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2017年2月25日(土)

【電撃PS】高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』全文掲載。“掃除機”で思うこと

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』。ゲームデザイナーとしての日常や、ゲーム開発にまつわるエピソードを毎号掲載しています。

『電撃ゲームとか通信。』
『電撃ゲームとか通信。』

高橋慶太氏PROFILE

 バンダイナムコゲームス(現BNE)時代に『塊魂』、『のびのびBOY』を制作。その後『Tenya Wanya Teens』を発表。現在は新作『Wattam』と、GoogleのARプロジェクト“Tango”向けに『WOORLD』を開発中。

 この記事では、電撃PS Vol.632(2017年2月9日発売号)のコラムを全文掲載!

『電撃ゲームとか通信。』

第八十六回:身の回りの物から考えを巡らせるシリーズ。今回は“掃除機”で思うこと、です。

 どうも。前回は自分がゲーム製作に使ってる機材や道具、そして日頃使ってる財布などを紹介しつつ、今欲しいもののことを書きましたが、1つ忘れていたものがあったのでまずはそれから。それは掃除機。今持ってるのはバンクーバーにいた時に買ったDysonの掃除機。Dysonの掃除機はちょっとカッコつけすぎなので毛嫌いしていました。値段もなんだか高いし。が、結論から言うと、コードレスの魅力には打ち勝つことができませんでした。

 日本にいた時は“Henry”というかわいらしい顔がついた掃除機(自分が持ってたのは緑色)を使ってました。うろ覚えだけど、ナムコに入社してお金を貯めて買ったように記憶してます。それは目や口が本体にプリントされてるけど、普通の掃除機。残念ながら喋ったり留守中に自動で掃除機をかけてくれたりはしません。使い勝手としては中の下くらい。電源コードがすごく長くなるのでいちいち部屋を移るたびに電源を差し替えなくて済んでましたが、長く伸びた分だけ引っ張る時に重く感じるし、長い電源ケーブルを避けながら掃除機をかけることが面倒といえば面倒でしたが、それもこれもあのかわいい顔があるおかげであまり苦になりませんでした。

 だけど、今回は事情が違います。幼児がいるので掃除に長い時間をかけられないということでコードレス掃除機を買ってみたら、、、もー便利。ありえないくらい掃除機をかけるのがシンプルになりました。バッテリー稼働なので1回のフル充電で15分から20分しか使えないんだけど、よっぽど広い家じゃない限り大丈夫。あと、コードレスなので車の中の掃除にも使えたりするのが便利なのです。

 とはいえ掃除機自体のビルドクオリティはあまり高くなく、吸い込み口のとことか破損しやすくて今持ってるのは結構ボロボロ。そしてバッテリーも1回新調したけど稼働時間がすでに短くなって来ているので、そろそろ新しいのが欲しいなあと。子供的には面白い方が愛着が湧きやすいと思うので、あのかわいい“Henry”に戻るという手もあるかもしれないけど、今更コードあり掃除機に戻れる自信がありません。

 そういえばフジフィルムのカメラ、X-T20も発表されてました。X-T2は自分にとってオーバースペックなので廉価版のX-T20で十分かなと。ただX-T2の魅了の1つは日本製であること。それも、仙台にある大和工場でひとつひとつ丁寧に組み立てられているというではありませんか。すでに東日本大震災が起きて年月が経ってるけど、被災地の1つでつくられていることがカメラとしてのスペック以外でグッとくるものがあります。

 ここアメリカで丁寧につくられてるなあと思う商品があると、大抵の場合 Made in Japanと書いてあります。「やっぱりなあ」と。ただそれはノートやペンなどの文房具系に多く見受けられるので、それをカメラから感じられるのならばちょっと良いなあと思うのですが、T-X2はちょっと自分にはオーバースペック。と言うことで、自分の思考はMade in Japan > Made in USA > Donald Trumpとつながっていくのです。

 Made in Japanという表記をここアメリカの地で誇らしく感じる気持ちは、Trumpのアメリカ第一優先という方向性と似たものかも知れないなあと思ったりもするけど、母国に特別な思いを持つことは不自然なことではないと思います。ただ、その母国を思う気持ちと、その他の者を排しようとすることを同じことだと履き違えてはいけません。

 1月20日、盛大なInauguration(就任式)が行われました。とうとうアメリカの大統領がTrumpへと引き継がれたのです。まだ就任して日が経ってないので正しい評価を下すことはできませんが、本当にメキシコ国境に壁をつくるらしいし、先代のObama大統領がつくった健康保険制度Obama careも一旦止めるつもりらしい。

 結果的にはアメリカ国民がTrumpを大統領として選んだわけだけど、彼に投票しなかった人もただ指をくわえて眺めているだけではありません。就任式翌日の土曜日、アメリカ全土で大々的な女性によるデモ行進が行われました。彼の差別的発言/言動に対しての抗議です。驚くべき事にこれはアメリカだけに止まらず、イギリスのアメリカ大使館周辺でも行われたらしいのです。自分が知らないだけで、世界各地でデモ行進があったのかもしれません。

 週明けの月曜日には「デモに参加した?」という会話がミーティングが始まる前にあったり、まさに就任式のあった金曜日、抗議のためのプラカードを持った人たちがダウンタウンの駅に集まっているのを見かけました。地域ごとの選挙結果を見ればわかるけど、アメリカ西部、特に太平洋沿いの州ではClinton候補が勝っていたので、サンフランシスコでデモが起こるのも想像できますが、Trumpが勝った地域では逆に祝賀パレードでもやっていたのかもしれません。

 と、なんだかなあ、という思いでニュースを見てたんだけど、これだけシリアルで大々的なものになってくると人間というものは少々おふざけを入れたくなるものです。Twitterで見つけたんだけど、“自分が信じることのために立ち上がる”という見出しで、子供に“I . TRAINS”というプラカードをもたせて抗議に参加してる写真は良かった。もっと小さい子が何なのかわからないレベルの絵をプラカードに描いて持っているのも微笑ましかった。

 何が言いたいのかというと、もちろん掃除機としてゴミを真面目に吸い取ることは重要だけど、顔がついてるくらいの遊び心は必要なのではないでしょうか? 国を変えるのは国家ではなく、その国に住んでる1人1人の心のゆとり/豊かさではないでしょうか? おそらく、世界中の人が“Henry”で掃除したいという気持ちがあれば、世界は変わるはず(嘘)。

(C) Keita Takahashi

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.633』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年2月23日
■定価:694円+税
 
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