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2016年11月16日(水)

『ポケモン GO』がベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016の最優秀賞に輝く。チームのメンバー数はなんと数万?

文:あべくん

 11月16日、東京のLUMINE 0(ルミネ・ゼロ)にて、2016年にもっとも活躍し、日本中を沸かせた“ベストチーム”を表彰する“ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016”表彰式が開催されました。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

 ビジネスやスポーツ、エンタメなど、各業界においてもっとも顕著な業績を残したチームに贈られるこちらの賞。全5チームのノミネートのなか、見事、最優秀賞に選ばれたのは『Pokemon GO(ポケモンGO)』チーム。なお、ノミネートされたのは、下記の5チームです。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

【最優秀賞】

●『Pokemon GO(ポケモンGO)』チーム

【優秀賞】(以下、発表順)

●体操男子団体チーム

●COGYプロジェクトチーム

●113番元素(ニホニウム)発見チーム

●『君の名は。』チーム

 ここからは、表彰式の模様をお届けします。

『ポケモンGO』の開発チームは数万人? それぞれのチームの裏話を紹介

 表彰式には、ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会の委員長である齋藤孝氏と、総合プロデューサーのおちまさと氏が登壇。齋藤氏からは“今年のベストチーム”の審査の基準が語られました。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

 齋藤氏によると審査では3つの点を重視したとのこと。1つめは実績・成果、2つめは組織力・チーム力、そして3つめはチーム内外の影響力・満足度です。特に2つめの組織力については、個人ではなくチームで力をあわせて戦い結果を出すということ、3つめのチーム内外の影響力については世の中の多くの人を満足させたかどうか、を強調されていました。

 また、ノミネートしたチームの実績に対しては「未来を感じさせてくれるものが多かったです」とコメントしていました。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

 ここからは、受賞された各チームのコメントなどをご紹介します。

 まず優秀賞として、体操男子団体チームを発表。体操男子団体チームは、リオデジャネイロオリンピックで3大会ぶりの金メダルを獲得。予選での結果を踏まえて決勝に向けて課題を修正。そしてチーム力で勝利をつかみとり、日本中に感動を与えました。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

 表彰式には、ビデオレターの形で監督の水鳥寿思さんと選手の内村航平さんが登場。水鳥さんは受賞の喜びを述べた後「4年後の東京オリンピックに向けて、ひとつ上のステージで戦えるように頑張っていきたいです」とコメント。

 内村さんも「金メダルを獲得したことで、世界一のチームワークを見せることができたと思っています。2020年にもつながるいいチームワークだと思いますので、今後もよろしくお願いします」と述べていました。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』
▲水鳥寿思さん。
『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』
▲内村航平さん。

 続いて優秀賞を受賞したのは、COGYプロジェクトチーム。COGYは歩行するのが困難な方が日常生活を送るためだけでなく、リハビリもサポートする世界初の足こぎ車イスです。どちらかの足を少しでも動かせれば、自分の両足でペダルをこげる可能性があります。医療施設のリハビリにも導入されているとのことです。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

●動画:“COGY”あきらめない人の車いす

 受賞を受けて「COGYによって、もう1度自分の足で立って歩くという方がたくさん現われ始めています。それを評価していただけたことがうれしいです。足こぎ車イスに携わってきた方々全員がチームだと考えております」とコメント。

 加えて「多くの患者さんは、これまでのチャレンジでは何をしても動かないという経験をされていて、このCOGYに乗るというチャレンジにも不安がられています。しかしCOGYに乗り一歩踏み出していただければ、新しい世界が広がります。そういった新しい体験をされる方を、このチームでどんどん生み出していきたいです」と述べていました。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』
▲登壇されたチームには「みなさんにとってチームとは」の問いかけが。COGYプロジェクトチームは「あきらめない仲間」と回答されていました。

 次に登壇したのは113番元素(ニホニウム)発見チームです。113番元素(ニホニウム)は国際的に認定された新元素。発見者として新元素の命名権が与えられ、元素周期に初めて日本が発見した元素が加わることになります。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

 受賞について「(新元素の)命名権獲得という成果は、実験グループだけでは成し得なかったこと。かかわった人間すべての努力がかみ合ったからこそ成し得た成果です。私たちは119番、120番というさらに新しい元素の発見を目指して今後も研究を進めていきます」と語られました。

 なお、この新元素を発見する取り組みが始まったのは1985年ころなのだそうです。加速器の開発から始まり、実験装置の開発、下積みの実験を繰り返し続けて、本格的に113番を目指し始めたのが2001年。そして発見したのが2004年。

 そこから論文の提出や国際的な機関の審査などをへて、今回の認定にいたったとのことでした。現在は、次の元素を見つける準備を着々と進めているのだそうです。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』
▲チームとは“個々の融合”だそうです。新元素は亜鉛とビスマスを融合させたものですが、実験を行うチームも全員の個性、能力がうまく融合されたことにより、この結果が生まれたと述べていました。

 続いて『君の名は。』チームが優秀賞として登場しました。映画『君の名は。』は8月に公開され、11月に入った現在も上映されており、台湾や韓国でもヒット。日本にとどまらず、世界に大きな影響を及ぼしています。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

 始めに本作の監督である新海誠さんからのメッセージが。新海さんは今回の受賞をとても光栄と述べ「『君の名は。』はチームプレーの賜物といえる作品です。チームのなかで試行錯誤を繰り返しながらずっと取り組んできました。このチームでなければ成し得ない作品で、ここまでたくさんの方々に届いたのはチームプレーの成果です」とコメント。

 本作は、脚本の打ち合わせから作品の細部にいたるまで、すべてのスタッフのチームワークの賜物であり、作品そのものについても、このタイミングでしか交わることのなかった才能の重ね合わせによって作り上げられたものだそうです。

 なお、おち氏は本作を4回観たとのこと。そんなおち氏からは「細かなディテールを積み上げていった結果が『君の名は。』の完成度の高さにつながったかと思うのですが、あれだけのものをチームでどうやって作り上げていったでしょう?」といった質問が投げかけられました。

 それに対し『君の名は。』では、形ができた段階でビデオコンペを行い、全員が見られるようにして作品の盛り上がりなどを繰り返し検証していったのだそうです。それが上映時間の107分の完成度を高めていくという結果につながった、ということでした。

 そして「何度観ても飽きない」という声についても、『君の名は。』では1回観ただけでは理解できないほどの情報量をあえて詰め込んでいるのだそうです。

 新海さんは「本作は若い年代をターゲットにしていますが、彼らが何を好きなのかわからない。ですので過剰にものを詰め込んで、そのなかから好きなものを見つけてほしい」と制作時に述べていたとのことでした。

 最後に「チームとは」の質問に対しては「誰もズルをしない事」と回答。本作の制作時は、それぞれのパートで誰もラクをしたり、手を抜いたりしなかったのだそうです。「そういったこと1つ1つの積み重ねが、たくさんの人に受け入れられ、観ていただけたという結果につながったのだと思います」と述べていました。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

 そして、冒頭でも述べましたが最優秀賞に輝いたのは『ポケモンGO』チーム。『ポケモンGO』は発表と同時に社会的現象となり、AR技術を生かした遊びや世界観に多くの人が魅了されました。日本発のゲームである『ポケモン』が、国を越えたチームのコラボレーションにより世界に影響を与えた作品でもあります。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』

 表彰を受け「『ポケモンGO』をリリースしたことでたくさんの方から、外に出ることが多くなった、家族や友だちと外に出て遊ぶようになった、ということを報告していただきました。その言葉ひとつひとつが励みになっています」とコメント。

 なお、本作の開発時は、チーム全員が“家の外にゲームを持ち出そう、そして、より健康的なゲームを作ろう”という共通のビジョンを持ち、それぞれの意見を尊重しながら開発してきたのだそうです。

 そして、チームの結束を強めるために習慣にされていたのは“オーバーコミュニケーション”であるとのこと。毎週、ネットワークを通じてミーティングを行うことに加え、メーリングリストに開発チーム全員が参加することで、内容を共有しお互いが何を考えているのか理解できるようにしたとのことでした。

 そして、ローンチの順番がオーストラリア、アメリカ、と続き、日本での配信がやや遅れたことについての説明も行われました。

 『ポケモンGO』は、基本的には英語で開発が進められていたことに加え、アクセス過多によるサーバーダウンも懸念されていたそうです。ですので、人数が比較的制限されており、かつ、英語圏であるオーストラリアが最初の地域となったとのことでした。

 日本での配信が遅れたのは、想定以上の反響があったためであり、日本で配信する際にはサーバーが落ちないようにしたい、という背景があったそうです。

 なお、『ポケモンGO』の開発リーダーとしてチームを牽引した野村達雄さんは30歳なのだそうです。また、野村さんはもともと『Google マップ』のエンジニアで、ゲームを作ったことがなかったといいます。

 そうした若いリーダーが中心となったプロジェクトが成功したことについて、野村さんは「周りの方が非常にサポートしてくれましたし、ポケモンさんも『ポケモン』という大事なコンテンツを預けてくれました」とコメント。

 ポケモン側も「野村さんがトップを勤めるならやる」と、野村さんに対して強い信頼を寄せられたとのことです。また、野村さんはゲーム開発が始めてであったからこそ、周囲もしっかりとサポートを行ったと、成功の秘訣を述べていました。

 そして『ポケモンGO』の開発チームは、ある意味では万単位かもしれないという話も。というのも、『ポケモンGO』の開発では“たくさんの人を一般公募し、不完全な状態のゲームを遊んでもらってフィードバックをいただく”というプロセスを組み込んだからだそうです。

 最初は数千人だったのが、最後には数万人規模のものになったとのこと。当初「アマチュアの方にお願いするのはどうか」というためらいはあったものの、結果として、参加された方々は非常に献身的で、外部に内容をもらすことなく、クオリティの高いレポートをどんどんあげてくれたのだそうです。

 「本当に、その数万人の方々もチームだと思います」と述べられていたのが印象的でした。

『ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016』
▲チームとは「同じビジョンを共有し、一人ひとりが出来ることに全力を注ぐ」こと、と回答されていました。

 表彰式で受賞されたチームの皆さんのコメントを聞いていると、どのチームからも固い絆、そして現状に満足することなく進歩し続ける、という強い意思を感じることができました。

 チーム力の重要性を強く実感できた、“ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016”。2017年はいったいどんなチームが日本に活力を与えてくれるのでしょうか。少し気が早いですが、新たなすばらしいチームの登場に、期待せずにはいられません。

(C) ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会
(C)2016「君の名は。」製作委員会
(C)2016 Niantic, Inc.
(C)2016 Pokémon. (C)1995-2016 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

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