2016年9月26日(月)
食物連鎖による生態系の構築に着眼したゲームシステムや、味のあるドット絵、さらにパロディ&オマージュ要素満点のテキストなどで話題を呼んだ、リアルタイムストラテジー『勇者のくせになまいきだ。』(以下『勇なま』)。そのシリーズ最新作が7年越しに登場! しかも、PlayStation VR(以下PS VR)専用ソフトとして!
VR化にともない、特徴であったドット絵はばっさり切り捨て、華麗に3Dに昇華した本作『V!勇者のくせになまいきだR』(以下、『VなまR』)。だが、『VなまR』の雰囲気&遊びごたえはちゃんと『勇なま』のままだった! 今回は、現在までに明らかになっているゲーム内容の紹介と、東京ゲームショウ2016会期中に行われたメディアセッションの模様を合わせてお届けする。(ちなみに本作の読み方は、『ぶい!ゆうしゃのくせになまいきだりたーん』。)
▲7年ぶりの最新作『V!勇者のくせになまいきだR』の画面写真。目の前にボードゲームの卓が存在している感覚。 |
▲ファンにはおなじみの魔王も3D&六頭身に! なかなかのハンサムだったりするが、この姿になるには苦労が……。詳しくは後半掲載の開発陣トークセッションで。 |
■2017年発売予定
■SIE
■リアルタイムストラテジー
■価格未定
■PS VR必須
ブロックで埋め尽くされた地下ダンジョンを舞台に、魔王を捕まえようと攻めてくる勇者たちを撃退するのが目的だった、過去のシリーズ作。それに対し、『VなまR』の舞台は地上。ジオラマ的なフィールドの上で魔物たちを繁栄させていき、勇者たちを蹴散らして、王様と姫のいる敵の城を陥落させるのが目的だ。
▲まがまがしい色づかいの中にキュートさも見え隠れする、この塔が魔王軍の拠点・あんこくの塔。勇者たちにここを攻め落とされると敗北となる。 |
▲屋根が突き出しまくっている建物が、魔王軍の侵略対象となる人間どもの城。王と姫の姿以外に、守りを固める勇者の姿も。フィールドにはあんこくの塔と人間の城以外に、人間どもの村や砦なども存在する。 |
▲ちなみに操作はすべて破壊神コントローラ(ハカコン)で行う。実際に手に持ったコントローラの位置が認識され、VR空間で違和感なく操作できる。 |
シリーズ作では養分や魔分と呼ばれるものを含んだブロックから魔物を産み出していたが、本作では巣を配置するだけで、お手軽に魔物を産み出せるように。ただし巣を配置するには、CP=カリスマポイントというパワーが必要で、強力な魔物の巣ほど、多くのCPが必要となる。
▲巣を置けるのは紫色をした魔界の領土のみ。ハカコンのポインタで場所を指定して巣を置くと、その周辺が魔界の領地に変わる。これを繰り返して領地を拡大させていく。 |
過去のシリーズでもそうだったが、魔物たちにはそれぞれ体力があり、勇者の攻撃を受けなくても、時間とともに体力が減っていく。体力を回復するにはエサとなる魔物を食べる必要があり、エサにありつけないでいると餓死してしまう……。そのため、強力な魔物だけを産み出し続ければいいというわけでなく、その魔物のエサとなる魔物も増やして、うまく生態系を構築していく必要がある。勇者たちを撃退しつつ生態系を整え、魔物を進軍させて城を落とす……これが『VなまR』の醍醐味だ。
▲緑の丸い魔物は、魔物のニジリゴケ。戦力としては期待薄だが、最初に生み出せる魔物として食物連鎖の土台を支える存在だ。彼らの繁殖なしに、強い魔王軍はあり得ない! |
魔しずく |
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命の源。ニジリゴケはこのしずくをエサにして増えていく。
ニジリゴケ |
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最初に生み出せる魔物で、ガジガジムシのエサとなる。今作ではキノコ型に成長して増殖。さらに複数集まるとキングサイズに……!?
ガジガジムシ |
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何でもガジガジかじる虫系魔物。トカゲおとこのエサになる。
ガジフライ |
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ガジガジムシがサナギになり、羽化した姿。飛べるので地形に関係なく移動可能。
トカゲおとこ |
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おとこといいつつ、卵を産んで繁殖。序盤の主力。
デーもん |
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過去作では魔方陣から召喚した強力な魔物。今回はどんな形で登場するのだろうか。
ドラゴン |
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フィールド上を飛び回っているドラゴン。戦いに参加したときの強さに期待!
フィールド上にはさまざまな職業の勇者たちが待ち構えており、魔王軍の侵攻を阻止してくる。勇者を倒すとCPをゲットできるので、ギッタギタに蹴散らしていこう。なお、バトルはリアルタイムかつ自動的に進行。勇者もフィールド上に複数いるので、同時多発的にバトルが発生することも。首を左右に振って、戦況を見守ることになりそう。
▲ファンにはわかる、あの“しょうた”もなまいきに登場! 今回も瞬殺か!? ちなみに勇者はやられても、レベルアップして=強くなって、同じステージに再登場する。 |
剣士 |
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剣を使った肉弾戦だけでなく、魔法も操るバランス型勇者。
魔法使い |
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強力な魔法で攻撃。遠く離れた場所からチクチクと、意外とやっかい。
フィールド上には、街や村といった拠点が存在する。この拠点も敵の城同様、魔物たちで攻撃すると落とすことが可能。拠点を陥落させると大量のCPをゲットでき、魔王軍の増強が図れるうえに、周辺が魔界の領土となるので、そこを足がかりにさらなる侵攻も。拠点の攻略は重要なポイントになること間違いなしだ。
▲魔物たちに攻撃させ、耐久値をゼロにすると拠点陥落! 落とすと外観はもちろん、フキダシの部分もまがまがしく変化。 |
ゲームには時間の概念があり、魔物たちが大好きな夜になると、進軍の号令をかけることができる。昼はエサを食べたり、魔界の領土で営みをする魔物たちも、号令がかかると「待ってましたよ!」とばかりに敵の城を目指して進む。さぁ大軍で敵の城を攻め落とせ!
▲きちんと整列して道なりにゾロゾロ進む魔物たち。真面目か! |
▲拠点同様、敵の城の耐久値を0にすればステージクリア。王様&お姫様が逃げ出し、次のステージへ。 |
プレイ前に別の人のプレイをモニターで見ていて、別にVRじゃなくても遊べるじゃんと思った数分前の自分に大反省。ジオラマ的なフィールドが目の前にドンとある存在感、魔王様と同じ部屋にいる空気感、そしてなにより、まがまがしい空間に入り込んでしまったという没入感に目が飛び出ました。
さらにフィールドの地形や建物を含め、ちょこまかと動き回るキャラのかわいらしさ。見ているだけで楽しいし、それが覗き込んで見られたりするといううれしさ&おもしろさ。現実で例えるなら、鉄道のジオラマを見るワクワクに近いかも? FPSなどの3Dゲームとはまた違う、VRならではの世界に吸い込まれるような感覚は、まさに百聞は一見に如かず。実際に体験して、肌や目で感じてみないとわからない独特な感覚かと。
ちなみに背景に設定画や操作方法がしれっと表示されていたりして、画面を切り替えずに、見たい情報を見るという動きもVRのおもしろさだなぁと。あとは戦う魔物と勇者の姿を見て、“征服王”っていう番組をちょっと思い出したりもしました。
システム的には、魔王様のしゃべくりによるナビで親切度がアップ。さらに魔物の産み出し方も巣を配置するだけというシンプルな形になり(思い通りに魔物が産めないやきもき感+狙い通りに強い魔物が作れたときの達成感も過去作の良きところでしたが)、より万人向けになった印象。
それでいて、きちんと『勇なま』のキモである独自の生態系を使ったシステムは引き継がれ、魔物を繁栄させる楽しさは健在というからたまらない。お腹が減ったら、こんがり焼けそうなお肉のマークが表示されたり、ばっちりの環境ならハートが表示されたりと、魔物の状況をひと目でわかりやすくするなど、キャラがよりかわいらしくなったのも含め、ライト層の獲得に乗り出したな、『勇なま』と激しく感じました。
遊べるステージがひとつだけでしたが、ニジリゴケが数匹集まると、王冠をかぶり出しそうなキングなニジリゴケになるなど、過去のシリーズ作にはなかった新要素もちょいちょいあって、今後の展開に超絶大期待です!
東京ゲームショウ2016のビジネスデーに実施された『VなまR』プレゼンテーション。開発秘話などが聞けたトークセッション・質疑応答のなかから、開発陣による本作のこだわりや開発裏話を掲載する。開発陣の息の合ったやりとりから、現場のわきあいあいとした空気やゲームの雰囲気などを感じ取ってもらえればうれしい。
▲左からソニー・ インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)のシニアプロデューサー・山本正美氏、アクワイアのディレクター・大橋晴行氏、SIEのプロデューサー・鳥山晃之氏。 |
▲プレゼンテーションでは、東京ゲームショウ2016に出展Ver.を鳥山氏が実際にプレイして、ゲーム内容を紹介した。 |
山本正美氏:RPG的世界をジオラマ感満載、ディテールも含め、広がりを感じさせるために、まずフィールドを作ってみたら、意外な苦悩が待ち受けていたという…。
大橋晴行氏:目の前にフィールドが広がっていて、そこに勇者と魔物の営みが再現されていて……VRでそんな世界に介入できたらステキだなぁって進めていたんです。そして実際にフィールドを作って、VRで見てみたら、RPGの世界が広がっている感じが出ていてすごくよかった。
でも次の段階で魔物や勇者を置いてAIで動かしてみたら、あっちこっちでいろんな動きをし始めて、どこを見たらいいやら、何が起こっているのかさっぱりわからなくて。そこが最初の難関でしたね。どう整理していくか。結局どうしたかというと、シンプルにしていくしかないかなって。これまでのゲームですと、カメラワークで特定の場所を見せたりとかができたんですが、VRだとそれができないので……。
山本:VRの場合はプレイヤーさんが見たいところを自由に見られるんですが、“制作側が見てほしいところを見てもらう”ということが実は難しくて。例えば本作ですと、拠点を制圧することはゲームの進行上、とても重要な要素なんですが、陥落の瞬間、別のところを見ていて意外と気づかないことが多くて。なんとか気づいてもらえるよう、これ見よがしにデカいエフェクトにするなど絵的な工夫をしています。
大橋:ボイスやエフェクトなどで、視線誘導を行うようにしました。ざっくりいうと、プレイヤーがああしたい、こうしたいと能動的に動けるように、順序立てて考えられる動線を作るようにしたのがポイントですかね。あと、最初は進軍も自動で行うようにしてたんですけど、プレイヤーが気づかないうちに拠点を制圧していたりして、達成感が感じられなかったので、任意で進軍できるようにしました。
山本:うちのアラン・ベッカー(SIE JAPANスタジオのトップ)が初期ビルドのものを遊んだときに、「これは何が起こっているゲームなのか、まったく理解できない」と言われまして……次のフェイズに入りたかったんですが、「いったん延長しなさい」と。その後、状況をわかりやすくするようにキャラを立たせるなどの工夫をかなり入れた結果、ようやく今現在、動くジオラマというところには一定の成果が得られたんじゃないかなと。
山本:ほとんどのVRタイトルが苦労されているところだとは思うんですが……。
大橋:フレームレートが下がると酔いやすくなるのでそこは下げられないんですけど、『VなまR』はキャラクターをたくさん出さないといけないのでどうしてもデータが重くなって……すごく困りました。解決まではホントに地道な作業ですよ。頂点数とボーン数をおさえるキャラデザインから考えて。あとアニメーションの更新頻度なんかも、視界の中心ではなめらかに動かして、端のほうだとけっこうカクカクって動くようにして調整を加えたり。細かくやっていきました。
鳥山晃之氏:実際の視界でも中心部分はしっかり見えてるんですけど、両端はボケて見えてもいいので、あまり描き込まないように、とか。実際の人間の目で見ている視界と近くなるようにゲームの処理を行って、フレームレート数を確保しています。
大橋:キャラクターが出てくると、実は影がなくなるんですよ。気づかないんですよね、たいがいの人は。そういう工夫、ごまかしをして、なんとかフレームレートを確保して、酔わないように酔わないようにしていますね。
山本:ファミコン、スーファミの時代の、“限られたハード性能の中でどういう表現を編み出すかのか”というのに近いノリですね。その頃の感覚が制作に戻った……というのも変な話ですが、かつての工夫が生きるのがVR制作のおもしろいところだなぁと。ちなみに、プレゼン資料にもしれっと「ありがとう、プログラマー(PG)」と入れておきました(笑)。感謝しとかないと、この先も大変になるだろうなぁということで。
山本:本作でもキーになる魔王というキャラクター。いまだにツイッターでも地道につぶやき続けている、非常に人気のあるキャラクターなんですが、彼をどうするかというところも非常に悩みました。今回は“ドット絵”というシリーズ作の特徴をばっさり切ったのですが……ドット絵からの脱却というのは早々に決めました。
大橋:VR化するに当たって、目の前にテラリウムがあって、生き物をお世話する感覚というのを出したかったんですよね。だから、実在感とか、生命感あるキャラクターを出したかったんです。でも、ドット絵じゃ、ちょっと難しいなあ、無理だなってという側面もあって、3Dモデル化に突き進んだわけです。しかし……旧作が2等身キャラで、顔のアップのグラフィックがあるのは魔王のみ。ぶっちゃけこの画像の一番左にあるような絵しか、モデリング用の資料がないんですよね(笑)。
山本:あとはちょろっと表情のバリエーションがあるぐらい。
大橋:で、等身を上げて、リデザインしてできたのが真ん中ですね。このとき、いかに2頭身キャラからイメージを崩さないで、リデザインしていくかというところを気をつけていきました。その後、中央のデザインで魔王の3Dモデルを作ってみました。そしたら……VR空間上で見てみたら、すっごく顔がデカいんですよ、それがものすごく怖くて。「ものすごく顔のデカイ生き物がこっち見てるぞ!」という感じ。これはいかん、と。
最終的には6等身ぐらいのモデルになるんですけど、デザイン上で気にならない部分が3Dにするとすごく気になってくる。等身もそうなんですけど、魔王の襟がありますよね。高い、アピール度満点の襟。この襟があると、魔王の顔が見えないんですよ。ジャマだなぁって(笑)。これまで2Dで作ってきたので、3Dにしたときの問題が全然わからなくて。
等身の問題でいうと、何度もテストを繰り返したんですけど、プレイヤーと同様のスケールの人間型の生き物を出すときには、等身を上げないと、ものすごく違和感があるなと。薄々そうかなとは思っていたのですが、魔王はファンタジーだし、そもそも人間じゃないし、気にならないんじゃないかな、と……しかし人間型のモデルである以上、それなりに等身を上げないとやはり違和感が出てくる。そのへんは魔王を作る際に気づいたところですね。
山本:もう1つ、魔王の個性として挙げられるのがテキスト。これまではテキストを表示して、そこにSEを加工したごにょごにょ音を入れ、なんとなくしゃべってる感を出していました。しかしVRは、横長のテキストを読むのにまったく適していないんですね。すごくしんどくて。そこでやはり文字より音声で認識してもらおうという話になりました。
最初は魔王がSEでごにょごにょ言っているところに、誰かがそれを同時通訳している……という感じで行こうと思ったんですが、それも違和感がありました。VRというのは、自分がまさにその状況にいるという感覚になるので、認知外で起こっていることはなかなか把握できなくなる。横でゴニョゴニョ言っていてもよくわからない。というわけで、ここはついに、声優さんにしゃべっていただくしかないなと。ここまでのテスト段階では、いろいろありましたけど(笑)。
大橋:そうそう、テキストを画面貼りつけにすると気持ち悪いし、そもそも読んでると目が疲れる。これは魔王のボイス化は避けられないのかなってなったとき、「魔王が喋るってどういうこと?」って。みんな、イメージできなくて。「どんな風に喋るの? どんな声色なの?」と。ゲーム中にどういう風に実装されるのか、全然わからなくて、仮収録では僕が喋って音声を乗せました(笑)。いや、いろいろ試したんですけど、なんともいえない微妙な感じになって。大丈夫か、と。でも、めげずに調整して、こんなもんかなってところにたどりついたところで、満を持して本収録に挑んだら……いやぁ、プロはすごいですね。
山本:プロの声優さんはホントにすごかったね。等身も含めて、ようやく“魔王がココにいることになった”感じ。ゲームの方向性も含め、みんなの完成のイメージが一瞬で湧いたなぁ、と。
大橋:僕のボイスも悪くなかったじゃないですか?(笑) みんな、慣れてきてたじゃないですか。
山本:慣れてはきてたけどね(笑)。
大橋:音声が入ったおかげで、これまでテキストでは表現できなかった”間”だったり、勢いだったり、そういうところを表現できるようになりました。それならではのネタもいろいろ思い浮かんだりしましたね。
山本:状況に対して、こっち向いた方がいいよ、あっちで何か起こってるよ、という視点誘導ということにとっても、大事なキャラになったなぁと思っています。
大橋:対局的な状況の変化を扱うコンテンツ、例えばシミュレーションゲームとかは、やはりなかなかVRゲームに落とし込みにくいと思うんですよ。でも、やり方しだいではうまく落とし込むことができるんじゃないかなぁとも思っていて。例えば状況を説明してくれるホスト役の魔王だったり、ボードゲーム然とした見せ方だったり。見せ方、演出によって、VRコンテンツとして、全然いけるんじゃないかと。
“VR”といえば、疑似体験を得られるアトラクション色の強いコンテンツが魅力的なんですが、“ゲーム”としてそのルール自体を遊ばせるというコンテンツ……例えばオセロや将棋なども、見せ方や表現、演出の仕方で、新しい体験につながるんじゃないかな。疑似体験には向いてないからといって、今まで積み重ねてきたゲームメカニクスを捨てる、あきらめるのはもったいないんじゃないかなと。そういう意気込みでVRに挑んでおります。
山本:これは企画が始まる前なんですが、うちの吉田修平が「VR、VR」いっていたので、ちょっと気になることをツイッターのアンケート機能を使って聞いてみました。「大きくなって小さなモノを見てみたいですか?」と「小さくなって大きなモノを見てみたいですか?」という質問を。すごくわかりやすいんですけど、「大きくなって小さなモノを見る」が15%で、「小さくなって大きなモノを見る」が85%という顕然たる差がありました。
さて、『VなまR』の場合は……(笑)。大きくはならないんですけど、小さなモノを見るというゲームなので、すごくニッチなところなのかもしれませんが。これまでのVRの可能性みたいなところでいうと、まだ気づかれていない部分、埋蔵金がたくさん残ってると思っていて。小さいものを見る、愛でたいという気持ちは現実でペットを飼うことで代用できますが、そこをVRで楽しむという可能性は絶対あるなと。
まだ気づかれていないポイントを探るという意味でも、このIPのいいところ、“まだ狙われてないところを狙う”というコンセプトにも非常に符合しているなぁと、逆の励みにしてます(笑)。先達が作り上げてきた作法やお約束をうまく使い、僕らもゲーム文化、娯楽文化の食物連鎖の環の中に入って新しいものを作り上げていけたらいいなぁという気持ちでがんばっておりますので、今後ともぜひよろしくお願いいたします!
――ゲームのポイントは?
大橋:目の前に広がるRPGの世界。ニンテンドーDSやPSPだったりで遊んできた世界に入り込むんじゃなくて、俯瞰して見られる。ミニチュアが動き出す、ジオラマ感。そこが一番やりたかったところですね。
山本:そのままゲームのネタとして使えるかはまだわからないんですけど、城から出てきた勇者が、どこか街(拠点)に寄っていたり、サマルトリアの王子的な動きをしていたら、気づく人は「あ」って思うんじゃないかみたいなネタ出しを、鳥山が200個ぐらいしていたりだとか(笑)。
昔、体験したものをVRで別のレイヤーの体験として提供するというのは、ひとつ狙い目としてはあるかなと強く思います。あとVR空間の中で、ちゃんとしたルールのゲームを遊ばせるゲームというのは、目立ったものがまだないと思うので、早く選別をつけるという意味では、スピードを含めて、早く仕上げたいという強い意志はあります。
鳥山:体験型のVRが一番多い中、この先ユーザーさんが何を求めるかというと、もっとしっかり遊べるうVRゲームだと思うんですよね。そこに対して、これまでのノウハウ、ゲームのルールをVRならではの表現で遊ばせたいというのが、本来の狙いだったりもします。
――略称は?
山本:ツイッターのハッシュタグ上は、今は『VなまR』でいってまして。で、ユーザーの方のリプライでくれたのが「VなまR」の方がRが入っているからいいんじゃないかって、「あっ」となって(笑)。どっから切り替えていこうかなと。タイトルは毎回なんですけど、すごく迷ってですね、7年ぶりなので、最初『祝!』とやろうしたんですけど(笑)、さすがになぁって。
で、これまでのタイトルでも『or2』だったり、横にすると顔になる『:3D』とか、いろいろ細工してきたんですけど、時間がない中で「じゃあ、はさんじゃえばいいんじゃない?」ってことで(笑)。イメージを作ってみたら、「はまってるね」って。今までに比べると薄くはあるんですけど、アイコンとしてVRという文字もちゃんと入っていますし。
鳥山:タイトルは「ぶい!ゆうしゃのくせになまいきだりたーん」が読み方なんですが、最後を「あーる」と読んでいて。ボイス収録も「あーる」で録ってしまっていて……そっちはお蔵入りになっています(笑)。
――ゲーム全体のボリュームは?
山本:今現在20弱のステージが用意できています。15から20ステージ。1ステージごとの時間は約20分想定。それ以上かかってしまうと、結構疲れてしまうので、短い中でもやり応えがあるものをいかに作れるか、というプランニングをがんばっているところです。
鳥山:『勇なま』シリーズは繰り返しプレイがすごく重要だと思うので、マップの構成などをアクワイアさんに考えてもらっています。
山本:いまは平原のフィールドですが、いろんなステージデザインを考えてもらっています。かなりバリエーションは出てくるかなと思っていますね。
――高低差のあるステージもあったり?
大橋:もちろん、ございます! あります! 思わず地形を覗き込みたくなるような、VRの利点を活かしたマップや遊びを考えています。
山本:L/Rでステージを90度回転させられるんですけど、「それは使わなきゃだね」って話はしてます。岩陰にアイテムが隠されていて、回転させないと見えない場所を作るなど。
――発表後の反応は?
山本:毎日ツイッターを見てるんですけど、ユーザーさんの反応でいうと、「なぜドット絵を捨てたんだ!」という声が相当ありましたね。だから、そこをどうフォローしようかというのが、TGS後の課題ですね。一方で「復活するんだ!」と声も多くて、こんなにバズるとは思っていなかったのが正直なところです。
アナリストのチームに、ツイッター数の跳ね上がり方みたいなのを分析してもらってるんですけど、国内のそこそこの人気のIPで、「ここまでの反響があるのには何か理由があるはずだ」というのを僕らも探さないといけないぐらい、ユーザーさんの反響がありますね。VRになって、どうなるのかってイメージができないという意見もありつつ、遊んだ方の話を聞くと、「こういうことなんですね」って。初めてプレイして、その瞬間に理解していただけるという意味では、予想外の体験感になっているのかなと、自信にはなっています。
鳥山:スクリーンショットの画面で見るのと、実際に体験してみるのとでは全然違うので、どうやって遊んでもらうのかをまず考えないといけないですね。で、実際に遊んでみると、フィールドの木を見るだけでも楽しいといってくださる方もいるので、そういった魅力を伝えられるように努力もしていきたいです。
山本:女性人気が意外と高いというのもありますね。TGSの会場でどんなタイトルがあるか看板を眺めていたら、後ろの女性の方2人が「勇なまVRとかやりたいなぁ」って言ってて、「あーーっ!!!」って。握手しようと思ったんですが、事案発生になりそうだったのでやめました(笑)。ブースに来られたメディアの方も女性の方が多かったみたいで、デザインとしてもかわいい方向に行ってるので、女性の方たちにも楽しんでもらえるかなと。
――巣以外で生み出す魔物は?
大橋:魔方陣系の魔物とかは今作でもやるんですが、繁殖させた魔物を犠牲にして、それを糧にして出てきたり、旧作とは違うルールで魔物を生み出すことを考えています。魔物とのインタラクションも現状だと巣を置くことしかできませんが、魔物を運べたりですとか。運んでいないと魔物が困ってしまって、「助けてー助けてー」といっている魔物を運ぶことで助けてあげられたり、もっとお世話ができるように作れたらいいなぁと考えています。
山本:地面から上半身だけ出てるようなデザインのキャラなんかも考えてますね。新しいキャラはいくつか出てきます。
――フィールドの地形をプレイヤーが干渉できたりは?
大橋:いじってみたくなりますよね? 某箱庭系RPGになってしまいますが(笑)。
山本:マップ全体に影響を与えるような“破壊神スキル”というのをいくつか入れようと思っているんですけど、雷をびしゃーんと落としてみたり、ボム的な役割として、いくつか入れられたらなぁというのはあります。大地そのものを『ポピュラス』的にいじるものは、今のところ考えてないです。
大橋:それであれば、魔物に対してどうするかという部分に注力したいですね。
――今、ツイッターでプレイヤーに質問するのであれば?
山本:企画ダイレクトの質問になりますかね。どんな魔物を出してほしいですか? とかだと、あまりおもしろくないと思いますが…なにかありますか? 開発だけで手いっぱいなもので(笑)。
大橋:『FFVI』から『FFVII』になったときに、どう感じましかたか?というのは聞いてみたいですね。2Dから3Dへのモデルチェンジという意味で(笑)。VRでやりたいことは、魔物、生物とのコミュニケーション。それも1対1でなく、集団。生態“系”として生き物に対して、どう干渉して、全体が変わっていくか。生態系の変化を目の前で感じられるような作品を作りたいと思うんですけど、『VなまR』ではそこまではいかないです(笑)。もっと楽しく遊んでもらえるような方向性にいくと思うので。
僕はシミュレーションを眺めていくのが好きなんですよね、状況がどんどん変化していくような。刺激を与えてあげると、その刺激に応じて、状況が変化していく様を見ていくのが楽しい。そういったものをVRでも体験できたらいいなぁと思っているんですけど、『VなまR』ではそこまでは。ただ、どこまでいけるかわかりませんが、状況変化やシチュエーション変化の要素も盛り込んでいけたらなぁと思っています。
山本:質問の答えになるかわかりませんが、ゲームルールと体験の融合みたいなのをがんばっているとお話させていただきましたが、VR元年と言われている昨今、VRそのものを体験したことのない人が圧倒的に多い中で、VRの中で「見たいですか?」「遊びたいですか?」というのは聞いてみたいですね。空間の中でプレイすることが、どれぐらい必要とされているのかというところは根本的に聞いてみたいところではあります。
鳥山:「現実空間の方が楽しいか? VR空間の方が楽しいか?」とか。
山本:結構シビアな話するなぁ(笑)。
鳥山:ファンタジーの世界なんかでも、中のキャラとのやりとりに楽しみを感じて、愛着が沸いてしまったら、居続けたくなるんじゃないかと思っていて。少し聞いてみたいですね。
――DLCでの追加は?
大橋:夢はいっぱいあります。ユーザーさんからの欲しいよねって声があったら、その都度考える感じですかね。ご期待ください!
・サマーな女子高生にしてはやけに色が白すぎる、そして部屋がまがまがしすぎると思いましたか? 遊ぶゲームを間違えたかもしれませんね、現実も仮想も非情ですなぁ
・珍しければ、そこらをグルグル見まわしてみても構いませんよー
・のぞいてもゲットしたくなるモンスターはみつかりませんよ
・方向キーの右か左をビシーっと押してみてください
・ニジリゴケが10匹かそこらまで増えるのを待つのです
・勇者がちょろちょろ湧いてきましたぞ
・イエーイ! 魔物たちが進軍開始ですぞ。進め! 進め! モノどもー!
・サマーな女子高生の気分でしょうかね
・それでは、いずれまた。できれば破壊神様の自宅でお会いしましょう!
(C)Sony Interactive Entertainment Inc.
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