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2017年3月11日(土)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“つなぐ”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.633(2017年2月23日発売号)のコラムを全文掲載!

第102回:つなぐ

 実家で過ごした年末年始から、すでに2カ月が過ぎようとしています。早いですねえ。そういえば、今回久々に帰省するにあたってどうしても身内にVRを体験させたかったので、PS4とPS VR一式を持って帰りました。未体験の人がVRを装着して驚く姿を見るのは本当に楽しく、その威力を改めて感じることができました。

 さて、あっという間の休みも終わり、自宅に戻りました。外したPS4とPS VRはしばらくテレビに繋がずそのまま置いておいたのですが、息子が家に友達を連れて来るということになり、改めてリビングに設置しました。といっても、WiFiは設定済みなのでネットワークには勝手に繋がってくれるし、やることとしては電源ケーブルを刺し、HDMIケーブルをテレビに刺すくらい。PS VRはプロセッサーユニットを間にかませる必要があるので多少複雑ではありますが、しかしそこはそれ、ケーブルには番号の書いたシールが貼られているし、下の写真のように、端子の差込口にはマークが描いてあるので迷うことはなにもありません。

『ナナメ上の雲』

 で、遊びにきた友達が帰ったあと、息子に「友達、VR遊んでどうだった?」と聞くと、VRは遊ばなかったとの驚愕の返答が。「なんで!?」と問うたらその理由が、「繋ぐのがメンドくさそうだったから」だそうで、おいおいふざけんなよ、と叱ったのでした。とりあえず邪魔になるのでPS VRそのものは外してテレビの横に置いてあったのですが、繋げるのは先ほどの写真の通り、マークを合せて2カ所に端子を刺すだけ。てっきりそれくらいはやるだろうと思っていたのに……。

 かつてファミコンで遊んだ世代ならおわかりかと思いますが、ファミコンって、テレビに繋ぐのが結構メンドくさかったですよね。同軸ケーブルのプラスチック部分をニッパーやハサミで切り、むき出しにした導線にアンテナプラグを装着し、それをテレビのアンテナ端子に繋ぐ。友達と本体を貸し借りしているうちに同軸ケーブルがどんどん短くなるなど、今でこそ懐かしいあるあるですが、遊ぶまでの手間はそれなりにかかったのでした。

 ファミコンをテレビに繋ぐ、で思い出しましたが、かつてフジテレビがバラエティ番組で栄華を誇っていた80年代から90年代、“笑っていいとも”や“オレたちひょうきん族”など数々のヒット番組を手掛けられた、故・横澤 彪(よこざわたけし)さんというプロデューサーがいました。お笑い界のBIG3、ビートたけしさん、タモリさん、明石屋さんまさんなど、錚々たるメンバーが横澤さんの番組でメジャーになっていったのです。その横澤さんが、ファミコンが大流行し始めたころ、テレビか雑誌のインタビューでこんなことを仰られていました。「これからは、“X(エックス)チャンネル”が脅威になる」と。

 ファミコンは、先にも書いた通り、テレビを映すためのアンテナプラグを経由する形で接続をしていました。そして接続後、テレビにファミコン画面を表示するには、地方によって異なるのですが、関東なら2ch、関西なら12chなどの“空きチャンネル”にチャンネルを合わせる必要があったのです。つまり横澤さんのいうXチャンネルとは、ファミコンが表示されるチャンネルのことを意味していて、これからはそこにチャンネルが合わされることによってテレビ番組が見られる機会が浸食される、という警鐘を鳴らされていたわけですね。

 結果的にゲームが遊ばれたことによりどれだけテレビの視聴率に影響があったのか一概には測れませんが、横澤さんが亡くなられてから6年、YouTubeやニコニコ動画、最近ではAbema TVなどの、テレビに依存しない番組制作や番組視聴、また、HuluやNetflixといった動画サービスの隆盛など、インターネットの浸透によってテレビ局による放送とは別種の“番組取得手段”が百花繚乱となり、チャンネルという概念そのものがパラダイムシフトを起こしています。チャンネルを回す時代から、コンテンツが存在するチャンネルへ“繋ぐ”時代になっているのです。

 物理ケーブルの接続をメンドくさいと感じる息子ではありますが、たとえばスマホをWiFiに繋いだり、ヘッドホンをBluetoothで繋ぐなど、物理的な端子が無いものについては、いとも簡単に使いこなしています。物理性やフィジカル性が薄いものほど扱うのが上手、というところが、まさにネットワーク世代の特性。カタチや方式は違っても、“繋ぐ”という行為が楽しさを呼び込んでくれることには間違いない。頑張って適応せねばなあと思うのでした。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.634』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年3月9日
■定価:639円+税
 
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