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2017年1月21日(土)

【電撃PS】高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』全文掲載。人の“名前”について

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』。ゲームデザイナーとしての日常や、ゲーム開発にまつわるエピソードを毎号掲載しています。

『電撃ゲームとか通信。』
『電撃ゲームとか通信。』

高橋慶太氏PROFILE

 バンダイナムコゲームス(現BNE)時代に『塊魂』、『のびのびBOY』を制作。その後『Tenya Wanya Teens』を発表。現在は新作『Wattam』と、GoogleのARプロジェクト“Tango”向けに『WOORLD』を開発中。

 この記事では、電撃PS Vol.630(2017年1月12日発売号)のコラムを全文掲載!

『電撃ゲームとか通信。』

第八十四回:“名前”について考えをめぐらせてみたら、いろいろとありました。

 あけましておめでとうございます。2017年ですね。平成29年は酉年です。正確には丁酉(ひのととり)らしいですが、このあたりのことはよくわかりません。そして、この“丁酉”という単語の響きを聞くと、どうしても“あの本”のことを思い出してしまいます。

 今も母親が買っているのかわからないけど、自分が実家に住んでいたとき、年の暮れが近づくと白い本がどこからともなくやってきていたのです。それは何かと言うと、“高島易断本暦”です。本屋で平積みされてるのを見たこともあるから、まあ割とポピュラーであろうという認識なんだけど、電撃読者にとってはおそらくそんなことはないはず。何かというと暦占いの本です。最初に書いた“丁酉”で思い出す、というのはそういうことです。ちなみに昭和50年生まれの自分は、乙卯(きのとう)七星赤星らしい。この言葉が卯年であることを表していること以外、正しい読み方も含めて全くわからないけど(しちほしあかせい?)、小さい時から周りにあった本なので、なんとなく思い出すのです。

 そして、この占いと関連することで思い出したのが、字画のこと。ただいま絶賛制作中『Wattam』のリードエンジニアは台湾出身(たしか)の女性です。すごく優秀で彼女がいないと『Wattam』は完成しないでしょう。そんな彼女はアメリカで生活しているということでアリスという英語名を使っています。(本名も聞いたけど発音が難しすぎて忘れた)その名前の由来は、予想通り“不思議の国のアリス”。正直、その安易な感じもどうかなと思わなかったこともないけど、自分的に興味を持ったのは、字画、そして名前がもつ意味のこと。聞くところによると、彼女の生まれ育った場所でも日本同様字画占いがあるらしく、多くの人がそれを気にするとのこと。彼女の名前の意味ははっきり覚えてないけど、生まれた地名とか長女とか、そういう“説明的”な感じの意味だったような気がします。なので、彼女曰く「自分の名前はよくある名前」とバッサリ。だからアリスという英語名を使うことに本人はあまり躊躇がなかったのかもしれません。

 そういえばアメリカで生まれた日本人の子で、日本名とアメリカ名の2つを持っているケースも多くあります。それに対して文句があるわけでもないんだけど、もし自分が親として同じ状況があったしても2つの名前を1人の子に名付けるのはちょっと抵抗があるかなー。その国や文化にそれぞれあった2つの名前を持つことはある意味合理的な判断であるとも思うのです。だけど、自分は1つに絞ると思うなあ。

 と、ここで“名前の意味”話でちょっと脱線。バンクーバーに住んでいた時、どこかの事務員の人に自分の名前を伝える機会がありました。その事務員の方は初老の女性。自分の名前を伝えたら“慶太”という名前はどういう意味なのかしら? と聞いてきたのです。どうやら彼女は日本人の名前の意味を知ることが好きらしく、日本人と会った時は毎回聞いているとのことでした。前述したエンジニアのアリスの本名は、説明的な意味が強いものみたいだったけど、確かに、欧米人というか、アジア圏外で名前に意味を持っているところはそもそもあまりないのかもしれません(完全に憶測)。だから、バンクーバーの初老の女性も、名前意味知りたがり子ちゃんだったんだと思います。

 ここで話を戻しますと、ご存知の通り、そもそも字画占いなんてものは全然信じてないし、自分にとっては総画で悪い字画じゃなければ良いという気休め程度のものです。だけど、親になってわかるものだけど、可能な限り弱点というかマイナスな要素を減らしたいと思うのが親(バカ)というもの。そういう意味で、字画の件も全く信じていないけど、わざわざ悪い画数を選んでまで最初のアイディアを通すほどの度胸は自分は持ち合わせてないのです。というか、自分の子供とはいえ他人の人生なので、そこに可能な限り悪影響を残したくないという思いもあります。

 なんだか書いているうちにハッキリしてきたけど、アリスと話しててちょっと引っかかったことの原因は、親目線だったことです。たとえ説明的な意味の名前だとはいえ、親が画数にまで気を使ってくれた(多分)ものを、自分で勝手に変えてしまうというのはどうなの?って。一応自分も二児の親なので、子供の名前を考える時に、その意味や思い、将来などのことも含めて慎重に時間をかけて選んだし、字画も悪いものにはならないよう気をつけました。だから、もしも子供が大きくなって日本でもアメリカでもない国、もしくは違う星にいき、名前をそこにあったものに変えるとか言い始めたらかなりショックだわあ。

 おっとー、気づいたら当初想定していた内容とはぜんぜん違う方向にきてた。このテクノロジー時代、いまだに占いが残っている理由とか、論理的に説明できない点で構成される人間社会の面白さ、とかに触れようとか思ってたけど、親バカ話になってしまいました。新年1発目からこれだから今年は心配ですね。そして今年は乙卯七星赤星的に勝負の年。多忙のため初の原稿落ちなんてこともあるかもしれません。そういう時は急遽イラストだけのページになるかもしれないし、芸能人のブログみたいに改行を多用すると思うので、そういう回があった場合、今『Wattam』で忙しいんだな、と優しく見守っていてください。そういえば上田さんに『人喰いの大鷲トリコ』のサンプル版をわざわざ送ってもらったのにPS4を持ってないからまだ遊べていません。それにしても『The Last Guardian』というタイトル/名前は、邦題の『人喰いの大鷲トリコ』に比べると、、、なんというか、普通。

(C) Keita Takahashi

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.630』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年1月12日
■定価:694円+税
 
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