2016年9月23日(金)
『サクラ大戦』×『チェンクロ』クリエイター対談。あのT隊長と松永ディレクターが熱く語り合う
セガゲームスのiOS/Android用RPG『チェインクロニクル ~絆の新大陸~(チェンクロ)』において、9月27日15:00より『サクラ大戦』コラボの後編が開催されます。
このコラボは、8月23日~9月6日にかけて開催されていた『サクラ大戦』コラボ 前編に続くもので、前編ではSRアルカナだった神崎すみれ、アイリス、李紅蘭、桐島カンナのSSRアルカナが追加されます。(詳しいコラボ記事はコチラを参照)
前回のコラボでは、大神一郎、真宮寺さくら、マリア・タチバナ、ソレッタ・織姫、レニの5人のSSRが登場しており、これで帝国華撃団が『チェンクロ』に勢ぞろいということになります。
前編では義勇軍が『サクラ大戦』の舞台である銀座に飛ばされてしまうという、『チェンクロ』コラボとしては珍しいパターンが話題になりましたが、後編はその後日談ということでどのような物語が展開するのか期待が高まります。
この記事では、『サクラ大戦』シリーズチーフディレクターであるT隊長こと寺田貴治さんと、『チェンクロ』シリーズ総合ディレクターの松永純さんの対談をお届け。おふたりの意外な接点から、熱いゲーム&キャラクター論まで、今回のコラボの魅力とあわせてお伝えします(※インタビュー中は敬称略)。
▲『サクラ大戦』シリーズチーフディレクターの寺田貴治さん(写真左)と『チェンクロ』シリーズ総合ディレクターの松永純さん(写真右)。 |
松永さんと寺田さんの関係、その出会いとは?
――まずは『チェンクロ』プレイヤーに向けて、寺田さんをご紹介いただきたいのですが、松永さんからお願いできますか?
松永:寺田さんは、「T隊長」としてファンから親しまれている『サクラ大戦』を代表する開発者で、ずっと『サクラ大戦』シリーズのプランナー・ディレクターを務めています。個人的に『サクラ大戦3』の“ARMS”という戦闘システムがすごく好きなんですが、それも寺田さんがゲームデザインされていて、そうやって開発の要をずっと務めている方なんです。
寺田:そうですね。僕は『サクラ大戦2』から参加させてもらったんですけど、『サクラ大戦3』ではプランニングリーダーとして入って、そのままディレクターになって、最終的にはチーフディレクターとなって今に至る、という感じです。
――おふたりの接点というのは、今回のコラボ以前からあったのでしょうか?
寺田:同じ部署だったんですよ。僕が新入社員の原案書を見たりして指導する役をしていた時があったんです。その時に松永の書いた原案を見て、いろいろと話したりした間柄です。
松永:僕がセガに入った時に、最初にプランナーとして指導してくださった指導員のリーダーが寺田さんだったんです。企画書の書き方の手ほどきとかをしてもらって。
――それは「師弟関係」と呼んでも差し支えないご関係ですね。
寺田:師弟関係、いいですね。師と仰ぐがよい(笑)。松永がその頃に書いていた原案が本当によいもので、これはすごいなと思いました。それを部内でプレゼンしたんですが、その時の部長が絶対に褒めない人で。でも、その人が初めて褒めたんですよ。それぐらい当時から才能の輝きを……。
松永:(食い気味に)すいません、上げ気味に後輩をいじるのはやめてください!(苦笑) でもあれはうれしかったです。ド新人のほとばしりを、うまく誘導してもらえたからですね。師匠のおかげです(笑)。
――その後、同じゲームにかかわったことは?
寺田:それはなかったですね。ただ、松永がかかわっていた『三国志大戦』を立ち上げるプレゼンは、僕と大原さん(大原徹さん)でやったんですよ。
松永:そうだったんですか。たぶん、その原案書は僕が書いていますね(笑)。
――しっかり接点はあったんですね。寺田さんは『サクラ大戦』を担当されている以外にも、さまざまな作品にかかわっていらっしゃいますよね。
寺田:『ファンタシースターポータブル』シリーズや『戦場のヴァルキュリア』をやったり、『Project DIVA f』のPV統括をやったり……とにかくピンチなものがあると送り込まれる印象がありますね(苦笑)。
松永:僕は『サクラ大戦』をはじめとしたセガのコンシューマゲームがユーザーとしても好きで。セガに入った当時、入社する時にスタジオを選ぶシステムだったんです。それで『サクラ大戦』のスタジオに入ったんですが、『三国志大戦』シリーズが立ち上がるとなった時に巻き込まれまして(笑)。そのままアーケードゲームの人間になりました。
寺田:当時は“オーバーワークス”というスタジオだったんです。それがセガに戻った時に2つにパーンッと割れて、「あれ? 『三国志大戦』チームがアーケードに行っちゃった?」と(笑)。
松永:それが僕としては、寺田さんとの今生の別れ……みたいな感じだったんで、今回のコラボが実現できて個人的にもとてもうれしいです。
『サクラ大戦』、その人気の秘密とは……?
――今回の『チェンクロ』×『サクラ大戦』コラボが実現したきっかけを教えていただけますか。どのくらいの時期から動いていらっしゃったんですか?
松永:検討自体は結構早い段階から進めていました。『チェンクロ』が無事に3周年を迎えたのですが、その3周年のタイミングで「節目となるコラボをやろう」と前々からチームで話していたんです。それはなんだろう……と考えていた時に『サクラ大戦』が20周年だということを思い出して、よい節目同士ということでコラボさせてもらうのがいいなと思い、お話を持っていかせてもらいました。
寺田:だいたい他のゲームと『サクラ大戦』のコラボをやるって話は、ライセンスを管理している部署から上がってくるんですけど、今回は松永から直接メールが届きまして。「『サクラ大戦』のコラボやりたいんですけど、当然やってくれますよね? 寺田さんも参加してくれますよね?」って。「コレは何!? 脅迫!?」みたいな(笑)。
松永:たしかに送らせてもらいました。本丸から攻めようと!
寺田:まぁ、松永の言うことだし、『チェンクロ』はセガのタイトルなので、当然やろうとはメールを戻しましたけど。なかなかに粋なことをしてくるな、と(笑)。
松永:コラボって、開発同士のつながりというか、タッグがちゃんと組めていないとおもしろいものにならないなっていうのは、経験上ずっと思っていました。だから、寺田さんだったり、オリジナルのメンバーの方にお声かけさせてもらって、そこで色よい返事がもらえないんだったらそもそも成立しないなと思いまして。なので、まずは熱意を込めて、メールを送らせてもらって。
寺田:そのメールに、『サクラ大戦』のシナリオライターをやっていた人たちにも声をかけているとあったので、「これは本気なんだな」と伝わってきまして。コラボといっても幅があって、キャラが出てくるだけのものもあったりしますよね。でも、松永は本当に『サクラ大戦』っぽいものを『チェンクロ』のなかで作ろうとしているがゆえの、このメールなんだなと思いました。
――寺田さんは『チェンクロ』に対してどういうイメージを持たれていましたか?
寺田:ゲームはシンプルながら発展性が非常に高い気がしていて。このゲーム、最初からいろいろ考えて発展させていっているの?
松永:システム周りはそうですね。
寺田:ゲーム性も深く考えられていて、それが長く親しまれている理由かと思います。純粋にゲームとしていいな、と。
――それでは逆に、松永さんに『サクラ大戦』についてお聞きしたいのですが、初期作品はプレイヤーとして遊ばれていたのでしょうか?
松永:僕がセガに入った時は『サクラ大戦4』の頃でした。だから『1』から『3』はユーザーとして楽しませてもらって。セガに入るきっかけの1つになりましたね。
寺田:ヒロインは誰が好きなの?
松永:すみれさんです!(即答)
寺田:あ~、言ってたね! そういえば! 同じ会話を15年ぐらい前にもした記憶がある!
――具体的にすみれさんのどの辺りが好きなんですか?
松永:とにかくツボなんです。いわゆるツンデレキャラの、ほんと大事なものを全部持ってるなと。どこが好きかと問われたら、「全部です!」としか答えようがない感じです。
――戦闘スタイルもですか?
松永:そうですね。全部です全部。
寺田:すみれって結構お得なキャラだと思うんです。ツンツンしていて嫌われがちなのかと思えば、陰ですごい努力もしていて。『1』の最後で見回りに行った時とか、弱いところを見せたり。
松永:あれ、努力家なのを見せるタイミングがすごく上手いんですよね! ずるいなあって。
寺田:いろいろおいしいところが多いキャラだと思いますね。だから、最初にすみれに対して「なんだコイツ」って思っていた人ほどハマるのかなと思いますね。
――その時代って、まだ“ツンデレ”という言葉も流行っていなかったですよね。
寺田:その“走り”ぐらいですかね?
松永:うんうん。原体験という感じがありますね。
寺田:デレとはまた違うんですよね、あの人はデレないので。デレないけど、見る人によっては優しいところが見えたり、おいしいキャラです。
松永:ちょっとおバカなところがあったりもして、そういうデレの代わりの“隙”の部分もちゃんとあって、完璧だって思いますね。すべてを持っている! って。
寺田:すみれはクモが苦手なんですけど、“完璧に見えるすみれがクモが苦手って!”というギャップ感もあって、いいんですかね(笑)。『1』の時のすみれはクモのエピソードでしたけど、各キャラの心の傷ってあるんですよね。それを癒やしていくのが『サクラ大戦』の醍醐味といってもいいかと思います。
――キャラに“弱さ”のようなものを持たせると、キャラが引き立つのでしょうか?
寺田:そうですね、『サクラ大戦』自体が“隊長ゲーム”というところで、各キャラクターの心の傷を癒やして部隊を1つにしていくというのが、遊びの根本的な部分なんです。だから、各キャラの心の傷がどういうものかというのは考えましたね。
松永:そういえば、寺田さんの好きなキャラって……この前、開発のWEBサイトを見た時に、「眼鏡キャラへの造詣が深い」みたいに書かれていましたけど。
寺田:そうなんだよね(苦笑)。しかも、あそこでついに僕が(北大路)花火(『サクラ大戦3』に出演)が好きだということがバラされてしまったんですよ。
松永:それって今まで秘密だったんですか?
寺田:やっぱり『サクラ大戦』って、キャラクターを平等にしているから、特定のキャラを好きって言うとひいきしているように感じられるじゃないですかだから僕は常に「大神が好きなんだ」って言っていたんですけど、それがついに……。
――ちなみに寺田さんは花火のどんなところが好きなんですか?
寺田:『サクラ大戦3』のキャラクターを決める時に、「大和撫子みたいなのを入れましょうよ!」って懇願して入れてもらったキャラなんですよ。黒タイツとか大好きなんで! エンディンググラフィックで縫い物をしている絵だったかな、黒タイツを脱いでいる風景があった時なんて、「これ脱いでたら意味なくないですか!?」って言ったりもしましたね。
――そのお話は……とても愛を感じますね……!
寺田:ああいう奥ゆかしい子は好きですね。そうしたら広井王子さんが「わかったわかった」って生み出してくれたのが、花火なんです。
好評につきコラボ後編の開催が決定! 前編の感想は?
――コラボの前半が終わりましたが、そもそも2回に分けて開催すると決めたのはいつ頃ですか?
松永:一度発表して、ユーザーさんの反響をいただいた後ですね。もともと1回の予定で、キャラクターをSSRとSRに分ける必要があって、寺田さんとどのキャラをSSRにするか相談していたんです。それで大神、さくら、マリア、織姫、レニをSSRに、と進めていたんですけど、発表後のユーザーさんの反響を見ていて、「そうだよね。華撃団は横並びなのに、SRのキャラがいると悲しいよね」と感じていて。
それである日ついポロッと「なんですみれさんがSSRじゃないんだ……」と僕が言ってしまって。名指しで言ったのは個人的感情が強いですが(笑)。そうしたら周りの開発スタッフも「じゃあなんでカンナが!」、「紅蘭が!」、「アイリスは!?」となって、結局みんなも1回じゃ満足できなかったんだ、と(苦笑)。で、いただいていた反響を含めて、絶対ユーザーさんの気持ちも同じだろうということで、2回やることに決めました。
――それは、よい意味でユーザーと同じ目線ですね。
松永:はい。光武のモデリングを作るコストだったり、もともと実現性の問題もあったんですけど、モデリングチームも「僕たち光武作るのめっちゃ早くなったんで、大丈夫ですよ!」と言ってくれて。
寺田:前半のコラボイベント、僕的にはすごい気に入っていて。前編は、大神と『チェンクロ』の主人公が運命的な出会いをした、みたいな話で終わったんですが、まだエピソードがあって、また数週間後に会うとかすごい話ですよね(笑)。僕自身が驚きました。でも、SSRで全員そろってよかったですよ、本当に。
松永:最終的には、ユーザーさんからの大きな反響があってのことですね、さすがに見切り発車ではできないので。本当に、あらためて『サクラ大戦』はキャラクターそれぞれに熱いファンがいるし、それは全員が平等なコンテンツとして作ってきたからなんだなと感じました。ちなみに寺田さんは、初回のSSR(大神、さくら、マリア、織姫、レニ)を選んだ理由みたいなものはあるんですか?
寺田:やっぱりバランスを考えました。大神とさくらは、ある意味当然ですよね。それと、織姫とレニは、ある意味あとから加わった特別なキャラなので納得がいくかな、と。それにもう1人……となったら、花組の顔役とも言える、副隊長のマリアかな……と考えました。だって、ここで「カンナだな!」ってなったら、「紅蘭は!?」、「アイリスも!!」っていうさっきの流れになってしまうじゃないですか(苦笑)。
松永:それはとっても納得なんですけど、気持ちとしてさみしくなかったのかなぁ、と(苦笑)。シンプルに、気持ちとして僕たちと同じだったのかな!? と。思いは1つだったのかを、今確かめたくて。
寺田:そりゃ思いは1つ、全員すぐにSSRにしてもらいたかったですよ。いらない子なんて、1人もいないですから。ただ、後半用にキャラクターのエピソード(運命の物語・絆の物語)が増えて、チェックがドッと増えたのには参りました(笑)。『チェンクロ』チームの怖さが垣間見えました。
――今回のコラボは、かなりストーリーに力が入っているように感じましたが、ストーリーの制作過程はどのようにされたのですか?
松永:僕らがやった仕事しては、『サクラ大戦』シリーズの元々のスタッフである後藤功士(ごとうかつひと)さんに「書いてください!」って直接メールを送ったことで、ほぼ終了でした。
寺田:松永の「直接メール攻撃」がダメージあるんですよね、防御を貫くアビリティが発動している(笑)。
松永:後藤さんからは30秒くらいでメールが戻ってきました。「書くに決まっているだろ!」って。
寺田:アイツ、男気あるからなぁ。後藤から僕のところにプロットが3つぐらいきて、「これかなぁ」とか話して進んだ感じですね。
――結構『チェンクロ』と絡めるのが難しいのかな、と思ったのですが、そこは後藤さんがうまく仕上げてくれたのでしょうか。
松永:そうですね、すごく『チェンクロ』を研究してくださって。『チェンクロ』の過去のコラボシナリオをお渡しして読んでもらったりもしたんですが、「これだけだとゲームになった時の感覚がつかめない」と言って、プレイ動画を探してチェックしてくれたりもして。
それで、コラボはこういう風に流れるんだなというのをつかんでもらった上で執筆してもらったので、ほとんど修正するところはなかったですね。最初のプロットぐらいでしょうか、50話分ぐらいのプロットが届いて(苦笑)。「あ、あれ? 8話ってお伝えしましたよね?」って。でも、その案を絞り込んでいったら8話に収まったので、さすがだなと。
寺田:後藤は今回、シナリオを書いてそれで終わり、ということではなかったんです。プレイしてもらったユーザーさんにはわかると思うんですが、登場している絵素材がすごいんですよね。『1』から『4』ぐらいまでの絵素材を渡して、一番いいだろうという素材を厳選してくれました。BGMも含めて、使っている素材量は「さすがセガ同士のコラボだな」って思ってもらえたかと。
――寺田さんは光武のモデリングなどを見て、どのような感想を持たれましたか?
寺田:よく再現してくれていると思いました。これぐらいのポリゴンだと、細部はかなり省略する部分はあると思うんですけど、ディテールに関しては省略しているところはないんじゃないですかね。武器や細かい部分の曲がり方など、添削させてもらったんですが、逆にこちらが間違っていることを指摘されたり(苦笑)。とにかく細かな部分まで作り込んでもらえました。このまま商品になってもらいたいぐらい、かわいらしくデフォルメ化されていると思います。セガトイズさん、商品化の話、いかがでしょうか?(笑)。
――先の話にも出ましたが、音楽もよかったですよね。
寺田:そうですね。『花咲く乙女』とかが通常BGMで使われてだけで、ちょっと涙ぐんでしまいました。
松永:権利的なところも含めて、それが実現できたのも社内コラボならではなのかな、と。
寺田:僕もTwitterなどでユーザーさんの反応を見ていたんですけど、「始めた瞬間から、音楽だけで泣ける!」という方もいらっしゃって。やっぱり田中公平さんの音楽は偉大だなと思いました。改めて名曲だなと。
――個人的には、ピリカと大神隊長のかけあいが楽しかったです。
寺田:ピリカがひらがなやカタカナではなく、漢字で「一郎!」って読んでいるのは、学があっていいですよね。普通カタカナだろ!とセルフ突っ込みしながら読みました(笑)。
――(一同爆笑)。
寺田:あと、大神のどこに行っても口説こうとする感じもいいよね。「君を助けるために来た」みたいな大神節というか。どこに行ってもナチュラルジゴロを発揮してしまう。
松永:今回のシナリオでは、いい感じに『チェンクロ』のキャラを引っ張ってもらえたと思っていますね。大神隊長おなじみの「体が勝手に…」のシーンとかも、「うちの主人公も一緒に行っていいんだ!」って思いました(笑)。
寺田:でも、ここ(胸元よりやや上)まであるタオルは健在でしたね(苦笑)。ピッチリしている絶対隙を見せない感じ。もうちょっとゆるくてもいいんじゃないかって思い続けているんですけどね。
松永:当時の審査、厳しいですからね(苦笑)。
寺田:『サクラ大戦』は基本的にCERO Bのゲームなんですけど、あのシーンのためだけにCERO Bになってるんですよ。他には何もなく、みんな「CERO Aにしたい」と思っていたんですけど、「あのシーンがあるからCERO B」と言われたら、みんな「じゃあCERO Bで」って納得したんです。「あのイベントを取るくらいだったら、CERO Bで」と。
――キャラクターの性能などは、どのように決められたのでしょうか? 個人的には、キャラクターが“華撃団”所属というのに驚かされました。
松永:そうですね。今回は原作の世界観を生かした新しいチャレンジとして「大神隊長と一緒にさくらたちをパーティに入れると、キャラが強力にパワーアップする」通称“華撃団”結束、“華撃団”という所属を作りました。サクラキャラでパーティを組み、強くなった光武たちで敵を一掃する爽快感を味わってみてください! 巴里や紐育の仲間たちも今後追加されたら……と想像がふくらんで、ちょっと気合が入りすぎたかもしれません。
寺田:戦闘画面で全員光武に乗ったりすると、画面の『チェンクロ』成分がそれこそピリカぐらいになっていましたよね(笑)。このエンジンで『サクラ大戦』の新作作ってくれればいいのにって思いました。
松永:えっ、作っていいんですか?(笑)。
寺田:新作が生まれる片鱗を感じましたよ、僕は。
松永:それぐらいの気合は入っていましたね。チームはノリノリでした。なんだかんだで、みんな『サクラ大戦』好きなんですよ。
寺田:みんなメカとか堂々と作ったりしたいんでしょうね。
松永:あっ、それはあると思います。特にデザイナーがノリノリでした。
寺田:キャラクターものは多くても、メカは今の時代どんどん少なくなっている気がしていて。メカをモデリングする機会が減っていて、そういう意味でも盛り上がるというのはあると思います。
――後半4人のSSRの性能や、光武のモデリングの出来も気になります。
寺田:その前に、俺前半のSSRキャラがぜんぜん手に入らなかったんだよなぁ。あれってもう手に入らないの? ねぇ?
松永:そ、そうですね……。
寺田:そうかぁ。でもまたいつか、何かしらの形でやってくれるんだよね?
松永:プレッシャーを感じます(苦笑)。
『サクラ大戦』×『チェンクロ』キャラクター論
――メインクエストだけでなく、キャラクタークエストも気合が入っていましたよね。メインは義勇軍が銀座に行くという流れで、キャラクタークエストはユグドが舞台になっていたりと。
松永:キャラクタークエストのほうもガッツリ監修していただいたので、よいものになったと思います。選択肢の流れとか、すごくそれっぽくなったなと。
寺田:最初、キャラクタークエストには“LIPS”の選択肢はなかったんですけど、やっぱり入れてほしいと、我ながら雑な注文をしたもんだなと思います(苦笑)。『サクラ大戦』って“LIPS”を答えた後に、必ずキャラクターが反応を一言返すようにしているんです。それってキャラクターの反応がすぐ返ってきたほうがうれしいからなんですけど、そういうところをチェックして「らしさ」を出すように監修しました。
――選択肢を選んだのに、何も反応なかったらさみしいですものね。
寺田:何も反応がなかったり、まったく関係のないキャラが反応したら、「今の俺の選択肢は、この子にどう響いたんだ!?」って思ってしまいますよね。やっぱり答えた本人がすぐに出てきてほしいですし。まあ、好感度が下がる音はメンタルにダメージ入りますけど(笑)。
松永:『チェンクロ』では好感度はないとわかっていても、ダメージ入りますからね(苦笑)。
――「体が勝手に…」もそうですけど、プレイヤーでもある大神の答えって大事ですよね。だから大神は人気な気がしています。
寺田:本当に大神はみんなから好かれていて、その理由は“LIPS”にあると僕は思います。大神が脳で考えている言葉が選択肢に現れていて、堅い大神もいれば、少しふざけた大神もみんなのなかにいるんです。だから、“LIPS”を重ねていくことで、自分のいいとこ取りをした大神がプレイヤーの中にできていくんです。「俺の大神はこういう時、硬派なんだよ」とか「ちょっと軟派なとこもあるんだよな」とか、選択肢の全部が大神の考えていることだと思っているんで。みんなのなかに、自分だけの大神ができあがっていくという。
――なるほど。そうやって、プレイヤーが作り上げた大神像があるから感情移入しやすいキャラになっていくんですね。
寺田:決める時は決めるし、シナリオ的なカッコよさもありつつ、日常では自分なりのカスタムができる主人公といった感じですね。
松永:それは『チェンクロ』でも参考にさせてもらっています。『チェンクロ』の場合は好感度はないんですが、たとえゲーム的意味がないんだとしてもドラマシーンに選択肢を入れようと、開発初期に話し合ったんです。やっぱり自分が意思決定していくというのは大事で、寺田さんがおっしゃったみたいに選択肢のなかの多彩さというか、「自分だったらこうしたい」というところの“自分”に大きくかかわってくると思っています。『チェンクロ』の主人公は名前も決まっていないんですけど、彼は人気投票で1位になったりするんですよ。
寺田:やっぱりそうなるよね。よい意味で自分にとって都合のよい主人公というのが、みんなのなかでできあがっていくんだと思う。「ウチの隊長はときどき風呂場に行っちゃうんだよ」みたいな(笑)。
――『チェンクロ』の選択肢もマジメなものもあれば、「隊長、どうしちゃったの!?」というものもありますよね。
松永:やっぱりそこは対比になるように、両方入れるようにしています。これはイズムを受け継いでいるわかりやすい部分かもしれません。
寺田:マジメなのを用意しておくのも大事なんですよね。それを選んでいれば、基本的にキャラはブレないので。ゲーム進行にはまったく影響がないので、松永が言ったように無駄かもしれないと言われてしまえばそうなんですよ。でも、そういうところこそが“遊び心”だと思うんで、それがなくなるとゲームとしてはつまらないですし、そういうのがあるほうが、やっぱりいいですよ。今は、スケジュールとかコストとか言って、そういう部分を忘れがちなんです。
松永:それって究極的に突き詰めると「シナリオだっていらないじゃん」という話にもなりますしね。じゃあユーザーさんって、何を楽しむんだよと思います。
寺田:昔、「パラメータもキャラなんだから」って言われたことがあって。それからキャラに付けるパラメータもこだわるようになりましたね。パラメータを見ただけでも、そのキャラクターのことが伝わるように。
松永:『チェンクロ』の場合、パラメータはレアリティやコストに合わせたものにしなければならないのですが、その分スキルとアビリティはキャラクター性にマッチしたものを付けるようにしていますね。
――両タイトルで共通しているものとして“キャラクターの魅力”というものがあると思いますが、キャラクターを生み出す時に気を付けていることはありますか?
寺田:また難しいことを聞きますね……。それがわかれば苦労しないという(苦笑)。でも、やっぱり一番考える部分です。僕が主人公で気にかけているのは、「身近なところがある」ということですね。自分が感情移入するキャラなので、「異世界から来た天才!」だとすでにかけ離れてしまっていて。そういうところはないように『戦場のヴァルキュリア』のウェルキンだと、地元に帰ってきた大学生が戦争に巻き込まれる……という、「ひょっとしたら俺にもそういうことがあるかもしれない!」みたいな。そういう要素があったほうが主人公はいいなと思います。
あとキャラクターで気にしているのは、「かぶりを恐れない」ことですかね。今の世界だとキャラクターは星の数ほどいるわけで。そのなかで僕たちが「コレいいよね」って思ったキャラがいたとして、たとえばですけど「さくらに似てない?」、「すみれに似てない?」という理由で消えていくこともあるんです。でもそんなことで消していったら、本当にキワモノのキャラしか残らないんですよ。もしくは、薄い要素を4~5個あわせ持って、なんだかわからないキャラになってしまったり。だから、自分たちが「コレがいい!」と思ったら、なんとかそれを尖らせるように考えます。
松永:『チェンクロ』の場合は逆なのかもしれないです。「絶対にかぶらない要素は1つ持たせようね」ということで。
寺田:あ、それはいいよね。
松永:こちらはキャラが800以上いるゲームなので、そのキャラの根っ子にある“アピールポイント”だけは誰ともかぶらないようにしようと思っています。逆にそこからキャラを立たせていくために肉付けしていく部分は、寺田さんの話の通り「かぶりを恐れない」を心がけていますね。たとえばツンデレと呼ばれそうなキャラは数十人いますし。かぶりどうこうよりも、きちんと根っこの特徴が魅力的にかみ合うように肉付けができるよう考えています。
寺田:1,000体近くのキャラでそれをやっているのはすごいね。それって「おばあさんを亡くしています」と「ひいおばあさんを亡くしています」の差とかじゃないの!?
松永:それ一緒じゃないですか(笑)。あ……でも、一言に例えちゃうと言葉としてそれぐらい近いものはいますね。たとえば、「道具屋をやっているキャラクター」が複数いるとしても、そいつが「魔法学園で道具屋をやっている」のか、「砂漠で道具屋をやっているのか」でキャラクター性って変わってくるじゃないですか。そこから生まれてくる物語は違うよね、っていう部分を大事にしています。
あと、これはキャラクターがたくさんいるゲームだからこそのこだわりかもしれないんですけど、必ず“ギャップ”というか“絵からは伝わらない内面”を入れるようにしていますね。『サクラ大戦』などでは普通のことだと思うんですが。うちはそういう純粋なキャラクターゲームと比べると、1人1人の物語の量は少ないので、だからこそきっちりすべてのキャラでそれをやってあげたいと思っています。
寺田:不良だと思っていたら、雨の日にネコに傘をさしてあげている……みたいなもの? でもそれって大事だよね、見ただけの印象でわかってしまうキャラクターって底が浅いのと同じなので。キャラクター作りについては、まだ答えがない部分ですね。だからこそおもしろいんですけど。
松永:そうですね。
寺田:『サクラ大戦』を作っていた時は、オーディションや収録の時に声優さんにしゃべってもらって、「あ、こういうキャラなのかも」って気づかせてもらうこともあったりしましたね。
松永:『チェンクロ』は、声優さんの演じ分けに気を使ってもらっているので、なかなか自由にやってもらうのは難しくて、こちらからオーダーを出すことがほとんどかもしれません。
寺田:それは制作期間のロング、ショートという取り組みの差があるのかもしれませんね。僕らは一度作り始めたら3年とかかかってしまうものもありますけど、アプリの場合は運営もあって、決まってから2週間後に実装ということもあるわけで。
松永:でも、演じ分けをこなしてもらった上で、声優さんから「あ、こう演じてきたかぁ」というものが上がってくることもあって。それはうれしいですね。ボイスから人気が出るキャラもいますしね。
『サクラ大戦』コラボ後編に向けて
――今回の『サクラ大戦』コラボは、サブのキャラクターも総登場でしたね。
松永:これは僕のオーダーというより、後藤さんの上げてくれたシナリオに入っていた、というものでしたね。
寺田:今回は劇場版みたいな感じですよね。ただ、僕は米田中将だけは、ちょっと出したくなかったというところもあったりしたんですよ。米田は『4』で完全に引退して、アンタッチャブルな存在な気がしていたんです。でも、今回のシナリオのようなピンチの時に何もしない男かというと、そうじゃないだろうと。キャラになりきって考えると、出るのかなぁ、と。
松永:そういうところも含めて、サービスやお祭り感を大事にした劇場版という見方が近いのかもしれないです。
寺田:“二剣二刀”が明治神宮に奉納されているってシナリオにあって、「そうなの!?」みたいな部分もあったんですが、「まぁ、劇場版だから!」って(笑)。いいんじゃないですか、今回はエンタメ重視で。
――今回の『サクラ大戦』コラボから『チェンクロ』を始めた人も多そうですね。コラボキャラクターは性能もよいですし、大神隊長の“華撃団結束”もあるので序盤も進めやすそうです。
松永:そうですね。このコラボから始めた方も、コラボシナリオはクリアできるように調整はしています。
寺田:光武に乗っちゃえば、なんとかなるもんね。なんといっても光武だからね!
松永:光武ですからね(笑)。とりあえず乗っちゃえば、いろいろパワーアップできますし。
寺田:個人的には、大神をアルカナにしてもらえたのがうれしいですね。女の子たちを出すだけでなく、そこに大神がいたほうがより盛り上がる。大神がいるからこそ、ヒロインの魅力も引き出されますし。
松永:あとプレイヤーの感情として、女の子だけに戦わせるのはイヤですよね。
寺田:『1』の時って、大神がすごい弱かったの知ってた?
松永:え、そうでしたっけ!?
寺田:ゲーム的には正しくて、隊長は部隊の弱点でもあるから、それをみんなで守ろうっていう。そのせいかボス戦になると、「みんな行け!」みたいになっちゃって(苦笑)。それがイヤだったから、『2』からパラメータを強くしました。先陣切って戦えるようになったんですよ。
▲寺田さんによる「みんな行け!」の図。 |
松永:あ~、そうでした。奇しくも『チェンクロ』もそうですね。主人公はコスト0なことが強みではあるんですが、能力的にSSRとかには敵わないんですよ。すぐにサブパーティに押し込められて戦闘に出なくなるんです。それもやっぱり、他の仲間たちをちゃんと活躍させるためのゲーム的な判断だったんですが。それで第2部の時にVer.2になって、能力も上がって強くなって、最後にもうひと伸びするという流れでした。
――コラボ後編のシナリオはどういったものになりますか?
松永:後編は、華撃団のメンバーと、チェンクロの人気キャラ一同がユグドの大陸各地を回るという話になります。
寺田:今、監修しているところですが、前半がキャラクターエピソード中心だとしたら後編は連戦しながら各地を巡っていく、そういう流れですね。
松永:ボリューム的には、前半よりもちょっと少なめです。ただそのぶん、バトルの趣向が凝っていたり、前半とは別の楽しさがある内容になっているので、ぜひご期待いただければと思います。
――ユグド大陸のメンバーが多く出てきそうですね。
松永:そうですね、前編と比較すると『チェンクロ』寄りなストーリーになっているので、キャラクターも各地からどんどん登場します。
――前編で気になったことで、アルドラとヴォルグの2人が選ばれたのには、どんな理由があったんでしょうか?
松永:『チェンクロ』を代表するキャラクターでもありますし、『サクラ大戦』のファンの方が『チェンクロ』を知らないで触れても感情移入しやすいキャラクターかなというのが大きいです。序盤に登場するキャラクターですし。
――後編のSSRキャラの性能などは、どんなものになっているのでしょうか。
松永:前編のほうの印象と大きく変えることはできないので、基本的には光武に乗ることから始めてもらって、そのあとのアクションも比較的わかりやすくおもしろいものにしたいというコンセプトで設定しました。初心者の方にも長所が伝わりやすくなっているかと。
寺田:すみれは強くしたの?(笑)。
松永:特別そういうことはしていません!(苦笑) ああ、でもそうですね。これでもしすみれさんが強かったら、怒られそうですね。数値は見てないので、怖い(笑)。ていうかこれ、好きなキャラ聞くくだりから、完全に寺田さんに嵌められてますね……新手の後輩いじめですね、コレ(笑)。
――(一同爆笑)。
松永:ちなみにスキルやアビリティによる原作再現は、今回もこだわってやっています! アイリスの必殺技のエフェクトがジャンポール柄になっていたり、紅蘭のスキルで登場するチビロボが爆発したり。すみれさんは財閥キャラなので、戦闘後に多くのゴールドを獲得できる金策能力が高かったり、カンナは一撃必殺の強さが再現されています。原作ファンの人は絶対楽しいですし、そうでない方も逆に原作が気になってしまうぐらいの勢いがあるので、ぜひ楽しみにしてほしいです。
いつかは『チェンクロ』歌謡ショウ……も!?
――『サクラ大戦』といえば、歌謡ショウが長年にわたって開催されてきました。寺田さんは、歌謡ショウをご覧になっていた際の思い出などはありますか?
寺田:僕は一度だけ開発で超忙しい時があって……すみれの引退公演だったかな? それだけ行けなくて、あとは全部観に行っています。最初は「どんなものになるんだろう?」と思っていたんですが、これが実際に観たらすごい出来で。やっぱり声優さんがキャラを理解しているからなのか、舞台の上の声優さんたちが本当にさくらたちに見えてくるんですよね。観に来てくれるユーザーさんもどんどん増えていきましたけど、僕たち自身も感動しました。年々やっている間に、コスプレして観に来てくれるユーザーさんもいたりして、開発としてすごいパワーをもらっていました。
また、そういった舞台上の演出でいいと思ったものはゲームにも取り入れたいなと思って、『5』の時かな? “紐育華撃団”が歌う時にポーズをとるんですが、それがかわいいと思ったので、舞台と同じものを『5』のオープニングムービーに入れてもらいました。同じタイミングで同じポーズをとるという。歌謡ショウから僕自身もいろいろなヒントをもらえたりしていたので、また何かやれるといいなぁと思っています。
――松永さんは、『チェンクロ』で舞台やミュージカルなどをやってみたいとか、そういう野望はありますか? キャラが800人以上いますが……。
寺田:『PSO2』とか『ぷよぷよ』もやったし、『チェンクロ』もやればいいじゃん!
松永:そういう話がなかったわけではないんですが、なかなか実現までは行きませんね。キャラクター数が多いというのもありますし、ユーザーさんに満足いただけるクオリティのものをお届けするのが難しいのかなとも思ったりしますが。でも、実際はやれないこともないのかな……? どうなんだろう……。
寺田:いや、やれるやれる。まず「絶対やる」というところから逆算していけばやれるって。
松永:なるほど、大事なのは気合ですね! やれる気がしてきました。……って、すみません、そこまで絶対やりたいというわけではないんですが(笑)。
――では最後に、後編の『サクラ大戦』コラボに向けて、一言いただけますでしょうか。
松永:とにかく双方、コンテンツ愛とゲームを作る情熱にあふれたチームがタッグを組むことでできた、今までにないコラボだと思うので、ぜひ後編も楽しんでください!
寺田:コラボをいろいろとやるたびに思うのですが、今回の『チェンクロ』のように『サクラ大戦』と本気でコラボしてくれようというコンテンツに関しては、本編の続きの新しいエピソードだと思ってプレイしてもらえるとうれしいです。また、『サクラ大戦』も今年20周年でいろいろとありますし、新作も作れればいいなあ……と思っていますので、これからも『チェンクロ』ともども『サクラ大戦』もよろしくお願いします。
▲最後は2人で「勝利のポーズ、決めっ!」。 |
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