2016年11月1日(火)
中村悠一さん、福山潤さん出演の『AD-LIVE2016』。福山ザデストロイの記憶にマインドダイブ【昼公演】
9月10日の舞台を皮切りにスタートした、鈴村健一さんプロデュースの舞台『AD-LIVE2016』。役柄もセリフも全てがアドリブで紡がれていく90分の舞台劇の今年のテーマは「会いたい人」。ここでは、『AD-LIVE』初参加の中村悠一さんと、福山潤さんが出演した9月25日の昼公演の模様をお届けします。
架空の企業・BELLSON社が開発した“マインドダイブシステム”を使い、会いたい人の心のなかに入ってコミュニケーションを取ります。ただ、会いたい人はとある理由で記憶をなくしていて……というのがおおまかな世界観です。
記憶をなくした役を福山さん。その福山さんの心の中に入る役(マインドダイブする側)を中村さんが演じます。ちなみにこの回の設定を考えたのは中村さんで、福山さんは何も知らずに舞台に。福山さんが決められたのはご自身の衣装だけだったそうです。
そんな福山さんの衣装は結婚式の新郎のようなタキシード。中村さんは白衣を着ていました。会場のスタッフも白衣を着用していたので、会場自体がなんとなく研究所っぽい雰囲気に。研究所でタキシードが浮いているのは言うまでもありません(笑)。
物語は記憶をなくした福山さんが、中村さんから出題される自分のことに関するクイズに2択で答える「クイズショー」からスタートします。
福山さんはクイズ終了までシルエットのみ。クイズの内容は「下の名前はどっち?」「職業は?」「趣味は?」といった、基本的なことばかり。
このクイズで得られたのは、福山さんのフルネームは「福山ザデストロイ」、職業「サラリーマン」、趣味は「チャット」、そして“好きな人がいる”ということでした。
クイズショーから場面が変わり、つぎは福山さんの記憶を取り戻すために、彼の思い出の場所を訪ねる“メモリーバス”へ乗ることに。メモリーバスのなかでは福山さんの好きな人について中村さんから、「趣味のチャットで出会った」という情報が。
さらに福山ザデストロイの年齢は38歳(福山さんの実年齢)であることも明かされました。そして、38歳にして初恋という含みのある設定に、とり乱す福山さん(笑)。
中村さんはたびたびヒントや、答えそのものをくれるのですが、マインドダイブの利用者に本人の失っている記憶にまつわる情報を提供することは“ご法度”。ということで、中村さんには、マインドダイブのシステムから「その情報は不適切です」と警告が何度も出ます。物語の先が読めないまま、バスは福山さんの最初の思い出の場所“机の上”に到着。
セットは机の上らしく、巨大化した文房具が飾られていました。さらに謎のプレゼントボックスもあり、そのなかから中村さんが取り出したのは、派手なピンクの“はっぴ”。
それを福山さんに着せると、記憶がないはずなのに体が勝手にオタ芸を披露! ここで福山ザデストロイは、アイドルの親衛隊だったということも判明します。
そして中村さんは謎の紙(劇中でたびたび登場するアドリブワードの書かれた紙)を引いて「そのアイドルの名前は“きこり”だ」と、読み上げます。アイドルにあるまじき名前と思いきや、それはあだ名であるとのナイスなアドリブをきかせる場面も。
ちなみに「アドリブワード」とは、ファンの皆さんから事前に投稿された言葉。それが書かれた紙を劇中で引いた際、書かれている言葉を必ず使わないといけないという鉄の掟なのです。
アイドルの名前は『星野ゆかり』こと『ゆかりん』。名前を聞くと福山さんは「エル! オーブイイー! I LOVE ゆかりーん!!」と叫び出し、ゆかりんは、斧を振りまわすアイドルと彼女について色々思い出します。斧を持っているからあだ名が“きこり”。とんでもないアイドルの虜の福山ザデストロイは、かなりマニアックなアイドルオタクだった模様です。
ゆかりんが「ブログで“好きな人”ができたと書いていた」と中村さんからヒントが出たところで、再びメモリーバスへ乗ることに。
ここで福山さんが「もしかして、ザデストロイは僕がチャットで使っていたハンドルネームではないか?」と気づきます。中村さんはあっさりとそれを肯定。「じゃあ本名は雅治だ!!」とはしゃぐ福山さん。中村さんは「潤だ」と即座に本名・雅治説を否定していました(笑)。
さて、2人きりだったバスに急にもう1人乗客がやってきます。「3人だけのバスツアーに来てくれてどうもありがとう! 心の大木へし折るぞ♪ きこりアイドルこと、ゆかりんです! バッキバキ!」のキャッチフレーズとともに、ごつい刀を持った80年代アイドル風の女性が登場。突如元気になる福山さんと引き気味の中村さんの対象的な姿が会場の笑いを誘います。
彼女こそが福山ザデストロイの愛してやまないアイドル“ゆかりん”でした。とはいえ、ここはマインドダイブの世界。彼女は本物ではなく、福山さんの心が作り出した存在であると中村さんが説明。本物ではなくても大はしゃぎの福山さん。興奮気味に彼女について早口で語る福山さんの姿はまさにアイドルオタク!!
ここから話題は福山さんの趣味であったチャットの話に。好きな人とはチャットで出会ったという福山さんですが、彼が好きな人もゆかりんのファンだということが分かりました。「チャットの相手はゆかりんじゃないかと淡い期待を抱いていたのに……」とがっかりする福山さん。
ゆかりんが曖昧な表情をしたことと、「潤さん」と名前を知って呼んでいることが少し引っかかりましたが、それは福山さんがこの世界で自分の都合のいいように作っているのかもしれません。そしてゆかりんは、「潤さん、ゆかりん……待っているから」と意味深なセリフとごつい刀を置いて、バスから去って行きました。
ゆかりんが去ると、中村さんは客席を指して「君には見えるかな、この魂が」と言い出します。客席の人たち=マインドダイブに取り残された魂、ということらしいです。更に中村さんは、自身も同じ魂だけの存在、つまり既に死んだ人間であると告白。現世に絶望して自殺をしたので、そのまま目覚めることをやめたそう。
急にシリアスな展開になっていますが、勝手に魂ということにされた客席は笑いっぱなしでした! 中村さんは更に、「現在マインドダイブは起動していない。自分が勝手にマインドダイブを動かし、内部から君を治療している」と続けます。魂すごい。ちなみに魂は生きている人間(ステージ)を見るのが好きだそう。
中村さんの話はさらに続き、「ゆかりんのブログ内容にショックを受け、君は睡眠薬を大量に飲んで自殺をはかった」と。しかし「僕は車で事故を起こしたのでは?」と福山さんが尋ねると、「最初からそれを言うと、君の心が耐えられない可能性があった」との答え。
記憶のない人に、実はあなたは38歳にもなってようやく初恋をするような人間で、推しているアイドルがブログに「好きな人ができた」と書いたことにショックを受けて自殺をはかりました、なんて急に言われても心が耐えられないですよね(笑)。
そしてバスは“お茶の間”といういたってシンプルな部屋に到着。ここでマインドダイブ残り時間10分というアナウンスが入ります。10分後には強制ダイブアウトがかかってしまう警告も! この場所は、福山さんの自宅の居間で、チャットなどもここでしていたそう。さらに福山さんが自殺をはかったのもこの部屋だということが判明します。
マインドダイブの残り時間も少なくなり、「このあとシステムは強制的に再起動される」と中村さん。そして、再起動後に自分は“あの世”へ行っているだろうと。
警告音が響くなかで、中村さんは「チャットの“彼女”は大きな秘密を抱えている。でも、それにお前が気づかないといけない」と言います。そして迎えるタイムリミット。
ここから中村さんによるモノローグのシーンとなります。福山さんとマインドダイブシステムを通じた出会いの物語を振り返り、叱咤激励し、楽しかったと語りました。「見知らぬ幽霊より」が結びの言葉となり、マインドダイブシステムは終了となりました。
暗転が明けると、ステージには中村さんが1人。背景はおどろおどろしく、ご丁寧に”地獄の一丁目”という表記が。マインドダイブのシステム終了後、本当に“あの世”へ来てしまったようです。自嘲的に笑う中村さん、そして沈黙。
もしかしてこれで終わりなのか……? と思っていると、ドタバタと足音を立てながら福山さんがやって来て、「嘘つき! フラれたじゃん!!」と叫んで暗転。客席は爆笑の渦に巻き込まれたまま終幕を迎えました。
カーテンコールの後でキャストのお2人に加え、プロデュースをする鈴村健一さんのアフタートークがありました。ラストのシーンに福山さんがステージに出てきましたが、真っ先に汗がすごいと言う中村さんと福山さん。オタ芸を全力でやりすぎたため、汗が止まらなくなっていたそうです(笑)。
そして「あのエンディングで来る!?」と鈴村さんが福山さんに聞くと、「思った通りの流れだったから!」と福山さん。ラストシーンに出るか出ないかもその場で決めるようです。中村さんは「ラストに(福山さんが)出て来ないように設定を考えた」と告白。鈴村さんも「そうなるように何度も修正していた」と同意します。結果として大ウケだったからよし! ということになりました。
予測不能の90分一本勝負のアドリブ劇は全公演の映像化も決定していますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
『AD-LIVE2016』関連記事
(C)AD-LIVE Project