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2016年10月29日(土)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“Vなまとネコ”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.622(2016年9月15日発売号)のコラムを全文掲載!

第91回:Vなまとネコ

 さあ、いよいよ開幕しましたね、東京ゲームショウ(TGS)2016! 実は、これを書いているのはまだTGSの前なのですが、それでも数々の出展タイトル情報や、特に、昨年に続き話題騒然、PlayStation VRの勢いなども伝わってきていて、今年も熱い4日間になりそうな気配満載です。

 さて、そんな中ではありますが、個人的にはやっと……やっと発表できたタイトルがあります。TGSに先駆けて9月13日に開催された『2016 PlayStation Press Conference in Japan』にて、どーんとデビューさせていただきました! その名も『V!勇者のくせになまいきだR』! いやー、ひとえに嬉しい! 紹介記事のほうでも触れてもらっていますが、かつてPSPで“一定の層”に人気を博した『勇者のくせになまいきだ。』シリーズの正統続編となります。ジャンルをダンジョンマネジメントと銘打ったこれまでのシリーズから、舞台を地上へと移し、そしてまさかのPlayStation VR専用タイトルとして再爆誕となりました。繰り返しになりますが、これを書いているのはまだカンファレンスすら前のタイミングなので、先走ってお話しても爆誕ならぬ誤爆誕に終わる可能性もあります(笑)。というわけで、詳細はデビューの空気とともに、今後いろんな手段でお伝えしていければと思いますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。

 そんな興奮さめやらぬ今回。ゲームとは全然関係ないのですが、我が家に起こったひとつの変化について書きたいと思います。その変化とは、“猫”です。

 僕は、これまでの人生で、犬や猫といった動物を飼ったことがありません。奥さんもそうなのですが、子供の手がかなり離れてきたこともあって、ワンちゃんを我が家に招き入れてもいいかもね、という話を3年くらい前からしていました。とはいえ、そんな簡単な思い切りで命を手に入れることなんてできません。何度かブリーダーにも行き、実際に子犬を抱っこしたこともあるのですが、調べれば調べるほど、いわゆるペットショップ(生体販売)の存在による問題など心が重くなる情報にも触れ、であればと自治体が開催している保護動物の譲渡会に行ってみるも何かと条件が整わず、そんなこんなで覚悟が決まらぬまま今に至ります。知り合いにもいろいろと意見を聞くのですが、ワンちゃんを飼っている人ほど、「散歩が大変」「旅行に行けなくなる」「別れに耐えられない」など腰が引けるようなアドバイスも多く、うーむ、となってしまうのでした。

 犬か猫か、でいえば、奥さんも娘も僕も、犬が好き。いろんな動画を夜な夜な見ながら、可愛いなあ、でも……という日々が続きました。そんなある日のこと。高齢のお爺さんが1人で住んでいる家が近所にあるのですが、そこの庭に、庭といっても手入れがまわらず、プチジャングルの様相を呈しているような場所に、1匹の野良猫が棲みついていることに気がつきました。棲家の真横が地域のゴミ捨て場となっていて、ゴミを捨てに行ったときに気づいたのです。近所に野良猫がいないわけではないので、見つけたときは特段、気にも留めませんでした。……健気にジャングルに佇む猫、ゴミ捨てのときにだけ出会うその猫は、この夏に家主のお爺さんが亡くなったと同時に、姿を見なくなってしまいました。

 最初は、家の主がいなくなったので別の場所に移動したんだなと思っていました。しかしその猫は、なんと今度は僕の家の裏にある、棚の隙間を寝床にするようになっていたのです。それはもう、僕の中では感覚的に、野良猫ではなくなっていました。なんとか仲良くなりたいなあ。でも、近寄ると逃げる。それどころか目が合っただけで逃げる。むやみにエサなどあげてはいけないのかもしれません。が、ご近所に迷惑を掛けないようにしようと覚悟を決め、使い古した灰皿を綺麗に洗い、何度かエサをあげてみました。するとしらないうちに、そのエサがなくなっている。時間を決めて、エサをあげる。なくなっている。そんなやりとりがここひと月ほど続いています。最近では、食べていそうなタイミングでこっそりのぞくと、一生懸命エサを食べる姿を見ることができます。しかし、僕の気配に気づこうものならすぐに逃げる。買ってきた猫じゃらしをいくら振っても遊んではくれません。彼か彼女かは分かりませんが、まだ鳴き声すら聞かせてくれたこともない。でも、僕の家の裏に、確かにあの子はいるのです。

 『 勇者のくせになまいきだ。』というゲームは、小さな命をテーマにしたゲームです。そんなゲームの制作中に出会った、本当の小さな命。たとえ仲良くなれなくても、大事にしたいなあと思うのでした。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP! にて『勇なま。』シリーズや『TOKYO JUNGLE』、外部制作として『Bloodborne』などを手掛ける。公式生放送『Jスタとあそぼう!』に毎月出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.625』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2016年10月27日
■定価:694円+税
 
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