2016年12月3日(土)
カプコンから、2017年1月26日に発売されるPS4/XboxOne/PC用ソフト『バイオハザード7 レジデント イービル』。本作の開発者インタビューを掲載する。
『バイオハザード7』は“恐怖”に焦点を当てて開発されたシリーズ最新作。写実的なグラフィック表現、主観視点でのゲームプレイにより、これまでにない没入感を実現している。また、PlayStation VRに完全対応していることも話題となった。
お聞きしたのは、第1開発統括の竹内潤さん。『バイオハザード7』発表時の印象やPS VR対応当時、そして佳境に入った開発についてなど、さまざまなことを質問している。発売を楽しみにしている人はぜひご覧いただきたい。
――E3 2016でシリーズ最新作であり、ナンバリングタイトルの7作目にあたる本作が発表されましたが、そこで得られた反響はいかがでしたか?
『バイオハザード』シリーズとして現在までに複数のタイトルを制作してきましたが、今回は“ホラー”の部分に焦点を絞ったゲームということで、それが“どのようにユーザーに受け入れられるか?”という部分ではかなり覚悟をして臨みました。
ただ発表の仕方とか、そういった事前の準備はしっかりしていまして、それがうまくハマってくれるかどうかも心配でしたが、想定通りに進められたと思っています。
――タイトルの発表と同時に配信された体験版『ビギニングアワー』はいまだに大きな反響を呼んでいますが、そちらの手ごたえはどのように受け取られていますか?
まず遊んでいただいたユーザーの人数が想定外に沢山だったことに驚いています。それと、まさかあそこまでやり込んでいただけるとは思っていませんでした。「クリアできるんじゃないか?」と思ってプレイされた方も多いようで「あくまでこれは体験版なんです!」という感じで、なんか申し訳ないです(笑)。
――体験版ながらも多くの謎が盛り込まれていて、完成版に期待が膨らむ内容でした。
“人形の指”を含めて、多少なりとも仕掛けを入れようと盛り込んだんですけど、世界的に大騒ぎになってしまって、海外では「あの指はどこで使うんですか?」と聞かれました。
ユーザーの攻略スピードとインターネットで拡散する情報の速さに驚かされました。それによって謎の仕込み方などを掴めたので、体験版を準備しておいてよかったと思っています。
――コンセプトとして“狭く・深く”というのを掲げられていますが、こちらにしようと思われたきっかけは?
『6』の発売後、ユーザーから「サバイバルホラーをもう1度遊びたい」という意見をいただいておりまして。しかし、近年のアクション性の強いタイトルはセールス実績がいい。そういう両方の声も出て来たことで、「次はどんな作品を作っていこうか?」と考えていきました。
結果として「今のユーザーにもう1度サバイバルホラーの原点を楽しんでもらおう」となり、その時にやっぱりスタッフに対してわかりやすく“標語”ではないですけど、コンセプトが必要だと思いまして“狭く・深く”という言葉が自然に出てきた感じです。
決して世界中で起きているバイオテロと戦うゲームではなく、これから作るのはこの屋敷で起こる1つの出来事なんだと。それをどこまで深く作りこんでいけるか勝負する、ということを図を書いて説明しました。
――そのコンセプトは実現できましたか?
はい。今回は私がこれまで携わってきたいろいろなゲームの中でも、ここまで最初にイメージしたものを最後までブレずにやり遂げられたのは初めてというくらい、コンセプト通りに制作してくれました。
――想定通りになった部分だけでなく、想定以上になった部分はありますか?
想定通りになった部分は、ゲーム全体の構成ですね。実際にテストプレイをしていただいた方から「昔の『バイオ』を思い出します」という感想と同時に、「しっかりと今のゲームになっていて、いいですね」という意見も聞くことができまして。そこは想定通りの内容に仕上げられたと思っています。
あと「怖い」ということも言っていただきたくて制作したんですけど、我々が思っていた以上に「怖い!!」という言葉が聞こえてきました。こちらは想定以上になっている感じですね。
――開発スタッフの方から、「自分で作っているのに改めてプレイしたらビックリした」という話も聞きまして……。
“ホラー”というのはロジックなんですよね。開発に携わっていると、どうしても感覚が麻痺してしまって怖いかどうかはわからなくなることがありますが、「これは怖い!」というメカニクス、こうすればユーザーは怖がるだろうというのはある程度わかっていますので、それをそのまま丁寧に作っているのです。
そのメカニクスは人間としてどうしようもないところがありますので、気を許していると何度でもビックリすると思います。
そういった仕掛け的なことと同時に気をつけたのが、何もなさそうな場所でも怖いと思ってほしいと考えていました。何もない廊下を歩いている時でも、「この曲がり角はヤバイんじゃないとか?」ということを感じていただけるように制作しています。
ただゲームに慣れている方や『バイオハザード』シリーズのファンの方にはそのくらいでは怖がってもらえないと思っていますので、そういう方に対しては“深く”の部分ですね。ゲームをよくご存知の方に対しての楽しませ方も盛り込んでいます。
――緊張と弛緩、そのテンションのメリハリのような部分にすごく気を使われているように感じました。
そこはディレクターの中西も私も、すごい気を使った部分ですね。我々は“セーフルーム”と呼んでいますが、データをセーブできる部屋があるじゃないですか。あそこには敵を出さないという暗黙の了解を作ろうと。
セーフルームの外は安全地帯がないような作りですが、そこに逃げ込んだ時には完全に気を許しても大丈夫なようになっています。
――プレイヤーの視点としてアイソレートビュー(1人称視点)を導入された意図について改めて教えてください。
今回はサバイバルホラーの“ホラー”に焦点を絞ると決めていましたので、ホラーにつながらない要素は、なるべく削ってスリムにしようと考えていました。オンラインプレイやCo-opの要素を排除したのは、そういった理由からです。そうすることでプレイヤーは寂しくなるじゃないですか。そこが狙いだったんですよ。
私個人として、『7』は“孤独”が裏テーマだと思っているんです。このゲーム自体が「孤独というものをどう捉えるか?」というところがポイントになる内容ですので、それを表現するため「孤独だからこそ感じられる恐怖」というのを目指して導入しました。
――アイソレートビューだからこそPS VRが生きた印象ですが、PS VRの対応は最初から決めていたことですか?
VRについては2年前、企画の立ち上げ当初から中西と「挑戦したい」と話していました。けれど当時の機器はまだ高価で、すぐに市場に普及するのは難しいと保留にしていたんです。それから開発を進めていたところに、たまたまソニーさんからPS VRの話をいただきまして「ついにキタ!」と。中西も「これは『7』に追い風が吹いてますね。やりましょう!」と話が進みました。
目指していたのが孤独感でしたので、実現できたことはすごくラッキーな部分ではありました。メカニクス的には相性がいいんですけど、いざ取り組んでみると、「こんなに解決しなくてはいけないことがあるのか!」と驚きました。VRの開発チームは大変だったと思います。
――PS VRの開発チームは、どんな作業をされていたのでしょうか?
▲『バイオハザード7』開発チームの様子。あくまでイメージで、PS VRチームではない。 |
『7』の開発セクションの中にPS VRの開発チームがある形で、人数的には10人前後ですね。そこでは酔いの対策や操作関連のオプションとして何を用意するか、あと見える範囲はどう設定するかといったことを調整しながら、なおかつ処理速度にも気を配っています。いろんな対応のために専属でがんばってくれたチームです。
彼らがPS VRの可能性を信じてトライしてくれたので、すごくいい結果になったと思います。
――冒頭から最後まですべてVRに対応というゲームは現状ではまだ少ないですが、それを実現しようと思われたのは?
VRの可能性といいますか、VRの先にある世界も含めて、今からチームなり会社はトライしていかなくてはいけないと思っていました。けれど何でもいいわけではなくて、VRとVRゲームは、まったく違うものなんですよ。
現在出回っているのは“仮想現実体験”が中心で、高い場所を歩いたり、すごいスピードで移動したりするもの。それはそれですごいですし、おもしろいと思いますが、それだけは“ゲーム”ではなくて“体験”ですよね。
我々はゲーム屋ですので、あのデバイスを使ったゲームを作らなければいけない。それが『バイオハザード』の新作だとしても、やっぱり最初から最後まで遊べて当然だと。「フル対応にするからこそ得られるものがあるんじゃないか」ということは、PS VRの採用が決まった段階でスタッフと話しました。
――モニター画面とPS VRの両方でプレイしましたが、PS VRのほうが視界が広く感じられて、より深い没入感が得られました。
開発スタッフが“狭く・深く”というテーマ通り、手抜きをせずに作ってくれましたので、そういった意味でもVRとの相性が非常によかったと思います。
PS VRならではの遊びとして、廊下の向こうに何があるのか覗き込んだり、しゃがみ姿勢にならなくてもテーブルの下が見られたりするんですよ。そのほかVR酔いの対策として設定した角度で方向転換ができるなど、操作やカメラ設定のオプションを多数用意しています。
個人差はありますが、VRは乗り物酔いと同じで徐々に慣れてくるものなので、プレイヤーの慣れも考慮して設定できるようになっています。
――現在までホラーを押し出してプローモーションをされていますが、実際に触ってみて『バイオハザード』らしさも強く感じられました。そこは狙い通りですか?
やっぱりホラーのゲームを作りましたので、ホラーが好きなユーザーに楽しんでいただきたいと力を入れてきました。「お待たせしました、ホラーの『バイオハザード』です!」ということをすごく言いたかったんです。なので、今回は「怖いゲームってことは知っているけど体験したいから!」、そんな覚悟を持ってご購入していただきたいと思っています。
あと、ホラーとしての側面は十分みなさんに伝わったと思いますので、今後は徐々にゲームの内容ですとか、そういった細かいところをお伝えしていきますので、ご期待ください。
――『7』の要素の中で自信のあるところや、ぜひ注目してほしい部分などはありますか?
ホラーが苦手なユーザーもいらっしゃると思いますので、日本国内版としてCERO Dバージョンもご用意しております。そちらで、ぜひ体験していただきたいですね。
あとは「『7』が『バイオハザード』とは違うゲームなのでは?」と思われている方も多いと思いますが、プレイしていただけば、間違いなく『バイオハザード』です。もしかするとスタートしてからしばらくの間、「これは本当に『バイオハザード』なのか?」と首をかしげながら遊ばれるかも知れません。
でも、その流れがあるからこそ、皆さんは『バイオハザード7』の世界に肩までどっぷり浸かれると思います。今回非常にいろいろなことに気を配って作っていて、“サバイバルホラー”として改めてここが我々の原点ですと言えるゲームになっていると思います。
――ベイカー・ファミリーのなかでお気に入りのキャラクターは誰ですか?
私はルーカスですね。なんだか、どうしようもなくダメなヤツ感が漂うんですよ。おかしくなったわけではなくて、もとからコイツはおかしいんじゃないかって気がするんです。あいつだけ、ちょっと異質ですよね? あの感じが凄く気に入っています。
モーションキャプチャーを担当した役者さんにもノリノリで演じていただきました。すごいおもしろいヤツですので、ぜひ本編でプレイして、確認していただければと思います。
――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
『7』は、原点である怖い『バイオハザード』をもう1度作ろうと襟を正して作った作品です。私はゲームのことを作品と呼ぶのはあまり好きではないんですけど、今回に限っては私自身、最初のコンセプトどおり作りきれたと思っていますし、スタッフのがんばりなどを含めて1つの“作品”として見ていただきたいと思っています。
非常に怖いゲームですが、間違いなく楽しめる内容に仕上げてあります。ぜひ遊んでいただいて、2017年のホラーはこうだ、ということを体験してもらえたらうれしいです。恐怖に尻込みせずに、トライしていただきたいです。
(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
データ