News

2017年1月20日(金)

【電撃の旅団冒険録】『FF14』ライブ用IEM選びに密着! THE PRIMALSメンバーが選んだ1品とは!?

文:電撃PlayStation

 2016年12月25日、“ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル2016 in 東京”のラストを飾った“THE PRIMALS”のプレミアムライブ。7000人を超える来場者を熱狂させたスペシャルステージはまだ皆さんの記憶に色濃く残っているかと思いますが、ライブのMCで、祖堅さんが「新しくIEMを作った」と話していたことを覚えていますでしょうか?

※IEM(in-ear monitor/インイヤーモニター)……高解像度、高遮音性を追求したイヤホンの総称。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 じつは電撃PS(電撃の旅団)では、その“IEM作り”を昨年末に密着取材していたのです。というわけで今回は、THE PRIMALSメンバーがどんな音を求めていたのか、それぞれが選んだ品は? といったところも含めて、IEM作りの模様をレポートしていきます!

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 祖堅さんたちサウンドチームの普段のお仕事ぶりについても興味深い話を聞けたので、ぜひご覧ください。

⇒東京ファンフェスティバル・ライブレポート&メンバーインタビューはこちら

【“THE PRIMALS”密着取材】『FF14』ライブ用“IEM作り”

 11月末日、東京都・秋葉原にあるイヤホン・ヘッドホン専門店“e☆イヤホン”に、『ファイナルファンタジーXIV』の公式バンド“THE PRIMALS”のメンバーが集結する。そんな情報を手にした我々は、急遽現場に直行。そこで目にしたのは……。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 言わずと知れた『FFXIV』サウンドディレクター・祖堅正慶氏のこの姿。何かを口にくわえ、耳には緑の物体を突っ込んだ祖堅氏の身に、いったい何が起きたのか!? 我々はその謎を解き明かすべく、秘密裡に調査を進めた。幸いにしてすぐ近くにいたスクウェア・エニックス社の音楽出版部N氏は口を使える状態だったため、詳しく状況を聞いてみると……。

 「耳型を採っているんです」

 とのこと。なんでも、PC周辺機器メーカーとして著名なロジクール社(グローバルではLogitech)がTHE PRIMALSメンバーにIEMを作ってくれるのだとか。

 今回は、バンドメンバー各人の耳にジャストフィットするカスタムモデルを作るための耳型採りと、ロジクールが展開するミュージック製品ブランド“Ultimate Ears(アルティメット・イヤーズ)”のIEM製品“UE Pro”シリーズの中からメンバーがどれを選ぶかを決める、試聴会を行う模様。

そもそもIEMの役割とは?

 さて、ライブにおいてなぜバンドメンバーにIEMが必要なのか?

 それは主に、メンバー全員が正しいテンポで演奏するためなんだそうです。

 大きなステージで演奏する際のPA機器(マイクやミキサー、スピーカーなどを組み合わせて音声を拡大する機器)は実際に楽器を奏でてから音が出るまで若干のタイムラグがあるので、その音を頼りにしていては演奏ができない。そこで、IEMを用いて楽器の音をバンドメンバー全員にダイレクトに届けることで、息の合った演奏を可能にしているとか。

 そのほか、スタッフとのやり取りにも用いられるということで、ライブステージ登壇者にはまさに必須アイテムと言っていいでしょう。ちなみに、MCでオーディエンス側と話したりする際には、IEMを外すか、マイクから客席の音を拾ってIEMから流すかして対応するそうですよ。

耳型採りの流れ

 まず問診票(同意書)を書いて、耳に傷や垢がないかチェックし、その後に溶液を流し込んで固まるのを待ちます。祖堅さんが脱脂綿のブロックをくわえていたのはボーカルとしてよく口を開閉するためで、個人差はあるものの、ある程度口を開いた状態で耳穴の型取りをしたほうが、歌っている最中でもフィットするのだとか。溶液は5分ほどで固まる模様。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS” 『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 こちらは英語ローカライズリードのマイケル・コージ・フォックスさんの場合。ボーカルということで、口を動かしながら型採りをしたほうがいいかどうか思案していたようですが、担当医の方によると、これはメーカーによって推奨方法が異なり、今回作る“Ultimate Ears Pro”シリーズ製品の場合は顎を固定して型採りするのが通常とか。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS” 『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 店内の様子と、耳型を採取し終えてくつろぐ祖堅さん&ギターのGUNNさん。GUNNさんは口を閉じた状態と開けた状態2つの型を採って、その中間の型を製品にしてもらったようです。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 こちらが採取後の耳型。この形状をもとにIEMを作ります。微妙な凹凸もすべて再現され、この形に合わせてどのパーツをどこに配置するか決めるため、まさに世界で自分だけの1品になるわけですね。人によっては経年で若干形が変わるとのことで、2年前にカスタムIEMを一度作った祖堅さんたちもあらためて耳型から作ることになったそう。

耳型採取後の祖堅さん&マイケルさんにお話を聞いてみました!

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

――今回IEMを作るにあたって、“どんなものがほしい”といったビジョンはありますか?

祖堅正慶氏(以下、敬称略):前回(“FFXIVファンフェスティバル2014”の時)はライブに対してどう使うかを重要視していたんですけど、今回はマスタリング(作った音を最終調整する工程。音量や音質、音圧などさまざまな要素をコントロールする必要がある)でも使いたいなと思ってて。

 ……じつはUltimate Ears Proの最新型で音を聴く機会があったんですが、本来スタジオのでかいスピーカーがないと聞こえにくい、低音のさらに下の音まで聞こえたんです。もしかしたらそれがあればスタジオを借りずにいつでもどこでも完パケした音をチェックできるんじゃ……ということで、今回はそれを目指してます。

 ハイレゾだと高音のさらに上、低音のさらに下の音までよく聞こえるんですが、普通のイヤホンだとなかなかその音はわからないので。これまでスタジオを借りて現場に行かないとわからなかった音が自分の手元でわかるようになるのは、やっぱりでかいですからね。

――最近は音楽関係者だけでなく、一般のユーザーさんもイイIEMやヘッドフォンを使っている方が多いとか。

祖堅:ええ。人によっては、UE900sっていう耳に突っ込むタイプのIEMと、ヘッドセットを併用している方もいるみたいです。IEMでゲームの音を聴いて、ヘッドセットでボイスチャットして……みたいな。でも今は、2つ併用する必要がないような、サラウンド対応&ボイスチャットもできるゲーミングヘッドセットもありまして。

 じつは、僕は『オーバーウォッチ』のプレイで使ってるのは、ロジクールさんの“G933”で、これはボイチャするときにマイクをカシャッと引き出すとマイクがオンになって、収めるとオフになるんです。これがすげー便利なんですよ。“ヘッドホンX”っていう7.1chバーチャルサラウンドの技術も入っていて、それが『FFXIV』とも非常に相性がいい。PC版『FFXIV』の音をコレで聴くとほんとにイイっすよ。

 G633G933搭載されているサラウンドモードは“ドルビーデジタル”と“DTS”の2種類があって、ドルビーのほうは往来の音像をボヤけさせたサラウンド音なんですけれど、DTSのほうは音がくっきり聞こえて、定位の違和感もない。ちょっと昔までのバーチャルサラウンドヘッドフォンの音像って、もわっとした音である程度ごまかしている感覚があったんですが、ロジクールのG633G933のDTSはそういうところもなく、ちゃんと前は前、後ろは後ろで、音の鳴っている方角からきちんとその音が聞こえる。新時代のサラウンドっていう感じがありますね。

 FPSでは敵の足音や、技を使ったときの声なんかがよく聞こえます。背後に敵がきたときの合図を聞き逃すか逃さないかでだいぶ勝率変わるんですよね……。「……リーパー後ろにいるぞ!」とか。そんなふうに裏からの奇襲に対応するためにもサラウンドヘッドホンは、FPSではもう必須です。僕らサウンドチーム内での評価もすごく高いですね。イヤーパッドも耳と直接触れないタイプなので、長時間着けてても疲れないし。

 僕は『FFXIV』と『オーバーウォッチ』で連続4~5時間とか着けていたりするんですが、全然疲れない。……なんか悪徳商法みたいに推しちゃってるけど、ホントにイイんです(笑)。ファンフェスで使う別の品物を公式推奨に挙げてるんですけど、そちらはステレオサウンドなので、本当はこちらを多数用意してプッシュしたかったくらい。なんですけど、まあ1年前の製品なので数そろえるのは厳しかったみたいで。(2017年1月発売のロジクール社“G533”が新たに推奨認定されました。というわけで、現在はG533がお勧めです)

 ……でもまあ一番なのは、PlayStation 4規格からサラウンドアウト対応のヘッドフォンが各社から出るといいんですけどね! 今、PS4のヘッドフォンアウトはステレオ出力のみなので。だけどズルいんですよ。SIEさんの商品だけサラウンド対応されているんですよ(笑)。僕はそこは強くソニーさんに言いたいんですよ。技術自体はすでに確立しているんだし、「(他のメーカーさんにも)サラウンドチャンネルの出力を開放してくれ」って(笑)。

――『FFXIV』の公式推奨製品を決めるために、すべて聴いて試しているんですか?

祖堅:ええ、新しく出たもの含めて全品聴いてます。会社でPCとPS4とでプレイして聴いて、あと家と会社で環境が違うので、家に持って帰って聴いて……。サウンドチームのメンバーそれぞれでまた環境が違うんで、各員持ち帰って同時にプレイして、感想を言い合ったりとか。

 マイクの質とか、実際に各自の部屋で喋ってどう聞こえるかっていうのは、やっぱりやってみないとわからないですから。必ずプレイしながらやってますね。『FFXIV』以外のタイトルもいろいろプレイして検証して。ときには「このマイクだと声が聞こえないな」っていうこともあるんですよ。音がこもっちゃってコミュニケートができないとか。そういうものは「さすがにちょっと推奨できないね」って。

 外部には見せてないですけど、けっこうカッチリした社内レビューもあったりして、そこにみんなで書き込んだりしてます。レビューのテキストに起こす際はわりとまじめに細かく検証してますね。推奨非推奨含めて、歴代のモノはすべてサウンド室の倉庫に残ってるので、いつでも出して、お客さんから「○○がおかしい」っていう問い合わせがあったときにすぐにチェックできるように、とか。

――話は変わりますが、パッチ3.4で追加された女神ソフィアの曲がかなり人気ですね。

祖堅:ソフィアはね、本当はやりたいんですけれどね。そもそもバンドでできる楽曲じゃなかったりするので、どうしようかなあ。かなりアレンジをしないとダメかもですね。そういえば……ソフィアの曲(“女神 ~女神ソフィア討滅戦~”)は2日で作ったよね。

マイケル・コージ・フォックス氏(以下、敬称略):「そろそろ録らないとだけど、歌詞どのくらいで書けます?」って聞かれて、来週くらいかなぁ……って思ってたら、「え、明日録りたいんだけど」って言われて「えええええ」と。それがまた夜7時くらいで(笑)。

祖堅:残された時間が2日しかなくて。1日で曲作って、1日でレコーディング(笑)。

マイケル:ソフィアの曲、別個に作るか作らないかで「さすがに時間ないからたぶん作らない」って言ってたんだけど……。

祖堅:そしたら、降りてきたんですよ。ぽんっと。イメージが。それで「あ、これいけるぞ」と。

――まさか2日とは!

マイケル:いつもは3日から1週間くらい歌詞に時間かけるんだけど、今回は4時間(笑)。なのになぜか一番評判いいんですよ。

祖堅:俺ら時間かけちゃだめなんだよ、きっと(笑)。ラスベガスでも「ソフィアを演ってくれ」ってかなり言われましたね。来てくれた人と直接お話して、「ソフィアの曲が一番いい」って言ってくれた人がけっこう多かった。なので、「あれぇ?」と。

――“Duality”に収録される(された)アレンジ楽曲の評判も高いですよね。ラスベガスでも盛り上がりがすごかったです。

祖堅:アレンジはねー。ゼロから曲を作るよりも難しいです。全部苦戦しながら作ってますね。使用するフレーズの縛りがあるので。そのうえで原曲のイメージを壊さないように……ってなるとけっこう難しいっす。

 “アンブレーカブル ~博物戦艦 フラクタル・コンティニアム~”の場合は、収録段階の前のアレンジだけで3カ月ちょいかかってます。新曲をぽんと作るよりもやっぱり難しい。みなさん“博物戦艦”はプレイされているわけで、そのプレイしたときの思い出も壊したくないし。ちなみに“アンブレーカブル”は“死者の宮殿”以外に、パッチ3.5でも、もしかしたらどこかで聴けるかもしれませんよ。

いざ、ロジクール本社へ

 その後は、ベースのイワイエイキチさん、マニピュレーターの岸川さんも現地に到着。耳型をとったのち、試聴会を行うロジクール社へと移動しました。

 なお、マニピュレーターとは、バンドメンバー全員の音をコントロールしたり、バンドメンバーの楽器演奏だけではどうしても出せない音……例えばアレンジアルバム“Duality”にも収録された“英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~”のピアノパートなどをジャストタイミングで流したり……といった調整を行う役のこと。

 ステージに登壇して演奏するわけではないので一般にはあまり知られてはいないのですが、音に厚みを出したり、リズムを整える目安となる音を送るなどの役割も担うため、THE PRIMALSのみならず現代の“ライブ”になくてはならない重要な存在です。ということで、今回そろってIEMを作ることになったのだとか。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 岸川さん近影。THE PRIMALSのクオリティをステージの裏から支える、まさにライブの“操作者”です。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS” 『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 こちらは道中のカフェで一服した際の様子。国外ライブ時の現地スタッフとのやりとりをはじめ、慣れない環境での音作りの苦労などなど興味深いお話をいろいろ聞かせてもらえました。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS” 『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 ロジクール本社に乗り込むTHE PRIMALSの図。廊下には新商品やフィギュアスケートの羽生結弦選手が愛用していたカスタムIEMなどが陳列してあり、みなさん興味津々といった様子でした。

試聴会スタート! THE PRIMALSメンバーが求める音とは?

 ロジクール本社へとたどり着いたTHE PRIMALS一行は、いよいよIEMの試聴会に臨みます。数あるUltimate Ears Pro製品を聴き比べ、祖堅さんが、THE PRIMALSメンバーが選んだ1品とは!?

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS” 『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

 ロジクール本社内の一室に集ったTHE PRIMALSの面々の前に、ズラリと並ぶ“Ultimate Ears Pro”シリーズ製品の数々。品評会は、ロジクール社S氏主導のもとに説明がなされ、粛々と……ときにわいわいと行われました。

 ちなみに、試聴に用いられたのは、THE PRIMALSのアルバム楽曲と、祖堅さんが持ち込んだ、最終調整前バージョンの“Locus”。この“Locus”の音源には低音も高音も粗い部分が残されているとのことで、その音がどう聞こえるかといったところも、最終的なジャッジを左右するポイントとなったようです。

今回の試聴会に出された“Ultimate Ears UE Pro”シリーズ製品

UE Pro Reference Remastered

“UE Pro Reference Remastered

UE 18+ Pro

UE 18+ Pro

UE 18 Pro

UE 18+ Pro

UE 11 Pro

“UE 11 Pro

UE 7 Pro

“UE 7 Pro

UE 5 Pro

“UE 5 Pro”

UE900s

“UE 5 Pro”

 それでは、そんな試聴会の様子を“座談会形式”でご覧ください!

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

S氏:みなさん2年前にもカスタム“UE Pro”シリーズをお作りになられた方が多いですが、そこから現在にかけて、フィット感の変化や、気づいたことなどございますか?

祖堅:使い続けるとけっこう低音も高音も可聴域が伸びてきますね。

GUNN氏(以下、敬称略):なんというか、当初とんがっていたところもふくらむというか、決して音域が削がれているわけではないんだけれど、聴きやすくなったような感覚があります。

S氏:岸川さんは今回はじめてIEMの耳型採りを体験なさったということで、感想などいかがでしょう?

岸川氏(以下、敬称略):いや、驚きました。あれほどまで密閉されるものかと。周りの音が入らないので、あれでライブステージのときにどんなふうになるのかなといったところは楽しみです。

祖堅:よし、それじゃあいろいろ挑んでみようか。

たちばな哲也氏(以下、敬称略):これ、Capitol Studiosロゴ入りのが一番ハイエンドになるんですか?

S氏:一番のハイエンドはUE 18+ Proなのですが、日本で人気のモデルだと、このUEとCapitol Studios がコラボして作ったUE Pro Reference Remasteredが非常に人気がありますね。レコーディングの際に好まれる「すべての音がフラットに聴こえる」という特徴のあるものが、そのCapitol Studiosロゴ入りのものです。

 ……普段使いの際は、人によって「低音をもっと強く聴きたい」などの好みがあると思うんですが、アーティストのレコーディングの際は、すべての音が均一に聴こえるというのが“レコーディングをしやすい”条件としてあるようでして、よく使われます。

 日本では「レコーディングの際のアーティストが聴いている音に一番近いから」と言う理由でユーザーさんが好む、という評価を聞いたりもしますね。海外と比較しても、このUE Pro Reference Remasteredは日本では人気です。

GUNN:海外のユーザーさんは「アーティストが聴いている環境に近いから」というのはあまり意識されないんですかね?

S氏:もちろん、意識されないことはないと思います。ほかにも考えられるのが、日本のお客様によく見られるケースですが、プレイヤーとイヤモニの間にポータブルアンプなどを噛ませ、アンプで好みの音に調整しているという方たちです。そういったお客様の場合、音の調整はアンプで行なうため、イヤモニそのものはなるべくフラットな音質であるものを好む方が多いです。

 また、海外ですと本当に普段使いというか「自分の好みの音を聴きたい」という方が多いのに対し、日本だと普段使いは普段使いとしてあるけれど、それとは別に「アーティストの人たちが使うあの環境で聴きたい」というニーズもあるようで。

哲也:なるほど。まあ、たしかになかなか普段使いとは別に999ドルってのは払わないよね(笑)。

GUNN:あ、でも今日じつは最初間違えてeイヤホンさんの販売エリアに行っちゃったんだけど、スゲー人が多いんですよ。で、みんなこういうIEMを持ってるんです。その熱気がけっこうすごかった。

哲也:音に対してのこだわりがあるというか、そういう人も増えてるのかもね。

マイケル:UE製品を耳につけている人も最近よく見ますね。電車の中で、サラリーマンの方とか。

GUNN:音漏れも少ないから、っていう面もやっぱりあるんでしょうね。

マイケル:私は、前にノイズキャンセラー付きの品を使っていたんですが、2年前にIEMを作ってからはいっさい使わなくなったんですよ。もうIEMだけでノイズキャンセラーと同じ効果を得られているし、しかも電池もいらないし。

岸川:さらっと聞いた段階でもうすげえ。キレイ。UE 11 Pro。哲也さんのはそれは何ですか?

哲也:これはUE900s。これもいいよ。けど、僕ら今回はモニター用・ライブ用として考えるから……悩むよね。

岸川:そこなんですよねえ。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

S氏:じつは今回、“UE Pro Line Drive”というものをご用意してまして。

 これはプレイヤーとイヤモニの間で発生するインピーダンスのギャップを埋めるデバイスです。全く同じ音源データであっても、再生するプレイヤーによってその楽曲の聞こえ方が若干変わったりします。イヤモニそのものが持っている本来のパフォーマンスどおりの聞こえ方により近づける、といったデバイスなのですが、簡単に言うと、音のブレを埋めるための器材です。

 お客様のなかにはこれを噛ませて音を聴いている方もいらっしゃるということで、よければお使いください。選定の参考にはならないかもしれませんが、こういうものもありますよということで。

祖堅:……何これ全然違う。すごい。でもこれ危ないな。作ってるときにこれを噛ませて聴いちゃうと、最終調整しなくても「これでいいや」ってなっちゃう(笑)。ホントはまだ粗いのに、整って聴こえる。

GUNN:……これすごいね(笑)。“マスタリング機”みたいな。

祖堅:これズルいなあ。正直あんま変わらないでしょ? と思ってたら、強烈だった(笑)。ちなみにこれって、用途的にはどういった使い方になるんですかね?

S氏:普段使いで使っていただくケースが多いですが、例えば「もうちょっとクリアな音で聴きたい」といった場合に、個人で着けていただく形になりますね。“音を作るときに”という用途はなかなかなか聞かないのですが……。音の味を変えるという意味で、ホントに趣味嗜好で楽しまれる方のためのものです。

祖堅:いやこれ、危ないですね。制作のときには着けちゃいけないやつです(笑)。僕らって、音を作る際は最終的にマスタリングっていう工程を踏むんです。作った音を整える作業ですね。整音されていないものだと、疲れ方に差が出たり、そもそも聴こえちゃいけない音出ていてバランスの邪魔をしていたりっていうのがあるので、そこをキッチリ整えてやるわけです。

 けどこれを噛ますと、こいつがそれをザックリやってくれちゃうんですよ(笑)。ズルい。マスタリングできない人はこれを噛ませた音を録音すればいいんじゃ……ってくらい。ザックリ言うとですけど(笑)。でもこれは今回試聴しているスゴいIEMじゃなくて、むしろ普通のイヤホンに噛ませて試してみたいですね。

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”
▲商品の説明書きもちゃんと読むメンバーさんたち。

岸川:いや、はじめてこんなにイヤホン試しましたよ。どれもすごい。時代の進化って早いなあ。好みで言うと僕はUE 5 Proが一番好きかもしれない。

哲也:たしかに、前はここまでハイエンドなモデルってあまりなかったよね。

GUNN:ライブ用と別に、普段用にイイのがほしくなるなあ。

岸川:バンド業界はわりとUltimate Earsシリーズをずっと使っている人が多いですよね。僕の周りにも多い。

S氏:じつは、TVでよく見かけるアーティストさんでも、よくよく見るとUE Proシリーズを使っている方を見かけます。日本国内だけでなく、海外の有名アーティストでも「えっ、この人もUEを使ってるんだ!」というのを見かけたりしますね。

哲也:やっぱりニーズに合わせて、リスニングというよりモニタリングするためにはこれがほしい……みたいなところもあるんでしょうね。

S氏:そうですね。おっしゃる通り、リスニング用だと“長時間聴いていても疲れないものを”とか、モニタリング用だと“この音域がちゃんと聴こえるものを”とか、根本的なニーズによって選ばれる品は変わるかと思います。

哲也:やっぱりフラットじゃないと……音量を上げたときに中域とか低音域とかがきつくなっちゃうと、モニタリングしにくくなりますからね。

祖堅:それすごくありますよね。

哲也:やっぱり均一に聴こえるタイプのものじゃないとちょっときついですね。疲れもあるから耳がやられてくるし。

GUNN:選ぶのはやっぱり難しいですね。楽しいけど(笑)。

哲也:歌う人の場合、がっちり顎固定して型を採って、あとで歌ったときにIEMがぱこぱこ外れたりとかしないの?

GUNN:そう、それ今日気になってオーダーさせてもらって、一番フルで口を開けた場合と、閉じたとき両方の型を採ったっす。その2つの中間の型で製品作ってもらいます。大口開けてるとヨダレとか出て来るんで、無心で型採りしましたよ(笑)。ところで俺、今哲也さんの持ってるのがすげー気になってしょうがない。

哲也:コレ(UE Pro Reference Remastered)いいよ。全然疲れないし、ものすごいボリューム上げてもフラットで、すごく聴きやすい。

祖堅:普段使いとして考えるとこれがスゲーいいっすよね。でかい音出しても全然異音が入らない。

岸川:普段使いとしてはかなり贅沢だけどね(笑)。

哲也:イワイ君の持ってるのは何?

イワイエイキチ氏(以下、敬称略):これはUE 11 Pro。低音域のドライバーが1個多いやつ。

哲也:ベースだけに、低音域のイイものを……ってことだね。

S氏:ステージ用、普段使い用それぞれでどんな点を重視しているか、お聞きしてもいいですか?

哲也:僕の場合は、普段はなるべくフラットで、あんまり低音が強調されすぎていないもので聴くほうがいいかな。自分で音も作ったり、MIXもするので。そのほうが聴きやすい。ライブのほうも基本的にはフラットが好きなんだけど、どちらかというと中音域の下めの音がよく聴こえたほうがモニタはしやすかったりする。

祖堅:デカい音量の中でリズムを取らなきゃいけないじゃないですか。ドラマーが出してくれる音で。とくにハイハットとキックの音はテンポをキープするのにかなり重要で、それがステージで聴こえないと、そもそも演奏できないんですよね。だけど逆に普段使いのときは、そこが強調されすぎてるとめちゃくちゃ疲れるんですよ。“普段”と“ステージ”は、そこが相容れない感じかと思います。

THE PRIMALSの最終選定! メンバーが選んだ品とは……。

S氏:さて、みなさまひと通りご視聴いただけましたでしょうか。たちばな哲也さんはご自身のものがすでにあるので……と伺っていますが、他のみなさまの決定と、決め手になったポイントをお聞かせいただければと!

GUNN:僕はUE 18 Proで。いや、UE Pro Reference Remasteredと迷ったんですが、こちらはよすぎたというか。UE 18 Proに決めたポイントは……これはフラットさもあるんだけど、それだけじゃなくて、ギターだったりドラムだったりベースだったりっていう音の持つ角みたいなものがハッキリと、ガッツある感じで聴けるんですよね。ステージでもちゃんとそれが聴こえるだろうなっていう感じがしたので、これを選びました。

マイケル:私はUE 7 Proですね。私はみなさんと違って音楽がメインの仕事ではないので、あくまで普段音楽を聴くために、という視点です。コレはいつも聴いている音楽とすごくマッチしていて、“ドカン!”って低音が聴こえる。なのでコレで! アメリカ人が好きそうな力強い低音で、聴いていて自分でも「ああ、自分はアメリカ人だなあ」って思ったり(笑)。

(編注:マイケルさんは、最終的にUE 18+ Proに変更したそうです)

祖堅:ハッキリ言うと、個人的にほしいのはコレです。UE Pro Reference Remastered。普段使うなら絶対コレ。こんなに気持ちよく聴けるものはそうそうないです。だけど、さっき(記事前半)も言ったように、マスタリングの現場に行かないとわからない情報というのを極力なくしたいので……UE 18 Proにします。これ使って、精進します(笑)。

 ハイレゾを作るにあたって必要な情報をちゃんと聴ける環境ってなかなか少ないので……作り手として、いつでもどこでもその環境を得られるっていうことを可能にするためにもUE 18 Proかなと。ステージのときがちょっと心配だったけど、GUNNさんがさっき「ステージでも聴こえそう」って言ってたし、「大丈夫だろう」と!

エイキチ:僕もUE 18 Pro。なんでかっていうと……UE 7 Proもよかったんですが、フルレンジで、高い音から一番低い音まで均等に聴こえて、なおかつボリュームでパワーをかけても負けないから。逆に音量をそんなに上げなくても、上と下がしっかり出ていて、「ああ、聴こえるな」って思えた。そんなとこですかね。

哲也:いや、全部よかったですね。でもやっぱりUE 18 Proと、UE Pro Reference Remasteredが僕の好みですね。普段使いだとしたらUE Pro Reference Remasteredかな。けっこうフラットな音じゃないといろいろ判断できないので、そういう意味ではコレが一番いいのかなと。まあ、ステージでは自前のUE900sです(笑)。

岸川:僕はUE Pro Reference Remasteredにします。仕事柄いろいろな音を自分で上げ下げできるんで、キレイに音が分離していればいいかなと。一番ベースのラインとかも聴きやすかったので、これにしました。普段使いならやっぱり、音にガッツのあるUE 5 Proが好きかなあ。UE 5 Proでロックを聴きたい(笑)。

祖堅UE Pro Reference Remasteredは、全部の帯域が気持ちよく聴こえる感じですね。UE 18 Proは、細かい音までハッキリ聴こえる。ただ、細かい音が聴こえれば優れているかっていうとそんなことはなくて、やっぱり聴いていて気持ちいいのはUE Pro Reference Remasteredなんですよ。僕らは音を作るとき、演奏するときの“情報”がほしいからUE 18 Proを選んでる感じですね。

マイケル:電車で聴くならUE Pro Reference Remasteredかなあ。

S氏:最後に、これからIEMを選ぶ人に向けて、“ここに注視したほうがいいよ”みたいなものがありましたら教えてください。

GUNN:なんとなく思うんですけれど、eイヤホンさんにあれだけ商品が置いてあって、しかも試聴できるわけじゃないですか。すげえなと思って。ぜひ作る前に一度行って、気が済むまで聴いてみるといいかもしれません。きっと好みの音が見つかると思うんですよね。

祖堅:僕ら世代は「いい音を聴きたい場合はスピーカーから流せ」みたいに言われていたんですが、なんでかっていうと、イヤホンなりヘッドホンなりでモニタリングできる音っていうのが、そんなによくなかったからなんですよね。

 でも今はそのあたりイヤホンの品質が肉薄していて。実際、ゲームをプレイされる方は個人的な環境で音を聴くことが多いと思うので、スピーカーでなく、イヤホンやヘッドホンを使って遊んでますっていう方のほうが圧倒的に多いんですよね。需要的にも、ゲームとイヤホンヘッドホンっていうのは親和性が高いと思っていて。もしイイ音でゲームをやりたいとか、音楽を聴きたいっていう人は、ぜひこういった高品質な製品を試していただくといいと思います。

 ただその代わり、「誰かがイイって言ったから」っていう選び方はナシで! 音に関しては本当に好みが出るので、自分の耳で音を確認して、好みの製品を見つけるのがいいんじゃないかな。ホントにヘッドホンを変えるだけでゲームの世界ってガラッと印象が変わるので……まずは一度エオルゼアカフェとかに行って、推奨商品を試してみてほしいですね。

――今日はありがとうございました!!

『FFXIV』公式バンド“THE PRIMALS”

(C)2010 - 2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

データ

▼『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド 電撃の旅団が巡る イシュガルドの世界』
■発売日:2016年4月1日
■定価:1800円+税
 
■『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド 電撃の旅団が巡る イシュガルドの世界』の購入はこちら
Amazon.co.jp

関連サイト