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2016年12月14日(水)

15周年を迎えた『零』1作目を掘り下げつつシリーズの魅力を振り返る【周年連載】

文:ライターM

 あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中です。

“周年連載” “周年連載”

 第50回でお祝いするのは、2001年12月13日にテクモ(現コーエーテクモゲームス)から発売されたPS2用ソフト『零~zero~』です。今回は、身の毛もよだつ和風ホラーの名作にスポットを当てつつ、シリーズの魅力を振り返ります。

 さて。皆さんは、和風ホラーゲームといったらどんなタイトルを思い浮かべますか? 実際に聞いてみると意見が分かれるもので、懐かしいところでは『トワイライトシンドローム』や『SIREN(サイレン)』、新しいところでは『ナナシノゲエム』や『夜廻』などが挙がります。インディーズでは『青鬼』や『コープスパーティー』といった、映画まで作られた話題作もありますね。

 そんな数ある和風ホラーの中でも、筆者が頂点だと思って疑わないのが、この『零』シリーズです。

“周年連載”
▲霊に襲われ命を落とした者が、新たな犠牲者を求め彷徨(さまよ)う。不条理な負の連鎖が待ち受けます。

『零』を知らない方のために……

 本作の存在を知らないという人は少ないでしょうが、作品の概要を一行でまとめておくと

“美少女による幽霊相手のカメラ小僧”

です。

 物語は、霊感を持つ少女・雛咲深紅が、行方不明の兄・真冬の手がかりを求めて氷室邸に迷い込むところから幕を開けます。調査を進めるうちにこの世ならざる者の襲撃を受け、やがて屋敷にまつわる恐ろしい儀式の秘密を知ることに……。

 システムは、3D俯瞰視点で描かれる屋内やフィールドを舞台に、“射影機”と呼ばれる特殊なカメラで浮遊霊や地縛霊を撮影&除霊していくという、かなり斬新なアクションとなっています。

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 霊を射影機のファインダー内にとらえると霊力がチャージされて、シャッターを切るとためた分のパワーで霊を攻撃。すでに死んでいる相手に体力というのも何ですが、霊の体力をゼロにすると浄化できます。

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▲射影機を構える兄・真冬と、彼の後を追って氷室邸を訪れる深紅。彼が遺した射影機が、深紅を事件の核心へと誘います。

こんなところがおどろおどろしい!? 随所にちりばめられた恐怖の演出

 とりわけ『零』が名作といわれるのはなぜなのか? 一番の理由は“カメラで幽霊を撮影して倒す”という独自の設定と、徹底的に“和”にこだわったビジュアルではないでしょうか。

 舞台となる日本家屋の迷路のような構造や、湿り気まで感じさせる色使い。小ぎれいな日本人形や不気味な古井戸、揺れる注連縄(しめなわ)、軋む床板など、「何かが起きそう」と不安を掻き立てる小道具をこれでもかと凝縮。

 そんな小さな積み重ねにより、衣文掛け(えもんかけ)にかけられた和服や家具が生み出す影にすら怯えさせられ、潜んでいるかもしれない何かに向けてファインダーを合わせてしまいます。

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▲いそうでいない、でもちょっとだけ何かがいるかもしれない日本家屋。ビクビクしながら奥へと進む感覚は、さながらお化け屋敷のようです。

 恐怖演出として他にも気になったポイントには以下のようなものがあります。

Point1:ファインダー越しの視界が生み出す恐怖

 撮影によって霊にダメージを与えるというシステムもミソで、霊との距離が近いほど与えるダメージが増えます。フィルムには枚数制限があるため、効率よく霊を倒すためにはギリギリまで引きつけなければいけないというのが実にイヤラシイですね。

 しかも、つねにカメラを構えていると霊はファインダーから逃げるように移動してしまうというから腹立たしいです。最大ダメージを与えるゼロ距離ショットを狙うも、既(すんで)の所で逃げられたり、引きつけすぎて霊に襲われりした人も多いのでは?

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▲我慢して引き付けて、引き付けすぎるとこうなります。難易度が上がると雑魚の浮遊霊に襲われただけで致命傷を負うことも。

Point2:実在したらシャレにならない、鬼畜でドSな儀式の数々

 本作には“目隠し鬼”や“裂き縄”といったエグイ儀式が登場します。“目隠し鬼”では、内側に杭の打たれた面で両目をえぐられた女性が鬼役となって、彼女に捕らえられた幼子は“縄の巫女”に選ばれてしまいます。

 次いで“裂き縄”の儀式では、“黄泉の門”に張り付けられた縄の巫女の首と四肢に縄がかけられます。縄を引いて巫女を引き裂いた神官たちは、血まみれの縄を使って門を封じ、亡者たちの復活を防ぐというもの。

 もう字面だけでアレな感じですが、この世への未練を断ち切れずに儀式を失敗したあげく、怨霊と化した巫女が災いをまき散らすなど、なんとも救いのない話です。ちなみにこの手の儀式はシリーズ作品ごとに用意され、いずれもハードな内容になっています。

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▲“目隠し鬼の女”:本体に触れたり音を立てると襲い掛かってきます。
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▲“縄の巫女”:過去に門を封じていた巫女の霊。彼女がある男性に想いを寄せたことから、前代未聞の悲劇が起こってしまいます。

2週目は別物! 恐怖を乗り越えた先にあるやり込み度抜群のゲーム性

 ただ怖いだけではない、アクションゲームとしての魅力にも触れておきましょう。お化け屋敷的な要素の強いゲームでは、仕掛けがわかってしまうと2週目のプレイは別物になります。

 本作も例に漏れず、2週目以降はより高い難易度のクリアを目指して射影機の性能を強化するといった、探索とは異なるやり込み要素が生じます。

 なかでもやり応えがあるのが心霊写真のコンプリート。あらかじめ出現場所がわかっていてもタイミングがシビアな霊もいれば、背景に溶け込みすぎて、射影機が感知しても見つけづらいシャイな霊もいます(笑)。

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▲射影機は使用するフィルムによって威力が変わる他、カスタマイズによって強力な補助機能を追加していくことができます。

恐ろしくも美しく、儚くて物悲しい……『零』シリーズの世界観

 『零』シリーズでは、他機種への移植版に加えて、『零』の名前を冠していない外伝的作品が発売されています。いずれも射影機を武器に霊と戦うというシステム&世界観を基本として、主人公が複数名入れ替わったり、ゲームハード固有の操作を取り入れたりとさまざまな進化を遂げてきました。

 ここでは主なシリーズ作品を簡単に振り返ってみましょう。

『零 ~紅い蝶~』(2003年発売)

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 ゲーム性に加えて、主人公が美少女姉妹ということや物語でも話題を呼んだシリーズ2作目。実際に操作するのは双子の妹・澪がメインで、足の悪い姉・繭をかばいつつ霊と戦うことになります。

 霊がはびこる日本家屋でも、側に愛らしい姉がいるだけで恐怖が和らぎます。もっとも、このお姉ちゃんが頻繁に姿を消してくれるおかげで、1人取り残された時の不安と孤独感が倍増するという罠が……。

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▲気の強そうな妹の澪と、どこかオドオドしている姉の繭。写真のような感じでちょこちょことついてきます。
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▲ちょっとカワイイ女の子の霊も登場します。ただし、視点が低いので難易度はそれなりにあります……。

 射影機の攻撃が効かない特殊な霊も登場するなど、ゲームとしての手ごたえは前作以上。物語の結末が難易度で変化するのもシリーズのお約束で、天野月子さんが歌うテーマ曲も相まってノーマルエンドは物悲しく、意地でもハッピーエンドを目指したプレイヤーも多かったのではないでしょうか。

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▲こんなショットを見せられたら、何としてでも姉妹の幸せを願わずにはいられません。

『零 ~刺青ノ聲~』(2005年発売)

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 シリーズ3作目は3人の主人公を操作できるというマルチ仕様。霊との戦い方もそれぞれ異なり、アクションゲームとしての魅力もさらに倍増しました。

 何よりもうれしかったのは、1作目の主人公・雛咲深紅の再登場です。メインヒロインの黒澤怜と、初の男性主人公・天倉蛍も、それぞれ深紅の兄や2作目の主人公の天倉姉妹と関係があり、シリーズを重ねるごとに世界観が掘り下げられていくところも大きな魅力でした。

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▲三人三様、悪夢の中で訪れた“眠りの家”で霊と対峙する羽目になります。
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▲作品中でも一、二を争う厄介な霊“刺青の巫女”。瘴気に包まれて画面がモノクロに変化すると完全無敵となり、ただ逃げるしかなくなるという悪夢のような存在です。

 そしてもう1つ、マルチ主人公と並んで本作を特徴付けていたのが“現実世界への浸蝕”です。これはシステムというよりも演出に近く、主人公たちの肉体が謎の痣に蝕まれていきます。

 まあ、百歩譲ってそれはよし。安全地帯だと信じて疑わなかった現実世界の拠点にまで霊が出現するのだけは反則ではないでしょうか!?

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▲刺青のような痣は日を追うごとに濃くなっていきます。そんな目に見える不気味さよりも、安全だと思っていた場所が蝕まれる方が何倍も恐ろしいという……。

『零 ~月蝕の仮面~』(2008年発売)

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 4作目はプラットフォームが任天堂のWiiへと移り、物語の舞台は本州の南に位置する群島へ。基本的なゲーム性はそのままに、懐中電灯で照らしたり、手を伸ばして物に触れたりといった新アクションが登場します。

 この“触れる”アクションが曲者で、潜んでいる霊に“ガシッ”と掴まれることもしばしば。アナログ操作でじわじわと手を伸ばすと潜んでいる白い手もちらっと見えてしまい、あわてて手を引っ込めるなどという場面もありました。

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▲なまじ懐中電灯が明るいだけに、闇が濃く見えるという嫌な効果もありました。
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▲グラフィックが向上しているおかげで、霊たちもこんなにキレイに……まあ、恐怖が増すだけなのであまりうれしくありません。

 廃病院など“いかにも”な舞台に怯えたり、クライマックスのピアノ演奏ではデリケートな操作に泣かされたりしたプレイヤーも多いことでしょう。個人的には、隠し要素だった“ゼロスーツサムスのコスチューム”にドキドキしたものです。

 ちなみに、世界観的にはシリーズ1~3作目とやや距離が離れますが、主人公の1人・麻生海咲の先祖である麻生邦彦博士は、射影機の生みの親という繋がりがあります。

『零 ~濡鴉ノ巫女~』(2014年発売)

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 任天堂のWii Uで発売されたのが、ハードの特性を最大限に生かした名作『零 ~濡鴉ノ巫女~』。液晶ディスプレイを備えたWii U GamePadでのプレイは、臨場感が段違い! まるで射影機を手に持って霊と戦っている気分を味わえます。

 また、Wii U GamePadに地図を表示させることで、画面切り替えなしに快適な探索が楽しめるのも画期的でした。

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▲ステータスが表示されている方がWii U GamePadで、もう一方は通常のディスプレイ画面。戦闘シーンでは、ついつい体ごと動いてしまうのが難点です。

 水に濡れると霊との遭遇率が上がるが、射影機の威力が上がるといった仕様をはじめ、倒した霊に触れることで記憶を追体験できる新システムも話題を集めました。

 深紅の娘・深羽が登場するなど、物語も見どころ盛りだくさん。また、霊の中にはやたらと背の高い白い帽子の女性が登場するなど、ホラーファンにとってうれしい小ネタも見逃せません。

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▲ポイントとなるのは水濡れ。雨にさらされたり水に浸かることでゲージが増えて、霊と遭遇しやすくなります。雨宿りが重要!

とにかく恐いシリーズをぜひ体験してください

 ちょっと詰め込み気味に紹介してきた『零』シリーズ、懐かしさを感じていただければ幸いです。もしも未だプレイしたことがないという人はぜひ、1作目からプレイしてみてください。午前1時~午前4時に部屋を真っ暗にしつつ、1人きりでヘッドフォンしながらプレイすると恐ろしさもひとしおです。なお、筆者はつねにこの環境で遊んでいました。

 『濡鴉ノ巫女』以降、新作のウワサも耳にしませんが、ゲーム内容との親和性を考えるとVR技術を使って開発してほしいところ。開発チームの方々にはぜひとも、新たな『零』の物語を紡いでいただきたいものです。

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