2017年3月10日(金)

第23回電撃小説大賞《金賞》受賞作『賭博師は祈らない』 は“奴隷の少女がヒロイン”という挑戦的な作品!

文:電撃オンライン

 第23回電撃小説大賞《金賞》受賞作『賭博師は祈らない』が電撃文庫より好評発売中。

 舞台は18世紀末のロンドン。ヒロインは奴隷少女、主人公は賭博師。そんなピーキーすぎる設定でありながら《金賞》に輝いた、異色の賭博小説をチェックしよう!

賭博師は祈らない
▲『賭博師は祈らない』の表紙イラスト

<あらすじ>

 十八世紀末、ロンドン。

 賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。

 ――それは、奴隷の少女だった。

 喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。

 そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。

 やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。

『賭博師は祈らない』の3つの魅力!

『賭博師』の魅力その1

『奴隷の少女』が愛しくて仕方ない――
そんな気持ち、想像すらしたことはありませんでした。
この本を読むまでは。

――株式会社ストレートエッジ代表 三木一馬(文庫オビ推薦コメントより)

賭博師は祈らない
賭博師は祈らない

 主人公の賭博師ラザルスが、とある成り行きから仕方なく購入させられた一人の奴隷少女。

 喉を焼かれ声を失い、文字を教えられることもなく、「どんな風に扱われても訴えることができない」という状況を意図的に作り出され、決して主人に逆らうことのないように調教を加えられた少女。

 要するに「購入者の性的な欲求」を満たすことを目的にした商品――それがリーラという少女の存在価値でした。

 しかし「そういった」ことにまったく興味のない、怠惰で孤独な賭博師の青年ラザルスに購入されたことで彼女の運命は一変します。

 「どうでもいい」と嘯きながらもなんだかんだとリーラをメイドとして雇い、面倒を見ることになったラザルスは孤独でひねくれ者ですが、ときどき垣間見せる不器用な優しさがとてもほほえましい。

 彼と一緒に暮らす中で、初めは何一つ感情を見せなかったリーラにもやがて変化が生まれてきます。

 本来自分があるべきだった運命から、男性というものに酷く怯えていたリーラですが、主人であるラザルスに対しては少しずつ心を開いていきます。

 文字を教わり書き綴ったカタコトな文章で交わされる、つたない会話。ときおり覗かせる、僅かな感情。悪夢にうなされるラザルスを励まそうとする、健気な優しさ。

 生活の中で見せる一つ一つの仕草、やりとりの全てが愛しく思えるはずです。

『賭博師』の魅力その2

一人の男が、自らに課した枷をぶち壊すまでのお話。
これにプロの意地全開のギャンブルと薄幸の美少女が絡むんですよ!?
燃えるしか!!

――『とある魔術の禁書目録』著者:鎌池和馬(文庫オビ推薦コメントより)

賭博師は祈らない

 主人公のラザルスが己に課している賭博の哲学。それは「負けないこと」と「勝たないこと」。

 ギャンブルで生計を立てているのだから「負けない」ことは当然。だがしかし、賭場やディーラーに目を付けられるような大勝ちをしてもいけない。

 場の勝ち負けを適度に調整する卓越した技術と、いかに自分を目立たせない場をつくるかという心理誘導。腕利きの博打打ちでありながら、そのプレイスタイルから「ラザルス“ペニー(小銭)”カインド」と揶揄されているギャンブラー。それが本作の主人公です。

 物語の冒頭、ちょっとしたヘマをして大勝してしまうのですが、そこで賭場の高額商品である違法奴隷を買うことになったのも、利益を還元して経営者に睨まれないようにするためでした。リーラと暮らしてからも必要な日銭だけを稼いでいたラザルスですが、やがて彼が自身の賭博哲学を“ぶち壊す”瞬間がやってきます。

 賭場に真っ向から喧嘩を売り、全財産を賭けてギャンブルに挑む。賭場に対して致命的な打撃となるほどの大勝ちを狙う。それは、リーラを救うための一世一代の勝負でした。

 物語終盤で描かれるブラックジャック(当時はヴァンテアンと呼ばれていた)は、手に汗を握る白熱の展開! まるで目の前で行われているような臨場感で、ページをめくる手が止まりません!

圧倒的に不利な状況に不退転の覚悟で挑む、一人の賭博師の勝負をぜひ見届けてください。

『賭博師』の魅力その3

 18世紀末のロンドンを生きる人々の退廃的で享楽的な生き様に注目!

賭博師は祈らない

(イラスト右上)
ラザルス・カインド

“負けない”“勝たない”ことを信条とし、敢えて少額の勝ちだけを拾い糊口を凌ぐ若き賭博師。「どうでもいい」が口癖。

(イラスト左上)
リーラ

 意思疎通が殆ど出来ない異国の少女。さる富豪の性癖を満たすためだけに調教されたという特殊な奴隷商品だったが、成り行きからラザルスの家に住むことに。

(イラスト右下)
ジョン・ブロートン

 ストリートファイトで生計を立てる拳闘士。見た目通りの豪快な性格だが、無気力なラザルスとは長い付き合いのある友人関係。

(イラスト左下)
キース

 ラザルスの賭博仲間……だけど腕の方はからっきし。可愛い女性を見るや即座に声を掛ける軟派男子。

 18世紀末のロンドン。それは全盛期までの清教徒たちによる抑圧を抜け出し、躁病のような空気が漂っていた時代。

 粗悪なアルコールと阿片がはびこり、人の生き死にすらギャンブルの対象にしてしまうような、退廃が蔓延した街。そしてそんな舞台を彩るのは賭博師、拳闘士、情婦といった、いわゆる「まっとうではない」職業の野郎たち。

 死と暴力を身近に置きながらも、逞しくロンドンの日常生きる彼らの在り方は、泥臭く、しかしとても魅力的です。またキャラクターだけではなく、18世紀末ロンドンの大衆文化や風俗も綿密に描かれていて、時代の雰囲気を魅力的に描き出している点も本作の魅力です。細やかな時代設定まで楽しんでみてください。

データ

▼電撃文庫『賭博師は祈らない』
■著者:周藤 蓮
■イラスト:ニリツ
■発売日:2017年3月10日発売
■定価:本体630円+税
 
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