News

2016年11月20日(日)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“VRが家にやってきた!”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.625(2016年10月27日発売号)のコラムを全文掲載!

第94回:VRが家にやってきた!

 去る10月13日、遂にPlayStation VRが発売になりました! 品薄でご迷惑をおかけし申し訳ない限りですが、実際に遊んだ方の感想をみると、VRゲーミングがもたらす“可能性”を広く感じていただけているようで、とても嬉しい限り。僕も、“視界が覆われて360度見回せるデバイス”くらいだった想像を、実際に装着することで一気に打ち砕かれてしまったクチなので、「すごいよね!?」という思いを皆さんと共有したい気持ちでいっぱいです。

 VR世界の認知については、先ほども書いた通り“想像すること”と“体験すること”の間に、通常のゲーム以上に大きな溝があります。なので、その魅力を宣伝という手法で間接的に伝えのるは難しく、まさにプロモーター泣かせと言えます。ひとつの手段として、体験会などで遊んでもらうのが効果的ということで、TOKYO GAME SHOWやPlayStation祭といったイベントに積極的に出展もしていますが、どうしても体験していただける人数に限りは出てしまいます。よって、より多くの皆さんに知ってもらうにはメディアさんにしっかりとご紹介していただく必要があるのですが、それはそれで伝え方って難しいよなあ…と思っていたところ、今回は特にテレビ番組でPS VRを実際にタレントさんに遊んでもらう姿を数多く目にして、これはうまい方法だなあと思いました。

 たまたま見ていた“ワイドナショー”という番組では、ダウンタウンの松本人志さんが、『PlayStation VR WORLDS』という、VRタイトルが5本入ったソフトの中の、『Ocean Descent』というゲームを遊ばれていました。『Ocean Descent』は、檻に入って深海を潜り難破船を探索するという体験ができるコンテンツなのですが、松本さんのリアクションがまあ面白いのなんの。「これはもう海の中やね!」と興奮されつつ、後半鮫に襲われるシーンでは、「アカン! 噛まれた~!」と大騒ぎ。それを見たMCの東野さんが、「ええお客さんやなあ!」と言われていて、まさに“間接的にVRの魅力”が伝わっているなあと感じました。“ミヤネ屋”でも、宮根誠司さんが同じく『PlayStation VR WORLDS』に入っている『VR Luge』を遊ばれて、その臨場感に椅子から落っこちてしまうというハプニングまで起きました。視聴された方はきっと、どんなゲームかは体感できないまでも、「あれを装着したらどんな風に見えるのか、試してみたい」と思われたに違いありません。それくらい、タレントさんのリアクションパフォーマンスは素晴らしく、魅力的だったのです。

 ゲームは、結局のところ遊んでもらわないとその面白さは伝わりませんが、“どう伝えるか、伝わるか”は、送り出す側は常に考える必要があります。思い出しましたが、昔、最初の『バイオハザード』が発売されたとき、ラジオ番組の“ナインティナインのオールナイトニッポン”で、岡村さんが『バイオハザード』のことを語っている回がありました。そのときの岡村さんは、さてバイオをどう表現していたか。もちろん、フランスのゲーム会社、Infogamesが作った『アローン・イン・ザ・ダーク』というゲームが雛形となっているというゲーム史的な系譜や、プリレンダーで作られた、当時最高峰だった美麗なグラフィックスについて、つらつらと語られたわけではありません。ではどうだったかというと、とにかく岡村さんは、「もうな…ゾンビがめっちゃ怖いねん!!」ということを、ひたすら延々と語られていたのです。味わった恐怖感の、ピンポイントな伝達。それは、考え得る他のどんな方法よりも、『バイオハザード』というゲームの魅力を伝え切っているように思えました。結果的に、“どう伝わるか”を念頭に置いて制作されたからこそ、人から人へとその魅力が伝播していったのでしょう。

 PS VRに話を戻すと、僕は会社ではもちろん開発機を触っていましたが、10月13日、“我が家”には初めて、VRが入りました。被験者として最初に遊び、ダイバー体験に興奮した娘は、嬉々として息子を呼びに行きました。ゲーム慣れした息子は、これまでとはレベルの違う、まるで本物かのような銃撃戦に歓声をあげ、その歓声を聞きつけやってきた妻は、巨大怪獣と対峙し驚嘆した挙句、親にもやらせてみたいなあと語ったのです。「すごいっ?」を人に伝えたい、体験を共有したいという思い、これは本能のようなもので、感情として抗えない。そして本能を伝えるうえで採用される言葉は、「怖い!」「カワイイ!」「綺麗!」など、いつも至ってシンプルなのです。達成するのは難しいですが、こういうシンプルな言葉で表現できるコンテンツは、先の『バイオハザード』のように、やはり強い。そしてVRタイトルは、より高位なレベルで「すごいっ!!」を伝えたくなるのです。

 一方、どれだけ頑張っても言葉ではその魅力を伝えられないコンテンツもある。水口哲也さんが手掛けられた『Rez Infinite』、このゲームの“area X”というステージは、もはや「すごいっ!!」では到底表現できない感動、いや、感動を越えた喜びを与えてくれます。VRは決してリアルを代替するものではなく、VRでしか味わえないリアルを作り出すことができるのだ、ということを教えてくれるのです。覆われた視界の先に見える、新たな世界。さあ、次は誰にこのワクワクを伝えようか!

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.626』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2016年11月10日
■定価:694円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.626』の購入はこちら
Amazon.co.jp

関連サイト