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2016年11月26日(土)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“いのち”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.626(2016年11月10日発売号)のコラムを全文掲載!

第95回:いのち

 相変わらず、『V!勇者のくせになまいきだR』を死にものぐるいで制作している日々。TOKYO GAME SHOWやプレイステーション祭を経て、メディアの方含め遊んでくださった皆さんのご意見もリサーチしながら、さらに面白い要素を加えるべく制作陣一同頑張っております。

 さて、『勇なま』シリーズは一見、臆面もなくふんだんに取り入れたパロディ要素が話題になりがちですが、実は大元に、“命の連鎖”を表現しよう、というテーマが存在します。魔物は魔物を食べることで命を繋ぐ。たとえ死んだとしても、そのエネルギーが土に還り、また新たな命を育む。魔物だけではなく、倒した勇者すらも、大地にとっては養分となる。プレイヤーの立ち位置は“破壊神”という設定ですが、実は命の“創造神”なわけですね。表だってはピンとこなくても、プレイ後に“なんとなく”そんなことを感じてもらえればいいなあと思いながら毎回作っているのです。なぜそんなテーマを入れ込もうと思ったかというと、有体には、どうあれ「殺すゲーム」が多くなってきた反動があります。僕も過去には、『立体忍者活劇 天誅』という、忍者となって敵を切りまくり、散華と舞う血しぶきに酔いしれるゲームを作ったことがあります。このときは、いわゆるシューターにありがちな、ただ敵を撃ち殺すという“死”ではなく、命の華が散る“ロマンとしての死”を表現したいという思いが強かった。なので、切腹のシーンを入れ込んだりもしました。しかしそこに明快な死生観があったわけではなく、理屈は用意しつつも、正直なところとしては、“刺激としての死”を用意したかっただけかもしれません。

 僕の2人の子供たちがまだ小さかった10年前。近所にある土手に、しょっちゅう2人を連れて遊びに行っていました。そんなある日。なんとはなしに遊んでいる僕の頭上に、ひらひらと何かが舞い降りてきました。 瀕死のアゲハ蝶でした。僕は、地面に落ちて羽をパタパタさせているそのアゲハ蝶のことを、子供たちに教えました。すると当時4歳だった長男が、その蝶の上に石を落とし始めた。 それを真似し、2歳の妹も同じように石を落とし始め、アゲハ蝶は、羽をボロボロにしながらあっけなく死にました。一瞬子供たちを叱ろうかと思ったのですが、止めました。

 思い返せば僕も子供の頃、一体何匹の昆虫を惨殺したか知れません。カナブンに紐をくくりつけ、飛ばして遊んだあとは振り回して殺す。カマキリを水に沈めて殺す。蝶の羽をむしって殺す。 人間には、殺生欲があると思います。 しかしその殺生欲は、幼い頃の昆虫大量虐殺によって、ある程度は満たされているのではないか。 昆虫は、地球上に住む生命体の中でもっとも完成した生物らしいのですが、その“完成”の意味には、人間の殺生欲を抑制するための被虐殺因子、という要素も内包しているのかもしれない。もちろんそれが人間の傲慢な考えであることは承知の上で、だからこそ、“尊い”“かわいそう”といった一方向からの価値観で、子供たちを叱ることはできない。そう思ったのです。

 その翌年くらいのこと。義父から息子へ、ヘラクレスオオカブトムシがプレゼントされたことがありました。息子と一緒に、子供の頃の憧れを不意に手に入れた僕は大変に喜び、大き目のケースを買い、土を敷き換え、橡の木を置き、専用の餌を与え、毎日眺めていました。 ヘラクレスオオカブトムシという一般名詞では愛着が沸きにくいと思った僕は、息子に名前をつけるよう言いました。彼は、当時大好きだった電車、成田エクスプレスから下の句を取り、“カブトエクスプレス”という相変わらず呼びにくい名前で、ヘラクレスのことを世話していました。しかし そのカブトエクスプレスが、数日で死んでしまったのです。 成虫になってしばらくは突然死ぬことが珍しくない、とは調べて知っていたものの、あまりにも簡単に死んだので愕然としました。息子にその死を伝えるつらさというよりも、義父に申し訳がないという理由で、しばらくは「夜行性だから昼間は眠っている」ということで場を凌ごうとしたものの、早晩バレてしまいます。 息子に事実を話し、ベランダの植木鉢に土を盛って埋めました。息子は、なぜ土を盛るのか聞いてきました。生き物は土に還り、その土が草木を育て、空気を作り、それを人間が享受する、という連鎖を彼に説きましたが、当然、5歳児に伝わるわけがありません。それから10年。常に孫に対して破顔で接する義父も、七十歳を大きく過ぎました。アゲハ蝶や カブトムシの死を説明できなかった僕は、そう遠くはない未来に訪れてしまうであろう、大好きなおじいちゃんの死を説明することができるのだろうか。 生き物に対して唯一、平等に与えられた現象である“死”が持つ意味を、どう説明すればよいのか。 その答えは、いまだに見つかってはいません。

『勇なま』は、命の連鎖をテーマにしています。死を説明できない僕ですが、しかしゲームだからこそ伝わる“何か”がある。そう思って作っているのでした。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

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■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
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