2016年11月27日(日)
『メビウスFF』北瀬氏&浜口氏インタビュー。クライマックスが近付くウォルの物語!
スクウェア・エニックスのiOS/Android/PC用RPG『メビウス ファイナルファンタジー』のインタビューを掲載します。
本作を手掛ける北瀬佳範氏と浜口直樹氏に、Windows版(Steam)のサービスを始めた狙いや、今後の『メビウスFF』の展開についてお聞きしました。
Windows版を配信することになった経緯について
――10月にWindows版が配信開始となりましたが、Windows版を配信することになった経緯を教えてください。
北瀬:僕と浜口も開発に携わっていた『ファイナルファンタジーXIII(FFXIII)』シリーズでSteamへの対応を経験していたというのが大きいですね。
『FFXIII』シリーズでやっていたんだから『メビウスファイナルファンタジー(メビウスFF)』でも可能性はあるよねと。
浜口:そもそも『メビウスFF』は、スマホタイトルではあるもののグラフィックはフルHD想定で作り、そこからスマホ用に落とし込むという流れになっています。
PCで動かしても問題のない素材自体は手元にありますし、本作にはハイエンドなグラフィックで楽しめるという部分に好感を持ってくださっている方もいるので、やってみる価値はあるだろうということで、Windows版の展開へと至りました。
――『メビウスFF』を立ち上げた時から、PCへの展開などは考えられていたのですか?
浜口:最初は全然考えていませんでした。本作は家庭用ゲーム機並みのリッチな体験を手軽に味わってもらうのがコンセプトだったので、それに関してはスマホが適していました。
ただ、家でスマホを充電しながら遊び込んでいるという声もあったので、それなら家庭専用の環境で遊んでもらったほうがいいんじゃないかと。外ならスマホ、家ならPCと、環境にあわせて使ってもらえればと思っています。
北瀬:本作のバトルはオート機能が非常に充実しているので、Windows版を立ち上げてオートで進めつつ、並行して別の作業をやれるのもよいところなんじゃないでしょうか。
――日本ではまだSteamの認知度は高くはないと思いますが、今回の『メビウスFF』や『FFXIII』シリーズを展開してみた感想はいかがですか?
北瀬:『FFXIII』を出したころは認知度も低かったですが、最近は日本のタイトルや日本語対応のタイトルも増えてきて、環境はだいぶ変わったように感じています。
浜口:SteamでのF2P(Free to Playの略称で“プレイ無料”のこと)タイトルも増えてきましたしね。買い切りスタイルが多数を占めるSteamの市場だからこそ、F2Pタイトルの展開に対しては、拒否反応を示すSteamユーザーさんがいることは理解しております。
しかしながら本作はF2Pではあるもののリッチでしっかりとしたグラフィックとゲーム性をウリにしており、そのようなタイトルをSteamに投入することは新しいチャレンジだと位置付けています。その点からも、Steamのレビュー評価が“賛否両論”に反応してくれたことは実は嬉しかったりします(笑)。
『メビウスFF』はこれからもユーザーさんに“新しい体験”を届けていくことを忘れたくないですね。
北瀬:『FFXIII』シリーズの他にも、『FFXIV: 新生エオルゼア』や『FF零式HD』など、弊社のタイトルも最近はSteamで結構リリースされているので、徐々に受け入れられつつあるのではないかと思っています。
浜口:Windows版『メビウスFF』は、まだ日本のみの配信ですが、少し期間を置いてから海外でも配信する予定です。
北瀬:ちなみに『FFXIII』をSteamで初めて出した時は、解像度に対して多くの声が寄せられたりもしました(笑)。
浜口:初のSteam展開だったので、ユーザーさんの求めるところをハッキリとつかみ切れていなくて、多くのユーザーさんから非常に厳しいご意見をいただきましたね(笑)。
北瀬:グラフィックのオプションをいじりたいとか、解像度を変えたいなど。今考えてみると、確かにそうだなと思います。
その経験が、のちのタイトルはもちろん、今回の『メビウスFF』にも生かされています。
――PCは人によっての性能の幅が広いですもんね。
北瀬:今回のWindows版展開も、その点が心配な点でした。スマホでもiPhoneはともかく、Androidは機種が多く、動作確認や対応が大変なのですが、PCだとその対応の幅がさらに広がってしまいます。
浜口:弊社でいろいろな環境を試した結果、まったく動かないというものはなかったんですけど、それでもやはり一部のユーザーさんからは動作についてのご指摘をいただいています。これらに関しても、できる限り対応していく予定です。
――お二人ともコンシューマゲームを長く作られてきたわけですが、Windows版に続いて家庭用ゲーム機での展開はありますか?
浜口:当然、家庭用ゲーム機のノウハウはあるので、機会があれば当然やってみたいです。ただ『メビウスFF』は1年半続いているタイトルなので、コンシューマはイチからのスタートという状況になるのは望ましくないですね。
北瀬:どのスマホでも、そして今回加わったWindows版でも、同じアカウントで遊べるのが『メビウスFF』のスタンスなので、それらの機器と家庭用ゲーム機で連携がとれる状況であるなら、コンシューマ展開も考えたいところです。
『メビウスFF』を1年半続けてきた感触は?
――スマホタイトルの開発・運営というのは、コンシューマゲームとは大きく違うと思いますが、『メビウスFF』を1年半続けて、あらためていかがでしたか?
北瀬:配信当初は、“日々データを見つつミーティングを行い、慣れてきたら徐々にミーティングの回数も落ち着いていく”……というようなイメージでしたが、全然そんなことはなく、この1年半、ペースが緩むことなく毎日ミーティングを行ってます(笑)。
浜口:前の日の結果を受けて検討するという繰り返しですよね。1日の動向や、コンテンツに対しての反応を見て、どう対応するかを話し合ったり。
北瀬:もちろん不具合があった場合もその対応が直ぐに議案にあがります。それと並行して、この先何を実装するかなども話し合わなければいけない。
もちろん、毎日の定例ミーティング以外でも、個別のやり取りはしているんですけど、運営の情報と方針は毎日の定例ミーティングで共有しています。
――ミーティングや開発は何人ぐらいで行っているのでしょう?
北瀬:ミーティングは主要メンバーの6~7人ぐらいです。
浜口:プランニングやプログラムなどの開発はコンソール用ゲーム1本と同じぐらいの規模ですね。
北瀬:さすがに『FFXV』などのチームと比べると少ないですけど、通常のコンソールゲームと同等の体制ですね。
浜口:弊社はコンソールゲームを作ってきて、カットシーンやモデル作成のワークフローができあがっているのが武器ですよね。本作と同等のクオリティ、同じような更新期間でアプリ提供をしようと思ったら、この人数でもキツイのではないでしょうか。
北瀬:『FF』シリーズなのでおなじみのモンスターなどは、過去の資産があります。新しいものを作りつつ、資産も生かすというバランスで、クオリティを維持できているのも我々の強みではあると思います。
――この1年半で一番大変だったことはなんでしょう?
浜口:つねに大変ですね(笑)。印象に残っていることだと、海外版ローンチ時のドタバタでしょうか。
北瀬:海外版の開発や運営は、現地の会社に委託してやってもらうことが多いと思うのですが、『メビウスFF』はほとんど社内でやっています。意見なども自分たちで直接吸い上げて修正したりするので、ワールドワイド対応は大変です。
浜口:日本だと朝、昼、夜というわかりやすいピークタイムがあって、それ以外の時間は比較的気を休められるんですけど、海外版は全世界でやっているので、常に気を張っておく必要があるのも大変な部分ですね。
北瀬:大変とは少し違うかもしれませんが、日本版を遊んでいる海外の人からの声もあります。海外版は日本での配信から1年遅れで始まったのですが、海外版用に調整を加えた部分に対して「ここは日本版と違うじゃないか」と言われることもしばしば。
他にも、海外版より先行している日本版を遊ぶと先のことがわかるので「今はこのカードを取らずに待ったほうがいい」というようなアドバイスをする方もいて(笑)。
逆にいいところもあって、海外版が始まる前から現地のコミュニティで盛り上がってくれていたりもするので、非常にうれしいところでもあります。
――『星のドラゴンクエスト』など、さまざまなコラボレーションも行われてきましたが、その作業はいかがでしたか?
浜口:『星のドラゴンクエスト』とのコラボでいえば、『DQ』シリーズ30周年という記念枠で実現できたところもあり、感慨深いものがありましたね。
北瀬:実は『星のドラゴンクエスト』とは開発段階でもいろいろなつながりがあり、いつかコラボできたらいいねとは、プロデューサーの市村と話していたんですよ。
それが『DQ』シリーズ30周年という枠で進められたので、僕としてもうれしかったです。もちろん『メビウスFF』の世界観、コラボタイトルの世界観の両方を壊さないようにしなければいけないので、大変な部分もありました。
浜口:どの作品とのコラボも大変でした。3Dモデルやグラフィックのクオリティもしっかりとチェックする必要がありましたし。それでも楽しんで作ってましたけどね(笑)。
北瀬:『メビウスFF』のスタッフのなかにも『DQ』シリーズが好きな人間がいて、『DQ』に携われたことを喜んでいました。ユーザーさんの反応でいえば、一番よかったのは『FFVIIリメイク』とのコラボでしょうか。
浜口:そうですね。Windows版でさらにキレイなグラフィックで遊んでもらえるようになりましたし、また『FFVIIリメイク』コラボはやってみたいですよね。
北瀬:要望も多いですし、なにより自分たちが手掛けているタイトルでもありますから、非常にやりやすくもありますしね(笑)。
女性主人公のメイアについて
――『メビウスFF』ではだいたい毎月、公式番組の配信を行っていますよね。他のタイトルの同じような番組と比べて、かなり細かくアップデート内容を解説していているように思いますけど、そうした内容にしている理由などはありますか?
北瀬:他の番組を見ると、うちはなんか違うんだなというのは自分でも感じています(笑)。
浜口:ゲストを呼んでワイワイするようなノリではないですもんね。どちらかというと、本気で遊んでくれている人に対して、こんなに細かいところまで直しましたという説明をする番組です(笑)。
北瀬:オープニングで雑談をして楽しさを演出しようとすると、「そういうのはいいから進行して」みたいなコメントが流れたり(笑)。とはいえ、東京ゲームショウでの生放送などは、お祭りっぽくやらせていただきましたが(笑)。
浜口:あの時も、ちょっとドキドキするような場面がありましたけどね……。
北瀬:結果的には視聴者の方々も喜んでくれたんですけど、やはり本気の視聴者が多く、番組でも細かい部分の説明を期待されているようなので、そこはこれからも、しっかとやっていかなければと思っています。
浜口:配信番組自体『メビウスFF』が初めてだったので、最初は手探り状態でしたけど、今はこの形に落ち着いている感じです。
北瀬:実は今、台本は僕が書いているのですが、締め切り近い月末は頭を悩ませています(笑)。浜口から次の配信で語りたいリストがドッと送られてきて、それを台本に落とし込むのは非常に大変なんです(笑)。
それでも今の手作り感はコンシューマゲームを作っていた時にはなかった感覚なので、楽しくもあります。
浜口:宣伝や情報更新の頻度がコンシューマゲームよりもかなり高いですから、自分たちでやるしかない。そこでのユーザーさんたちとの反応を返すキャッチボール的な感覚はコンシューマゲームと違う部分で、やりがいもありますね。
――初の女性主人公としてメイアが追加されましたが、最初の段階から新たな主人公を追加していくという考えはあったのでしょうか?
浜口:もちろん追加していきたいとは考えていましたが、なにぶん3Dモデルの作成はかなり時間がかかります。『FF』の主人公クラスともなると、さらに時間をかける必要が出てくるわけです。
まず1人の主人公で始めて、しっかりと作成したのちに新たな主人公をという流れになりました。
北瀬:企画の立ち上げ時期には、主人公をどうするかという議論もありました。アバターにして男女から選べるようにする案もあったのですが、今浜口が言ったリソースの問題に加え、『FF』らしいストーリーを軸とした作品にしたいという思いがあったので、しっかりとした性格付けがなされた男主人公を採用することになりました。
浜口:ちなみに今回、女性主人公が加わることで、モデリングを担当するスタッフなどからは「やっぱり女性キャラの作業はやる気が出ます」という声はありました(笑)。
――今後、さらに新たな主人公が追加される可能性はありますか?
浜口:そうですね。ただ、少なくともウォルの物語が完結するまではありません。
北瀬:ウォルの物語の完結はいずれやってくるとは思いますが、それを迎えた時にユーザーさんがどんな反応を見せてくれるかも楽しみです。
浜口:一応言っておきますが、物語完結の先に関しては、まだまだ検討段階です。
北瀬:まずはウォルの物語の完結。1年半以上一緒に歩んできた物語の完結を目にした時にユーザーさんがどんな感情を抱くのか……。『FF』作品なので感動を与えたいと思っていますし、感動してもらえることを願っています。
――最後に、今後の展望を聞かせてください。
浜口: 『メビウスFF』は、いよいよ最後のクライマックスに近づいてきており、お客さんからもストーリーの先行きを楽しみにしてくれているのが伝わってきます。
『メビウスFF』の結末をお客さんがどのように受け止めてくれるのか今から楽しみにしていたります(笑)。
もちろん、できる限りお待たせしない速度で配信していきますので、これからも『メビウスFF』をどうぞよろしくお願いいたします。
北瀬:コンシューマゲームには、印象に残っていて、未だに語り継がれているタイトルがたくさんあります。歴史が浅いという点はありますが、スマホのゲームにはまだそれがありません。
いずれウォルの物語がクライマックスを迎えますが、スマホのゲームでも10年後にも印象に残っていて、いつまでも名作として語られているようなものを目指しているので、それを実現したいと思っています。クライマックスの展開に、ご期待ください。
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データ
データ
- ▼『メビウス ファイナルファンタジー』
- ■メーカー:スクウェア・エニックス
- ■対応機種:PC(Windows)
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2015年6月4日
- ■価格:基本無料/アイテム課金