雅統氏、楽曲担当の伊藤賢治氏が登壇。3人のトークを交えて、本作のゲーム内容が細かく語られました。
そのステージ終了後、河津秋敏氏と伊藤賢治氏を直撃。ステージでは語り切れなかった『サガ スカーレット グレイス』の内容について、お話をうかがいました。発売が待ちきれないファンの方は、ぜひ、ご覧ください!
▲伊藤賢治氏(左)と河津秋敏氏(右)。文中は敬称略。 |
すべての戦闘がボス戦!? 1戦ごとにじっくり戦う戦闘バランス
──発売日の発表と初公開となる実機プレイということで、おそらく多くのファンが驚いたと思います。伊藤賢治(イトケン)さんも、実際に映像をご覧になったのは初めてとのことでしたか?
伊藤:ほぼ、初めてですね。だから、イメージとしては戦闘曲として作っていたものでも「あ、ここの中ボスで使ったのか!」といった驚きがありました。
河津:イトケンにひた隠しにしてきたつもりではないのですが……。ある意味、Appleの発表みたいなものですよ(笑)。ステージで実機をお見せしましたが、あとは最後のバグ取りという段階を残すのみで、何かよっぽどのことがない限りは、12月15日の発売日に出せると思っています。
──『サガ』らしく、ほかのゲームにはない内容だとは予想していましたが、実際に見ると思っていた以上に斬新で驚きました。
河津:そんなことはありませんよ(笑)。触ってみると、意外と尖ってないんです。RPGとして普通に遊べると思います。
──これまでにはない新しいシステムも公開されていましたが、とくに“連撃発動”という演出が気になりました。これは、シリーズでおなじみの“連携”に代わるシステムなのでしょうか?
河津:代わりというわけではありませんが、開発初期の段階で「今までの“連携”ではないものを作りましょう」という話がありました。いろいろと模索した結果、新しい要素として“連撃”を採用しています。
実際にやってみたら“連撃”を狙って発動していくのが意外とおもしろくて、バトルを繰り返しても飽きずに楽しめる要素になったと思っています。“敵も味方もお互いの手が全部わかっている状態で、どうやって戦うのか”というおもしろさがあり、コマンド式のRPGに向いた形のシステムになったのではないでしょうか。
──なるほど。ステージイベントでお話しされていた内容からすると、今回の戦闘はザコ戦が存在せず、1戦1戦がボス戦のような考え方だという印象を受けました。実際に、1戦ごとの戦闘が長めで、ガッツリ遊ぶものになっているのでしょうか?
河津:そうです。PS Vitaで作っているとどうしてもロードが長くなってしまうのですが、そこはある程度はしょうがないと考えました。それなら逆に、戦闘が始まったらじっくり戦ってもらおうというバランス感で作っています。ですから、戦闘の重量感をああいった形で調整しました。じつは、ステージで見せた戦闘は割と短いほうなんですよ。敵によっては、もっと長い戦いになることもあります。
──そう聞くと、今回の戦闘はこれまで以上に補助系の術などもしっかり使わないと厳しそうで、さらに手ごたえがあるものになりそうだと想像できます。
河津:はい。あらかじめ準備を整えたりですとか、相手にじわじわ効いてくる攻撃をしたりですとか、相手の防御力をまめにダウンさせたりといった、いろいろなことを試して、考えて、戦っていく戦闘になっています。
戦闘準備は、最初のターンが始まる前だけで途中のターンではできませんが、最初にパーティ編成や陣形。装備など、いろいろな物を変更できます。まず、事前準備をしてから戦う感じですね。
──戦闘だけではなく、今回はマップを移動するシステムも新しくなっていて、建物がピョコっと飛び出してくる演出が印象的でした。
河津:じつは、2Dでマップを作ろうとすると、みんな飛び出す絵本のようにパタパタと建物が出てくる表現をやろうとするんですよ。ただ、飛び出すだけのゲームはいっぱいあるので、それだけだとゲームとしては成立しません。そこをどうゲームにとして落とし込んでいくかを考えていました。
──TGSのステージで見ただけでも、1つのエリアにかなり多くのスポットがあるように見えました。今回はダンジョンが存在しないとのことですが、その代わりに訪れるスポットがたくさんあるということですか?
河津:設計するうえでオブジェクトとオブジェクトの距離感というのを考えていて、常に“隣に何かのスポットがあるのが見えている”という状態を作っています。「あ、何か新しい物が出てきた」となるように作っていくうちに、広さに対して、どれくらいのスポットがあるか決まっていったんです。今回見ていただいたエリアはそれほど広くないエリアなのですが、わりと密度が薄い場所になっているんですよ。もっとギュッとスポットが詰まったところがあるエリアもあります。
──スポットはかなり多そうですね。もしかして、選んだ主人公によって出てくるスポットの位置が変わるとか……?
河津:それはありません。基本的には固定されたロケーションが存在しています。あとは、イベントに応じて出てくる物が変わる形ですね。たとえば、ステージイベントでは大きな虫のようなボスが出ていましたが、あのボスが出てくる主人公もいれば、いっさい出てこない主人公もいます。
──音楽を聞いた瞬間、すごく『ロマサガ』の系譜を感じられたのも、ファンにはうれしいところだったかと思います。
伊藤:ある意味、変わっていないとも言えますが(笑)。流れていたのは戦闘準備の楽曲で、戦闘が始まるとレオナルドやウルピナといった、それぞれの主人公ごとに用意されたバトル曲になります。
実際に曲が戦闘に組み込まれているのを見たのは初めてですが、すごいハマってると思いましたね。それが逆にくやしいんですよ。こっちが詳しくはわからないで書いているのに、できてきたものはしっかりハマっている。これが河津マジックです(笑)。
河津:ウルピナの曲は最後になってしまっただけあって、すごくよい曲なのですが、レオナルドも苦労して作った曲なので思い入れがあります。ステージでは「ヤンキーが好きそうな曲」というオーダーをしたと言いましたが、イトケンに頼んだ時は「浜崎あゆみや西野カナみたいな感じの曲にして」という具体的なオーダーをしたんですよ(笑)。
伊藤:「ヤンキーが好きそうな曲ってなんだろう?」というところから始まりましたね。西野カナさんみたいな曲と言われて、はてさて、どの曲から聞こうかみたいな感じでした(笑)。
──楽曲制作自体はひと通り終わられたと思いますが、最終的に収録曲は何曲くらいになるのでしょうか?
伊藤:全部で40曲前後です。
河津:じつは今回、イトケンにわざと画面を見せないで作ってもらおうと思ったわけではないんですよ。単純に、イトケンが見るヒマもなかったくらい忙しかっただけなんです。
伊藤:個人的には作る前に知りたいという部分と、知らなくても自分のイメージでどこまで突き進めるのかという部分がありました。なので、画面を見たいかどうかは半々でしたね。
──お互いの信頼関係があるから成り立ってるところですね。
河津:そうですね。最終的に曲ができあがってしまえば問題ないので、まったく気にしていません。
──音楽と言えば“サガオーケストラ2016”の開催についても触れられていました。実際、今どのような状況なんでしょう?
伊藤:本当にまだ楽曲も決まっていないので、何をやるんでしょうね(笑)。
河津:曲は、これから選定するところです。現実にはオーケストラだと演奏できないような曲もあるので、演奏用の譜面に起こし直さなきゃいけないんだと思います。
伊藤:オーケストラが決まっていて、場所も日程も決まっている。普通なら決まる順序が逆なんですよね(笑)。
──最後にひとことずつメッセージをお願いします。
伊藤:今回のステージイベントは、司会をしていた中村悠一さんファンの方も多くいらっしゃったと思います。そうして来られた『サガ』を知らない方々も、映像が流れ始めると注目していただけたのがうれしかったですね。こうした広がりも期待したいところです。
河津:TGSのステージを見てくださった方も、実際に来てくださった方も、本当にありがとうございます。発売日までもう少しです。もうちょっとがんばりますので、よろしくおねがいします。
※画面は全て開発中のものです。
(C)2016 SQUARE ENIX CO.,LTD.All Rights Reserced.ILLUSTRATION:TOMOMI KOBAYASHI